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企業が税務調査を完全に避けることは難しいですが、対策を講じることで調査対象になる確率を下げることは可能です。

本記事では、法人に対する税務調査の実施状況と、調査で指摘されやすいポイントについて解説します。

法人に対して行われる税務調査の内容

法人は個人事業主よりも税務調査を受ける確率が高く、調査対象となる税目は法人税だけではありません。

法人が税務調査を受ける確率

令和4事務年度に実施された税務調査の件数は6.2万件、実地調査以外の調査等の件数は6.6万件に上ります。

令和4年度の法人税の申告件数は312.8万件ですので、申告法人の約4%は税務署から何かしらの調査を受けています。

理論上は25年に1度しか調査を受けない計算になりますが、税務調査は基本的に黒字申告を対象に調査を実施しますので、利益を出している法人は計算上の数値より調査を受ける確率が高いです。

提出された申告書のうち黒字申告割合は36.2%と、おおよそ3分の2は調査対象になりにくい赤字申告であり、国税庁が公表している資料によると、税務署の法人税・消費税の接触率は5年間で17.8%です。

出所:令和4事務年度法人税等の調査事績の概要(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf

税務調査の対象税目・対象期間

法人に対する税務調査は、法人税と同時に消費税や源泉所得税の調査を実施することもありますし、法人役員に関して問題があるときは、役員の所得税も調査対象になります。

税務調査は法律上5年前まで遡って実施することが認められていますが、一般的な調査では3年分の申告書を対象にすることが多く、調査可能期間すべてを調査するのは無申告や脱税の疑いがあるケースに限られます。

一方で、脱税など申告内容に大きな問題がある場合には、調査可能期間が5年から7年に拡大しますので、税金逃れはリスクしかありません。

税務署が実地調査でチェックするポイント

法人税の税務調査では、法人税の申告書だけでなく、申告書を作成するのに用いた帳簿書類や領収書・請求書、法人が使用している通帳なども調べます。

領収書が保存されていなければ経費計上が否認される可能性がありますし、電子帳簿等による保存が義務となりましたので、帳簿書類等が電子帳簿保存法に基づき適切に保存しているかもチェックします。

税務調査が実施されたとしても、申告内容に問題が無ければ追徴課税を支払うことにはなりません。

しかし、実地調査を受けた法人の4社に3社は非違事項を指摘されていますので、税務調査を受けないように対策することが肝要です。

出所:令和4事務年度法人税等の調査事績の概要(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf

税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類ある

税務調査は、任意調査と強制調査に区分されます。

任意調査は、納税者の同意の下で行う税務調査をいい、一般的に実施されている調査は任意調査です。

調査担当者が無理やり調査を進めることはありませんが、納税者はやむを得ない事情が無い限り調査に協力することが求められますので、税務署から税務調査を実施する旨が伝えられた際は応じなければなりません。

