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税理士は確定申告書の作成だけでなく、税務調査に立ち会うことができるため、調査対策の視点から税理士を選ぶことも大切です。

税理士選びに失敗してしまうと上手く節税ができないだけでなく、調査対象者として税務署から狙われやすくなるので気を付けてください。

本記事では、税務調査対策として税理士を活用するメリットと、税理士に依頼する際に知っておくべきポイントをご紹介します。

事業者は必ず税理士に依頼しなければいけないのか

確定申告書は基本的に納税者が作成し、提出するものなので、納税者自身で申告手続きを行える場合には税理士に依頼する必要はありません。

しかし、事業者は確定申告書を年に1度しか作成しませんし、税制改正が行われれば変更点を確認した上で申告することが求められます。

納税者と税理士を比較した場合、税に関する知識は税理士の方が豊富であり、税理士は依頼を受けている件数だけ申告書を作成していますので、申告手続きにも慣れています。

税務調査に関しても、調査経験が複数回ある人は限られますので、ほとんどの事業者は調査対応に慣れることはありません。

税務調査の連絡は突然入るため、連絡を受けてから調査対策をするのでは遅いです。

調査対応のしかたを間違えてしまうと、追徴税額が増えるなどのリスクが上がりますが、関与税理士がいれば事前に調査対策ができますので、調査自体を回避できるようになります。

税務署から調査の連絡が入るパターン

税務調査は脱税を試みた人(法人)に対して実施されるイメージがあるかもしれませんが、一般の方でも調査対象者として選ばれますので注意してください。

税務署から連絡が入るパターンは3種類あり、申告誤りがあれば本税だけでなく、加算税・延滞税といった附帯税も支払うことになります。

  • 実地調査
  • 実地調査以外の調査
  • 行政指導

出所:税務手続について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/02.pdf

「実地調査」は調査担当者が自宅・事務所に訪れる調査

「実地調査」は、調査担当者が自宅や事務所を訪問し、提出した申告書の内容や申告書を作成する基となった資料等を調べるために実施します。

一般的な税務調査は実地調査を指すことが多く、実地調査は1日かけて調査することがほとんどで、法人に対する税務調査については日をまたぐことも珍しくありません。

申告内容に誤りが無かったとしても、調査対応で最低1日は拘束されますし、調査担当者からの質問に回答できないと、計上した経費や特例適用が否認されるなどリスクが伴います。

また、仮装隠蔽行為があったとみなされた場合、重加算税が適用される点にも注意しなければなりません。

出所:加算税の概要(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf

「実地調査以外の調査」は電話や税務署内で実施する調査

「実地調査以外の調査」は、電話や税務署で申告誤りの指摘を行う調査手法です。

実地調査は申告書の内容をすべて確認するのに対し、実地調査以外の調査では申告誤りや申告内容の疑義がある部分だけを調査します。

調査で拘束される時間は実地調査よりも短く、調査担当者の疑義を解消できれば追徴税額を支払わずに済むケースもあります。

一方で、実地調査以外の調査でも申告誤りが指摘されれば、実地調査と同様、本税に加えて加算税・延滞税を納めなければなりません。

また、実地調査以外の調査で新たな不明点が判明した際には、実地調査に移行して調査することもあるため、適切な対応が求められます。

「行政指導」納税者に確認を促す調査

行政指導は税務署が納税者に対して申告内容の確認を促し、誤りがあった際は自主的な修正をさせることを目的とした指導です。

実地調査や実地調査以外の調査と違い、法律上の税務調査ではないため、行政指導により提出した申告書は自主申告扱いとなります。

自主的な修正申告や期限後申告は、適用される加算税のペナルティが軽減されるため、行政指導の段階で申告書の内容を正せば、余分に納める税金を抑えることができます。

また、行政指導は自主的に申告内容の確認を促すものなので、申告内容に誤りが無ければ修正申告等を提出する必要はありません。

ただし、税務署が申告内容の修正等を要すると判断した場合には、実地調査や実地調査以外の調査に切り替えて、調査が行われる可能性があるため、行政指導の連絡が入ったときも適切な対応が必要です。

