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アパート経営を法人化する目安は3つ!メリット・デメリットやかかる費用も紹介

2025.09.10 10:00
アパート経営を法人化する目安は3つ!メリット・デメリットやかかる費用も紹介

課税所得が800万円を超えた時や、家賃収入以外の売上が1,000万円を超えた時、資金調達が必要になった時が、アパート経営を法人化する目安です。

アパート経営をしている方の中には「このまま個人としてやっていくべきか、法人化すべきか悩んでいる」という方もいらっしゃるでしょう。

今回は、アパート経営を法人化する3つの目安や法人化のメリット・デメリット、法人化の具体的な方法などについてまとめました。

専業でアパート経営をされている方、副業サラリーマン、両者に向けた内容となっています。

難しい用語は極力使用していません。税理士の立場から、分かりやすく解説します。

記事を最後までチェックすれば、納得感を持って、法人化すべきか否かを決められます。

アパート経営を法人化すべき3つの目安

アパート経営を法人化する目安は、以下の3つです。

  • 課税所得が800万円を超えた時
  • 年間売上が1,000万円を超えた時
  • 資金調達が必要になった時

それぞれ詳しく解説します。

課税所得が800万円を超えた時

アパート経営の法人化を検討する最も一般的な目安が、年間の課税所得が800万円を超えるタイミングです。

課税所得は、以下の計算式で算出されます。

課税所得=売上−経費−控除

これは課税所得800万円前後で、個人に課される所得税の税率を、法人に課される法人税の税率が下回るためです。

まず法人税の税率は、原則として23.2%となっています。

続いて個人の所得税率は、所得が増えるほど税率も高くなる累進課税です。詳細は以下のとおりです。

課税される所得金額税率
1,000円から1,949,000円まで5%
1,950,000円から3,299,000円まで10%
3,300,000円から6,949,000円まで20%
6,950,000円から8,999,000円まで23%
9,000,000円から 17,999,000円まで33%
18,000,000円から 39,999,000円まで40%
40,000,000円以上45%
出典:国税庁 No.2260 所得税の税率

課税所得が8,999,000円を超えると、税率が33%になります。そのため課税所得800万円を超えたあたりが、アパート経営を法人化する1つの目安とされています。

年間売上が1,000万円を超えた時

年間売上が1,000万円を超えると、その2年後から消費税を納付しなければなりません。
※インボイス制度に登録している場合は、売上規模にかかわらず納税義務が発生。

売上が1,000万円を超えたタイミングで法人化をすれば、消費税の納付をさらに2年間、先延ばしできます。

そのため一般的には、売上1,000万円を超えたタイミングが、法人化をする1つの目安とされています。

その点が他の業種とは異なるので注意しましょう。

法人化すべきタイミングを調べるとよく出てくる「年間売上が1,000万円を超えた時」をそのまま鵜呑みにすると、かえって損をする可能性があります。

資金調達が必要になった時

新たな物件の購入や大規模修繕など、多額の資金調達を計画している時も、法人化をする絶好のタイミングです。

個人よりも法人の方が社会的信用力があり、より多額の資金を調達できるからです。

例えば日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、最大7,200万円の融資を受けられます。

法人化の際に利用できる融資制度については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:法人成りで利用できる創業融資を解説!審査通過率を高める方法も

副業でアパート経営をするサラリーマンも法人化すべき?

普段はサラリーマンとして働きながら、副業としてアパート経営をしている方もいらっしゃるでしょう。

副業サラリーマンが法人化すべきタイミングは、本業でアパート経営をする方と同じく「課税所得が800万円を超えた時」です。

しかしこの課税所得800万円とは、給与とアパート経営を合算したものである点に注意が必要です。

例えば給与の課税所得が600万円でアパート経営の課税所得が200万円の場合、合計800万円となるため、法人化による節税メリットが出始める可能性があります。

副業サラリーマンの方が、本業でアパート経営をする方よりも早い段階で、法人化した方が得になるタイミングが来ると考えておきましょう。

しかし法人化によって、副業が勤務先にバレてしまうリスクもあるため要注意です。

アパート経営を法人化するメリット

アパート経営を法人化する主なメリットは、以下の3つです。

  • 節税になる
  • 相続税対策になる
  • 損失の繰越期間が長くなる

1つずつ詳しく見てみましょう。

節税になる

アパート経営の法人化による最大のメリットが、節税です。法人化をすれば、個人経営の時よりも、経費として認められる範囲が広がります。

例えば、オーナー自身や家族への給与は経費になります。また、給与を受け取った側も「給与所得控除」を利用して所得の圧縮が可能です。

他にも法人化によって、以下の経費を計上できるようになります。

  • 福利厚生費
  • 車両関連費
  • 出張旅費
  • 家賃・社宅
  • 退職金

法人ならではの節税スキームにより、手元に残るキャッシュを最大化できます。法人化による経費範囲の拡大について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:個人事業主は法人化することで経費計上できる範囲が拡大する

