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個人事業主として活動する方は、青色申告または白色申告で確定申告を行うことになります。

どちらで手続きするかは事業者の選択になりますが、基本的には青色申告で手続きすることが望ましいです。

本記事では、青色申告と白色申告のメリット・デメリットおよび、青色申告が推奨される理由について解説します。

青色申告の特徴とメリット・デメリット

青色申告には税制上の優遇措置が与えられていますが、青色申告で手続きするためには一定の労力が伴います。

青色申告とは

青色申告は、一定水準の記帳に基づいて申告書を作成することを条件に、税制上の優遇措置が受けられる申告をいいます。

青色申告を選択すると、節税効果の高い制度を適用できるようになりますが、青色申告をするためには事前申請が必要です。

また、作成すべき帳簿は白色申告よりも多く、原則として正規の簿記に従って記帳することが求められるため、青色申告で手続きするためにはある程度の簿記知識を身に付けなければなりません。

青色申告の特典は節税効果が高い

青色申告者が適用できる主な特典は、次の3つです。

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 純損失の繰越し

「青色申告特別控除」は、所得金額から最高65万円を差し引くことができる控除です。

事業所得や不動産所得は、収入金額から必要経費を差し引いた額が所得金額(利益)として所得税の課税対象となります。

しかし、要件を満たした青色申告者は、算出された利益から最高65万円を控除することができるため、青色申告をするだけで一定の節税効果が得られます。

「青色事業専従者給与」は、 配偶者等に支払う給与を事業所得などの必要経費として算入することができる制度です。

青色事業専従者に対して支払った金額が適正であれば、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された金額の範囲内で、支払った給与を必要経費に算入することができます。

純損失の繰越しは、赤字を翌年の所得金額から差し引くことができる制度です。

通常、事業所得や不動産所得で発生した損失額(赤字)は、他の所得と損益通算することは可能ですが、控除しきれず残った損失額を翌年に繰り越すことはできません。

しかし、青色申告者は控除しきれない部分の金額(純損失の金額)を、最長3年間繰り越すことが認められています。

繰り越した損失額を翌年以降の所得金額から差し引けますので、赤字を無駄なく活用することができます。

作成すべき帳簿が多く保存期間は原則7年

青色申告を行う場合、原則として正規の簿記で記帳しなければなりません。

正規の簿記とは、貸借対照表と損益計算書を作成できるように記帳する方法をいい、作成した帳簿書類は、基本的に7年間保存しなければなりません。

請求書や見積書などの書類については保存期間が5年となっていますが、それ以外の帳簿書類の保存期間は白色申告よりも2年長いです。

出所:記帳や帳簿等保存・青色申告(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm

青色申告は事前申請が必須

青色申告は事前に申請書を提出し、税務署に承認された場合に限り適用できる制度です。

個人事業主が青色申告として申告手続きを行う場合、青色申告をしようとする年の3月15日までに、「青色申告承認申請書」を納税地の税務署に提出しなければなりません。

3月15日を過ぎてから承認申請書を提出した場合、青色申告で手続きできるのは翌年からとなるので注意が必要です。

ただし、新規開業した個人事業主(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合)については、業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を提出すれば、その年から青色申告で手続きすることができます。

なお、青色申告の対象となるのは不動産所得・事業所得・山林所得を有する方に限られ、雑所得として申告する際に青色申告は適用できません。

白色申告の特徴とメリット・デメリット

白色申告は基本となる申告手続きですが、青色申告と比較すると優劣が出るので、白色申告の特徴も確認してください。

白色申告とは

白色申告は、青色申告以外の申告をいいます。

個人事業主として活動を開始する際は、税務署に「個人事業の開業・開業等届出書」を提出することになりますが、白色申告をするために提出する届出書はありません。

取引等に関する記帳は白色申告者も必要ですが、青色申告者に比べると作成すべき記帳の種類は少なく、簡易な方法による記帳が認められています。

そのため、最低限の簿記知識を有していれば、新たに個人事業主として活動を始めた方でも申告書を作成することができます。

青色申告の特典が適用できない

白色申告に税制上の制約はないため、白色申告で確定申告書を作成したとしても不利益を被ることはありません。

しかし、白色申告者は青色申告の特典を受けられないことから、他の事業者が活用している節税方法を適用できない可能性があります。

たとえば、青色申告特別控除は最大65万円まで所得金額を控除できますが、白色申告者は、青色申告特別控除を受けられませんので、青色申告者よりも所得税の課税対象となる金額が最大65万円多くなります。

また、損益通算しきれない損失額が生じたとしても、損失額を翌年に繰り越すことができないので、青色申告に比べると節税面では不利です。

帳簿書類の保存期間は原則5年

白色申告は、簡易な方法による記帳が認められているため、青色申告者よりも帳簿書類を作成するための労力を抑えることができます。

収入金額や必要経費、取引を行う際に作成した帳簿や、請求書、領収書などの書類は保存する必要がありますが、保存期間は青色申告よりも短いです。

ただし、法定帳簿に該当する帳簿の保存期間は7年と、青色申告と同じ長さになっている点には注意してください。

出所:記帳や帳簿等保存・青色申告(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm

個人事業主は青色申告と白色申告のどちらで申告すべきか

事業内容は同じでも、申告方式が違うだけで申告手続きにかかる労力や節税のしかたは変わりますので、ご自身にとってメリットがある申告方式を用いて手続きを行ってください。

節税するなら青色申告一択

青色申告と白色申告にはそれぞれに特徴がありますが、継続して事業を営む方は青色申告で確定申告書を作成して提出してください。

白色申告でないと適用できない制度は存在しませんが、青色申告をしないと適用できない制度は多数あります。

特に青色申告特別控除は、利益が出ている事業者であれば全員に恩恵がある制度なので、支払う税金を少しでも抑えたい事業者は青色申告で手続きした方がいいでしょう。

青色申告は税務調査を受けるリスクを下げられる

税務調査は個人事業主に対しても実施されますが、青色申告と白色申告を比較した場合、白色申告の方が調査対象になりやすいです。

国税当局は適正に申告書を作成してもらうための施策として青色申告制度を導入していますので、同一内容の青色申告と白色申告による申告書が提出された場合、白色申告で手続きした申告書を調査対象者として選ぶ可能性が高いです。

税務署は数年分の申告書をまとめて調査するため、申告書を提出してから数年後に税務調査が実施されることも珍しくありません。

青色申告も調査対象になることはありますが、白色申告に比べると対象になりにくいため、調査対策の観点で考えても青色申告で手続きすることが望ましいです。

個人事業主の税金対策は税理士に相談すべき

SNS上では、白色申告の方が税務調査を回避できると主張する人もいますが、税務署は青色申告を推奨していますので、白色申告が税務調査において優遇されることはないです。

継続的に事業を営んでいる個人事業主が白色申告で手続きしている場合、帳簿書類を適切に作成しているかを確認するために、税務調査が実施される可能性もあります。

少しでも節税したい個人事業主は青色申告で申告すべきですが、正規の簿記による記帳を行うなどの要件をクリアしなければなりません。

適切な税金対策を講じつつ、税務調査を回避したい個人事業主は、早めに税の専門家である税理士にご相談ください。

何かお困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

また、弊所のサービスについては、以下よりチェックしてみてください。

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個人事業主は会社員とは違い、確定申告で納税する金額を計算します。

申告内容の誤りはもちろんのこと、申告義務がある人が無申告の場合も税務調査の対象となるので気を付けてください。

本記事では、申告義務のある個人事業主の範囲と、確定申告手続きの流れについて解説します。

個人事業主が確定申告をしなければならない理由

個人事業主が申告手続きをしなければならないのは、確定申告でその年に納める所得税や消費税の額を計算するからです。

所得税は個人事業主やフリーランスだけでなく、会社員も支払っている税金ですが、会社員は勤務先の年末調整で所得税の過不足を精算できるため、基本的に確定申告手続きは不要です。

それに対し、個人事業主やフリーランスには年末調整がないため、自身でその年に生じた所得金額を計算し、所得税の納税額を求めなければなりません。

所得税の申告義務は、納税額が生じる方に課されるものなので、赤字となった個人事業主は、申告しなくてもペナルティを受けることはないです。

しかし、特例制度の適用や赤字を翌年に繰り越すためには申告書の提出が必須となるため、個人事業主は赤字・黒字に関係なく、毎年確定申告をする前提で行動する必要があります。

個人事業主が確定申告で納める税金の種類

個人事業主が確定申告で納める税金の種類

所得税の確定申告は必須

所得税は、その年に発生した所得に対して課される税金です。

確定申告期間は翌年2月16日から3月15日の1か月で、個人事業主は毎年所得税の確定申告書を提出することになります。

期限までに申告書を提出しなかった場合、加算税が課されることになるので注意してください。

また、所得税の納期限は申告期限と同日ですが、期限までに所得税の支払いが完了していないときは、延滞税の対象となります。

インボイス登録をした事業者は消費税の申告も必要

消費税の確定申告は、課税事業者に該当する人(法人)が行うことになります。

基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者は課税事業者となるため、該当する個人事業主は所得税だけでなく、消費税の申告手続きも要します。