税務調査対策として税理士に依頼するメリット

税理士を付けるメリットは、確定申告書の代理作成や節税だけでなく、税務調査に関するメリットも存在します。

税務調査を受ける確率が下がる

税務署は無作為に調査対象者を抽出しているのではなく、調査する条件が揃っている納税者を中心に調査を実施しますので、狙われやすい事業者は対策が不可欠です。

年間で税務調査を受ける確率は税金の種類によって異なり、個人事業主(所得税)は概ね1%、法人(法人税・消費税)は3%~4%程度です。

税務署の調査担当者は、調査を実施したことによる実績が求められているため、増差税額が発生する可能性が高い事案ほど調査対象者として選定しやすい傾向にあります。

納税者が作成した申告書は、税理士が作成したものより申告内容に誤りがある可能性が高いため、税理士関与が無い申告書の方が税務調査を受けやすいです。

一方、税理士が関与している申告書は、税務署から一定の信用はされていますので、税理士を付けているだけで、調査を受ける確率は下がります。

出所:令和4事務年度国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/index.html

税務調査に対する不安を払拭できる

納税者が関与税理士を付けている場合、税務署は関与税理士を通じて納税者に連絡をしなければなりません。

したがって、関与税理士を付ければ税務署から直接連絡が入ることは無くなりますし、税理士が間に入って税務署の担当者と税務調査に関する話し合いをしますので、税務署のペースで調査が展開されることを防げます。

税務調査は納税者以外の人が立ち会うことはできませんが、納税者から委任を受けた税理士については立ち会いが認められています。

初めて税務調査を受ける納税者は、脱税行為をしていなくても調査について不安になりますが、税理士がいれば不安を軽減できますし、調査に関する疑問点を事前に税理士へ聞けるのも関与税理士を付けるメリットです。

税務署からの指摘に対して適切な対処を行える

個別判断を要する事項は適否が分かれやすく、納税者によって経費計上の可否や特例制度の適否が変わることは珍しくありません。

税務署は税務調査で白を黒にすることはしませんが、白黒はっきりしていない点を黒と認定し、申告誤りとして指摘することはあります。

納税者が税知識を十分に有していない場合、調査担当者からの指摘に対して反論することが難しく、根拠のある意見を主張できないと黒として認定されてしまう可能性が高いです。

その点、税理士は税務署の調査担当者と同等、またはそれ以上の知識・経験を有していますので、調査担当者が黒の疑いを向けたとしても、白である根拠を法令や判例等を交えて説明することができます。

税務署は黒と断言できないものを無理やり黒認定することはしませんので、見解が分かれる事項が多いケースほど、税理士の存在が活きてきます。

税務調査に強い税理士の見つけ方

税務署は牽制目的で税務調査を実施することがあるため、確定申告書を適正に作成したとしても、税務調査を100%回避することは困難です。

税務調査を受けないことが望ましいですが、税務調査が入ったとしても申告誤りを指摘されなければ、追徴課税を受けることはありません。

税務調査に強い税理士は、調査対象になったことも想定して対策を講じますので、調査を受けないことだけをアピールしている税理士には注意してください。

税理士の中には税務署側に傾いた対応をする方もいますので、税務署の調査担当者の要求を鵜呑みにせず、納税者の味方として行動する税理士に依頼してください。

税務調査リスクを下げたい方は税理士を活用すること

税務調査を可能な限り回避するためには、申告書を正しく作成することが最も重要です。

納税者が正しい申告書を作成するのは大変ですので、調査リスクを軽減する観点から税理士に依頼することも検討してください。

税務調査は一つの計算ミスが原因で実施されることもありますし、税理士が付いていない申告書は、他に誤りがないか念入りに調べられます。

全国には数多くの税理士事務所が存在しますが、事務所によって得意・不得意の分野は違いますし、税理士自身の能力にも差があります。 毎年申告する事業者は、顧問税理士の選び方が経営にも影響してきますので、信頼できる税理士を見つけていただき、事業に専念できる環境を整えてください。

税務でお困りごとがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へお問い合わせください。

令和6年度税制改正において交際費等の見直しが行われ、交際費等から除外される飲食費の基準額が、1人当たり5,000円から1万円に引き上げられました。

本記事では、交際費等から除かれる飲食費の金額基準が変更した経緯と、交際費等および飲食費に該当する範囲、そして損金計上する際の注意点について解説します。

令和6年度税制改正における交際費等の変更点

法人税では、接待交際費として支出した費用のうち、一定額以下の飲食費は交際費等の範囲から除かれます。

除外対象となる飲食費は、従来1人当たり5,000円以下とされていましたが、令和6年(2024年)4月1日以後からは基準額が1万円以下になります。

基準額の引き上げは、昨今の会議費の実態等を踏まえたものとされていますが、それ以外にも物価上昇による飲食費の高騰や、従来の5,000円の基準額は金額的に低いとの意見があったことも要因です。