相続税対策になる

相続税とは、亡くなった親や配偶者などから財産を相続した場合に課される税金です。

もし自身が高齢で、万が一亡くなってしまった際にアパートを子や配偶者に相続したいと考えているのであれば、法人化は子や配偶者にとって大きなメリットとなります。

法人が有する財産は、相続税の対象となりません。

一方で、法人の株式が相続税の対象となりますが、評価方法の違いから、不動産を直接保有するときより、低い評価額となる場合があります。

そのため、法人化によってアパートを法人の財産とすれば、相続税対策になります。

関連記事:相続税申告の税理士報酬目安は0.5〜1.0%!相場より高い理由や誰が払うべきかについて解説

損失の繰越期間が長くなる

アパート経営では、大規模修繕や災害、予期せぬ空室の増加などにより、単年度で大きな赤字が発生することがあります。

この赤字を翌年以降の黒字と相殺して、税金の負担を軽減できる制度が「繰越欠損金の控除」です。

そして、この赤字を繰り越せる期間は、個人と法人で大きく異なります。

まず個人の場合、赤字を繰り越せる期間は最大3年間です。3年以内に十分な黒字を回復できなければ、せっかくの欠損金が消滅してしまいます。

一方法人の場合、繰越期間は最大10年間です。この7年間の差は、長期的な安定経営が求められるアパート経営において、大きなアドバンテージとなるでしょう。

例え数千万円規模の赤字が出ても、10年という長い期間があれば、その後の家賃収入でゆっくりと相殺できます。

アパート経営を法人化するデメリット

アパート経営を法人化する主なデメリットは、以下の3つです。

  • 費用がかかる
  • 確定申告の手間が増える
  • 新たな税金が発生する

それぞれ詳しく説明します。

費用がかかる

株式会社の設立には、最低でも24万円の費用がかかります。かかる費用の大まかな内訳は、以下のとおりです。

  • 定款費用
  • 登記費用
  • 資本金

法人化の手続きは、税理士や司法書士などのサポートを受けながら行うのが一般的です。その場合、別途報酬が必要となります。

弊所のように既存のお客様に対して無料で開業支援サービスを提供する税理士事務所も存在します。

また、法人であるだけで毎年支払わなければならない「法人住民税の均等割」が最低でも年間7万円ほど必要です。

かかる費用とメリットを天秤にかけて、法人化するか否かを判断する必要があります。

関連記事:個人事業主から法人化する際の費用は最低24万円!後悔しないタイミングや年間費用についても紹介

確定申告の手間が増える

個人の確定申告も、決して簡単ではありません。しかし簿記や税務の知識があれば、自力での確定申告も可能です。

そのため、自力で確定申告をしていた方でも、税理士に依頼をすることになるでしょう。

よって個人の時にはかからなかった、税理士報酬が必要となります。報酬は月額2万円からです。

また、税務調査の対象になる可能性も、個人の時と比べると高くなります。

関連記事:確定申告を税理士に丸投げしたい個人事業主必見!費用や損に繋がるデメリットを紹介
関連記事:個人事業主が税務調査対象になる確率は0.5%なのに通知が来た!流れや今からできる準備を紹介

新たな税金が発生する

たしかに法人化には、節税効果があります。しかし法人化によって、新たに発生する税金もあります。

まず前述のとおり、例え赤字であっても「法人住民税の均等割」を毎年最低7万円程度支払わなければなりません。

また、法人化をすると社会保険(健康保険や厚生年金)に加入しなければなりません。国民健康保険料や国民年金保険料と比べると、社会保険料の方が負担は大きくなります。

副業サラリーマンの場合、社会保険料の半分は、会社が負担しています。そのため、日頃から社会保険料の負担が大きいと感じる方は少ないかもしれません。

アパート経営を法人化する方法

アパート経営を法人化する方法は、大きく以下の3つに分かれます。

  • 不動産所有方式
  • 不動産管理委託方式
  • 一括転貸方式(サブリース)