個人事業主の消費税の申告期限・納期限は翌年3月31日で、所得税よりも半月ほど遅いです。

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の免税事業者に該当するため、原則消費税の申告は不要です。

ただし、インボイス登録(適格請求書発行事業者の登録)をした事業者は、消費税の課税事業者になりますので、課税売上高が1,000万円以下であったとしても消費税の申告をしなければなりません。

住民税の申告は所得税の申告手続きをしていれば不要

住民税は地方税の一つで、所得税と同様、所得金額に対して課される税金です。

申告期限は所得税と同じ翌年3月15日ですが、所得税の申告書を提出している場合、申告書の内容が税務署から役所に伝えられるため、住民税の申告手続きを別途行う必要はありません。

住民税の支払いは、翌年6か月から4回に分けて納めることになります。

個人事業主が確定申告をしないリスク

個人事業主が確定申告をしないリスク

本税と一緒に加算税・延滞税を支払うことになる

税務署は、期限内に適正に申告・納税をした人と区別するために、申告誤りや無申告、納税の遅延に対するペナルティを設けています。

加算税は期限までに正しい内容の申告を行わなかったことに対するペナルティで、申告誤り等に応じて、「過少申告加算税」・「無申告加算税」・「重加算税」のいずれかが適用されます。

延滞税は、納期限までに税金を納めなかった場合に課されるペナルティです。

延滞税の額は、納付が遅れた日数に応じて日割り計算するため、税金の支払いが遅れるほどペナルティが重くなります。

また、税務署が滞納した税金が支払われないと判断した場合、財産の差押えを実施しますので、期限までに支払いが間に合わなかったときは、1日でも早く納めるようにしてください。

出所:加算税の概要(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf

青色申告の特典を受けられない

青色申告は、一定の帳簿等を作成することを条件に、税制上の優遇措置が受けられる制度をいいます。

青色申告の特典は節税効果が高いものが多いため、税負担を軽減したい個人事業主は青色申告で手続きすることが望ましいです。

税務署に「青色申告承認申請書」を提出すると、青色申告で申告手続きを行えるようになりますが、青色申告の特典の中には期限内申告が要件となっているものもあるため、確定申告書は必ず期限内に提出してください。

また、青色申告者が脱税行為などを行った場合、青色申告の承認が取り消しになることもありますので、正しい内容の申告書を作成することも大切です。

税務調査の対象になりやすくなる

申告誤りに対しては加算税・延滞税のペナルティが課されますが、個人事業主が税務調査で誤りを指摘された場合、その後にも影響が及びます。

税務署には毎年膨大な数の申告書が提出されるため、税務調査は調査対象者を選定して実施しています。

過去に申告誤りや無申告が指摘された事業者は、再び申告誤りをする可能性があることから、調査対象者として選定されやすいので気を付けてください。

高額・悪質な脱税は逮捕される

多額の申告漏れが発生した場合、加算税・延滞税といったペナルティだけでなく、逮捕される可能性があります。 昔は脱税額1億円が逮捕される目安の一つとされていましたが、最近では脱税額が1億円以下でも逮捕される事例が続出しています。

個人事業主が確定申告手続きをする際に押さえておくべきポイント

確定申告書は、次のポイントに気を付けて作成してください。

申告期限・納期限は厳守

個人事業主は、申告期限と納期限は厳守してください。

申告期限を過ぎてしまうと無申告加算税の対象になりますし、納付が遅れるほど延滞税の額も増えていきます。

所得税の確定申告期間は1か月ありますが、毎年手続きすることになりますので、年明けから申告書を作成する準備を整えておくのが望ましいです。

「税務署にバレないだろう」はハイリスク

SNSなどでは、「税務署にバレなければ無申告でも問題ない」や、「税金逃れは白色申告の方がやりやすい」といった意見も見受けられますが、真に受けないよう気を付けてください。

無申告に対する調査は青色申告・白色申告に関係なく実施されますし、税務署は取引先の情報から無申告の実態を把握することもあるので、白色申告の方が税務調査を受けにくい根拠はありません。

また、税金逃れは重加算税の対象になりますし、逮捕されるリスクも生じますので、面倒であっても申告書は必ず提出してください。

税理士に申告書作成を依頼するのも選択肢

本業が忙しい方や、確定申告書を作成するのが難しい方は、税理士に申告書作成を依頼することも検討してください。

税理士に依頼する際には報酬費用が発生しますが、事業者自身が確定申告書を作成するコストを削減できますし、計算ミスや経費の計上漏れなども防げます。

税理士が作成した申告書は誤りが少ないため、税務調査を受けにくくなる効果も期待できるので、税務調査対策としても有効です。

所得税の確定申告書に税理士が関与している割合は20%程度と、相続税や法人税に比べると低いため、他の税金よりも税理士に依頼することで税務調査を抑制する効果が期待できます。

出所:令和5事務年度 国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/policy_evaluation/proceedings/material/81seihyoukon03.pdf

個人事業主に関係する税金は税理士に相談すること

個人事業主は毎年所得税の確定申告が必要になりますし、消費税の課税事業者に該当する方は、消費税の申告手続きも必要です。

税務署は税金の過少申告は指摘しますが、過大申告を指摘することはほとんどないため、税金を払い過ぎている個人事業主は一定数存在します。

最適な方法で節税をするためには税知識が不可欠ですので、税金の支払いを少しでも抑えたい個人事業主は、1度税理士にご相談ください。

お困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

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起業する際は、個人事業主と法人のいずれかを選択することになります。

1人で事業を始める方は個人事業主を選ぶことが多いですが、当初から法人として活動することも可能です。

個人事業主と法人にはそれぞれに特徴がありますので、本記事で事業形態ごとのメリット・デメリットを解説します。

個人事業主の特徴

個人事業主は、起業するための手続きが少なく、初期費用を抑えながら事業を始められます。

個人事業主として起業する際の手続き

個人事業主は、個人で事業を営んでいる人をいいます。

起業するタイミングで税務署に開業届の提出は必要ですが、法人と違い設立登記手続きは不要です。

起業することに対して税金はかかりませんし、廃業届を提出すれば事業をやめることができるため、起業するハードルやリスクが低いのが特徴です。

個人事業主に課される税金

個人事業主として稼いだ利益に対しては、所得税および復興特別所得税、住民税が課されます。

収入から必要経費を差し引いた額が利益(事業所得または不動産所得)となり、課税所得金額が大きいほど所得税の税率は高くなります。

また、営んでいる業種が製造業や不動産貸付業などの場合、一定の所得金額を得ている方に対しては個人事業税も課されます。

<所得税および復興特別所得税の計算の流れ>

出所:No.1000 所得税のしくみ

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm

社会保険料の負担

個人事業主でも、5人以上の従業員を常時雇用しているときは、社会保険に加入しなければなりません。

従業員数が5人未満であれば社会保険への加入義務はありませんが、社会保険に加入した際には、従業員の社会保険料の一部を負担することになります。

法人の特徴

当初から一定以上の規模で事業を展開することを計画している方は、個人事業主ではなく、法人として活動するのも選択肢です。

法人として起業する際の手続き

法人は、法律上において自然人と同じように権利や義務がある組織・団体をいい、法務局で登記手続きをしないと法人格は取得できません。

税務署に法人設立届出書を提出するなど、個人事業主よりも起業時の手続きは煩雑で、会社のルールを定めた定款も作成する必要があります。

また、登記手続きの際には登録免許税などとして、6万円から30万円程度の費用がかかります。

法人に課される税金

法人には、法人税・法人住民税・法人事業税などの税金が課されます。

法人税は利益に対して課される税金で、大まかな計算過程は個人事業主と同じですが、経費として計上できる種類や範囲は異なります。

会社が赤字になれば法人税はかかりませんが、法人住民税については赤字でも納付が必要となるので注意が必要です。

<法人税の計算の流れ>

出所:法人税の基本的な仕組み(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2022/pdf/01-03.pdf

社会保険料の負担

法人は、代表者が1人で立ち上げた場合でも、役員報酬を支払う場合には社会保険には必ず加入しなければなりません。

社長や従業員の社会保険料の一部を会社が負担することになるため、事前に支払う社会保険料の額を把握しておくことも大切です。

個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人では、起業時の費用や税金面だけでなく、経営面にも違いがありますので、良い面だけでなく、悪い面も踏まえた上で事業形態を選択することが肝要です。

