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法人税を節税する方法は数多く存在しますが、同じ節税手段を用いたとしても、事業規模や経営状況などによって得られる効果は異なります。

効果的な節税手段も、存在を知らなければ活用することはできませんので、今回は中小企業が適用できる法人税の主要な節税テクニックをご紹介します。

法人税の節税対策で勘違いしやすいポイント

法人税を節税できたとしても、節税するためのコストが大きければ意味がありませんし、違法な手段による節税は税務署に指摘されるので気を付けてください。

節税のために余分な支出を増やすのは本末転倒

企業が節税を行うのは、手元に少しでもお金を残すためです。

法人税は利益(所得金額)に対して課される税金なので、基本的には利益を圧縮して課税対象金額を減らす対策を講じます。

利益を抑えるためには、売上を減らす方法と経費を増やす方法がありますが、売上を減らす行為は事業規模の縮小や経営難を引き起こすリスクが伴います。

一方、経費の活用は利益を抑えつつ売上を伸ばすことに繋げられるため、支出額以上の効果も期待できますが、支出自体は資産を減らす行為なので、節税のために浪費してはいけません。

「節税手段」は合法。「脱税手段」は違法。

節税と脱税の決定的な違いは、合法的な手段を用いているか否かです。

節税は法的に問題ない手段を用いて納税額を抑える方法をいい、節税したことで法人税の納税額がゼロになったとしても、税務署に指摘されることはありません。

それに対し、脱税は売上除外や経費の水増しなど、法律で認められない方法を用いて納税額を減らす方法をいいます。

脱税行為は違法ですので、税務調査で指摘されれば追徴課税を受けますし、脱税額が高額であれば逮捕されることもあります。

SNS等で拡散されている節税に関する情報の中には、脱税と疑われるものも少なくありませんので、節税と脱税を履き違えないよう注意してください。

中小企業が活用できる法人税の節税手段10選

法人税の節税手段は、どの企業も活用できるものもあれば、中小企業にしか適用できない税制優遇措置を用いた手段も存在します。

役員報酬の見直し

役員報酬(役員給与)は原則損金不算入ですが、次のいずれかに該当する役員報酬は損金として算入することが認められています。

報酬を受け取った役員にしては所得税が課されることになりますが、法人税と所得税は双方とも累進課税が適用されているため、課税対象金額を分散することで適用税率を下げる効果も期待できます。

<損金算入可能な役員報酬の種類>

名称概要
定期同額給与一定期間ごとに同額で支払われる役員報酬
事前確定届出給与所定の時期に支払うことを届け出た役員報酬
業績連動給与企業の業績指標などに応じて支払われる役員報酬

接待交際費の活用

交際費や接待費、機密費などの交際費等は、一定額まで損金算入が認められています。

法人が得意先や仕入先、事業関係者などに対して接待、供応、慰安、贈答などを行うために支出するものは交際費等に該当します。

下記のフローチャートで中小法人等に該当する企業については、接待交際費の50%または800万円のいずれか高い金額まで損金算入が可能です。

<中小法人等の判定>

出所:令和6年版 中小企業者の判定等フロー(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2024/pdf/03.pdf

福利厚生の充実

福利厚生は従業員の満足度が向上するだけでなく、従業員を採用する際の強み(ウリ)にもなるため、支出に節税以外の効果を持たせることができます。

一定の基準に従って支給する結婚祝や出産祝、香典などについては、従業員だけでなく、従業員の家族に対するものも福利厚生費として計上できます。

過剰在庫の処分

企業が抱えている不要な在庫は、処分するだけでも節税効果が得られます。

売却金額が原価よりも低ければ売却損が損金となりますし、廃棄するための費用は除却損として計上できます。

なお、固定資産を廃棄して損金に算入するときは、廃棄したことを証明する資料を保存する必要があります。

貸倒引当金の計上

企業は、将来的に貸し倒れが発生することを見込んで、貸倒引当金を設定する選択肢もあります。

貸倒引当金は損金に算入できるだけでなく、計上する際に支出が伴わないため、手元の資産を減らすことなく利益を抑えることができるメリットがあります。

損金算入できる貸倒引当金には限度額があるため、大きな節税効果は期待できませんが、回収不能の売掛金が生じるリスクに備えながら節税することが可能です。

減価償却資産の一括計上

減価償却資産は、原則取得費を一括で損金算入することはできませんが、青色申告を行っている中小企業者等については、30万円未満の減価償却資産(少額減価償却資産)を一括で損金に算入できます。

