銀行の法人口座は、個人口座のように簡単には開設できません。開設には銀行での面談が必要で、断られる可能性もあります。
「これから法人口座を開設する予定で、断られないか心配」「断られてしまってどうしようか悩んでいる」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
今回は銀行の法人口座開設を断られる3つの理由や口座を開設できないデメリット、審査通過率を高める方法などについてまとめました。
税理士の立場から、難しい用語は極力使用せず、分かりやすく解説します。
記事を最後までチェックすれば、法人口座を無事開設して、新規事業の良いスタートを切れます。
目次
【原則】法人口座の開設を断られても理由は開示されない
法人口座の開設を断られると、「なぜダメだったのか」と理由が気になりますよね。
しかし残念ながら、銀行が口座開設を断った具体的な理由を、申込者に対して開示することは原則としてありません。
個別の審査内容に関わる情報を開示すると、反社会的勢力などがその情報を悪用して、審査をすり抜けようとする可能性があるためです。
そのため、問い合わせても定型的な回答が返ってくるケースがほとんどです。
銀行の法人口座開設を断られる主な理由
銀行の法人口座開設を断られる主な理由は、以下の3つです。
- 資本金が極端に少ないから
- 面談で担当者の心証を損ねたから
- 事業内容が不明確だから
それぞれ詳しく解説します。
資本金が極端に少ないから
会社法上は資本金1円でも会社を設立できます。
しかし、資本金が1円や数万円など極端に少ない場合、それが理由で口座開設を断られる可能性があります。
銀行側から見れば、資本金は「事業に対する経営者の本気度」と「事業を継続するための最低限の体力」を示す重要な指標です。
資本金が極端に少ないと、銀行に対して以下のようにネガティブな印象を与えてしまいます。
- この会社は事業を継続する意思が低いのではないか
- すぐに資金ショートして、不正な取引に使われるのではないか
法人口座を開設したいのであれば、少なくとも50〜100万円ほどの資本金を用意したいところです。
資本金の決め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:会社の設立に必要な資本金の決め方!平均や最低金額についても解説
面談で担当者の心証を損ねたから
法人口座開設の審査は、提出された書類だけで行われるわけではありません。
銀行の担当者との面談が設定され、その場での立ち振る舞いや説明内容が、審査の結果を大きく左右します。
最終的に判断を下すのは「人」です。
担当者に「この経営者は信頼できない」「この事業は応援できない」と思われてしまえば、審査通過は困難になるでしょう。
例えば、以下のように社会人としての基本的なマナーが欠けているのは論外です。
- 約束の時間に遅刻する
- 服装がだらしない
- 態度が横柄
また、事業内容に関する質問に対して自信なさげに口ごもったり、事業計画書に書かれている内容と違うことを話したりすると、不信感へとつながります。
事業内容が不明確だから
銀行が最も警戒するのは、「結局、この会社は何をしてお金を稼ぐのかがよくわからない」という、事業内容が不明確な会社です。
マネーロンダリングなどの不正利用を目的としたペーパーカンパニーである可能性が疑われるためです。
例えば定款の事業目的に、ITサービス、飲食業、コンサルティング、古物商など、関連性のない事業が多数羅列されていると、「実態が不明確で何屋か分からない」と判断されるでしょう。
また、事業内容が「各種コンサルティング業」といった抽象的な表現だけだと、具体的なビジネスモデルが見えず、審査で不利になります。
事業内容を具体的かつ明確に説明したり、事業の正当性をWebサイトや事業計画書といった客観的な資料を用いて証明したりして、銀行を安心させることが重要です。
銀行の法人口座を開設できないとどうなる?