起業のしやすさ

個人事業主は登記手続きが不要なので、すぐに事業を立ち上げられますし、起業するためにかかる初期費用もほとんどありません。

法人は設立時に登録免許税などの費用がかかりますし、確定申告手続きも個人事業主に比べて複雑なので、税理士に依頼しないと申告書を作成するのは難しいです。

また、法人は維持管理費も毎年発生するため、小さい規模で事業を開始する場合には、個人事業主として活動した方が費用やリスクを抑えられます。

利益に対する税金の重さ

個人事業主と法人では、利益に対する税金の種類が異なるため、同額の利益が発生したとしても、納める税額は変わってきます。

所得税の税率は7段階あり、最低税率は5%と低いですが、最高税率は45%と非常に高いです。

一方、法人税の税率は、中小企業の普通法人であれば800万円までは15%、800万円を超える部分に対しては23.2%の税率が適用されます。

利益が小さければ所得税の方が適用税率は低いですが、利益が800万円を超えたあたりから、法人税として計算した方が納める税額は小さくなります。

<所得税の税率>

出所:No.2260 所得税の税率(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

<法人税の税率>

出所:No.5759 法人税の税率(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm

経費の扱い

個人事業主が車などの資産を仕事とプライベートの双方で使用している場合、資産の取得費を全額経費として計上することはできません。

経費計上できるのは仕事として利用している割合に限られ、全額を経費にしていると税務調査で指摘されるので注意してください。

一方、法人に関しては、事業に関係がある支出であれば原則経費として計上できます。

役員に支払う報酬についても、条件をクリアすれば経費計上(損金算入)できますので、法人の方が経費を活用した節税が行いやすいです。

社会的信用度・資金調達のしやすさ

個人事業主と法人が同程度の規模であったとしても、法人の方が社会的信用度は高く、資金調達もしやすいです。

個人事業主は簡単に起業できるメリットがある一方、登記手続きが不要なので身元が確認しにくく、法人に比べると社会的信用度は一段劣ります。

また、個人事業主として活動している事業者と取引をしない企業もあるので、法人よりも広域に活動するのが難しいです。

資金調達に関しても、個人事業主は法人に比べて財務状況が不透明なことが多いため、お金を借りにくい傾向にあります。

個人事業主として起業するメリット・デメリット

個人事業主として活動するメリット・デメリットは、次の通りです。

<個人事業主のメリット・デメリット>

メリット起業する際の手続きが簡便初期費用を抑えられる所得金額が小さい場合は適用税率が低い維持管理費が小さい廃業する際のコストがかからない
デメリット経費計上できる範囲が法人よりも狭い所得金額が大きくなると適用税率が高くなる社会的信用度が低い資金調達が難しく、利率が高く設定されやすい

個人事業主は設立するコストがほとんどかからないなど、起業しやすいのが最大の魅力です。

個人事業主としてスタートすれば、事業が軌道に乗った段階で副業から本業に移行することもできますし、失敗したとしてもすぐに廃業できるので、法人よりも起業するリスクは低いです。

所得税の税率は、利益が一定以下であれば法人税よりも低いですが、一定額を超えると法人よりも税負担が重くなります。

法人として起業するメリット・デメリット

法人として活動するメリット・デメリットは、次の通りです。

<法人のメリット・デメリット>

メリット経費計上できる範囲が広い節税手段が豊富利益が一定以上になると個人事業主よりも適用税率が低くなる社会的信用度が高い
デメリット設立手続きが煩雑設立費用がかかる維持管理費がかかる事務作業が増える

法人は個人事業主よりも経費として計上できる範囲は広く、節税手段も数多く存在するため、税知識を有している会社ほど効率よく節税が行えます。

法人税の最高税率は23.2%と、所得税の最高税率45%の約半分となっているため、利益を出せる事業者ほど、法人として活動した方が節税できます。

法人は1人でも設立できますので、いわゆる「一人法人」として起業する人も少なくありません。

設立手続きや初期費用、維持管理費が生じるデメリットはありますが、専門家に相談・依頼することで解決できますので、事業内容によっては当初から法人として活動することも検討してください。

個人事業主と法人で迷ったら税理士に要相談

個人事業主と法人は一長一短なので、起業時点の状況や経営方針などによって選択すべき事業形態は変わります。

事業が軌道に乗った段階で、個人事業主から法人に移行(通称:法人成り)することも可能ですが、移行するためには法人登記などの手続きをしなければなりません。

コストを抑えるためには、当初から計画的に進めることが大切ですので、活動する事業形態に迷っている方は、早い段階で税理士に相談することをオススメいたします。

何かお困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

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個人事業主は所得税だけでなく、消費税の確定申告も必要になることがあります。

申告義務がある人が申告手続きを行わなかった場合、ペナルティが課されるだけでなく、税務署から要注意人物としてマークされることになるので注意してください。

本記事では、個人事業主が消費税の申告が必要になるケースと、不要なケースをそれぞれ解説します。

消費税の納税義務者とは

消費税の確定申告が必要となるのは、原則事業者に限られます。

事業者には法人だけでなく、個人事業主(個人事業者)も含まれ、日本国内に住所等を有しているか否かは問いません。

そのため、国内で消費税の課税対象となる取引を行っている事業者は、非居住者や外国法人であったとしても、納税義務者となるので気を付けてください。

消費税の確定申告が必要ない人

次のいずれかに該当する人は、消費税の確定申告手続きをする必要はありません。

消費税の納税義務者に該当しない

消費税の確定申告手続きが必要になるのは、消費税の納税義務者に該当する人(法人)に限られます。

消費税は消費者も納めている税金ですが、事業を営んでいない人は基本的に申告手続きをする必要はありません

ただし、輸入取引は、輸入品を引き取る者が消費税の納税義務を負うため、給与所得者等であっても、輸入品を引き取る際には納税義務者となります。

免税事業者に該当

消費税では、課税期間の消費税の納税義務が免除される「事業者免税点制度」が設けられています。

事業者免税点制度の対象となるのは、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者で、免税事業者に該当するときは、事業を営んでいる人でも消費税の確定申告は不要です。

なお、消費税の課税事業者を選択している事業者については、課税売上高が1,000万円以下でも消費税の申告義務が生じるので注意してください。

消費税の確定申告が必要になる事業者

個人事業主が次のいずれかに該当する場合、消費税の確定申告が必要になります。

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた

個人事業主は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合、課税事業者として消費税の申告をしなければなりません。

課税期間は、事業者が納付(還付)すべき消費税額を計算する期間をいい、個人事業主の課税期間は1月1日から12月31日までです。

基準期間は、納税義務の有無を判定する期間であり、個人事業主の基準期間は対象年分の前々年です。

課税期間の課税売上高が1,000万円を超えたとしても、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者となります。

ただし、基準期間における課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合には、課税事業者となるので注意してください。

特定期間は、対象年分の前年1月1日から6月30日までの期間(個人事業主の場合)をいい、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で判定することも認められています。

出所:消費税のしくみ(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm

免税事業者が課税事業者を選択した場合

課税売上高が1,000万円以下であったとしても、「消費税課税事業者選択届出書」を提出した事業者は、消費税の申告をしなければなりません。

免税事業者は、消費税の納税額が算出される場合でも申告手続きは不要となる反面、還付金が生じたとしても申告手続きを行えないデメリットがあります。

たとえば、輸出業者は経常的に消費税額が還付になることから、課税売上高が1,000万円以下でも、消費税の課税事業者を選択するメリットがあります。

免税事業者が課税事業者を選択する際は、課税期間の初日の前日までに、納税地の税務署に対して「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要です。

課税事業者を選択後に免税事業者に戻りたいときは、免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日までに、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出してください。 ただし、課税事業者となった日から2年間(事業を廃止した場合を除く)は、免税事業者に戻ることはできません。

インボイス登録をした事業者

令和5年10月1日から、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が開始されました。

インボイス制度に対応した事業者(適格請求書発行事業者)になるためには、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出しなければなりませんが、登録申請ができるのは消費税の課税事業者に限られます。

したがって、課税売上高が1,000万円以下の事業者がインボイス登録をした場合、強制的に課税事業者となりますので、基準期間の課税売上高にかかわらず消費税の確定申告が必要です。

個人事業主が初めて消費税申告をする際のポイント

個人事業主が初めて消費税の申告手続きを行う際は、次のポイントに注意してください。

消費税の申告期限は翌年3月31日

個人事業主は、課税期間の翌年3月31日までに消費税の確定申告書の提出が必要です。

所得税の申告期限は翌年3月15日と、消費税よりも半月早いため、所得税と消費税の申告をする際は提出時期に気を付けてください。

また、申告期限と納期限は同日なので、納税額が発生する場合は期限までに納付も済ませてください。

消費税の計算方法は3パターン

消費税は、次のいずれかの方法で計算することになります。

  • 一般課税制度
  • 簡易課税制度
  • 2割特例制度

△一般課税制度

一般課税制度は、消費税の原則的な計算方法で、課税売上に係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて消費税額を算出します。

<一般課税制度の計算方法>

課税売上に係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額控除)=消費税額

仕入税額控除は、帳簿および請求書等の保存の要件を満たしていないと適用できないため、関係書類は漏れなく保存してください。

課税売上に係る消費税額よりも課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額控除)の大きい場合、確定申告をすることで納め過ぎていた消費税は戻ってきます。

△簡易課税制度

簡易課税制度は、消費税の納税額を簡便に算出するための計算方法で、適用する際は課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。