事業年度で一括計上する少額減価償却資産の取得価額の合計が300万円を超える場合には、300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額が限度となります。

また、令和4年4月1日からは、少額減価償却資産から貸付用(主要な事業として行われるものを除く)として利用するものは対象外となるので注意が必要です。

設備投資における税制優遇措置の活用

設備投資による支出は、減価償却費などとして損金に算入できますが、中小企業が設備投資を行った場合、税制優遇措置を活用した節税が行えます。

青色申告者に該当する中小企業者が設備投資を行った際に適用できる「中小企業投資促進税制」は、対象設備を事業用に供した事業年度において、特別償却または税額控除の適用を認める制度です。

特別償却と税額控除は、いずれかを選択して適用することになりますが、どちらを用いたとしても、一定の節税効果は得られます。

出所:中小企業投資促進税制(中小企業庁)

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/download/tyuusyoukigyoutousisokusinzeisei_summary.pdf

法人名義で車を所有する

車を法人名義で取得した場合、原則損金に算入できます。

対象となるのは車の取得費だけでなく、ガソリン代や保険料などの維持管理費、高速料金も含まれます。

個人がプライベートで利用している車を法人名義にしただけでは損金に算入できませんが、社用車として活用する車については、法人名義で購入することを検討してください。

経営セーフティ共済の活用

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、中小企業の連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度で、掛金を損金に算入することが認められています。

掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで、無担保・無保証人で借入れできるため、取引先が倒産して資金繰りが困窮するリスクに備えることができます。

欠損金繰越控除制度の活用

企業が青色申告で法人税の申告書を提出している場合、事業年度に生じた赤字(欠損金)を最大10年繰り越すことが可能です。

中小法人等については全額を損金に算入できるため、赤字が生じたとしても、その赤字を翌年以降の利益と相殺することができます。

なお、欠損金の繰越控除を適用する法人は、欠損金額が生じた事業年度だけでなく、翌事業年度以降も青色申告による確定申告書の提出が必要になるので注意してください。

まとめ

最適な節税手段は企業ごとに違うため、法人税を最大限に節税するためにはオーダーメイドでの対策が必要です。

中小企業に対する税制上の優遇措置はいくつも存在しますが、適用期間が限られているものや、適用要件が厳しい制度も多いので注意してください。

税務署に特例制度の適用誤りが指摘されれば、税金を余分に支払うことになりますので、現状よりも支払う税金を抑えたい方は専門家に相談し、計画的に対策を講じることを推奨します。

何かお困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

また、弊所のサービスについては、以下よりチェックしてみてください。

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日本政策金融公庫は、開業資金や事業運転資金の調達先として検討すべき金融機関です。

銀行で融資を受けるのが難しい事業者でも、日本政策金融公庫であれば資金を調達することができますが、融資審査を通過するためには事前準備が不可欠です。

そこで本記事では、日本政策金融公庫の融資条件と、審査を通るために押さえておくべきポイントについて解説します。

日本政策金融公庫が資金調達先としてオススメされる理由

日本政策金融公庫は一般的に馴染みの薄い金融機関ですが、事業開始時の資金調達先として最初に候補に挙がるほど魅力がある金融機関です。

開業・創業前後でも融資を受けやすい

日本政策金融公庫は、一般の金融機関が行う金融を補完することを目的とした、政府系金融機関です。

一般の金融機関はビジネスとしてお金を貸し付けますので、返済が滞る可能性が高い事業者には融資をしませんし、返済リスクが高いほど設定される利率は上がります。

それに対し、日本政策金融公庫は融資が受けにくいとされる、開業・創業前後の事業者に対しても積極的に融資をしていますので、銀行の融資審査を通過するのが難しい方でも資金を調達することができます。

出所:日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/n/finance/first/index.html

担保・保証人が必須条件ではない

銀行の融資を受ける際に高いハードルとなるのが、担保・保証人の存在です。

担保や保証人は、返済が滞った際のリスクヘッジとしての役割があるため、融資金額が大きくなるほど、担保提供や保証人を用意しないと融資を受けることが難しくなります。

日本政策金融公庫の融資制度にも、担保や保証人が必要となるものもありますが、「新規開業資金」などの融資制度は担保・保証人が必須条件となっていないため、資力が乏しい創業当初でも融資の申し込みを行えます。

