確定申告をする際、届け出をすれば青色申告を選ぶことができ、特に届け出なければ白色申告になります。個人の方が確定申告をする際には「青色申告を選ぶべき?」と多くの方が悩むのではないでしょうか。
このコラムでは、個人の場合を中心に、青色申告と白色申告の違い、メリットとデメリットを紹介します。結論としては、青色申告を選ばない理由はほぼありません。青色申告の内容と手続きを確認しておきましょう。
青色申告と白色申告の概要と違い
青色申告と白色申告の概要と違いを紹介します。青色申告は自ら届け出をすることで選択できる制度です。メリットも多くありますが、課せられる義務もあります。
青色申告とは
青色申告とは、一定水準の記帳をして、その記帳に基づいて正しい申告をする方が、税務上の優遇措置を得られる制度です。届け出をすることで選択が可能です。
白色申告とは
白色申告とは、青色申告を選択しなかった方の申告方法です。青色申告の届け出をしなければ、自動的に白色申告となります。特に条件はありません。
青色申告と白色申告の違い
青色申告と白色申告の主な違いは、主に以下の3点です。
- 帳簿の記帳方法と確定申告時の作成書類
青色申告は、複式簿記で記帳しなければなりません(青色申告特別控除が10万円の場合を除く)。複式簿記は、取引を仕訳という形で記帳する方法で、利益を計算する損益計算書だけでなく、貸借対照表の作成も必要になります。複式簿記での記帳は手間がかかりますが「一定水準の記帳」に基づく「より正しい申告」とみなされ、多くの税務上のメリットがあります。
一方白色申告は、複式簿記での記帳は必要ありません。利益を計算するために収入と経費を集計すれば足ります。このため、貸借対照表の作成は必要なく、収支計算書を作成します。
- 届出書
個人の方が、青色申告を選択するには、原則として青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」の提出が必要です。提出がなければ自動的に白色申告になります。
- 青色申告が適用できる所得
青色申告で申告できるのは、不動産所得、事業所得、又は山林所得のある方です。他の所得については、そもそも制度の適用がなく、白色申告になります。
青色申告のメリットとデメリット
青色申告を選択すると、さまざまな税務上のメリットがあります。主なものは以下のとおりです。
- 最大65万円の青色申告特別控除
①不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
②複式簿記による記帳をしていること。
③②に基づいた貸借対照表と損益計算書を添付した申告書を期限内に提出すること。
上記の要件を満たした場合、不動産所得または事業所得から、最大65万円*の青色申告特別控除を差し引くことができます。
*電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告をおこなっている場合。当該条件を満たさない場合は55万円。
ただし不動産所得があるが事業的規模ではない場合は、青色申告特別控除として、65万円(または55万円)の控除を取れず、10万円となるケースがあるので注意してください。
なお、不動産所得が事業的規模であるかどうかの判定は、アパート10室以上、又は貸家5棟以上であることが目安となっています。
- 青色事業専従者給与
青色申告者と生計を一にしている配偶者・その他親族のうち15歳以上の方が、事業に専ら従事している場合には、その方への給与を青色事業専従者給与として経費とできます。
ただし、事前に給与の金額等について「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しなければなりません。給与の金額は、労務内容に見合った適正な金額であることが求められます。
- 純損失の繰越しと繰戻し
事業所得が損失で、もし他の所得と合算してもなおマイナスであった場合は、その損失額を翌年以降3年間繰り越すことができます。そして翌年以降に所得がでれば、この繰り越し金額を差し引けることになります。
また前年に所得が発生し、所得税を支払っている場合には、損失額を繰り戻して所得税の還付を受けることも可能です。
- 30万円未満であれば減価償却資産でも一括で経費にできる
耐用年数が複数年にわたる減価償却資産、例えばパソコンやプリンターなどの備品や事業に使用する車などは、10万円以上であれば全額を一度に経費とはできず、耐用年数にわたって経費になります。
しかし青色申告であれば、少額減価償却資産の特例が適用でき、取得価額が 30 万円未満の減価償却資産については、合計額 300 万円を限度として、全額経費に算入することができます。
白色申告のメリットとデメリット
白色申告のままで申告するメリットは、ほぼないといってよいでしょう。あえていえば、届け出の手続きを一切せずに申告が可能な点くらいではないでしょうか。
なぜなら、現在、不動産所得、事業所得、山林所得がある者は白色申告であっても簡易的な帳簿付けと書類の保存が義務づけられています。青色申告をする場合、複式簿記による記帳、確定申告の際の青色申告決算書の作成といった事務処理上の手間がかかるのが難点ですが、これは青色申告特別控除を65万円(または55万円)適用するための要件です。複式簿記をしなくても、届け出さえすれば青色申告は可能です(ただし青色申告特別控除が10万円となります)。青色申告の10万円控除と白色申告では、事務手続きは変わりません。どうしても記帳が難しい方は届け出するだけでもメリットがあります。
なお、複式簿記の記帳についても、近年では会計ソフトが便利になり、導入するだけで簿記の知識が少ない方でも比較的楽に記帳ができるようになっています。一度確認してみるとよいのではないでしょうか。
白色申告では、青色申告の税務上のメリットを享受できません。たとえ所得がない場合でも、青色申告であれば純損失の繰越しができます。将来の所得と相殺できるため、所得の状況に限らず青色申告は税務上のメリットがあるケースが多いでしょう。
どちらを選ぶとよいか?選べない場合もあるため注意
青色申告には大きな税務上のメリットがあるため、不動産所得、事業所得、山林所得があれば迷わず選択すべきといえるでしょう。
ただし事業所得と認められない場合は、そもそも青色申告は選べないため注意が必要です。近年副業をする方が増加し、副業の所得が「雑所得であるか、事業所得であるか」は注目されているところです。これについては別のコラム「副業の確定申告のやり方は? | 青色申告が可能かどうかも含めて解説」でも記載しますので、良かったらご覧になってみてください。
届け出の期限に注意しよう
青色申告を適用するには、原則として適用する年の3月15日までに、青色申告承認申請書を税務署に提出しなければなりません。ただし新規開業の場合は、開業後2か月以内に提出すればその年分から青色申告を適用できます。
届け出には期限があるため、早めに提出しましょう。
まとめ
以上、青色申告と白色申告の違いについて紹介しました。青色申告はメリットが大きいため、所得の多寡に関わらず適用をおすすめします。そして最大65万円の青色申告特別控除はさらにメリットが大きいため、ぜひ複式簿記での記帳をしてみましょう。
会計ソフトの導入、事務手続き簡素化のための記帳代行、申告代行などに関しては税理士に相談することもおすすめです。
青色申告判断に迷う場合や、その他の税務相談については神戸市東灘区の永安栄棟公認会計士・税理士事務所にお問い合わせください。