<簡易課税制度の計算方法>

課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)=消費税額

簡易課税制度を適用する場合、仕入税額控除の要件を満たす必要はありません。

一般課税制度と比べて計算は簡単になりますし、みなし仕入率が高い業種については、一般課税制度で計算するよりも節税効果が期待できます。

一方、簡易課税制度で消費税を計算すると必ず納税額が算出されますので、仕入率が高い事業や還付金が発生する事業を営んでいる方は、簡易課税制度を選択するメリットは薄いです。

△2割特例制度

消費税の2割特例は、インボイス制度が導入されたことを理由に、免税事業者から適格請求書発行事業者になった事業者を対象とした制度です。

課税売上に係る消費税額に80%を乗じた額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなすことができるため、大幅な節税効果が見込めます。

<2割特例による計算方法>

課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×80%)= 消費税額

2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの各課税期間で、適用する際の事前申請は不要です。

年分ごとに適用の有無を選択できますが、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えてしまうと、2割特例は適用できませんので注意してください。

<2割特例の適用可能期間>

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

消費税の税務調査リスクは高まっている

インボイス登録をした事業者は必ず消費税の申告が必要となりますし、インボイス登録をしていなくても、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば課税事業者となるので、消費税の申告手続きをしなければなりません。

帳簿書類や領収書等を適切に保存していないと、税務調査で仕入税額控除の適用が否認されてしまいます。

税務署に一度目を付けられると、短いスパンで税務調査を受けやすくなりますので、消費税の申告が必要になる方は専門家に相談して対策を講じてください。

何かお困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

また、弊所のサービスについては、以下よりチェックしてみてください。

>>永安栄棟税理士事務所の「開業支援」を詳しく見てみる
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法人の方が個人事業主よりも経費として計上できる範囲は広いため、節税を意識するのであれば、法人化することも選択肢です。

ただ法人でも経費にできない支出がありますので、今回は個人事業主と法人における経費の扱いと、経費計上する際の注意点を解説します。

個人事業主の経費計上できる範囲

税務署は、経費として計上している費用の内訳を必ずチェックします。

経費計上できるもの・できないものを明確に区分しないと、税務調査で指摘されますので気を付けてください。

経費として認められる費用

個人事業主は、事業収入を得るために直接要した費用を必要経費として計上することができます。

必要経費に該当する主な費用は下記の通りで、収入を得るために直接必要だった支出であれば経費計上が可能です。

<経費にできる主な費用>

  • 売上原価
  • 給与、賃金
  • 地代、家賃
  • 減価償却費
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 接待交際費
  • 修繕費
  • 消耗品費など

経費に計上できない費用

個人事業主は、家事上の費用を経費として計上することはできません。

「家事上の費用」とは、プライベートで支出したものをいい、食費やプライベートでの旅行費用などが家事上の経費に該当します。

しかし、家事上の経費に関連する経費(家事関連費)のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合には、その部分に相当する経費の金額を必要経費として計上することが可能です。

そのため、仕事とプライベートで使用している備品等については、仕事として使用する部分を明確にすることが求められます。

出所:税大講本 所得税法(令和6年度版)(国税庁)

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/syotoku/pdf/all.pdf

詳細はこちらも参照 【弊所コラム】交際費等の飲食費判定の基準額引き上げ

家事関連費は税務調査で指摘されやすい

家事関連費を経費計上している場合、仕事に対応する部分のみを経費として計上しているかチェックされます。

按分割合と実態が相違していれば経費計上が否認されますし、按分した根拠を示すことができない場合も、経費計上が否認されるので注意が必要です。

家事関連費の按分割合は合理的な方法で算出しなければならず、支出の種類等によって合理的な方法は異なります。

たとえば、自動車を平日は仕事、土日はプライベートの目的で利用している場合、自動車にかかる支出に7分の5(平日5:土日2)を乗じた額を経費にするなどの方法があります。

法人が個人事業主よりも経費に計上できるが広い理由

法人と個人事業主では、対象となる税金(法人税、所得税など)の種類が違うため、経費計上を判断する法令や法令解釈通達が異なります。

法人は利益を出すための組織であるため、法人の支出は基本的に事業収入を得るための費用に該当しますので、個人事業主よりも経費にできる範囲が必要です。

例外的に経費として認められない支出もありますが、法人は個人事業主のようなプライベートはないので、支出の按分計算も不要です。

個人事業主が法人化することで経費計上できる費用

個人事業主が法人化(法人成り)した場合、次のような支出を経費計上できるようになります。

福利厚生費

福利厚生は、会社が従業員や家族に提供する給与以外の報酬をいい、会社が従業員等の福利厚生のために生じる支出は経費にできます。

福利厚生には健康保険や雇用保険などの「法定福利厚生」と、レクリエーションや子育て・介護などの「法定外福利厚生」があり、どちらの福利厚生にかかる費用も原則福利厚生費として扱われます。

個人事業主がプライベートで旅行した際の費用は経費になりませんが、法人が従業員レクリエーション旅行に際して支出した費用は、原則経費にすることが可能です。

なお、役員だけで行う旅行や、取引先を接待する目的の旅行などは福利厚生費に該当しませんのでご注意ください。

車両関連費

車両関連費は車両を使用・維持管理するための費用をいい、ガソリン代や車検費用、自動車税等が含まれます。

個人事業主が個人名義の車両をプライベートでも使用している場合、仕事として利用している部分のみが経費となります。

プライベートで使用する比率が高いと経費にできる割合が小さくなりますし、税務調査では按分した割合の根拠を求められます。

一方、法人名義の車両については、役員がプライベートでのみ使用しているケースなどを除き、車両に関連する費用を原則すべて経費にすることが可能です。

出張旅費

個人事業主が出張した場合、プライベートによる支出とみなされた部分は経費から除外しなければなりません。

それに対し、法人が従業員等に支給する出張旅費は原則経費として計上できますし、出張旅費を受け取った従業員等に対して所得税が課されることもありません。

法人が出張旅費を経費計上する際には、出張旅費規定を作成することが求められます。

出張旅費規定は、出張に際して発生する交通費や宿泊費、日当などの取扱いを定めた規定です。

支給額が不当に高い場合については、経費計上が否認されるだけでなく、受け取った従業員等は給与所得として所得税が課される可能性があります。

家賃・社宅

個人事業主は、自宅の家賃を経費にすることはできません。

自宅を店舗兼住宅として利用している場合には、店舗に該当する部分のみを経費として計上し、水道光熱費等は面積等で按分することになります。

一方、法人化した場合には、社宅として利用することで一定割合を経費にできます。

ただし、役員の個人名で契約した物件は社宅としては認められないため、法人化する際は契約する名義に注意してください。

退職金

個人事業主は退職の概念がないため、廃業時に退職金を支払うことはありませんが、法人化すれば、役員や従業員が退職する際に退職金を支払うことができます。

法人が支払った退職金は不当に高額なケースを除き、原則損金計上が可能です。

退職金を受け取った役員や従業員は、退職所得として税金の計算をするため、法人と役員・従業員の双方で節税効果が期待できます。

また、退職金の支払いに備えて保険に加入している場合、その保険料も経費にできるため、退職金を準備する手段として保険を活用するのも選択肢です。

法人が経費計上する際に注意すべきポイント

法人は個人事業主よりも経費計上できる範囲は広いですが、経費(損金)算入が認められない支出もあるので気を付けてください。

役員報酬は原則損金不算入

従業員への給与は損金計上できるのに対し、役員への報酬は原則損金不算入となります。

ただし、次のいずれかに該当する報酬(給与)については、例外的に損金算入が認められています。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

事前に定めた額を役員へ支払う場合、基本的には損金として算入できますが、役員報酬の額が増減してしまうと損金不算入となります。

また、報酬額が不相当に高額な場合や、法人が仮想・隠蔽による経理に基づいて支給した役員報酬も損金に算入することはできません。

接待交際費

接待交際費は、交際費や接待費、機密費などの費用のうち、得意先や仕入先などの関係者に接待や贈答等をするための支出をいいます。

中小企業の場合、接待交際費の50%または800万円のいずれかの金額を超えた部分が損金不算入となります。

ただし、社外の人との飲食等において、1人当たり1万円以下の飲食費については、接待交際費の範囲から除かれます。

飲食費の基準額は以前は5,000円でしたが、令和6年度税制改正で1万円に引き上げられました。

飲食費を接待交際費から除外する際は、必要事項を記載した書類を保存しなければならず、1人当たりの飲食費額が1万円を超えた場合には、1万円を超えた費用全額が接待交際費に該当するのでご注意ください。

出所:「令和6年度税制改正」(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei24.html

法人成りは総合的に判断しないと失敗する

税務調査では、個人事業主であれば家事関連費、法人では役員に関する支出が必ずチェックされるので、事前対策は不可欠です。

法人は個人事業主よりも節税する手段が豊富なので、事業規模が一定以上となった個人事業主は、法人として活動することも選択肢です。

ただし、法人化するためには様々な手続きを要しますし、法人化することが必ずしも最適とは限りません。

法人化した後に再び個人事業主として活動する場合には、多大な労力と費用がかかりますので、法人化を検討されている方は税理士事務所に相談してから判断することをオススメします。