設定される利率が低い

日本政策金融公庫の融資制度の利率は、全体的に低く設定されているのが特徴です。

融資を受けた際に設定される利率が高いと、トータルの返済額も大きくなるため、資金調達は融資額だけでなく、低利率で借りることも大切です。

創業当初は売上実績がありませんし、経営の見通しも不透明であることから、融資元は返済リスクを高く見積もり、利率を高く設定する傾向にあります。

しかし、日本政策金融公庫についてはベースとなる利率が低いため、返済額を抑えつつ事業資金を確保できます。

日本政策金融公庫の融資審査は厳しいのか

融資には必ず審査がありますし、日本政策金融公庫の融資の申し込みをした人全員が資金調達できるわけではないため、申し込みをする前に審査の難易度を確認してください。

民間の金融機関とは審査の重点項目が異なる

日本政策金融公庫は、銀行等で融資を受けるのが難しい方を対象に貸し付けることが多いことから、審査時に重要視するポイントも一般の金融機関とは異なります。

日本政策金融公庫が重要視するのは創業計画書(事業計画書)の内容で、創業計画書の内容に不備や矛盾点があると、審査に通過するのが厳しくなります。

反対に、事業実績がない事業者であったとしても、創業計画書や事業計画書の内容が充実し、将来性があると判断された場合には審査を通過できますので、創業計画書を綿密に練り上げることが大切です。

返済見込みがない事業者は審査に落ちる

日本政策金融公庫は、創業当初や年齢等で資金調達が難しいとされる方にも融資をしていますが、審査時には返済能力の有無を確認しますし、返済見込みがない事業者に対して融資をすることはありません。

創業前の時点では返済能力を示すことは難しいですが、事業内容に期待できるケースであれば融資をしてくれます。

しかし、事業計画が杜撰(ずさん)だと返済能力が無いと判断され、審査に落ちますので注意してください。

個人事業主でも融資を受けることができる

日本政策金融公庫の融資制度は個人事業主でも申し込みを行い、融資を受けることができます。

一般的に個人事業主は法人よりも信用力が低いため、資金調達のハードルが高いとされています。

しかし、日本政策金融公庫の審査条件は基本的に個人事業主と法人は同等なので、個人事業主であることを理由として、審査に落ちることはありません。

再審査の申し込みは半年後

創業当初で資金調達に失敗すると事業を開始できなくなる可能性や、運転資金が枯渇するリスクがあります。

日本政策金融公庫の融資審査に落ちた場合、原則として半年間は再審査の申し込みができません。

融資申込のハードルが低いことと、融資の受けやすさはイコールではありませんので、事前に専門家へ相談するなどして、最初の申し込みで融資を通過できるよう対策を講じることが大切です。

日本政策金融公庫の審査を通過するために押さえておくべきポイント

日本政策金融公庫の融資を受ける場合、次の4点を押さえておかないと審査を通過するのは難しいです。

創業計画書の重要度は高い

日本政策金融公庫の審査は、創業計画書の内容の重要度が特に高いです。

創業前や創業して間もない段階では事業実績がないため、経営者の経歴だけでなく、取引商品や取引先、保有資金などの情報を細かくチェックします。

出所:日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyou00_190507b.pdf

経営者が過去に事業を営んでいた実績があればプラスになりますし、事業内容が具体的かつ売上が見込めるものであれば、審査で有利となります。

反対に、創業動機が乏しく、取引先との関係性も薄い場合には、事業の発展が見込めないと判断され、審査に落ちてしまいます。

資金用途を明確に伝える

日本政策金融公庫は、融資を受けた際の資金の使途によって限度額が異なります。

たとえば「新規開業資金」の融資限度額は7,200万円ですが、運転資金としての融資限度額は4,800万円までとなっています。

事業規模と比べて求めている融資金額が大きい場合、希望額に届かない可能性や、返済リスクの観点から審査に落とされることも考えられます。

そのため、必要となる資金を調達するためには、資金の使い道についても明確に示すことが大切です。

ローン・税金等の滞納は厳禁

「信用情報」は、クレジットカード等の契約内容や契約情報など、客観的な取引事実が記録してある情報です。

信用情報はクレジットカードやローン契約をする際に活用されますが、融資審査時にも創業者の信用情報はチェックされます。

融資審査で確認される事項は、滞納経験とキャッシング債務の有無です。

滞納経験は返済リスクに直結しますし、他に借りている債務がある場合、返済が滞った際に債権が回収不能となる確率が上がるため、どちらか一方でも該当する方は審査を通過するのが難しくなります。

