赤字の個人事業主に、確定申告の義務はありません。しかし得られるメリットが複数あるため、赤字でも確定申告はすべきです。
「赤字で確定申告の時期を迎えるのが初めてで、どうすべきか分からない」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
今回は、個人事業主が赤字の場合でも確定申告をすべき理由やしないデメリット、具体的な書き方などについてまとめました。
税理士の立場から、難しい用語は極力使用せず、わかりやすく解説します。
記事を最後までチェックすれば、赤字だった方の確定申告に関する不安が解決します。
目次
【原則】赤字の個人事業主には確定申告の義務がない
結論、その年の事業が赤字である場合、確定申告を行う義務はありません。
確定申告は、1年間の所得に対する税金(所得税)を計算し、国に納めるための手続きです。所得税を計算する際に用いられる「課税所得」は以下の計算式で求められます。
課税所得=売上−経費−控除
赤字の場合、上記の計算結果が0以下となります。つまり所得税は0円です。
納める税金がない以上、税務署に対して確定申告をする義務は生じません。
しかし、ここで注意が必要なのは、「義務がない=申告しない方が良い」ではない点です。
「義務がないから何もしなくていいや」と放置してしまうと、後述する赤字の場合ならではの特典を逃してしまいます。
関連記事:初めて確定申告をする自営業向け!いくらから?必要書類は?疑問を全部解決
個人事業主が赤字の場合でも確定申告をすべき理由
以下6つの理由から、個人事業主は赤字でも確定申告をすべきです。
- 損益通算で税負担を抑えられる可能性があるから
- 赤字の繰り越しができるから
- 還付金を受け取れる可能性があるから
- 所得を証明できなくなるから
- 国民健康保険料や住民税の算定で不利になる可能性があるから
- 非課税証明書を受け取れないから
それぞれ詳しく解説します。
損益通算で税負担を抑えられる可能性があるから
損益通算とは?:
その名の通り「利益(黒字)」と「損失(赤字)」を通算(合算)して、トータルの所得を計算する仕組み。
例えば、本業の給与で年収500万円(黒字)があり、副業の事業で100万円の赤字が出たと仮定します。
この場合、確定申告をしなければ、給与500万円に対してそのまま税金がかかります。
一方で、確定申告をして損益通算を行えば「500万円(黒字)−100万円(赤字)=400万円」となり、課税所得の圧縮が可能です。
つまり節税になります。
給与から天引きされていた源泉所得税が「取りすぎ」の状態になり、差額が還付金として戻ってきます。
赤字の場合、確定申告を行う義務はありません。しかし、赤字が大きくなるほど、節税効果は大きくなります。
赤字の繰り越しができるから
確定申告には、簡単な白色申告と、複雑だが節税効果の大きい青色申告があります。青色申告をしていれば、赤字の繰り越しが可能です。
赤字の繰り越しとは?:
事業で生じた赤字を翌年以降に繰り越し、将来の黒字と相殺して税額を減らせる制度。
例えば1年目に300万円の赤字が出て、2年目に500万円の黒字が出たと仮定しましょう。
赤字の繰り越しをしなければ、2年目は500万円に対して税金がかかります。
一方、1年目に赤字の繰り越しをしていれば「500万円−300万円=200万円」となり、200万円に対して税金がかかります。つまり節税が可能です。
赤字は、最長3年間繰り越しできます。確定申告をしなければ、赤字はただ消えるだけです。
赤字の繰り越しによって、悪い時のマイナスを、良い時のプラスと相殺できます。
関連記事:個人事業主は青色申告と白色申告のどちらで手続きすべきなのか
還付金を受け取れる可能性があるから
事業が赤字であっても、手元にお金が戻ってくるケースがあります。それは、売上の入金時にあらかじめ源泉徴収されている場合です。
源泉徴収とは?:
報酬の支払い者が所得税を支払額から天引きし、本人に代わって国に納付する制度。
赤字の場合、納めるべき税金は「0円」になります。つまり、先に源泉徴収されていた税金は「払いすぎ」の状態になるわけです。
確定申告を行えば、この払い過ぎた税金が全額還付されます。売上が数百万あれば、数十万円規模の還付を受けられるかもしれません。
本来あなたの手元にあるべきお金ですが、自ら申告をしない限り、国庫に入ったまま永久に戻ってきません。
所得を証明できなくなるから
確定申告書の控えは、所得証明書としても使えます。
会社員であれば会社が発行する源泉徴収票がありますが、個人事業主にはそれがありません。その代わりとなるのが、確定申告書です。
所得の証明を求められる場面の例は、以下のとおりです。
- 住宅ローンや自動車ローンの審査
- 事業用融資の申し込み
- 賃貸住宅の契約
など…
「赤字を証明したところで意味がない」と思うかもしれません。
しかし、これらの審査では「所得がいくらか」だけでなく「きちんと税務申告を行っている実在する事業者か」という社会的信用も見られています。
申告をしていない場合、無職として扱われるかもしれません。
社会的信用を失わないためにも、赤字であっても申告をして「今年はこれだけの活動をして、結果は赤字でした」という記録を公に残しておきましょう。
国民健康保険料や住民税の算定で不利になる可能性があるから
隠れたデメリットとして挙げられるのが、国民健康保険料や住民税が高くなるリスクです。