強制調査は、納税者の同意を必要としない調査をいい、国税局査察部(通称:マルサ)が調査を担当します。

強制調査はマルサが突然自宅等に訪れて関係資料を捜索し、必要に応じて資料等を押収するなど、警察が家宅捜索するのと似ています。

追徴課税を支払うことで原則調査が完了する任意調査とは違い、強制調査は追徴課税だけでなく、刑事罰に処される可能性が高いのも特徴です。

ただし、強制調査の対象になるのは悪質な脱税犯だけですので、計算ミスや単純な申告漏れがあったことだけを理由に強制調査が実施されることはありません。

任意調査の「実地調査」と「簡易調査」の違い

税務署は調査する内容によって、実地調査と簡易調査(実地調査以外の調査)を使い分けています。

実地調査は、調査担当者が自宅や事務所を訪れて申告内容を確認する調査方法です。

法人に対する実地調査の場合、帳簿書類を調べるだけでなく、社長や経理担当から申告内容等についての聴き取りを行います。

聴き取った内容は署内の資料と照合して真偽を確かめますし、銀行や取引先に対しての反面調査で事実関係を調べるため、調査で嘘をつくことはできません。

簡易調査は、電話や税務署で申告内容を確認する方法です。

税務調査である点では実地調査と同じですが、調査担当者が特定の事項のみを確認したい時に用いられることが多いです。

また、税務署は自主的な申告内容の見直しを促す際に、行政指導を行うケースもあります。

行政指導は法律上の税務調査ではないので、行政指導により申告書を提出した場合、自主申告扱いとなります。

税務調査で修正申告等をした場合に比べ、課されるペナルティは軽減されますが、行政指導に応じないと実地調査や簡易調査に移行することもあるので注意してください。

税務調査で指摘されやすいポイント

税務署は企業がミスをしやすいポイントや、脱税の手口を把握していますので、調査対策を講じる際は要点を押さえることが大切です。

売上除外・経費の水増し

法人税の増差税額が発生するのは、基本的に売上の申告漏れと経費の計上誤りです。

現金売上は、除外する意思がなかったとしても計上漏れが発生しやすいため、調査担当者は現金売上の有無や現金の管理方法をチェックします。

経費に計上できるのは、収益を得るために支出したものに限られ、上限を超えた接待交際費や役員給与等の損金算入も認められません。

売上が急激に伸びた企業は、利益を抑えるために支出を増やす傾向にありますが、経費計上が否認されれば、無駄な支出をしただけになるので気を付けてください。

売上・仕入れの計上時期の誤り

法人税は事業年度ごとに損益を計算しますので、計上時期に誤りがあると各事業年度に生じる利益も増減します。

売上計上時期は実現主義が原則ですので、実現主義以外の基準で売上を計上している際は注意が必要です。

利益を抑えるために事業年度末に仕入や経費を増やすケースもありますが、計上時期の誤りを指摘されれば、事業年度における経費が減少し、利益が増えてしまいます。

役員との関係性

法人と役員の関係は、法人税の税務調査で必ず聴取されます。

役員との金銭貸借がある場合、契約書の有無や返済状況の確認も行われるため、適正にやり取りすることはもちろんのこと、税務調査で質問された際に回答できるよう準備しなければなりません。

役員報酬は一定の要件を満たした場合に限り損金算入が認められていますので、要件の適否だけでなく、役員の実態についても確認が入ります。

同族会社の場合、社長の家族が役員になっていることもありますが、勤務実態がない家族への役員報酬は否認され、損金不算入となります。

不完全な税務調査対策は逆効果

世の中には様々な節税方法や税務調査対策が存在しますが、効果の有無は法人の規模や経営状態によって異なるため、用いる手段は選ばなければなりません。

税務調査対策を講じたとしても、実態が伴っていなければ仮装隠蔽行為とみなされ、重加算税が課されることもあります。

税務調査で追徴課税を受けてしまうと、2回目以降の調査対象となる確率が上がるため、調査対象となった際の対処も重要です。

税理士も多種多様ですので、顧問税理士選びに迷われている場合は、調査対策が充実している税理士を選ぶようにしてください。

税務のお困りごとがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

会社が法人税の確定申告をする場合、白色申告ではなく青色申告で手続きすることが望ましいです。

国は青色申告を推進するために様々な特典を用意しており、法人税を節税するためには、青色申告の優遇措置を上手く活用する必要があるからです。

本記事では、法人が青色申告で申告するメリットと、手続き上の注意点について解説します。

青色申告とは

青色申告制度は、税務署の承認を受けた事業者が一定の要件を満たした帳簿書類を備え付け、青色の申告書により申告手続きを行う制度です。

事業者は確定申告をするために記帳等を行っていますが、青色申告は記帳を適切に行う見返りとして、税制上の優遇措置が与えられています。

青色申告の主な特典は下記の通りで、節税の観点で考えた場合、会社が青色申告を行うことは必須条件になります。

<法人の青色申告の主な特典>

  • 欠損金の10年間繰越控除
  • 欠損金の繰戻しによる法人税額の還付
  • 帳簿書類の調査に基づく更正
  • 更正通知書への理由付記
  • 推計による更正または決定の禁止
  • 特別償却または割増償却
  • 各種準備金等の積立額等の損金算入
  • 各種の法人税額の特別控除
  • 各種の所得の特別控除等
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入
  • 課税の特例等

法人税を青色申告で申告するためには、事前に納税地の所轄税務署長へ青色申告の承認申請を行い、承認を受ける必要があります。

承認された後は、法人税法上で定められている方法で帳簿書類を備付け、これに日々の取引を正確に記録しなければならないため、継続的に要件をクリアすることが求められます。