また、日本政策金融公庫の融資においては、公共料金や税金の滞納にも注意しなければなりません。

日本政策金融公庫は政府系金融機関であることから、税金等の滞納には特に厳しいため、融資前の滞納は避けてください。

面接対応も重要

融資面接時には、事業内容や融資が必要になる理由等を質問されますので、あらゆる質問を想定し、それに対する回答を用意しておく必要があります。

融資担当者は創業者の人柄もチェックしていますので、身だしなみはもちろんのこと、態度や事業に対する熱意を伝えることも大切です。

融資申込をする際は事前に専門家へ相談すること

日本政策金融公庫は創業当初でも融資を受けることができる金融機関ですが、審査に落ちてしまうと、他の金融機関から資金調達するのは難しくなるため、審査は一発で通過しなければなりません。

初めて事業を立ち上げる方は、創業計画書や事業計画書を作成した経験がないことから、専門家にサポートしてもらいながら融資申込を行うことが望ましいです。

永安栄棟 公認会計士・税理士事務所では、税金だけでなく融資サポートも得意にしていますので、経営上の不明点や解消したい問題がありましたら、お気軽にご相談ください。

創業時の融資方法の一つとして活用されていた「新創業融資」が廃止され、新たに「新規開業資金」が創設されました。

新規開業資金と新創業融資は日本政策金融公庫の融資制度ですが、融資を受ける際の条件などは異なりますので、本記事で新規開業資金の特徴と融資審査のポイントを解説します。

日本政策金融公庫は政府系の金融機関

日本政策金融公庫(略称:日本公庫)は、民間金融機関では融資するのが難しい事業者などを対象に融資を行っている政策金融機関です。

政策金融機関は、政府が経済発展や国民生活を安定させるなどの政策を実現させることを目的に設立された特殊法人であり、日本政策金融公庫は日本政府が100%出資している株式会社です。

出所:日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/n/company/summary.html

金融機関から資金調達する場合、事業者の経営状態や資産の保有状況などが審査されます。

事業が不安定な会社や返済が見込めない会社は融資を受けにくいですし、創業して間もない会社は事業実績が無いため、銀行などから融資を受けるハードルが高いです。

日本政策金融公庫の創業融資は、事業実績が乏しいなどの理由により資金調達が困難な創業期の会社等を支援するための融資制度を多数用意していますので、事業を開始するタイミングでも融資を受けやすいのが特徴です。

日本政策金融公庫の新規開業資金制度の概要

日本政策金融公庫の新規開業資金は、これから事業を始める予定の方や、事業を開始して日が浅い事業者が利用できる融資制度です。

一般的に融資が受けにくい方が利用しやすいだけでなく、融資制度としても優れているため、創業前後においては有力な資金調達手段となります。

<新規開業資金の概要>

利用対象者新規事業者または事業開始後おおむね7年以内の方
融資の用途新規事業を開始前・開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金
20年以内<うち据置期間5年以内>
運転資金
10年以内<うち据置期間5年以内>
年利基準利率
担保・保証人要相談

新規開業資金を利用する際、次の特例制度も併用することが可能です。

<併用可能な特例制度>

  • 経営者保証免除特例制度
  • 創業支援貸付利率特例制度
  • 設備資金貸付利率特例制度(東日本版)
  • 賃上げ貸付利率特例制度

年利は返済期間や担保の有無などによって異なりますが、次に該当する方は通常よりも有利な条件で利用することができます。

  • 女性、若者、シニアの方で創業する方
  • 廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方
  • 中小会計を適用して創業する方


出所:日本政策金融公庫 国民生活事業(主要利率一覧表)

https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html

新規開業資金と新創業融資の違い

以前まで存在した日本政策金融公庫の新創業融資は令和6年(2024年)3月で廃止となり、新たに新規開業資金が創設されました。

制度が一新されたため融資条件等も変更されていますが、新規開業資金は新創業融資より利用しやすい制度に設計されています。

新規開業資金は無担保・無保証人でも申し込みできる

新規開業資金は、無担保・無保証人でも申し込みすることができます。

融資を受ける際に最も大きな障壁となるのが、担保・保証人の存在です。

金融機関等は、融資金額の返済が滞った際のリスクヘッジをしなければなりませんので、担保や保証人が用意できない事業者に融資するケースは限られています。

新規開業する事業者は担保提供できる資産を保有していることが少なく、保証人を確保するのも難しいため、銀行から資金調達するのは大変です。

日本政策金融公庫の融資制度も、担保や保証人を用意することで利率等が優遇される部分もありますが、新規開業資金の申込要件に担保・保証人は含まれていないため、新しく事業を始める方でも利用しやすいような制度になっています。

