フリーランスエンジニアは、売上が1,000万円を超えるか、課税所得が800万円を超えたタイミングで法人化すべきです。
「面倒だから」「よく分からないから」と法人化をしなければ、税制面で少なくとも数十万円は損をします。
今回はフリーランスエンジニアが法人化すべき目安や、法人化のメリット・デメリット、マイクロ法人がおすすめである理由などについてまとめました。
難しい用語は極力使用していません。税理士の立場から、分かりやすく解説します。
記事を最後までチェックすれば、あなたが法人化すべきか否か、どうやって法人化をすれば良いかが明確になります。
目次
フリーランスエンジニアが法人化すべき2つの目安
フリーランスエンジニアが法人化するタイミングの目安は、以下の2つです。
- 売上が1,000万円を超えたとき
- 課税所得が800万円を超えたとき
それぞれ詳しく解説します。
売上が1,000万円を超えたとき
個人事業主は、2年前の売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が発生します。
例えば、2025年の売上が1,200万円だった場合、2027年から消費税を納税しなければなりません。
しかし、この納税義務が発生する前に法人化をすると、設立1年目と2年目は「免税事業者」として扱われます。
つまり、法人化のタイミングによっては、本来支払わなければならなかった消費税を、2年分免除できるのです。
売上1,000万円のエンジニアであれば、消費税額は数十万円単位になります。この納税が2年間免除されるメリットは、非常に大きいです。
以上から、売上が1,000万円を超えたタイミングが、フリーランスエンジニアが法人化すべき1つの目安とされています。
※インボイスに登録している場合、売上に関係なく消費税を納税しなければなりません。
課税所得が800万円を超えたとき
フリーランスエンジニアの所得税は、所得が多ければ多いほど税率が上がっていく累進課税です。
所得税の税率は、以下のとおりです。
| 課税される所得金額 | 税率 |
|---|---|
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% |
| 40,000,000円 以上 | 45% |
一方、法人にかかる法人税は、所得800万円以下の部分が約15%、800万円を超える部分が約23.4%となっています。
個人事業主の場合、所得が900万円だと所得税率は33%になり、法人税率の23.4%を上回ります。
そのため、課税所得が800万円を超えたあたりも、法人化をすべき1つの目安です。
関連記事:個人事業主が法人化するタイミングは3つ!メリット・デメリットやお得な助成金を紹介
業務委託のフリーランスエンジニアでも法人化は可能
フリーランスエンジニアの多くは、クライアントと業務委託契約を結んで仕事をしています。「業務委託なのに、法人化なんてできるのか?」と疑問に思うかもしれません。
結論、業務委託であっても、何の問題もなく法人化は可能です。
そのため、前述した売上1,000万円や課税所得800万円の条件に当てはまっていれば、法人化を検討しましょう。
クライアント側から見ても、契約相手が個人事業主であろうと法人であろうと、発注する業務内容や求めるスキルが変わるわけではありません。
むしろ法人の方が信用力が増し、更なる取引を期待できる可能性もあります。
フリーランスエンジニアの法人化はマイクロ法人がおすすめ
マイクロ法人とは、個人事業主が社会保険料の削減や節税を目的に設立する、社長一人だけの小さな会社のことです。
「法人化」と聞くと、従業員が何十人もいるような、大きな会社をイメージするかもしれません。
こういったイメージがあると、法人化へのハードルが高くなってしまいます。
フリーランスの頃と同じような事業を行うのであれば、マイクロ法人でも問題ありません。売上や課税所得が増えてこのままだと損をすると判断したら、気軽に法人化をしましょう。
法人化の方法やかかる費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:会社の設立に必要な資本金の決め方!平均や最低金額についても解説
関連記事:株式会社を自分で設立する際の費用は最低24万円!内訳や経費計上、合同会社との違いを解説
フリーランスエンジニアが法人化をするメリット
フリーランスエンジニアが法人化する主なメリットは、以下の3つです。
- 節税になる
- 社会的な信用を得られる
- 有限責任となる
1つずつ詳しく見てみましょう。
節税になる
法人化による最大のメリットは、何と言っても節税効果です。