令和6年度税制改正では、飲食費の基準額変更以外にも、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が3年延長されました。

法人が支出した交際費等は原則損金不算入ですが、資本金の額等が1億円超から100億円以下の法人は、接待飲食費の50%の損金算入が認められています。 中小法人(資本金の額等が1億円以下の法人)については、「接待飲食費の50%」または、「800万円までの交際費等の全額」のいずれかを選択できるため、交際費等を800万円以内に抑えれば交際費等を全額損金として算入することが可能です。

出所:令和6年度税制改正(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei24.html

交際費等の範囲

交際費等は、交際費や接待費などの費用のうち、得意先や仕入先等の事業関係者などに対する接待・供応・慰安・贈答、その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。

慰安のための支出であったとしても、専ら従業員のために行われる旅行等において通常生じる費用は、交際費等ではなく福利厚生費に該当します。

また、飲食その他これに類する行為のために要する費用のうち、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が、1万円以下(令和6年3月31日までは5,000円以下)である場合も交際費等から除かれます。

(専ら法人役員や従業員、これらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)

飲食代として支払った費用が1人当たり1万円以内であれば全額を損金に算入できますし、1万円を超えた場合には、交際費等として損金算入の判定を行うことになります。

得意先や仕入先、事業関係等に対する支出のうち、次の性質があるものは交際費等には含まれません。

<交際費等には該当しない支出>

  • 寄附金
  • 値引きおよび割戻し
  • 広告宣伝費
  • 福利厚生費
  • 給与等

寄附金と交際費等のどちらに該当するかは、個々の実態により判定することになりますが、金銭でした贈与は原則寄附金であり、社会事業団体や政治団体に対する拠出金や、神社の祭礼等の寄贈金についても交際費等には含まれません。 また、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するものなど、広告宣伝費の性質を有する支出も交際費等には該当しません。

交際費等から除外される飲食費の書類の保存要件

交際費等の範囲から「1人当たり1万円以下の飲食費」を除外する場合、次の事項を記載した書類を保存しなければなりません。

<記載事項>

  • 飲食等のあった年月日
  • 飲食等に参加した得意先、仕入先、その他事業に関係のある者等の氏名(名称)およびその関係
  • 飲食等に参加した者の数
  • 費用の金額、飲食店・料理店等の名称・所在地
  • その他参考となるべき事項

店舗を有しない飲食店である等を理由に、名称や所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名(名称)、住所(居所)または本店(主たる事務所)の所在地を記載しなければなりません。

法人税の申告をする際は、別表十五「交際費等の損金算入に関する明細書」で損金算入する額を計算します。

出所:交際費等の損金算入に関する明細書(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/15.pdf

1人当たり1万円以下の飲食費の判定

交際費等の範囲から除かれる飲食費は、次の算式で計算した1人当たりの金額が1万円以下の費用が対象です。

<1人当たりの飲食費の算定方法>

飲食等のために要する費用として支出する金額÷飲食等の参加者数=1人当たりの飲食費の金額

1人当たりの飲食費の金額は、単純に飲食等に参加した人数で除して計算した金額で判定します。

得意先等が飲食店等において、個々にどの程度の飲食等を行ったかは、1人当たりの飲食代を計算する上では関係ありません。

1人当たりの金額が1万円を超えた場合、その費用のすべてが交際費等に該当することになり、1万円を超えた部分だけが交際費等に該当する控除方式ではないため、交際費等に該当しない範囲で飲食代を支出したいときは、1人当たりの金額が1万円を超えないよう注意してください。

支出する費用に係る消費税等の扱い

「飲食等のために要する費用として支出する金額」に係る消費税等の額は、法人が適用している消費税の経費方式によって扱いが異なります。

法人が税込経理方式を適用している場合、支出する金額に消費税等の額を含めます。

一方、税抜経理方式を適用している法人については、消費税を支出する金額に含めないで飲食費1人当たりの金額を計算しなければなりません。

インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者以外の者から課税仕入れをする場合には、原則仕入税額控除を適用できなくなりました。

節税の観点からすると、相手方が適格請求書発行事業者に該当するかも関係してきますので、接待などのために飲食代を支出する際は、法人税だけでなく消費税の取扱いにも気を付けてください。