上記の中で最も一般的なのが、不動産所有方式です。

不動産所有方式は、個人が所有していたアパートを、法人に移転する方法です。得られる利益も、すべて法人のものとなります。

続いて不動産管理委託方式は、アパートの所有権は個人のままにして、設立した法人がアパートの管理業務を請け負うといったスキームです。

個人から法人に支払われる管理料が、法人の売上になります。

最後に一括転貸方式は、個人が所有するアパートを、法人が一括で借り上げる方法です。入居者が法人に家賃を支払い、法人はその一部を個人に賃料として支払います。

どの方法を選ぶかによって、手間や節税効果などが異なります。

アパート経営の法人化は税理士への相談がおすすめ

以下3つの理由から、アパート経営の法人化は、税理士への相談がおすすめです。

  • 面倒な手続きから解放されるから
  • 損をせずに済むから
  • いずれにせよ法人化後は税理士との顧問契約が必要だから

面倒な手続きから解放されるから

法人化は、ただ書類を提出するだけの手続きではありません。

定款を作成したり法人登記をしたり、各種届出を行ったりしなければなりません。これらの手続きをすべて自力で行うには、膨大な時間と労力がかかります。

法人化の手続きによって、本業であるアパート経営に支障をきたすようでは本末転倒です。副業サラリーマンが自力で法人化手続きを進めるのは、さらに大変でしょう。

税理士に相談をすれば、提携している司法書士などと連携し、一連の面倒な手続きを代行してくれます。

貴重な時間を節約し、アパートの管理・運営という本来の業務に集中できます。

損をせずに済むから

「法人化をすれば必ず得をする」というわけではありません。所得や将来の計画などによっては、法人化しない方が有利なケースもあります。

たしかに税理士事務所としては、法人化のサポート依頼の方が、利益になります。

しかし優良な税理士事務所ですと「そもそも法人化をすべきか否か」といったところから相談できます。

またもちろん、法人化をした後の創業融資などの相談も可能です。

関連記事:創業融資は税理士がいると安心!成功報酬の相場は3〜5%!依頼内容などについて解説

いずれにせよ法人化後は税理士との顧問契約が必要だから

個人の確定申告は、自力でも行えます。

しかし法人の確定申告は、前述のとおり複雑です。自力で行うことは、原則として不可能です。

つまりアパート経営を法人化したあとは、いずれにせよ税理士と顧問契約を結ぶこととなります。

それであれば、法人化のサポートから依頼しておいた方が、何かと得になるでしょう。例えば弊所のように、既存のお客様には開業支援を無料で提供する税理士事務所も存在します。

アパート経営の法人化は永安税理士事務所にご相談ください

アパート経営の法人化は永安税理士事務所にご相談ください

永安栄棟税理士事務所では、弊所のお客様向けに、起業時の「開業支援」サービスを無料で提供しています。具体的なサポート内容は以下のとおりです。

  • 設立支援:必要な届出書の作成や司法書士・社労士の紹介など
  • 資金調達支援:資金調達方法に関するアドバイス
  • 設立時の運営指導:役員報酬の金額や合同会社・株式会社の選択などのアドバイス

また個人事業主や中小企業向けの「確定申告丸投げパック」を提供しています。

サービス内容は以下のとおりです。

  • 日々の会計帳簿の記帳
  • 決算書の作成
  • インボイスへの対応
  • 消費税申告書の作成
  • 確定申告書の作成

料金は以下のとおりです。

売上規模月額報酬(毎月)決算報酬(年1回)
〜1,000万円1万円(個人)
2万円(法人)
10万円(個人)
12万円(法人)
〜2,000万円2万円(個人)
2.5万円(法人)
10万円(個人)
12万円(法人)
〜3,000万円3万円14万円
〜4,000万円4万円16万円
5,000万円超ご相談ご相談

弊所は兵庫県にある税理士事務所ですが、日本全国どこからでもご依頼いただけます。ぜひ以下より、各プランについて詳しく見てみてください。

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まとめ

アパート経営を法人化する3つの目安や法人化のメリット・デメリット、法人化の具体的な方法などについて解説しました。

課税所得が800万円を超えた時や資金調達をしたい時が、アパート経営を法人化する一般的な目安です。

しかし人それぞれ、法人化すべきタイミングは異なります。

法人化すべきか悩む場合、法人化の手続き、法人化後の確定申告などについては、税理士のサポートがおすすめです。

弊所のサービスについては、以下よりチェックしてみてください。

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