まず、法人化をすると経費として認められる範囲が広がります。例えば自宅を社宅扱いして家賃の大部分を経費として計上できます。
また、役員報酬の設定も法人ならではの節税対策です。役員報酬は経費になるため、所得の圧縮につながります。
また、受け取った役員報酬には基礎控除のみならず、給与所得控除が適用されます。
「役員報酬がいくらだと得になるか」は慎重に見極めなければなりません。しかし、法人化がうまくいけば、最低でも数十万円単位の節税効果を得られるでしょう。
関連記事:個人事業主は法人化することで経費計上できる範囲が拡大する
社会的な信用を得られる
フリーランスエンジニアが個人事業主であることに対し、クライアント側が不安を感じるケースは稀でしょう。
しかし、より大規模なプロジェクトや、金融機関、BtoBとの取引においては、「法人であること」に大きなメリットがあります。
法人格を持っているだけで、以下のような印象を与えられるためです。
- 事業として継続性・安定性がある
- 登記されており実在が証明されている
- 税務や法務をきっちり管理している
大手企業や金融機関は、コンプライアンスの観点から「取引相手は法人のみ」と規定しているケースも少なくありません。
法人化によって、これまでアプローチできなかった大口の案件を獲得できる可能性が広がります。また、金融機関からの融資も受けやすくなります。
有限責任となる
個人事業主は、無限責任を負っています。
つまり、万が一事業で大きな損害を出した場合は、自身の財産すべてを使ってでも返済・賠償しなければなりません。
一方、法人は有限責任です。会社が出した損害に対して、出資した金額の範囲内でしか責任を負いません。
なぜなら個人と法人は別物として考えられるからです。そのため、会社が倒産しても、経営者個人の財産まで差し押さえられることはありません。
何かあった場合の責任が有限であるという点も、フリーランスエンジニアが法人化するメリットの1つです。
しかし、例えば借入をする際に経営者が連帯保証人になった場合は、個人の財産まで責任が及ぶケースもあります。
フリーランスエンジニアが法人化をするデメリット
フリーランスエンジニアが法人化する主なデメリットは、以下の3つです。
- 社会保険料の負担が増える
- 法人設立の手続きが面倒
- 赤字でも住民税を支払わなければならない
それぞれ詳しく見てみましょう。
社会保険料の負担が増える
個人事業主のエンジニアは、国民健康保険と国民年金に加入しています。
法人を設立すると、これらの代わりに、健康保険と厚生年金に加入しなければなりません。
そして、前者よりも後者の方が、負担額は大きくなります。
健康保険と厚生年金は、会社と従業員による労使折半が原則です。つまり半額を会社が、残りの半額を従業員が支払います。
しかしフリーランスエンジニアが法人化した場合、会社も従業員もあなたです。
実質的には全額を一人で支払わなければならず、個人事業主と比べて社会保険料の負担は増えるでしょう。
なお、従業員を雇用した場合は、その従業員の健康保険と厚生年金の半額を、会社が負担しなければなりません。
法人設立の手続きが面倒
個人事業主は、税務署に開業届を一枚出すだけで、誰でも簡単になれます。廃業も、廃業届を出すだけです。
しかし法人化、つまり株式会社や合同会社を設立するには、法務局への登記が必要です。
詳しい解説は省略しますが、定款を始めとする、複数の書類を作成しなければなりません。役員報酬や資本金の額も決める必要があります。
「興味はあるけど手続きが大変そうだから」と法人化に踏み切れない方もいらっしゃるでしょう。
また、法人化には費用がかかります。
例えば株式会社を設立する場合、かかる費用は資本金を除いて24万円〜です。
赤字でも住民税を支払わなければならない
個人事業主の場合、その年の所得が赤字であれば、所得税や住民税は発生しません。
しかし、法人は例えその事業年度が大赤字であったとしても、最低限支払わなければならない税金が存在します。
これを、法人住民税の均等割と言います。
具体的には、赤字であっても年間約7万円は支払わなければなりません。
そのため、事業が赤字になる可能性が高いのであれば、法人化は先送りにした方が良いでしょう。
しかし、仕入れなどがほとんどないエンジニアが、赤字になるケースは滅多にありません。よって、それほど気にする必要はないでしょう。
関連記事:法人化で後悔する理由は5つ!決断すべき年収目安やあえてしない方が良い人の特徴
フリーランスエンジニアの法人化は税理士への相談がおすすめ
以下3つの理由から、フリーランスエンジニアの法人化は、税理士への相談がおすすめです。