税務署に青色申告の承認が認められたとしても、適切に帳簿書類の備え付け等を行っていなければ、青色申告の特典が受けられない場合があるので注意してください。

法人が青色申告をするメリット

青色申告法人には、多くの特典が与えられていますが、その中でも高い節税効果を得ることができる制度を4種類ご紹介します。

欠損金の10年間繰越控除

青色申告の特筆すべき特典として、欠損金の繰越控除があります。

法人に事業年度の赤字(欠損金)が生じた場合、白色申告であれば欠損金を翌年に繰り越すことはできません。

しかし、青色申告を行っていれば、欠損金を最大10年間繰り越すことが可能であり、繰り越した欠損金は翌年以後に生じた利益と相殺することができます。

個人事業主にも繰越控除制度はありますが、個人事業主の繰越控除の期間は3年ですので、法人の方が控除期間が長いです。

なお、繰越控除を適用するためには、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出するだけでなく、その後の各事業年度でも連続して確定申告書を提出することが求められます。

欠損金の繰戻しによる法人税額の還付

欠損金の繰戻し制度は、事業年度に損金額が発生した際、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻し、法人税額の還付を請求することができる制度です。

欠損金の繰戻し制度を利用できるのは原則中小企業者等であり、中小企業者等以外の法人については、平成4年4月1日から令和6年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額は適用対象外です。

ただし、中小企業者等以外の法人についても、下記の欠損金額については、欠損金の繰戻しによる還付制度を適用できます。

  • 清算中に終了する各事業年度の欠損金額
  • 解散等の事実が生じた場合の欠損金額
  • 災害損失欠損金額
  • 銀行等保有株式取得機構の欠損金額

推計による更正または決定の禁止

推計による更正または決定の禁止とは、税務署が税務調査において推計課税を禁止することをいいます。

推計課税は税金の額を推定して決める方法をいい、税務調査に非協力的な納税者や、帳簿が不正確な納税者に対して用いる手法です。

調査担当者は税務調査を実施する際、取引状況や資料等に基づいて売上や経費計上などについての可否判定を行いますが、推計課税は資料等ではなく、特定の金額・割合などを用いて課税額を計算します。

推計課税で算出される課税額は、実際の課税額より高くなる可能性が高いため、調査対象者の税負担が重くなる懸念があります。

しかし、青色申告を行っていれば推計による更正・決定は行われませんので、税務調査の対象となった際に税負担が重くなるリスクを回避することができます。

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得などして事業用に供する場合、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。

減価償却資産は、原則全額を取得した事業年度の経費にすることはできませんが、青色申告法人については、30万円未満までの減価償却資産を一括で経費にすることが可能です。

減価償却資産の特例を適用する場合、事業用に供した事業年度において、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付が必要です。

出所:令和5年版 法人税のあらましと申告の手引(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2023/01.htm#a03

税務調査の対象になる確率を抑制できる

企業は継続的に活動している以上、税務調査を完全に回避することは難しいですが、対策を講じることで調査を受ける確率を下げることは可能です。

税務署は税務調査でより多く増差税額を出すことを目指していますので、申告誤りや申告漏れが想定される企業を対象に調査を実施する傾向にあります。

青色申告は納税者が適正な申告をする意思があるかの判断要素の一つであり、青色申告で申告書を提出するだけで税務調査を抑制する効果が期待できます。

そのため、節税対策だけでなく、調査対策の観点からも青色申告で申告することが望ましいです。

なお、税務調査を受ける確率は青色申告・白色申告の違いだけでなく、税理士関与の有無も影響します。

法人税は他の税金と比較して申告書を作成する難易度が高く、9割近くの法人が税理士に申告書作成を依頼しています。

納税者自身で申告書を作成・提出しても問題ありませんが、専門家が作成するより申告誤りが発生する確率が高いので、税務調査を受ける確率が上がる点には注意してください。

青色申告を適用するための要件

法人が青色申告で申告手続きを行うためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録、保存すること
  • 税務署に「青色申告の承認申請書」を提出し、あらかじめ承認を受けること

青色申告は仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿を作成するだけでなく、複式簿記による記帳も必要です。