融資金額の拡大・返済期間の延長

融資を受ける際にポイントになるのが、融資金額の上限と返済期間です。

創業当初は開業準備費用だけでなく、開業してから一定期間経営を維持するための運転資金の確保は不可欠です。

経営が順調であれば計画的に返済することもできますが、創業当初は売上を予想するのが難しく、短期間で返済を求められると資金繰りに苦慮することも懸念されます。

従来の新創業融資は、融資限度額3,000万円(うち運転資金1,500万円)で、返済期間は設備資金は20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金については7年以内(うち据置期間2年以内)でした。

(「据置期間」は元金返済が猶予され、利息のみを払い込む期間をいいます。)

新創業融資も好条件で融資を受けられる制度でしたが、新規開業資金は融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)に拡大したため、以前より大きな金額を調達できるようになっています。

設備資金の返済期間は20年以内と同じですが、据置期間は2年以内から5年以内に拡大しています。

一方、運転資金の返済期間は7年以内から10年以内、据置期間は1年から5年以内と延長されていますので、事業を中長期的に計画して展開したい事業者にとっては魅力的な融資制度です。

条件に応じた利率の引き下げ

融資を受けた際の返済額は融資金額だけでなく、設定される利率によっても上下します。

利率が低いほど返済額を抑えることができますが、設定される利率は融資する側が利益を得るだけでなく、融資したお金が戻ってこなかった際の損失を補填する目的もあることから、返済が滞るリスクが高い事業者ほど利率は高く設定されます。

新規開業資金も利率は担保や保証人の有無で変動しますが、一般的な相場よりは抑えられており、新創業融資と比べても利率は低いです。

融資を受けにくい事業者は、お金を借りた際の利率が高くなりやすいため、利率を抑えて融資を受けられるメリットは非常に大きいです。

申込要件に自己資金要件が含まれていない

日本政策金融公庫で融資を受ける場合、一定以上の自己資金を保有していることが条件となっているものもあります。

しかし、新規開業資金の申込要件には自己資金要件が含まれていないので、自己資金が少ない事業者も融資申し込みをすることが可能です。

新規開業資金の融資を受ける際の流れ

新規開業資金の申し込みをする場合、最初に日本政策金融公庫へ融資相談をすることになります。

相談(要予約)は融資を申し込む前にすることができますし、支店窓口だけでなくオンラインでも相談を行っています。

融資の申し込みをインターネットでする際には、次の書類が必要です。

<融資申込時の必要書類>

  • 創業計画書
  • 運転免許証またはパスポート
  • 見積書
    (設備資金の申込の場合)
  • 履歴事項全部証明書または登記簿謄本
    (法人の場合)
  • 不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
    (担保提供する場合)
  • 都道府県知事の「推せん書」(借入申込金額が500万円以下の場合は不要)または、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」
    (生活衛生関係の事業を営む場合)
  • 許認可証
    (飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方に限る)

※電子データを準備すること

※郵送による申込手続きの際は「借入申込書(国民生活事業用)」も提出すること

融資申込後に日本政策金融公庫の担当者と面接を行い、融資の有無が決定します。

面接時には資金の用途や事業計画などが質問されますので、事業計画に関連する資料や、資産・負債の確認できる書類等を用意してください。

審査を通過した後に必要な契約手続きを行い、指定した口座に融資金が振り込まれます。 融資金の返済は原則月賦払いですが、返済方法については元金均等返済・元利均等返済・ステップ(段階)返済などが用意されています。

新規開業資金の融資申込みをする際に注意すべきポイント

日本政策金融公庫は一般の民間金融機関では融資が受けにくい方々を支援する目的があるため、比較的融資は受けやすくなっていますが、無条件で審査が通るわけではありません。

事業者の信用情報に問題があれば審査は通過しにくくなりますし、創業前に融資を受ける事業者については、創業計画書(事業計画書)の内容が非常に重要です。

融資経験が無い場合、創業計画書を適切に作成するのが難しく、審査に落ちてしまうと半年間は再申込不可となります。

事業を開始する時期が決まっている方は、審査に落ちることを避けなければなりませんので、融資の申し込みをする前に1度専門家にご相談ください。

永安栄棟 公認会計士・税理士事務所では税務のお困りごとをお伺いしております。ぜひ一度、お問い合わせください。