国民健康保険料や住民税は、前年の所得をもとに計算されます。ここには、低所得者に対する減免制度が用意されています。
所得が一定の金額以下であれば、保険料の均等割が7割・5割・2割軽減される仕組みです。
しかし、この軽減措置を受けるための大前提は「所得の申告がなされていること」です。
確定申告をしていないと、役所はあなたの所得状況を把握できません。所得が「ゼロ」なのか「不明」なのか判断がつかないため、正しい軽減措置が適用されません。
赤字を申告すれば、所得はゼロ(またはマイナス)として扱われ、保険料の大幅な減免を受けられる可能性が高くなります。
非課税証明書を受け取れないから
行政サービスの中には、住民税が非課税である世帯を対象とした、以下のような優遇措置や給付金が数多く存在します。
- 臨時福祉給付金
- 就学援助制度
これらのサービスを受けるために必要となるのが、役所が発行する非課税証明書です。
しかし、この証明書を発行してもらうためには、当然ながら「所得がゼロ(または赤字)であること」が役所に記録されていなければなりません。
確定申告をしていれば、そのデータが自動的に市区町村に連携され、スムーズに非課税証明書を取得できます。
申告をしていなければ、いざ証明書が必要になった時に、慌てて役所の窓口で住民税の申告手続きを行わなければなりません。
赤字の個人事業主が確定申告をしないデメリット
ここまで解説してきた「申告すべき理由」を裏返すと、申告しないデメリットが浮き彫りになります。
最大のデメリットは、金銭的な損失と社会的信用の喪失です。
金銭面では、以下のように本来払わなくてよかったはずのお金を失います。
- 源泉徴収された税金が戻ってこない
- 将来の黒字と相殺できず、翌年以降の税金が高くなる
- 国民健康保険料や住民税の減免が受けられず、高い保険料を払わされる
社会的信用面では、公的な記録においてあなたが「存在しない」も同然の扱いになります。
- 「所得証明書」や「納税証明書」が発行できないため、ローンが組めない
- 保育園の入園審査で不利になる
- 持続化給付金のような、国からの支援金・助成金の申請要件を満たせない
特に、コロナ禍のような緊急時に給付金を受け取れなかった事業者の多くは、普段「赤字だから」といって申告をおろそかにしていた人たちでした。
赤字の個人事業主が確定申告をする際の書き方
赤字の場合でも、確定申告書の基本的な書き方は通常(黒字)の時と変わりません。しかし、赤字ならではの記載ポイントや、追加で提出すべき書類があります。
まず、確定申告書の第一表と第二表は、通常通り作成してください。所得がマイナスの場合、「△1,000,000」のように三角で表現されます。
損益通算を行う場合はプラスの所得と合算して、最終的な「課税される所得金額」を算出しましょう。ここがゼロになれば、税額もゼロになります。
そして、赤字を翌年以降に繰り越す場合に必ず提出しなければならないのが第四表です。
第一表・第二表だけでは、「今年の税金がゼロであること」しか申告できません。「この赤字を来年に持ち越します」という意思表示をするのが、この第四表の役割です。
第四表に、損益通算しても引ききれなかった赤字額を記載することで、税務署に損失額が記録され、翌年以降の申告で控除が可能になります。
e-Taxの場合、自動的に第四表が作成されるようになっているので心配不要です。
関連記事:確定申告のしかたが全くわからない個人事業主が知っておくべき税金知識
赤字の個人事業主が確定申告をする際は税理士への依頼がおすすめ
「赤字でお金がないのに税理士なんて頼めない」と思うかもしれません。しかし、赤字の時こそ、税理士への依頼がおすすめです。
赤字の場合、「赤字の繰り越し」など、通常の確定申告にはない複雑な処理が必要です。
順序や計算を間違えると、税務署から否認されたり将来使えるはずだった控除額が減ってしまったりするリスクがあります。
税理士に依頼すれば、正確な書類を作成し、損失を最大限将来に活かせるよう処理できます。
また、税理士は「なぜ赤字なのか」の分析と対策も可能です。「節税」だけでなく、「黒字化」に向けた経営コンサルティングを受けられるのもメリットです。
面倒な税務に時間を取られず、黒字化に向けて事業にコミットできる点もメリットでしょう。
一時的なコストはかかりますが、還付金の獲得、将来の税金削減、そして事業の立て直しというリターンを考えれば、税理士への依頼は決して高い出費ではありません。
税理士への確定申告の依頼については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:確定申告丸投げパックは月1万からで安い!理由やサービス内容、注意点を解説
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まとめ
個人事業主が赤字の場合でも確定申告をすべき理由やしないデメリット、具体的な書き方などについて解説しました。
赤字の場合、確定申告をする義務はありません。しかしそれでも、確定申告はすべきです。
税金の減額や信用の獲得など、さまざまなメリットを得られます。
赤字の場合の確定申告は、赤字でない場合と比べて複雑です。そのため、税理士への依頼をおすすめします。
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