個人事業主の方が、税理士に依頼するタイミングを考えているケースは多いのではないでしょうか。しかし、そもそも税理士は何をしてくれるのかを理解し、何をして欲しいのかが明確でないと、効果的な依頼ができません。そして「何をして欲しいか」という目的は、その時の事業の状況と事業者の方の考え方によるため、それぞれタイミングも異なります。
このコラムでは、まず税理士に依頼できることを紹介します。そして「一般的に」税理士に依頼するタイミングを紹介し、目的によって何を依頼すれば効果的であるかを説明します。ミスマッチを防ぐとともに、目的に沿ったサービスを効果的に利用しましょう。
目次
税理士に依頼できること
税理士の仕事は、主に以下のとおりです。
確定申告
個人も法人も、所得があれば確定申告が必要です。代理で申告書を作成し、提出する仕事は税理士だけが行うことができます。
月次顧問
月次顧問契約では、年間にわたり業務を行います。顧問契約の業務範囲は税理士によって細かい点が異なります。一般的には以下のような業務を請け負っています。
(1)月次での数字チェック
月次での業績がわかるように、毎月帳簿をチェックします。
(2)節税アドバイス、質問対応
年間を通して節税のアドバイス、顧問先からの税務に関する質問対応を行います。
(3)資金繰り、借入時のサポート
借入をする際には金融機関の審査があり、税理士は審査対応のための説明や書類作成をサポートします。
創業支援
創業時の各種手続きの代行や、創業時に銀行借入をする際の書類作成サポートなどを行います。
記帳代行
会計ソフトへ仕訳を計上する業務を代行します。事業者によってボリュームがかなり異なり、また、領収書の整理など書類の整理から請け負うケースもあります。
税務調査の立ち会い
税務調査が入った時に、同席して経営者の方をサポートします。
事業承継サポート
中小企業では後継者不足に悩んでいるケースが多くあり、税理士は、事業承継対策のサポートを行います。内容としては、事業承継税制の活用を始めとした事業承継に関する税務処理のアドバイス、相談対応などさまざまです。
相続対策
相続税・贈与税の節税対策アドバイスや、申告業務を行います。
税理士に依頼する目的とタイミング
税理士に依頼する場合、「何の目的」で「何を依頼するか」を明確にすることが大切です。一般的に、税理士を依頼する目的とタイミングを紹介します。
税理士に依頼する主な目的
一般的に経営者が、最初に税理士を依頼したいと考える目的を紹介します。開業、または法人設立の際に、手続面や借入のサポートをして欲しい
- 記帳や書類整理などの事務処理の負担を軽減したい
- 専門知識が必要な確定申告書の作成を依頼したい
- 所得が増えて来たので節税アドバイスを受けたり、税務相談がしたい
税理士に依頼するタイミング
一般的に経営者が、税理士を依頼するタイミングを紹介します。
(1)借入を検討する時
借入をするには、金融機関の審査が必要です。返済能力があると判断されなければ借入ができません。創業時など経営実績がない場合や、業績が悪化している場合などは、事業内容・業績の説明や事業計画の作成が特に細かく求められます。
借入をしたことのない方にとっては経験や知識が少なく、計画の作成方法に不安があるため、税理士のサポートがあるとスムーズです。その後、引き続き月次顧問を検討するケースも多くあります。
(2)規模拡大により事務処理が煩雑と感じた時
事業を始めた当初は取引数も少なく、ご自身で書類整理や記帳ができていたものの、事業規模が拡大すると事務処理が煩雑と感じるようになります。また税務は専門知識が必要であるため、勉強するよりも専門家に任せた方が楽かつ正確です。税理士にコストをかけてでも経営者が「経営に専念したい」と感じ始めた時は、事務負担を減らすために記帳代行や確定申告を税理士に依頼しようと検討するタイミングです。
(3)売上が1,000万円を超えた時
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。所得税(法人の場合は法人税)の他に消費税の申告が必要になり、確定申告業務などの事務処理の負担が増えるため、税理士に依頼をしようと検討するタイミングになります。
また、2023年10月1日からのインボイス制度の適用開始により、売上1,000万円以下でも適格請求書発行事業者を選択し、消費税の申告が必要になるケースが増えることになります。このため、売上の金額にかかわらず消費税の申告のために税理士の関与を検討するケースも増加すると思われます。
(4)法人化する時
法人化する時は、税理士の関与を検討するタイミングの一つです。個人事業主が法人化する主な理由は、所得が増えて法人化した方が節税になると判断されるからです。規模的にも事務負担が多くなっており、また、税理士コストも賄える状況であることから、法人化をきっかけに税理士の関与を検討するケースが多くあります。
法人化は事務手続きが必要なだけでなく、法人の確定申告は個人と比べて書類も増えて煩雑になります。このため経営者は、税理士に依頼して事務処理の負担を減らし、かつ正確な申告をしたいと考えます。また法人化してさらに規模を大きくしたいと考えるため、税理士と顧問契約をして節税アドバイス、月次での数字報告、経営相談のサポートのサービスを活用したいニーズが増えるでしょう。
以上、一般的に税理士を依頼するタイミングを紹介しましたが、もちろんいつでも依頼は可能です。何を依頼したいのか、状況に応じて事前に明確にすると効果的です。
税理士に依頼するにはコストがかかるため、コストと得られる効果を比較して検討しましょう。ただし、効果は金額だけで測定できるものではなく、依頼してみなければわからないことも多くあります。気になる場合は、一度相談してみるのもよいのではないでしょうか。
税理士に依頼する時の注意点
税理士と契約しても、思ったような効果が出ないと感じるケースもあります。こうした不満を防ぐために、税理士に依頼する際の注意点を紹介します。
信頼関係
経営者と税理士は、信頼関係があることが重要です。この人なら信頼できる、この人とは相性がよい、と感じる税理士を選びましょう。話しやすくて気軽に連絡ができる、アドバイスされたことは素直に納得できると感じるような税理士を選ぶとよいでしょう。
依頼範囲の明確化
税理士へ依頼できることは、前述したとおりさまざまです。このため、依頼業務の範囲に関してお互いの認識のズレが生じることもあります。例えば、月次顧問の範囲にどの業務までが含まれるのかといった点など、どこまで依頼できるかをできる限り明確化しておくと、後々不満が生じにくくなります。
依頼は早めにする
税理士に依頼する際は、求められる資料や情報は早めに提出しましょう。時間がない中ではできることが限られてしまいます。
また節税対策は、月次で顧問契約をする方が効果的です。決算日を過ぎると、できる対策は限られるからです。
得意分野の確認
税務といってもさまざまな分野があり、すべてに精通するのは困難です。税理士はそれぞれ得意分野があるため、依頼したい内容が得意な税理士を探しましょう。特に事業承継、相続対策、金融機関対応などは力を入れている、いないが分かれるところですので事前に実績等を確認するとよいのではないでしょうか。確定申告や月次顧問に関しては税理士業務の基本であるため、どの税理士も対応していることがほとんどです。
まとめ
以上、税理士に依頼できる業務と目的、依頼する時の注意点を紹介しました。税理士を依頼するとコストがかかるため、効果と比較してよく検討しましょう。その際には依頼する業務をしっかり把握して、目的に沿った依頼をすることが大切です。
ただし、経営サポートや相談業務など、記帳代行のように明確な成果が測れないサービスも多くあります。税理士に依頼したいと感じるタイミングで、一度相談してみるのがおすすめです。
税理士に依頼できる業務などについては、永安栄棟公認会計士・税理士事務所にお問い合わせください。