お困りのことがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へぜひ一度ご相談ください。

令和5年(2023年)10月1日にスタートしたインボイス制度ですが、制度開始時にいくつかの経過措置が設けられています。

インボイス制度の経過措置は、節税効果が見込めるものや事務作業を軽減できる内容となっていますので、今回はインボイス制度の経過措置の種類および要件、そして適用期間について解説します。

インボイス制度の2割特例

インボイス制度が導入されたことで消費税の課税事業者となった小規模事業者への負担軽減措置として、「2割特例」の経過措置が設けられています。

2割特例の概要

2割特例は、仕入税額控除の代わりに売上税額の8割を特別控除税額として差し引くことができる制度です。

消費税の課税事業者は、売上税額から仕入税額を差し引いた額を納めることになるため、仕入税額が少ない事業者ほど消費税の納税額は多くなります。

しかし、2割特例を適用すれば仕入税額の大小に関係なく、売上税額の8割を差し引くことができますので、消費税の納税額を売上税額の2割に抑えることが可能です。

消費税の計算方法には一般課税と簡易課税が存在しますが、2割特例はそれらの課税制度と比較し、節税になる場合に選択して適用することが認められています。

なお、多くの事業者は2割特例を適用した方が節税になりますので、要件を満たす事業者は経過措置の活用を検討してください。

出所:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

適用要件

2割特例を適用できるのは、インボイス制度が導入されたタイミングで、免税事業者から適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)になった課税事業者です。

基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者や、資本金1,000万円以上の新設法人等は2割特例を適用することができません。

(基準期間は個人事業者の場合は対象年分の前々年、事業年度が1年である法人はその事業年度の前々事業年度のことをいいます。)

ただし、課税事業者が適格請求書発行事業者になった場合でも、適格請求書発行事業者となった課税期間の翌課税期間以降の課税期間について、基準期間の課税売上高が1,000万円以下になるときは、原則2割特例を適用できます。

適用期間・手続き方法

2割特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。

たとえば、免税事業者である個人事業者が令和5年10月1日から適格請求書発行事業者として活動している場合、令和5年分(10月から12月分)から令和8年分までの確定申告において2割特例を適用することができます。

2割特例を適用する際は、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を記載してください。

消費税の簡易課税制度と違い、事前の届出は不要ですし、2割特例を適用して申告した翌課税期間において継続して適用するなどの条件もありません。

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置

インボイス制度が導入されたことで、免税事業者等から仕入れた商品等に対する消費税は仕入税額控除の対象外となります。

しかし、経過措置としてインボイス制度開始後一定期間は、免税事業者等からの仕入れについても一定割合控除することができます。

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の概要

インボイス制度の導入により、消費税の仕入税額控除を適用するためには、適格請求書等保存方式で必要となる請求書等を作成・保存しなければなりません。

免税事業者など、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために必要な請求書等の交付を受けられませんので、仕入税額控除の対象から除かれます。

しかし、免税事業者等からの課税仕入れであったとしても、下記の期間中においては仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除することができます。

<経過措置の適用期間と控除額>

期間控除額
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで仕入税額相当額の50%

適用要件

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置を適用する場合、帳簿と請求書等に関する要件を満たす必要があります。

帳簿については、従来の区分記載請求書等保存方式で必要であった記載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載することが求められます。

「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」については、取引ごとに経過措置の適用を受ける課税仕入れであることを示さなければなりません。

<経過措置を適用する旨の表示例>

  • 個々の取引ごとに記載する場合の表示方法
    • 80%控除対象
    • 免税事業者からの仕入れ
  • まとめて経過措置を適用する旨を記載する場合の表示方法
    • 対象となる適用する取引に『※』等の記号・番号を付し、「※は80%控除対象」などと表示

請求書等については、区分記載請求書等と同様の事項を記載することが要件となります。

インボイス制度導入以前から消費税の課税事業者として活動している事業者であれば、帳簿の記載事項を追加でクリアすれば経過措置を適用できます。

なお、令和6年度税制改正により、一の免税事業者等から行う経過措置の対象となる課税仕入れの合計額が、対象年分(事業年度)において10億円(税込み)を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れに対して本経過措置が適用できないことになりました。

改正事項は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されるため、該当する事業者は注意してください。

適用期間・手続き方法

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。

経過措置を適用するためには、必要事項が記載された帳簿および請求書等を保存し、確定申告書を提出することになります。

令和8年10月1日以後は控除割合が下がりますが、適用要件は同じです。

インボイス制度の少額特例

インボイス制度導入以後に仕入税額控除を適用するためには、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。

しかし、一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置として設けられた「少額特例」の要件を満たす事業者は、適格請求書を保存していなくても、一定の事項を記載した帳簿を保存していれば仕入税額控除が適用できます。

少額特例の概要

少額特例は、税込1万円未満の課税仕入れについては、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を認める経過措置です。

取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係ないため、取引先が免税事業者であったとしても、少額特例の対象となります。

「税込1万円未満の課税仕入れ」とは、1回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満に該当するものをいいます。

商品ごとに税込1万円未満の課税仕入れに該当するかを判定するものではないため、取引の合計額が1万円以上となる場合には、少額特例の対象外となるのでご注意ください。

少額特例は適格請求書の保存を不要とする経過措置ですが、適格請求書発行事業者の交付義務を免除するものではありません。

そのため、少額特例を適用する場合でも、適格請求書発行事業者に該当する事業者が取引先の課税事業者から適格請求書を求められたときは、交付する必要があります。

出所:「少額特例」における1万円未満の判定単位(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-016.pdf

適用要件

少額特例を適用できるのは、基準期間における課税売上高が1億円以下または、特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者です。

「特定期間」は、個人事業者は前年1月から6月までの期間、法人については前事業年度の開始の日以後6月の期間をいいます。

納税義務の判定とは異なり、特定期間における課税売上高の判定では、課税売上高に代えて給与支払額の合計額を用いることはできないのでご注意ください。

適用期間・手続き方法

少額特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。

特例を適用するために申請書等を提出する必要はありませんが、令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、課税期間の途中でも少額特例の対象外となります。 したがって、経過措置が終了した後の課税仕入れに対して仕入税額控除を適用する際は、原則、適格請求書と一定の事項を記載した帳簿を保存することが求められます。

まとめ

インボイス制度の経過措置は、種類によって適用期間と適用要件が異なるため、利用する経過措置ごとに要件等を確認してください。

税制改正で経過措置の適用期間が延長することもありますが、基本的には定められている期限をもって経過措置は終了します。

経過措置や特例制度は、確定申告等で意思表示をしないと適用されませんので、インボイス制度関連の手続きや特例制度に不明な点がありましたら、事前に専門家へご相談ください。

ぜひ一度、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談下さい。

個人事業主は、納税者本人が確定申告書を作成し、税務署へ提出しても問題ありません。

税務手続きを税理士に依頼すべきかどうかは事業内容等によって異なり、税理士に依頼する必要がない個人事業主もいるのも事実です。

一方で、税理士に依頼しないことで税務調査の対象になる確率が上がるなど、デメリットや注意点もありますので、今回は個人事業主が顧問税理士を付けるメリット・デメリットおよび、税務手続きを依頼すべきケースについて解説します。

個人事業主が税理士に依頼している割合

個人事業主は、事業で得た利益に対して所得税・住民税が課されますが、所得税の確定申告書に税理士が関与している割合は全体の20%程度です。

出所:令和4事務年度国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/index.html

同じ事業者である法人(法人税)の税理士関与割合は90%近くありますし、個人が申告する相続税の関与割合が85%程度あることを踏まえると、所得税の申告に関与している税理士の割合は低いです。

しかし、所得税の確定申告書を提出するのは個人事業主だけでなく、住宅ローン控除や医療費控除を適用する会社員や年金暮らしの方も含まれますので、個人事業主のみに限定すると、税理士が関与している割合は20%よりも高いと推測されます。

個人事業主が顧問税理士を付けるメリット

個人事業主が税理士に申告書の作成依頼をするメリットは、申告書を作成する手間を省けるだけではありません。

節税や税金対策に関する具体的な相談ができる

税金知識が豊富な個人事業主も沢山いますが、特例制度の適否や経費計上の可否など、専門家でないと判断が難しいものも少なくありません。

適切な手段で税金対策を講じたと思っていても、法令解釈に誤りがあれば税務調査で指摘され、加算税・延滞税のペナルティを受けるリスクがあります。

税務署でも税金相談は行っていますが、税務署が節税アドバイスをすることはないので、事業内容に合った節税方法や、税金対策のアドバイスを受けたい場合は税理士に相談することが望ましいです。