銀行の法人口座を開設できないと、以下3つのデメリットがあります。
- 融資を受けにくくなる
- 資産管理が面倒になる
- 社会的な信用度が下がる
1つずつ詳しく見てみましょう。
融資を受けにくくなる
融資の審査では、まずその銀行に法人口座を持っていることが大前提です。つまり法人口座を開設できないと、その銀行から融資を受ける道が、事実上閉ざされます。
「口座がない=その銀行との取引実績はゼロ」です。取引実績のない会社に対して、銀行がリスクを取って多額の資金を貸し出すケースは稀です。
また、法人口座の開設を断られたという事実は、「他の銀行から信用されなかった会社」というネガティブな情報として、その後の融資審査においても不利に働く可能性があります。
しかし融資は、事業を成長させる上で、設備投資や運転資金の確保のために不可欠です。
法人開設時に利用できる融資については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:法人成りで利用できる創業融資を解説!審査通過率を高める方法も
資産管理が面倒になる
法人口座が開設できない場合、代表者個人の銀行口座を事業用の資金管理に利用することとなります。
そして個人口座の使用は、経理処理を複雑化させ税務上のリスクを高めます。
法人のお金と個人のお金は、明確に区別して管理しなければなりません。
しかし個人口座を代用すると、会社の売上と、個人の給与振込やプライベートな支出が同じ口座内で混在します。
この中から、会社の経費と個人の生活費を一つひとつ正確に区別し、帳簿付けを行う作業は面倒です。
また、税務調査が入った際に公私混同の状態を調査官に見られると、「経理がずさんである」「個人への利益供与があるのではないか」と厳しい指摘を受ける原因となります。
社会的な信用度が下がる
ビジネスの世界において、取引の振込先が法人口座であるか個人口座であるかは、その会社の信用度を測る1つのバロメーターとなります。
請求書に記載された振込先が「株式会社〇〇」ではなく、代表者個人の名前であれば、取引先はどう感じるでしょうか。
「この会社は、もしかして銀行の審査に通らなかったのでは?」といった不信感を抱かれ、取引そのものを見送られてしまうかもしれません。
特にBtoBビジネスでは、与信管理の観点から、取引相手が法人口座を持っていることを契約の条件としている企業も少なくありません。
法人口座がない状態は、事業拡大の機会を逃す大きなハンディキャップとなり得ます。
法人口座開設の審査が比較的ゆるいのはネット銀行
メガバンクや地方銀行の審査に落ちてしまった方や、最初からハードルが低いところを狙いたい方におすすめの選択肢が、以下のようなネット銀行です。
- GMOあおぞらネット銀行
- 楽天銀行
ネット銀行は、他の銀行と比べて法人口座開設の審査基準がゆるいとされています。
そのため、設立間もないスタートアップ企業や、バーチャルオフィスを利用しているスモールビジネスに対しても、比較的柔軟に口座開設に応じてくれる傾向があります。
しかし取引先に与える社会的なイメージや信頼性という観点では、長年の実績があるメガバンクや地元の地方銀行の方が良いでしょう。
まずは本命の対面型銀行に挑戦し、ダメだった場合の「第二の選択肢」としてネット銀行を活用する方法がおすすめです。
法人口座開設の審査通過率を高める方法
法人口座開設の審査通過率を高める方法は、以下の2つです。
- Webサイトを作成する
- 税理士に相談をする
それぞれ詳しく見てみましょう。
Webサイトを作成する
会社の公式Webサイト(ホームページ)は、事業の実態と信頼性を証明するための最も強力なツールの1つです。
現代において、Webサイトは「会社の顔」です。銀行の担当者も審査の際には必ずと言っていいほどチェックします。
立派なデザインである必要はありません。無料の作成ツールを使った簡素なものでも、以下のような必要情報がきちんと記載されていれば十分です。
- 会社名
- 本店所在地
- 事業内容
- 代表者名
- 固定電話番号
具体的なサービス内容や料金、代表者の経歴や事業への思いなどを記載すると、印象はさらに良くなります。
「たしかにこの会社は実在し、真面目に事業を行おうとしている」と判断されます。
税理士に相談をする
法人口座の開設は、会社設立プロセスの一部です。法人口座の開設以外にも、役員報酬や資本金額を決めるなど、決めるべきことや必要な申請は複数存在します。
これら一連のプロセスは、税理士への相談がおすすめです。
税理士は、口座開設の審査で銀行がどのような点を重視するかを熟知しています。
資本金の適切な金額設定、定款の事業目的の書き方、説得力のある事業計画書の作成など、審査通過率を高めるための包括的なサポートを受けられます。
法人を設立したら、税務申告を税理士に依頼しなければなりません。どのみち依頼をするのであれば、法人設立の手続きから相談しておくと良いでしょう。
関連記事:起業したら税理士は必要?不要?費用や相談時に聞くことを解説
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|---|---|---|
| 〜1,000万円 | 1万円(個人) 2万円(法人) | 2万円(個人) 12万円(法人) |
| 〜2,000万円 | 2万円(個人) 2.5万円(法人) | 12万円(個人) 16万円(法人) |
| 〜3,000万円 | 3万円 | 16万円 |
| 〜4,000万円 | 4万円 | 18万円 |
| 5,000万円超 | ご相談 | ご相談 |
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まとめ
銀行の法人口座開設を断られる3つの理由や口座を開設できないデメリット、審査通過率を高める方法などについて解説しました。
法人口座を開設しておかないと、事業面でも税務面でも損をします。しかし法人口座の開設は、個人口座と異なり簡単ではありません。
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