帳簿書類の保存期間は7年と定められており、欠損金に係る帳簿書類については保存期間が10年です。

青色申告は承認制ですので、青色申告書を提出しようとする事業年度開始日の前日までに、「青色申告の承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

年の途中で青色申告の承認申請書を提出し、承認を受けたとしても、青色申告で申告書を作成できるのは次の事業年度からになります。

ただし、 新たに法人を設立した場合には、次のいずれか早い日の前日までに青色申告の承認申請書を提出すれば、最初の事業年度から青色申告で申告することが可能です。

  • 設立の日以後3月を経過した日
  • 最初の事業年度終了の日

出所:青色申告の承認申請書(国税庁)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/056-1.pdf

青色申告の承認が取り消しになるケース

青色申告は1度承認されれば、継続して青色申告で申告手続きを行えますが、次のケースに該当する場合には、青色申告の承認が取り消される可能性があるので気を付けてください。

<青色申告が取り消しになるケース>

  • 法令で定められた方法で帳簿書類の備付け、記録、保存を行っていなかった
  • 帳簿書類に関して税務署長の必要な指示に従わなかった
  • 帳簿書類等に仮装・隠蔽した事実があった
  • 確定申告書を定められた期限までに提出しなかった

税務署は上記の事実が判明した場合、該当する事実がある事業年度まで遡って、青色申告の承認を取り消すことができます。

青色申告が取り消しになった場合、取り消された事業年度開始の日以後に提出された青色申告書も青色申告でなくなりますので、各種特典は適用されないことになります。

基本的なルールを守っていれば、青色申告が取り消しになることはないですが、何度もミスを繰り返していると、青色申告の承認が取り消されますので注意してください。

まとめ

青色申告は税制上の優遇措置が受けられるため、事業を継続する企業は青色申告で申告することが望ましいです。

これから法人を設立する方は、設立したタイミングで承認申請書を提出する必要がありますし、現在白色申告で申告している方は次の事業年度に入る前に承認申請書を提出しないと、青色申告で手続きできる事業年度が遅くなってしまいます。

青色申告の申請が承認された以後は、定められた方法に従って帳簿書類の備え付け等が必要となりますので、申請前に専門家に注意点等を確認してください。税務のお困りごとがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所までお気軽にご相談ください。

法人設立1年目はやらなければならない手続きや届け出が多く、滞りなく事業を営むためには決算・確定申告の事前準備も重要です。

本記事では、法人設立時に知っておくべき、決算・確定申告のポイントについて解説します。

会社の決算は何のために行うのか

会社の決算は、一定期間において生じた収入と支出を計算し、損益および資産・負債状況を確定させるための手続きです。

決算内容は経営者が会社の業績を確認する際の重要資料であるだけでなく、融資を受ける際に決算書の提出が求められることもありますので、会社を運営していく上で決算書の作成は不可欠です。

決算書を作成する期間は事業年度といい、個人事業主の事業年度は1月から12月までの暦年ベースと決まっています。

一方、法人は会社の設立登記を行った日が事業年度開始日となり、開始日から1年以内を事業年度として設定します。

会社は決算を行うことが義務付けられていますし、確定申告書は決算内容をベースに作成することになるので、決算書類の整理も大切な作業です。

決算と確定申告の違い

決算と確定申告は、似ているようで全くの別物です。

決算は事業年度の収益や財産状況を把握するために行うのに対し、確定申告は決算で算出した金額をベースに納税額を計算するために行います。

個人事業主は全員が暦年ベースで決算を行うので、所得税の確定申告期間は翌年2月16日から3月15日と統一されていますが、法人は決算期を基準に申告期限が設定されているので、申告時期は会社ごとに異なります。

たとえば3月決算の会社であれば、4月から3月までの事業内容を決算書にまとめ、事業年度終了日の翌日から2か月以内に法人税の申告書を提出しなければなりません。

法人税の納期限は申告期限と同日ですので、会社は税務署に対して確定申告書を提出するだけでなく、納税を完了させることも求められます。

税金の支払いが遅れてしまうと延滞税が課されますので、期限までに納税資金を確保してください。

出所:令和5年版 法人税のあらましと申告の手引(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2023/01.htm#a01