適正な確定申告書の作成と事務作業の削減

個人事業主が税理士に確定申告書の作成依頼をすれば、確定申告に関する事務作業量を削減しつつ、正しい申告を行えます。

事業所得や不動産所得を計算するためには売上や経費を算出しなければならず、個人事業主は仕事とプライベートの双方で使用している設備等を按分することが求められます。

算出された納税額が過少となっていれば税務署から指摘されますし、計上した経費が少なかった場合には納税額が過大となり、余分に税金を納めることになりかねません。

また、特例制度を適用するかどうかは納税者の判断ですので、特例制度を活用しなかったことで実質的に損をする可能性もあります。 顧問税理士がいる場合、計算ミスを防ぐことができるだけでなく、適用できる特例制度を活用した節税も行えますので、税負担の軽減も期待できます。

税務調査を受けるリスクが下がる

調査担当者が自宅や事務所を訪れて調査する「実地調査」の対象となった場合、80%以上の確率で非違事項を指摘されますので、調査対象者にならないことが最善です。

出所:令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

税務署には提出されたすべての申告書を調査する人員はいませんので、申告書に優先順位を付けて税務調査を実施しています。

税務調査の優先順位は申告内容の誤りや疑義、所得金額の大小だけでなく、税理士関与の有無によっても上下し、該当項目が多いほど調査対象になりやすいです。

税理士が作成した申告書は適正に作成されている確率が高いことから、税理士が関与しているだけで調査の優先順位は一段階下がります。

一方、納税者本人が作成した申告書は、税理士が作成した申告書に比べて計算ミスが発生しやすいため、相対的に顧問税理士が付いていない申告書の方が調査対象者として選定されやすいです。

個人事業主が顧問税理士を付けるデメリット

個人事業主が税理士に依頼する際は、次の事項もあらかじめ確認してください。

税理士への報酬費用が発生する

税理士に申告書の作成依頼をする場合には、対価として報酬を支払うことになります。

税理士への報酬額は税理士事務所や会計事務所によって異なりますが、依頼する内容によっても金額は上下します。

個人事業主の立場からすると、報酬額が少ない方が負担は軽くなりますが、仕訳作業の代行や経営相談がプランに含まれていない場合、満足するサポートを受けられない可能性があります。

そのため、税理士に依頼する際は報酬に含まれている業務内容等を確認し、目的に合致したプランを選んでください。

良い税理士を見つけるのが難しい

税理士にも得意・不得意の分野があるため、依頼する税金を得意とする税理士に依頼することが望ましいです。

個人事業主も個々に事業内容は異なりますし、その事業に精通していない税理士に依頼してしまうと、十分な税金対策が講じられないことも考えられます。

また、顧問税理士は気兼ねなく相談できる税理士を選ぶことも大切です。

税理士事務所が遠方にあると気軽に相談することが難しいですし、有名な税理士事務所が親身になって対応してくれるとは限りません。

中長期的に事業を続ける方であれば、現役世代の税理士を選んでいただくと途中で税理士を変える必要もなくなりますので、税理士の年齢や人柄も選ぶ際の判断材料です。

個人事業主の税理士に依頼すべきケースと不要なケース

個人事業主が顧問税理士を付けるかどうかはケースバイケースなので、依頼すべきケースと不要なケースをご紹介します。

税理士に依頼する必要がない個人事業主の特徴

税理士が不要な個人事業主は、自分で税金手続きをすべて行うことができる方です。

会計ソフトを活用することで、個人事業主でも申告書を作成するハードルは下がっているため、個人事業主でも税理士を付けることが必須とは限りません。

元々税金関連の仕事をしていた個人事業主は自身で申告書を作成できますし、勉強して税金関連の税知識を身に付けた方も、申告書を作成する面で苦労することは少ないです。

また、年間の取引回数が少ない事業者は仕訳等に費やす時間も比較的少ないため、申告手続きに関する苦労をいとわない方は、無理して税理士を付ける必要はありません。

税理士に依頼すべき個人事業主の特徴

事業に専念したい個人事業主は、顧問税理士を付けることを推奨します。

仕訳や記帳が適切に行われていないと、正しい確定申告書を作成することはできませんし、取引回数が多い事業を営んでいる個人事業主は、確定申告関連の事務処理に多大な労力と時間を費やします。

税理士事務所によっては確定申告書の作成だけでなく、記帳代行を承っていますので、顧問税理士に税金関係の手続きを一任し、事業に専念できる環境を整えてください。

税理士に依頼するか悩んでいる方は1度相談すること

個人事業主によっては税理士に依頼する必要がない方もいますが、費用を抑えるだけを目的として自分で税務手続きを行うのは危険です。

特例制度の適否は任意なので制度の存在をしないと活用することはできませんし、節税方法を知らないことが原因で、他の事業者より多く税金を支払っている方もいます。

申告内容に誤りがあれば税務調査で指摘されるだけでなく、調査終了後も動向をチェックされるようになるため、調査対象者として選ばれる確率は更に上がってしまいます。

知名度や料金の安さだけで税理士を選ぶのは危ないので、税理士を付けることを検討されている方は、1度税理士事務所に相談していただき、顧問税理士として依頼するか決めてください。

お困りのことがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へぜひ一度ご相談ください。

税理士は確定申告書の作成だけでなく、税務調査に立ち会うことができるため、調査対策の視点から税理士を選ぶことも大切です。

税理士選びに失敗してしまうと上手く節税ができないだけでなく、調査対象者として税務署から狙われやすくなるので気を付けてください。

本記事では、税務調査対策として税理士を活用するメリットと、税理士に依頼する際に知っておくべきポイントをご紹介します。

事業者は必ず税理士に依頼しなければいけないのか

確定申告書は基本的に納税者が作成し、提出するものなので、納税者自身で申告手続きを行える場合には税理士に依頼する必要はありません。

しかし、事業者は確定申告書を年に1度しか作成しませんし、税制改正が行われれば変更点を確認した上で申告することが求められます。

納税者と税理士を比較した場合、税に関する知識は税理士の方が豊富であり、税理士は依頼を受けている件数だけ申告書を作成していますので、申告手続きにも慣れています。

税務調査に関しても、調査経験が複数回ある人は限られますので、ほとんどの事業者は調査対応に慣れることはありません。

税務調査の連絡は突然入るため、連絡を受けてから調査対策をするのでは遅いです。

調査対応のしかたを間違えてしまうと、追徴税額が増えるなどのリスクが上がりますが、関与税理士がいれば事前に調査対策ができますので、調査自体を回避できるようになります。

税務署から調査の連絡が入るパターン

税務調査は脱税を試みた人(法人)に対して実施されるイメージがあるかもしれませんが、一般の方でも調査対象者として選ばれますので注意してください。

税務署から連絡が入るパターンは3種類あり、申告誤りがあれば本税だけでなく、加算税・延滞税といった附帯税も支払うことになります。

  • 実地調査
  • 実地調査以外の調査
  • 行政指導

出所:税務手続について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/02.pdf

「実地調査」は調査担当者が自宅・事務所に訪れる調査

「実地調査」は、調査担当者が自宅や事務所を訪問し、提出した申告書の内容や申告書を作成する基となった資料等を調べるために実施します。

一般的な税務調査は実地調査を指すことが多く、実地調査は1日かけて調査することがほとんどで、法人に対する税務調査については日をまたぐことも珍しくありません。

申告内容に誤りが無かったとしても、調査対応で最低1日は拘束されますし、調査担当者からの質問に回答できないと、計上した経費や特例適用が否認されるなどリスクが伴います。

また、仮装隠蔽行為があったとみなされた場合、重加算税が適用される点にも注意しなければなりません。

出所:加算税の概要(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf

「実地調査以外の調査」は電話や税務署内で実施する調査

「実地調査以外の調査」は、電話や税務署で申告誤りの指摘を行う調査手法です。

実地調査は申告書の内容をすべて確認するのに対し、実地調査以外の調査では申告誤りや申告内容の疑義がある部分だけを調査します。

調査で拘束される時間は実地調査よりも短く、調査担当者の疑義を解消できれば追徴税額を支払わずに済むケースもあります。

一方で、実地調査以外の調査でも申告誤りが指摘されれば、実地調査と同様、本税に加えて加算税・延滞税を納めなければなりません。

また、実地調査以外の調査で新たな不明点が判明した際には、実地調査に移行して調査することもあるため、適切な対応が求められます。

「行政指導」納税者に確認を促す調査

行政指導は税務署が納税者に対して申告内容の確認を促し、誤りがあった際は自主的な修正をさせることを目的とした指導です。

実地調査や実地調査以外の調査と違い、法律上の税務調査ではないため、行政指導により提出した申告書は自主申告扱いとなります。

自主的な修正申告や期限後申告は、適用される加算税のペナルティが軽減されるため、行政指導の段階で申告書の内容を正せば、余分に納める税金を抑えることができます。

また、行政指導は自主的に申告内容の確認を促すものなので、申告内容に誤りが無ければ修正申告等を提出する必要はありません。

ただし、税務署が申告内容の修正等を要すると判断した場合には、実地調査や実地調査以外の調査に切り替えて、調査が行われる可能性があるため、行政指導の連絡が入ったときも適切な対応が必要です。