- いずれにせよ税務申告は税理士への依頼が必須だから
- 法人化時の決め事によって税額が大きく変わるから
- 場合によっては無料で依頼できるから
1つずつ詳しく解説します。
いずれにせよ税務申告は税理士への依頼が必須だから
個人事業主の確定申告は、会計ソフトを使って自力で完結させていたエンジニアも多いでしょう。
しかし法人の税務申告は、個人事業主とは比較にならないほど複雑です。そのため、税理士への依頼が必須となります。
つまり、いずれにせよ税理士と顧問契約を結ぶこととなります。
法人化後に顧問契約を結ぶのであれば、「法人化すべきかどうかの判断」「法人設立の手続き」から相談するのがおすすめです。
相談の結果、法人化に至った場合は、そのまま同じ税理士に税務申告まで依頼をするのが一般的です。
そのため、新たに依頼先を探す手間も省けます。また「この税理士に税務申告を依頼すべきかどうか」を判断する良い機会にもなるでしょう。
法人化時の決め事によって税額が大きく変わるから
法人化には、節税メリットがあるとお伝えしました。しかしこの節税効果は、法人化をすれば自動で得られるものではありません。
以下の決め事によって、節税効果は大きく変わります。
- 資本金をいくらにするか
- 役員報酬をいくらにするか
せっかく法人化をしたものの、思うように節税できず後悔する方もいるでしょう。自分で適当に決めたために、むしろ損をしてしまう方もいます。
税理士に依頼をすれば、そういった心配は不要です。売上予測、生活費、家族構成などをすべて考慮した上で、最適な額を提案します。
最初にこれらを適切な形で決めておくのが、法人化で後悔しないための第一歩です。
場合によっては無料で依頼できるから
フリーランスエンジニアの中には、以下のような不安を抱く方もいらっしゃるでしょう。
- 法人化の相談や設立手続きを税理士に頼むと、高額な費用がかかるのでは?
- それであれば多少無理をしてでも自力で法人化をした方が良いのでは?
しかし、税理士事務所によっては、法人設立後の顧問契約を前提として、無料で法人設立サポートのサービスを提供しています。
税理士としては、設立手続きの手数料を単発でいただくよりも、設立後も長く顧問として付き合ってもらうことの方が重要だからです。
また、顧問契約を結んでいる個人事業主に対して、無料で法人設立サポートを提供しているところもあります。
つまり、顧問契約を結んでいる(結ぶ予定)であれば、費用はかかりません。無料であれば、プロに相談をしない手はありません。
フリーランスエンジニアの法人化は永安税理士事務所にご相談ください
永安栄棟税理士事務所では、弊所のお客様向けに、起業時の「開業支援」サービスを無料で提供しています。具体的なサポート内容は以下のとおりです。
- 設立支援:必要な届出書の作成や司法書士・社労士の紹介など
- 資金調達支援:資金調達方法に関するアドバイス
- 設立時の運営指導:役員報酬の金額や合同会社・株式会社の選択などのアドバイス
また個人事業主や中小企業向けの「確定申告丸投げパック」を提供しています。
サービス内容は以下のとおりです。
- 日々の会計帳簿の記帳
- 決算書の作成
- インボイスへの対応
- 消費税申告書の作成
- 確定申告書の作成
料金は以下のとおりです。
| 売上規模 | 月額報酬(毎月) | 決算報酬(年1回) |
|---|---|---|
| 〜1,000万円 | 1万円(個人) 2万円(法人) | 12万円(個人) 12万円(法人) |
| 〜2,000万円 | 2万円(個人) 2.5万円(法人) | 12万円(個人) 16万円(法人) |
| 〜3,000万円 | 3万円 | 16万円 |
| 〜4,000万円 | 4万円 | 18万円 |
| 5,000万円超 | ご相談 | ご相談 |
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まとめ
フリーランスエンジニアが法人化すべき目安や、法人化のメリット・デメリット、マイクロ法人がおすすめである理由などについて解説しました。
売上が1,000万円を超えるか、課税所得が800万円を超えたフリーランスエンジニアは、法人化に向けて動き出しましょう。
上記に当てはまる状態で放置をしていると、遅くとも2年後には税金が跳ね上がります。一方で、マイクロ法人を設立すれば年間数十万円〜の節税効果を得られます。
法人化すべきか悩む場合、法人化の手続き、法人化後の確定申告などについては、税理士のサポートがおすすめです。
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