会社の決算書類を作成するまでのスケジュール

会社の決算書を作成するためには、日頃から記帳を行い、書類等を整理する必要があります。

記帳は日々行うこと

会社は、日々の業務で発生した売上や支出について、漏れなく記帳しなければなりません。

記帳漏れは決算書を正しく作成できなくなるだけでなく、申告内容の誤りにも繋がりますし、税務署に誤りを指摘されればペナルティが課されてしまいます。

個人事業主は事業規模が小さいので、取引内容をまとめて記帳できるケースもありますが、法人は事業規模が大きいことから、よりこまめに、定期的に記帳することが求められます。

記帳内容の確認・整理

決算時期に記帳内容を一斉に見返すのは膨大な時間を要しますので、記帳チェックは定期的に行ってください。

毎日多くの取引について記帳していれば、記載ミスが起る可能性や、従業員が領収書などを提出するのを忘れているケースも出てきます。

そのようなケースに対処するためにも、日頃から記帳内容を確認するだけでなく、必要に応じて会計ソフト等を活用して整理することも大切です。

また、令和6年1月からは電子データ保存が義務化され、帳簿書類の種類によっては書面保存が認められないものもありますので、電子データで保存するための準備も必要です。

決算書類の作成

決算期を迎えましたら、記帳した書類等を基にして決算書類を作成します。

会社が決算書類を作ることも可能ですが、顧問税理士がいる法人であれば決算書類は税理士に依頼することが多いです。

<中小企業が作成する主な決算書類>

  • 貸借対照表
  • 損益決算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表

確定申告書の提出・納付

決算書類に関しては、書類をベースに確定申告書を作成し税務署に申告書を提出することになります。

法人税の申告期限は決算日の2か月後となりますので、3月決算の法人であれば5月末が申告および納期限です。

法人税の申告手続きに税理士が関与している割合は非常に高く、令和4年度は89.5%です。

所得税の関与割合20.4%に比べると4.38倍になりますので、経営者が申告書を作成するケースの方が少数派です。

出所:令和4事務年度 国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/202310ntahyoka.pdf

また、会社が納める税金は法人税だけではありませんので、納税漏れにも気を付けてください。

税金の滞納は信用問題に発展し、経営上の不利益にも繋がるため、納税を要する税金の種類は事前に確認してください。

<法人が納める主な税金の種類>

  • 法人税
  • 消費税
  • 法人住民税
  • 地方法人税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税

法人初年度の決算で気を付けるべきポイント

法人を立ち上げた最初の年はやるべき手続きが多いため、確定申告書だけでなく、届出書などの提出漏れにも気を付けなければなりません。

記帳は初年度から適正にやらなければならない

会社を設立した当初は会社運営にも慣れていないため、ミスやトラブルが起きやすいですが、記帳関係は誤りがあってはなりません。

決算は前期の資産・負債を翌期に引き継いで計算等を行うことになるため、記帳誤りは当期だけでなく、翌期以降にも影響を及ぼします。

税務調査は3年分をまとめて調査対象にすることが多く、法人を設立してから3年を経過すると調査対象者として選定されやすくなります。

税務署は設立して間もない会社が決算誤りや申告ミスが多いことを認識していますので、税務署に狙われやすいことを前提とした対策が必要です。

届出書の提出漏れは厳禁

法人は色々な場所に関係書類を提出しなければならず、提出漏れがあれば罰則の対象になる場合や、優遇措置を受けられなくなるなどのデメリットを被ることになります。

経営者がやるべき行政手続きをすべて把握することは難しいので、専門家に手続きを代行してもらうなどの対処が必要です。

法人成りは調査対象になりやすい

個人事業主が法人として活動することを「法人成り」といいますが、法人成りは税務調査の対象となりやすいです。

個人と法人では課される税金の種類が違うため、法人成りをしたときは個人事業主としての活動を終了させることになります。

税務署の立場からすると、事業活動を終了したタイミングが税務調査を実施する最後の機会となりますので、法人に移行した後に個人事業主に対する調査が行われることもあります。