交際費等から除外される飲食費の範囲

税務調査では交際費等に関係する支出は必ずチェックされますので、交際費等から除外される飲食費の範囲を正しく把握することが大切です。

「飲食等のために要する費用」とは

飲食等のために要する費用は、飲食代だけでなく、飲食等のためのテーブルチャージ料やサービス料など、飲食店等に対して直接支払うものが対象です。

飲食等のために飲食店等に対し、通常直接支払わない費用は、飲食等のために要する費用には該当しません。

たとえば、得意先等を飲食店等へ送迎するための送迎費は、接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用であり、飲食等のために要する費用に該当しないことから交際費等として扱います。

「飲食その他これに類する行為」に該当するもの

「飲食その他これに類する行為」のために要する費用には、自社の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」だけでなく、得意先等の業務遂行や行事開催に際して差入れた弁当の代金なども含まれます。

飲食費に該当する弁当代は、得意先等において差入れ後、相応の時間内に飲食されることが想定されるものを前提とするため、飲食物の詰め合わせの贈答など、中元や歳暮を渡すのと変わらないものは「飲食その他これに類する行為」には含まれません。

一方で、飲食店等での飲食後に提供されている飲食物の「お土産代」のうち、代金を飲食店等へ支払うものについては、相応の時間内に飲食されることが想定されるかに関係なく、飲食に類する行為に該当するものとして飲食等のために要する費用となります。

まとめ

交際費等から除外される飲食費の基準額は引き上げとなりましたが、飲食費に該当するかの判定方法は従来と同じです。

基準額が5,000円から1万円に拡大したことは納税者にとってメリットがある変更ですが、税制改正が行われた部分は税務調査でチェックされやすいので注意してください。

接待交際費は税金対策として活用しやすい半面、損金算入が否認されることが多い項目でもあります。

中途半端な対策はリスクが伴いますので、税金対策・調査対策は専門家に相談の上、事業者ごとに適した手段を用いることを推奨します。

税務でお困りごとがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

「交際費」とは


交際費とは、事業をスムーズにおこなうために、取引先と飲食したり、贈答品を提供したりした場合に生じる支出です。

一般的に、交際費は取引先に関する支出と思われがちですが、社内の従業員に対する支出を含むことがあります。たとえば、「特定の部署の打ち上げ費用を会社が負担した場合」などがこれに該当します。詳細は、「福利厚生費に該当するケース」で解説します。

また、厳密に言うと、税務上は「交際費」ではなく「交際費等」として定義されていますが、この記事では便宜上「交際費」としています。

なお、国税庁は「交際費等」を以下のように定義していますので、ご確認ください。

「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。」

(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm

法人税法における「交際費」の具体的な範囲とは?


ここでは、「交際費」と「交際費に類似する支出」の範囲の違いについて解説をします。

「交際費に類似する支出」のなかには、社会の習慣や商取引上の慣習などの理由から「交際費として処理しなくてもよい」とされているものがあり、交際費とは明確に区別されています。

なぜ、このように規定されているかというと、交際費は経費として認められる(損金算入される)金額に、「限度額」が設けられているためです。

この限度額を超えた分は経費にできない(損金算入できない)ため、可能な限り「交際費以外」で処理をおこなうことで、「経費として認められる金額をトータルで増やす」ことができる可能性があります。

そのため、この記事では、「交際費として処理しなくてもよい」ものとして、福利厚生費・会議費・広告宣伝費・給与に該当するケースをとりあげ、詳しく解説をします。


福利厚生費に該当するケース

社内の運動会やレクリエーション、社員旅行など、従業員をいたわるための支出は交際費とはならず「福利厚生費」になります。

ただし、これには条件があります。それは、「従業員におおむね一律に」提供されているかどうかという点です。

具体的には、会社全体の忘年会における役員や従業員の飲⾷代は、「従業員におおむね一律に」提供されている支出のため、福利厚生費に該当します。一方、特定の部署や一部の社員の飲食代を会社が負担した場合は、交際費に該当することがあります。

会議費に該当するケース

・接待における「1人あたり5,000円以下」の飲食費

取引先の接待で飲食代を支払った場合でも、交際費から除外できるケースがあります。具体的には、支払金額を参加者数で割った数が5,000円以下である場合、つまり「1人あたりの飲食代が5,000円以下」のときがこれに該当します。

この場合、一般的には「会議費」で処理します。つまり、接待で「1人あたりの飲食代が5,000円以下」であれば、経費にすることができる(損金算入ができる)というわけです。

なお、これは特例のため、以下の事項が記載された書類を保存する必要があります。

飲食等のあった年月日
飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
飲食等に参加した者の数
その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm


