会計ソフトにはさまざまな種類がありますが、近年急速に普及してきたのがクラウド会計ソフトです。導入コストがかかると敬遠されてきた方でも、コロナ禍や電子帳簿保存法の改正などの環境の変化により、導入の検討を始めるケースが増えています。

このコラムでは、マネーフォワードやFreeeといったクラウド会計ソフトのメリットを中心に紹介します。また、デメリットと、導入時に補助が出るIT導入補助金についても合わせて紹介しますので、検討する際の参考にしてください。

クラウド会計ソフトとは何か

クラウド会計ソフトとは、インターネットから接続して利用する会計ソフトです。従来から普及している会計ソフトはインストール型とも呼ばれ、特定のパソコンにインストールをして利用する形式です。

両者の主な違いは以下のとおりです。

  • インストール型は、パッケージソフトを購入時に支払いをして、その後は大幅な改正がない限り費用は発生しません。クラウド会計ソフトは(導入費用+)利用期間にわたり利用料が発生します
  • インストール型はインターネットに接続していなくても利用可能です。クラウド会計ソフトはインターネット環境がないと利用できません
  • インストール型は、インストールしたパソコンでしか利用できません。クラウド会計ソフトは、インターネット環境があればどのパソコンでも利用可能です。

クラウド会計ソフトのメリット

クラウド会計ソフトのメリットを6点紹介します。共通しているのは、さまざまな意味で業務効率化を図れることです。以下で詳しくご説明します。

1.時間や場所を問わず利用可能で多様な働き方を実現

クラウド会計ソフトは、インターネット環境があれば利用が可能です。時間や場所を問わずアクセスができ、職場以外でも仕事が進められます。

このため職場に出勤できなくても、記帳業務が停滞しない仕組みを作ることが可能になります。テレワークなど多様な働き方を実現できるでしょう。

2.複数人での同時アクセスが可能で情報がリアルタイムに共有できる

インストール型の会計ソフトは、インストールされたパソコンでしか会計ソフトを入力・閲覧できません。一方でクラウド会計ソフトは、インターネット環境があればどのパソコンでも利用可能になります。このため、複数人が同時に会計ソフトを入力・閲覧することが可能になり、記帳業務を分業できるだけでなく、印刷して報告しなくても経営者が数字を確認することもでき、社内で会計ソフト上の情報を共有できます。分業化の推進やリアルタイムでの情報共有により、業務効率化を図ることができるでしょう。

税理士に顧問や申告を依頼している場合には、税理士も時間を問わずアクセスが可能なため、効率的に業務を行ってもらえます。税理士にタイムリーに数字を見てもらえれば、早めにアドバイスをもらえる可能性も高くなります。

3.アップデートが不要

税法は頻繁に改正されるため、会計ソフトも度々更新が必要になります。クラウド会計ソフトではインターネットに接続して利用するため、更新も自動でおこなわれます。このため、わざわざアップデートの手続きを行う必要がなく、安心して利用できるでしょう。

4.バックアップが不要

インストール型では、データが会社のパソコン内にしかないため、ご自身でバックアップをとる必要があります。一方で、クラウド会計ソフトでは、会計データがクラウド上で保存されるため、バックアップが不要になり、手間が省けるとともに安心して利用できます。

5.証憑保存機能が便利に利用できる

電子帳簿保存法の改正で、帳簿や会計資料のスキャナ保存に関する要件が緩和されました。特に請求書や領収書を電子データのまま保存する「スキャナ保存」は、大幅に紙の保管を減らすことができるなど、さまざまなメリットがあります。

クラウド会計システムではこのスキャナ保存に対応するものが多く、便利に利用できます。インストール型のものでも対応しているソフトはありますが、クラウド会計システムではスキャンデータをクラウド上で保存できるため、会計データだけでなく請求書などの会計資料まで社員で共有ができます。そして検索も容易にできるようになり、業務効率化が一層図れるでしょう。

6.銀行口座やクレジッカード明細の自動読込で効率化が可能

多くのクラウド会計システムでは、銀行口座の取引やクレジットカード明細の自動読込ができます。また条件で推測される仕訳を覚えさせるなどの便利な機能もあるため、仕訳の入力が省力化できるでしょう。また自動読込により、金額などの誤りを減らせる可能性が高くなります。

クラウド会計ソフトのデメリット

業務効率化につながるさまざまなメリットがあるクラウド会計ソフトですが、デメリットとしては主に以下の2点があります。

  • インターネット環境がないと利用できない
  • 月額料金がかかる

インターネットがつながらなければ利用できませんし、何らかの理由で接続状態が悪くなると、ソフトが動きにくくなるなどのトラブルにつながります。ただし、このような状況は稀にしか起きないとも考えられます。

クラウド会計ソフトでは、利用する限りは月額料金が発生します。ただし、近年ではクラウド会計ソフトが普及し、コストパフォーマンスの高いものが多くでてきています。業務効率化のメリットを考えると、クラウド会計ソフトは決して高いものではなくなってきています。

IT導入補助金も検討

中小企業、小規模事業者を対象に、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入するコストの一部を補助するIT導入補助金が募集されています。国が中小企業等の業務効率化やデジタル化を推進しており、近年予算が多くとられているところです。

IT導入補助金の対象はさまざまなものがありますが、クラウド会計ソフトに関係するところでは、ソフトウェアの購入、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費等が対象になります。PCやスキャナーなどのハードウェア購入費も対象です。要件がさまざまある上に、補助率、上限額、下限額がありますので、詳しくはIT補助金2022のホームページをご確認ください。今年度はまもなく終了してしまいますが、来年度も予算がつく可能性がありますので、注目しましょう。ポイントは、ITツールの導入をする前に補助金の検討をすることです。交付決定前に契約、支払したものは対象になりません。

まとめ

以上、クラウド会計ソフトのメリットを中心に紹介しました。かつては、小規模な事業者では必要ないと思われていた節もあったクラウド会計ソフトですが、メリットが多く、かなり普及が進んできています。近年では特に中小企業等の業務効率化、デジタル化が推進されており、普及に後押しをする形となっています。コストパフォーマンスも良くなっているため、過去に検討したことのある方は、今一度現在のクラウド会計ソフトの種類や性能、価格を確認し直してみるとよいのではないでしょうか。
神戸市東灘区の永安栄棟公認会計士・税理士事務所では、原則としてクラウド会計システムを用いて効率的な業務提供を行っています。導入支援も行っておりますので、お気軽にご相談ください。