また、法人成りは個人から法人に資産を移すことになりますが、移転資産の種類によっては税務上においての譲渡所得が生じることも想定されます。

譲渡所得が発生すれば申告手続きが必要になりますし、法人への引継ぎに誤りがあれば個人・法人に対する税務調査で指摘されることになるので注意してください。

法人の決算書・申告書は税理士に依頼すべき

税務署は申告内容に誤りがある納税者だけでなく、申告内容に疑義がある納税者にも調査を実施します。

一般の方は専門家に比べ税知識が少ないことが多いので、関与税理士がいないだけで税務調査を受ける確率は上がります。

税理士に依頼する際には報酬費用が発生しますが、報酬額以上の節税アドバイスが受けられることもありますし、税務調査を受けるリスクを軽減できるメリットもあります。

法人の約90%は税理士に確定申告書の作成を依頼していますので、基本的には代行を依頼することが望ましいです。

まとめ

所得税の確定申告書は納税者が作成することも難しくありませんが、法人税の申告書は内容が複雑であり、ボリュームも多いので納税者が作成する難易度は高いです。

決算書関係の作成に多くの時間を費やしてしまうと、本業に支障をきたす恐れもありますし、申告内容に誤りがあれば税務署に指摘されるリスクも潜んでいます。

創業当初から税理士に依頼していれば、記帳ミスなどを未然に防ぐことができますので、まだ顧問税理士が決まっていない方は、ぜひ永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

「交際費」とは


交際費とは、事業をスムーズにおこなうために、取引先と飲食したり、贈答品を提供したりした場合に生じる支出です。

一般的に、交際費は取引先に関する支出と思われがちですが、社内の従業員に対する支出を含むことがあります。たとえば、「特定の部署の打ち上げ費用を会社が負担した場合」などがこれに該当します。詳細は、「福利厚生費に該当するケース」で解説します。

また、厳密に言うと、税務上は「交際費」ではなく「交際費等」として定義されていますが、この記事では便宜上「交際費」としています。

なお、国税庁は「交際費等」を以下のように定義していますので、ご確認ください。

「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。」

(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm

法人税法における「交際費」の具体的な範囲とは?


ここでは、「交際費」と「交際費に類似する支出」の範囲の違いについて解説をします。

「交際費に類似する支出」のなかには、社会の習慣や商取引上の慣習などの理由から「交際費として処理しなくてもよい」とされているものがあり、交際費とは明確に区別されています。

なぜ、このように規定されているかというと、交際費は経費として認められる(損金算入される)金額に、「限度額」が設けられているためです。

この限度額を超えた分は経費にできない(損金算入できない)ため、可能な限り「交際費以外」で処理をおこなうことで、「経費として認められる金額をトータルで増やす」ことができる可能性があります。

そのため、この記事では、「交際費として処理しなくてもよい」ものとして、福利厚生費・会議費・広告宣伝費・給与に該当するケースをとりあげ、詳しく解説をします。


福利厚生費に該当するケース

社内の運動会やレクリエーション、社員旅行など、従業員をいたわるための支出は交際費とはならず「福利厚生費」になります。

ただし、これには条件があります。それは、「従業員におおむね一律に」提供されているかどうかという点です。

具体的には、会社全体の忘年会における役員や従業員の飲⾷代は、「従業員におおむね一律に」提供されている支出のため、福利厚生費に該当します。一方、特定の部署や一部の社員の飲食代を会社が負担した場合は、交際費に該当することがあります。

会議費に該当するケース

・接待における「1人あたり5,000円以下」の飲食費

取引先の接待で飲食代を支払った場合でも、交際費から除外できるケースがあります。具体的には、支払金額を参加者数で割った数が5,000円以下である場合、つまり「1人あたりの飲食代が5,000円以下」のときがこれに該当します。

この場合、一般的には「会議費」で処理します。つまり、接待で「1人あたりの飲食代が5,000円以下」であれば、経費にすることができる(損金算入ができる)というわけです。

なお、これは特例のため、以下の事項が記載された書類を保存する必要があります。

飲食等のあった年月日
飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
飲食等に参加した者の数
その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm


その他、注意点としては、社内のメンバーによる飲食代である「社内飲食費」は、この特例の対象外となっている点です。そのため、たとえば、社内の特定の部署の打ち上げ費用が1人あたり5,000円以下であっても、交際費から除外することはできません。