税務調査対策として税理士に依頼するメリット

税理士を付けるメリットは、確定申告書の代理作成や節税だけでなく、税務調査に関するメリットも存在します。

税務調査を受ける確率が下がる

税務署は無作為に調査対象者を抽出しているのではなく、調査する条件が揃っている納税者を中心に調査を実施しますので、狙われやすい事業者は対策が不可欠です。

年間で税務調査を受ける確率は税金の種類によって異なり、個人事業主(所得税)は概ね1%、法人(法人税・消費税)は3%~4%程度です。

税務署の調査担当者は、調査を実施したことによる実績が求められているため、増差税額が発生する可能性が高い事案ほど調査対象者として選定しやすい傾向にあります。

納税者が作成した申告書は、税理士が作成したものより申告内容に誤りがある可能性が高いため、税理士関与が無い申告書の方が税務調査を受けやすいです。

一方、税理士が関与している申告書は、税務署から一定の信用はされていますので、税理士を付けているだけで、調査を受ける確率は下がります。

出所:令和4事務年度国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/index.html

税務調査に対する不安を払拭できる

納税者が関与税理士を付けている場合、税務署は関与税理士を通じて納税者に連絡をしなければなりません。

したがって、関与税理士を付ければ税務署から直接連絡が入ることは無くなりますし、税理士が間に入って税務署の担当者と税務調査に関する話し合いをしますので、税務署のペースで調査が展開されることを防げます。

税務調査は納税者以外の人が立ち会うことはできませんが、納税者から委任を受けた税理士については立ち会いが認められています。

初めて税務調査を受ける納税者は、脱税行為をしていなくても調査について不安になりますが、税理士がいれば不安を軽減できますし、調査に関する疑問点を事前に税理士へ聞けるのも関与税理士を付けるメリットです。

税務署からの指摘に対して適切な対処を行える

個別判断を要する事項は適否が分かれやすく、納税者によって経費計上の可否や特例制度の適否が変わることは珍しくありません。

税務署は税務調査で白を黒にすることはしませんが、白黒はっきりしていない点を黒と認定し、申告誤りとして指摘することはあります。

納税者が税知識を十分に有していない場合、調査担当者からの指摘に対して反論することが難しく、根拠のある意見を主張できないと黒として認定されてしまう可能性が高いです。

その点、税理士は税務署の調査担当者と同等、またはそれ以上の知識・経験を有していますので、調査担当者が黒の疑いを向けたとしても、白である根拠を法令や判例等を交えて説明することができます。

税務署は黒と断言できないものを無理やり黒認定することはしませんので、見解が分かれる事項が多いケースほど、税理士の存在が活きてきます。

税務調査に強い税理士の見つけ方

税務署は牽制目的で税務調査を実施することがあるため、確定申告書を適正に作成したとしても、税務調査を100%回避することは困難です。

税務調査を受けないことが望ましいですが、税務調査が入ったとしても申告誤りを指摘されなければ、追徴課税を受けることはありません。

税務調査に強い税理士は、調査対象になったことも想定して対策を講じますので、調査を受けないことだけをアピールしている税理士には注意してください。

税理士の中には税務署側に傾いた対応をする方もいますので、税務署の調査担当者の要求を鵜呑みにせず、納税者の味方として行動する税理士に依頼してください。

税務調査リスクを下げたい方は税理士を活用すること

税務調査を可能な限り回避するためには、申告書を正しく作成することが最も重要です。

納税者が正しい申告書を作成するのは大変ですので、調査リスクを軽減する観点から税理士に依頼することも検討してください。

税務調査は一つの計算ミスが原因で実施されることもありますし、税理士が付いていない申告書は、他に誤りがないか念入りに調べられます。

全国には数多くの税理士事務所が存在しますが、事務所によって得意・不得意の分野は違いますし、税理士自身の能力にも差があります。 毎年申告する事業者は、顧問税理士の選び方が経営にも影響してきますので、信頼できる税理士を見つけていただき、事業に専念できる環境を整えてください。

税務でお困りごとがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へお問い合わせください。

令和6年度税制改正において交際費等の見直しが行われ、交際費等から除外される飲食費の基準額が、1人当たり5,000円から1万円に引き上げられました。

本記事では、交際費等から除かれる飲食費の金額基準が変更した経緯と、交際費等および飲食費に該当する範囲、そして損金計上する際の注意点について解説します。

令和6年度税制改正における交際費等の変更点

法人税では、接待交際費として支出した費用のうち、一定額以下の飲食費は交際費等の範囲から除かれます。

除外対象となる飲食費は、従来1人当たり5,000円以下とされていましたが、令和6年(2024年)4月1日以後からは基準額が1万円以下になります。

基準額の引き上げは、昨今の会議費の実態等を踏まえたものとされていますが、それ以外にも物価上昇による飲食費の高騰や、従来の5,000円の基準額は金額的に低いとの意見があったことも要因です。

令和6年度税制改正では、飲食費の基準額変更以外にも、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が3年延長されました。

法人が支出した交際費等は原則損金不算入ですが、資本金の額等が1億円超から100億円以下の法人は、接待飲食費の50%の損金算入が認められています。 中小法人(資本金の額等が1億円以下の法人)については、「接待飲食費の50%」または、「800万円までの交際費等の全額」のいずれかを選択できるため、交際費等を800万円以内に抑えれば交際費等を全額損金として算入することが可能です。

出所:令和6年度税制改正(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei24.html

交際費等の範囲

交際費等は、交際費や接待費などの費用のうち、得意先や仕入先等の事業関係者などに対する接待・供応・慰安・贈答、その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。

慰安のための支出であったとしても、専ら従業員のために行われる旅行等において通常生じる費用は、交際費等ではなく福利厚生費に該当します。

また、飲食その他これに類する行為のために要する費用のうち、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が、1万円以下(令和6年3月31日までは5,000円以下)である場合も交際費等から除かれます。

(専ら法人役員や従業員、これらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)

飲食代として支払った費用が1人当たり1万円以内であれば全額を損金に算入できますし、1万円を超えた場合には、交際費等として損金算入の判定を行うことになります。

得意先や仕入先、事業関係等に対する支出のうち、次の性質があるものは交際費等には含まれません。

<交際費等には該当しない支出>

  • 寄附金
  • 値引きおよび割戻し
  • 広告宣伝費
  • 福利厚生費
  • 給与等

寄附金と交際費等のどちらに該当するかは、個々の実態により判定することになりますが、金銭でした贈与は原則寄附金であり、社会事業団体や政治団体に対する拠出金や、神社の祭礼等の寄贈金についても交際費等には含まれません。 また、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するものなど、広告宣伝費の性質を有する支出も交際費等には該当しません。

交際費等から除外される飲食費の書類の保存要件

交際費等の範囲から「1人当たり1万円以下の飲食費」を除外する場合、次の事項を記載した書類を保存しなければなりません。

<記載事項>

  • 飲食等のあった年月日
  • 飲食等に参加した得意先、仕入先、その他事業に関係のある者等の氏名(名称)およびその関係
  • 飲食等に参加した者の数
  • 費用の金額、飲食店・料理店等の名称・所在地
  • その他参考となるべき事項

店舗を有しない飲食店である等を理由に、名称や所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名(名称)、住所(居所)または本店(主たる事務所)の所在地を記載しなければなりません。

法人税の申告をする際は、別表十五「交際費等の損金算入に関する明細書」で損金算入する額を計算します。

出所:交際費等の損金算入に関する明細書(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/15.pdf

1人当たり1万円以下の飲食費の判定

交際費等の範囲から除かれる飲食費は、次の算式で計算した1人当たりの金額が1万円以下の費用が対象です。

<1人当たりの飲食費の算定方法>

飲食等のために要する費用として支出する金額÷飲食等の参加者数=1人当たりの飲食費の金額

1人当たりの飲食費の金額は、単純に飲食等に参加した人数で除して計算した金額で判定します。

得意先等が飲食店等において、個々にどの程度の飲食等を行ったかは、1人当たりの飲食代を計算する上では関係ありません。

1人当たりの金額が1万円を超えた場合、その費用のすべてが交際費等に該当することになり、1万円を超えた部分だけが交際費等に該当する控除方式ではないため、交際費等に該当しない範囲で飲食代を支出したいときは、1人当たりの金額が1万円を超えないよう注意してください。

支出する費用に係る消費税等の扱い

「飲食等のために要する費用として支出する金額」に係る消費税等の額は、法人が適用している消費税の経費方式によって扱いが異なります。

法人が税込経理方式を適用している場合、支出する金額に消費税等の額を含めます。

一方、税抜経理方式を適用している法人については、消費税を支出する金額に含めないで飲食費1人当たりの金額を計算しなければなりません。

インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者以外の者から課税仕入れをする場合には、原則仕入税額控除を適用できなくなりました。

節税の観点からすると、相手方が適格請求書発行事業者に該当するかも関係してきますので、接待などのために飲食代を支出する際は、法人税だけでなく消費税の取扱いにも気を付けてください。