その他、注意点としては、社内のメンバーによる飲食代である「社内飲食費」は、この特例の対象外となっている点です。そのため、たとえば、社内の特定の部署の打ち上げ費用が1人あたり5,000円以下であっても、交際費から除外することはできません。

会議のために必要な費用

会議を目的とする支出は、それが飲食などに関連したものであっても、交際費とする必要はありません。

たとえば、会議や商談で、お菓子やお茶、お弁当などを提供した場合は「会議費」として処理します。ここでのポイントは、会議に関連して「通常要する費用」であるかどうかという点です。

そのため、飲酒をしていたり飲食代が高額であったりした場合は、会議のための支出として「一般的に妥当かどうか」を慎重に判断する必要があるでしょう。

なお、会議の場所については特に制限がないため、ホテルなどであっても、会議の実態があれば会議費で処理することが可能です。

広告宣伝費に該当するケース

取引先に贈答品を提供する場合、基本的には「交際費」となります。しかし、宣伝を目的とした支出は「広告宣伝費」として計上することが可能です。具体的には、カレンダー・手帳・手ぬぐいなどを取引先に提供する場合がこれに該当します。

ここでのポイントは、贈答品などの提供が「不特定多数の一般消費者」に対するものかどうかという点です。一般消費者とは、物やサービスを最終的に消費する人をいいます。 そのため、たとえば、医薬品メーカーが医師に対して贈答品を提供するケースは、不特定多数の一般消費者に対する支出ではないため、広告宣伝費にはならないと考えられます。

給与に該当するケース

従業員の「プライベートの飲食代」を会社が支払った場合、交際費や福利厚生費ではなく、「給与」として処理します。この場合、法人としては、税務上経費にできます(損金算入)が、従業員は通常の給与と同様に所得税が課税されます。

役員のプライベートな飲食代は、役員への給与となります。役員の給与は、毎月定額であることなどの税務上の厳しい規制があるため、注意が必要です。

万一、「交際費」として計上していた費用が、税務調査などで「役員のプライベートな支出」と判断された場合、法人の損金に算入できないうえ、役員個人の所得税も課されるなど、様々な問題が生じます。そのため、役員の個人的な支出の扱いには、特に注意をしましょう。


その他の注意点

上記のほか、取材のための座談会や、情報収集のために一般的に必要とされる飲食代などは、「交際費」にはならず「取材費」などで処理します。この場合、税務上も経費にする(損金算入する)ことが可能です。


「交際費」を損金算入できる会社の規模と金額


中小企業は「800万円までの全額」を経費にできる

「交際費」の規定は、法人の規模に応じて以下の3段階に設定されており、中小企業(資本金が1億円以下の法人)は「800万円までの全額を、経費にすることができる」という特例が設けられています。


多くの中小企業においては、交際費を800万円も計上しないことが多いので、基本的には交際費の全額を経費にする(損金算入する)ことが可能といえるでしょう。

なお、「交際費」は税務上、原則として「全額」を損金に算入することができない規定となっています。つまり、すべて経費にすることができないわけです。

しかし、交際費は事業をスムーズにおこなうために必要な支出であるため、例外として、中小企業に対しては「特例」が設けられているという点を押さえておくとよいでしょう。


個人事業主と交際費

個人事業主は、交際費を経費として計上する上で、法人のような「上限」がありません。しかし、上限がないとはいえ、すべてのケースにおいて交際費が認められるわけではありません。

個人事業主が交際費を計上する場合は、「事業に関連した支出であるか」、「その支出が利益や事業の円滑化につながるか」などが重要です。

なお、個人事業主の経費全般についてはこちらで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

「個人事業主が経費にできるものとは?判断基準を解説」


まとめ


この記事では、交際費の範囲や損金算入について解説しました。

交際費で特に重要なのは、「交際費の具体的な範囲」を把握し、「交際費として処理しなくてもよい」と認められているものについては、交際費以外で処理をおこなうことです。

また、中小企業は、「800万円までの全額」を、交際費として経費にする(損金算入する)ことができるという点も重要です。

事業をスムーズにすすめ、売上を拡大するためには、「交際費」が不可欠なケースも多いと考えられます。一方で、交際費の規定は複雑で、なかなか理解が難しいというのも事実です。

また、交際費は税務調査で必ずといっていいほど調査対象となる項目ですので、不安を抱える企業も多いでしょう。そのため、交際費全般についてご不安な点がある場合は、神戸市東灘区の永安栄棟 公認会計士・税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。