会議のために必要な費用

会議を目的とする支出は、それが飲食などに関連したものであっても、交際費とする必要はありません。

たとえば、会議や商談で、お菓子やお茶、お弁当などを提供した場合は「会議費」として処理します。ここでのポイントは、会議に関連して「通常要する費用」であるかどうかという点です。

そのため、飲酒をしていたり飲食代が高額であったりした場合は、会議のための支出として「一般的に妥当かどうか」を慎重に判断する必要があるでしょう。

なお、会議の場所については特に制限がないため、ホテルなどであっても、会議の実態があれば会議費で処理することが可能です。

広告宣伝費に該当するケース

取引先に贈答品を提供する場合、基本的には「交際費」となります。しかし、宣伝を目的とした支出は「広告宣伝費」として計上することが可能です。具体的には、カレンダー・手帳・手ぬぐいなどを取引先に提供する場合がこれに該当します。

ここでのポイントは、贈答品などの提供が「不特定多数の一般消費者」に対するものかどうかという点です。一般消費者とは、物やサービスを最終的に消費する人をいいます。 そのため、たとえば、医薬品メーカーが医師に対して贈答品を提供するケースは、不特定多数の一般消費者に対する支出ではないため、広告宣伝費にはならないと考えられます。

給与に該当するケース

従業員の「プライベートの飲食代」を会社が支払った場合、交際費や福利厚生費ではなく、「給与」として処理します。この場合、法人としては、税務上経費にできます(損金算入)が、従業員は通常の給与と同様に所得税が課税されます。

役員のプライベートな飲食代は、役員への給与となります。役員の給与は、毎月定額であることなどの税務上の厳しい規制があるため、注意が必要です。

万一、「交際費」として計上していた費用が、税務調査などで「役員のプライベートな支出」と判断された場合、法人の損金に算入できないうえ、役員個人の所得税も課されるなど、様々な問題が生じます。そのため、役員の個人的な支出の扱いには、特に注意をしましょう。


その他の注意点

上記のほか、取材のための座談会や、情報収集のために一般的に必要とされる飲食代などは、「交際費」にはならず「取材費」などで処理します。この場合、税務上も経費にする(損金算入する)ことが可能です。


「交際費」を損金算入できる会社の規模と金額


中小企業は「800万円までの全額」を経費にできる

「交際費」の規定は、法人の規模に応じて以下の3段階に設定されており、中小企業(資本金が1億円以下の法人)は「800万円までの全額を、経費にすることができる」という特例が設けられています。


多くの中小企業においては、交際費を800万円も計上しないことが多いので、基本的には交際費の全額を経費にする(損金算入する)ことが可能といえるでしょう。

なお、「交際費」は税務上、原則として「全額」を損金に算入することができない規定となっています。つまり、すべて経費にすることができないわけです。

しかし、交際費は事業をスムーズにおこなうために必要な支出であるため、例外として、中小企業に対しては「特例」が設けられているという点を押さえておくとよいでしょう。


個人事業主と交際費

個人事業主は、交際費を経費として計上する上で、法人のような「上限」がありません。しかし、上限がないとはいえ、すべてのケースにおいて交際費が認められるわけではありません。

個人事業主が交際費を計上する場合は、「事業に関連した支出であるか」、「その支出が利益や事業の円滑化につながるか」などが重要です。

なお、個人事業主の経費全般についてはこちらで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

「個人事業主が経費にできるものとは?判断基準を解説」


まとめ


この記事では、交際費の範囲や損金算入について解説しました。

交際費で特に重要なのは、「交際費の具体的な範囲」を把握し、「交際費として処理しなくてもよい」と認められているものについては、交際費以外で処理をおこなうことです。

また、中小企業は、「800万円までの全額」を、交際費として経費にする(損金算入する)ことができるという点も重要です。

事業をスムーズにすすめ、売上を拡大するためには、「交際費」が不可欠なケースも多いと考えられます。一方で、交際費の規定は複雑で、なかなか理解が難しいというのも事実です。

また、交際費は税務調査で必ずといっていいほど調査対象となる項目ですので、不安を抱える企業も多いでしょう。そのため、交際費全般についてご不安な点がある場合は、神戸市東灘区の永安栄棟 公認会計士・税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。