交際費等から除外される飲食費の範囲

税務調査では交際費等に関係する支出は必ずチェックされますので、交際費等から除外される飲食費の範囲を正しく把握することが大切です。

「飲食等のために要する費用」とは

飲食等のために要する費用は、飲食代だけでなく、飲食等のためのテーブルチャージ料やサービス料など、飲食店等に対して直接支払うものが対象です。

飲食等のために飲食店等に対し、通常直接支払わない費用は、飲食等のために要する費用には該当しません。

たとえば、得意先等を飲食店等へ送迎するための送迎費は、接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用であり、飲食等のために要する費用に該当しないことから交際費等として扱います。

「飲食その他これに類する行為」に該当するもの

「飲食その他これに類する行為」のために要する費用には、自社の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」だけでなく、得意先等の業務遂行や行事開催に際して差入れた弁当の代金なども含まれます。

飲食費に該当する弁当代は、得意先等において差入れ後、相応の時間内に飲食されることが想定されるものを前提とするため、飲食物の詰め合わせの贈答など、中元や歳暮を渡すのと変わらないものは「飲食その他これに類する行為」には含まれません。

一方で、飲食店等での飲食後に提供されている飲食物の「お土産代」のうち、代金を飲食店等へ支払うものについては、相応の時間内に飲食されることが想定されるかに関係なく、飲食に類する行為に該当するものとして飲食等のために要する費用となります。

まとめ

交際費等から除外される飲食費の基準額は引き上げとなりましたが、飲食費に該当するかの判定方法は従来と同じです。

基準額が5,000円から1万円に拡大したことは納税者にとってメリットがある変更ですが、税制改正が行われた部分は税務調査でチェックされやすいので注意してください。

接待交際費は税金対策として活用しやすい半面、損金算入が否認されることが多い項目でもあります。

中途半端な対策はリスクが伴いますので、税金対策・調査対策は専門家に相談の上、事業者ごとに適した手段を用いることを推奨します。

税務でお困りごとがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

「交際費」とは


交際費とは、事業をスムーズにおこなうために、取引先と飲食したり、贈答品を提供したりした場合に生じる支出です。

一般的に、交際費は取引先に関する支出と思われがちですが、社内の従業員に対する支出を含むことがあります。たとえば、「特定の部署の打ち上げ費用を会社が負担した場合」などがこれに該当します。詳細は、「福利厚生費に該当するケース」で解説します。

また、厳密に言うと、税務上は「交際費」ではなく「交際費等」として定義されていますが、この記事では便宜上「交際費」としています。

なお、国税庁は「交際費等」を以下のように定義していますので、ご確認ください。

「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。」

(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm

法人税法における「交際費」の具体的な範囲とは?


ここでは、「交際費」と「交際費に類似する支出」の範囲の違いについて解説をします。

「交際費に類似する支出」のなかには、社会の習慣や商取引上の慣習などの理由から「交際費として処理しなくてもよい」とされているものがあり、交際費とは明確に区別されています。

なぜ、このように規定されているかというと、交際費は経費として認められる(損金算入される)金額に、「限度額」が設けられているためです。

この限度額を超えた分は経費にできない(損金算入できない)ため、可能な限り「交際費以外」で処理をおこなうことで、「経費として認められる金額をトータルで増やす」ことができる可能性があります。

そのため、この記事では、「交際費として処理しなくてもよい」ものとして、福利厚生費・会議費・広告宣伝費・給与に該当するケースをとりあげ、詳しく解説をします。


福利厚生費に該当するケース

社内の運動会やレクリエーション、社員旅行など、従業員をいたわるための支出は交際費とはならず「福利厚生費」になります。

ただし、これには条件があります。それは、「従業員におおむね一律に」提供されているかどうかという点です。

具体的には、会社全体の忘年会における役員や従業員の飲⾷代は、「従業員におおむね一律に」提供されている支出のため、福利厚生費に該当します。一方、特定の部署や一部の社員の飲食代を会社が負担した場合は、交際費に該当することがあります。

会議費に該当するケース

・接待における「1人あたり5,000円以下」の飲食費

取引先の接待で飲食代を支払った場合でも、交際費から除外できるケースがあります。具体的には、支払金額を参加者数で割った数が5,000円以下である場合、つまり「1人あたりの飲食代が5,000円以下」のときがこれに該当します。

この場合、一般的には「会議費」で処理します。つまり、接待で「1人あたりの飲食代が5,000円以下」であれば、経費にすることができる(損金算入ができる)というわけです。

なお、これは特例のため、以下の事項が記載された書類を保存する必要があります。

飲食等のあった年月日
飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
飲食等に参加した者の数
その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm


その他、注意点としては、社内のメンバーによる飲食代である「社内飲食費」は、この特例の対象外となっている点です。そのため、たとえば、社内の特定の部署の打ち上げ費用が1人あたり5,000円以下であっても、交際費から除外することはできません。

会議のために必要な費用

会議を目的とする支出は、それが飲食などに関連したものであっても、交際費とする必要はありません。

たとえば、会議や商談で、お菓子やお茶、お弁当などを提供した場合は「会議費」として処理します。ここでのポイントは、会議に関連して「通常要する費用」であるかどうかという点です。

そのため、飲酒をしていたり飲食代が高額であったりした場合は、会議のための支出として「一般的に妥当かどうか」を慎重に判断する必要があるでしょう。

なお、会議の場所については特に制限がないため、ホテルなどであっても、会議の実態があれば会議費で処理することが可能です。

広告宣伝費に該当するケース

取引先に贈答品を提供する場合、基本的には「交際費」となります。しかし、宣伝を目的とした支出は「広告宣伝費」として計上することが可能です。具体的には、カレンダー・手帳・手ぬぐいなどを取引先に提供する場合がこれに該当します。

ここでのポイントは、贈答品などの提供が「不特定多数の一般消費者」に対するものかどうかという点です。一般消費者とは、物やサービスを最終的に消費する人をいいます。 そのため、たとえば、医薬品メーカーが医師に対して贈答品を提供するケースは、不特定多数の一般消費者に対する支出ではないため、広告宣伝費にはならないと考えられます。

給与に該当するケース

従業員の「プライベートの飲食代」を会社が支払った場合、交際費や福利厚生費ではなく、「給与」として処理します。この場合、法人としては、税務上経費にできます(損金算入)が、従業員は通常の給与と同様に所得税が課税されます。

役員のプライベートな飲食代は、役員への給与となります。役員の給与は、毎月定額であることなどの税務上の厳しい規制があるため、注意が必要です。

万一、「交際費」として計上していた費用が、税務調査などで「役員のプライベートな支出」と判断された場合、法人の損金に算入できないうえ、役員個人の所得税も課されるなど、様々な問題が生じます。そのため、役員の個人的な支出の扱いには、特に注意をしましょう。


その他の注意点

上記のほか、取材のための座談会や、情報収集のために一般的に必要とされる飲食代などは、「交際費」にはならず「取材費」などで処理します。この場合、税務上も経費にする(損金算入する)ことが可能です。


「交際費」を損金算入できる会社の規模と金額


中小企業は「800万円までの全額」を経費にできる

「交際費」の規定は、法人の規模に応じて以下の3段階に設定されており、中小企業(資本金が1億円以下の法人)は「800万円までの全額を、経費にすることができる」という特例が設けられています。


多くの中小企業においては、交際費を800万円も計上しないことが多いので、基本的には交際費の全額を経費にする(損金算入する)ことが可能といえるでしょう。

なお、「交際費」は税務上、原則として「全額」を損金に算入することができない規定となっています。つまり、すべて経費にすることができないわけです。

しかし、交際費は事業をスムーズにおこなうために必要な支出であるため、例外として、中小企業に対しては「特例」が設けられているという点を押さえておくとよいでしょう。


個人事業主と交際費

個人事業主は、交際費を経費として計上する上で、法人のような「上限」がありません。しかし、上限がないとはいえ、すべてのケースにおいて交際費が認められるわけではありません。

個人事業主が交際費を計上する場合は、「事業に関連した支出であるか」、「その支出が利益や事業の円滑化につながるか」などが重要です。

なお、個人事業主の経費全般についてはこちらで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

「個人事業主が経費にできるものとは?判断基準を解説」


まとめ


この記事では、交際費の範囲や損金算入について解説しました。

交際費で特に重要なのは、「交際費の具体的な範囲」を把握し、「交際費として処理しなくてもよい」と認められているものについては、交際費以外で処理をおこなうことです。

また、中小企業は、「800万円までの全額」を、交際費として経費にする(損金算入する)ことができるという点も重要です。

事業をスムーズにすすめ、売上を拡大するためには、「交際費」が不可欠なケースも多いと考えられます。一方で、交際費の規定は複雑で、なかなか理解が難しいというのも事実です。

また、交際費は税務調査で必ずといっていいほど調査対象となる項目ですので、不安を抱える企業も多いでしょう。そのため、交際費全般についてご不安な点がある場合は、神戸市東灘区の永安栄棟 公認会計士・税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。