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所得税の確定申告は、その年に納める額を計算するために行うものであり、申告義務のある方が定められた期間内に申告手続きをしない場合、手痛いペナルティを受ける可能性があります。

世間で流れている情報は真偽不明なものが多く、嘘の情報を鵜呑みにしてしまうと後日税務調査で指摘されることもあるので、本記事で個人事業主がやるべき確定申告と、申告をしない場合のリスクをご確認ください。

所得税の確定申告とは?


所得税は1年間の所得に対して課される税金で、確定申告期間は翌年2月16日から3月15日までの1か月です。

申告期間中に申告・納税が必要となりますので、確定申告で納める税額が発生する場合には、納付手続きも行ってください。

確定申告書は紙(書面)と電子(e-Tax)の2種類あり、書面で申告書を作成したときは、管轄税務署の窓口または郵送で提出することになります。

(管轄以外の税務署に、確定申告書を提出することはできません。)

税務署の開庁時間は8時30分から17時までですが、税務署に設置してある時間外収受箱に投函して提出することも可能です。

郵送で申告書を提出する場合、消印の日付が提出日となるため、消印が3月15日であれば、税務署に届くのが3月16日以後でも期限内申告として扱われます。

e-Taxはインターネットを経由して申告する方法で、申告期限・納付期限は書面申告と同じです。

書面申告との相違点としては、確定申告期間は基本的に24時間提出することができるため、平日の日中に税務署へ行くのが難しい方はe-Taxの利用も選択肢になります。

個人事業主が申告すべき所得税以外の税金


個人事業主は所得税だけでなく、消費税や住民税の確定申告が必要になる場合があります。

消費税は、消費税の課税事業者が申告する税金で、免税事業者に該当する個人事業主(法人)は消費税の申告をする必要がありません。

課税売上高が1,000万円以下の個人事業主は、今まで免税事業者に該当するケースが多かったですが、インボイス登録(適格請求書発行事業者の登録)を行った事業者は、課税売上高が1,000万円以下でも消費税の確定申告が必須となるので注意してください。

個人事業主の消費税の申告期限は翌年3月31日までで、納期限は申告期限と同じ日です。

税務署は、インボイス導入後しばらく消費税の無申告者を摘発するため、積極的に税務調査を実施する可能性が高いので、課税事業者に該当する方は消費税の申告も忘れずに行ってください。

住民税は地方税の一つで、所得税の確定申告をしていれば住民税の申告書を作成・提出する必要はありません。

しかし、所得税の申告を行っていない事業者は住民税の申告をすることになるため、翌年3月15日までに申告書を提出し、地方自治体から送付される納付書等で税金を納めてください。

確定申告を行わなかった場合のペナルティ


所得税の申告義務がある納税者が申告・納税を怠った場合、本税以外に加算税と延滞税を支払うことになります。


加算税は申告ミスに対するペナルティ

加算税は、申告誤りや無申告に対して課されるペナルティです。

たとえば納税額が100万円の人が70万円の申告書を提出した場合、申告漏れとなった30万円が加算税の対象になります。

主な加算税の種類としては「過少申告加算税」・「無申告加算税」・「重加算税」があり、申告状況等によって課される加算税の種類は変わります。

過少申告加算税は期限内に提出した申告書の内容が誤っている場合、無申告加算税は期限までに申告書を提出していない場合に課される税金です。

所得税は納税者が自ら申告して税金を納める「申告納税制度」を採用しているため、期限までに手続きをしなかった際に課される無申告加算税の方が、過少申告加算税よりもペナルティは重いです。

重加算税は、意図的に税金を誤魔化した場合に課される税金で、加算税の中で税率が最も高いです。

ケアレスミスや計算誤りに対して重加算税が課されることはありませんが、悪質な脱税については重加算税の対象になりますので注意してください。


延滞税は税金の滞納に対するペナルティ

延滞税は、納期限までに税金を納めなかった場合に課されるペナルティです。

定められた納期限までに支払いが完了していない場合、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて延滞税が発生します。

(法定納期限は法律で定められた納付すべき期限で、法定申告期限と法定納期限は原則同じ日です。)

納付が遅くなるほど延滞税の額は増えていきますので、確定申告を行う際は申告書を提出するだけでなく、納付も済ませてください。

<延滞税の計算式>

出所:延滞税の計算方法(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm



青色申告の取り消し


個人事業主は、申請することで青色申告者として確定申告を行うことができます。

青色申告には税制上の優遇措置がいくつも用意されていますが、期限までに申告しないと優遇措置を受けられない可能性があります。

たとえば青色申告特別控除は最大65万円を控除することができる制度ですが、申告期限を過ぎてしまうと控除額が10万円にまで減少します。

また、税務署が適正に申告手続きをしていないと判断した場合、青色申告が取り消される可能性があるので気を付けてください。


税務調査で申告誤りが指摘された場合の影響


税務調査は申告書を提出した納税者だけでなく、無申告の納税者に対しても実施されます。



加算税の適用税率が高くなる


加算税は修正申告・期限後が自主的に行われたものか、税務調査を実施したことで提出されたものかによって適用される税率が異なります。

過少申告加算税の税率は原則10%ですが、自主的に修正申告書を提出した場合、過少申告加算税は課されません。

自主的に期限後申告を行ったときは無申告加算税として5%の税率が適用されますが、無申告加算税の税率は通常15%ですので、自主的に申告するだけで10%分の加算税を軽減できます。

また、重加算税は税務調査が実施されないと課されることはないので、申告誤りに気が付きましたら、自主的に修正申告(期限後申告)を行うようにしてください。

出所:加算税の概要(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf


次回以降に税務調査を受けるリスクが上がる


個人事業主は毎年確定申告を行いますので、会社員や公務員よりも税務調査を受けやすいです。

税務署は申告誤りが見込まれる納税者を優先的に調査する傾向にあり、過去に税務調査で申告誤りを受けてしまった事業者は、税務署に要注意人物としてマークされる可能性があります。

適正に申告していても税務調査の対象になることはありますが、調査を受ける確率を下げるためにも、正しい内容の申告書を提出することが大切です。

期限までに確定申告が間に合わない場合の対処法


申告期限までに確定申告をできないときは、1日でも早く申告書を提出できるよう行動します。

税務調査で無申告が指摘されれば重いペナルティが課されてしまうので、無申告のまま放置するのは危険です。

また、税務署は提出した申告書をすべてチェックしますので、申告内容の誤りが多ければ、その分だけ税務調査を受けるリスクは高まります。

そのため、少しでもペナルティとリスクを抑えたい場合には、ご自身で申告書を作成するのではなく、専門家である税理士に申告手続きを依頼することも検討してください。永安栄棟 公認会計士・税理士事務所でも、ご相談を承っております。

まとめ


会社員が住宅ローン控除や医療費控除を適用するのと違い、個人事業主が作成する申告書はボリュームがありますし、計算に間違いがあれば税務署から指摘される可能性があります。

税務署は税金を過大に納めることには寛容ですが、過少申告については厳しい対応をしてきますので、申告書を適正に作成することが重要です。

税理士は申告書を作成するだけでなく、節税のアドバイスも行えますので、申告に関してお悩みの方は、1度税理士事務所に相談することをオススメします。是非一度、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

個人事業主として活動する際、毎年頭を悩ませるのが確定申告です。

税金関連の手続きは適切に処理しなければならず、確定申告のしかたを間違えてしまうと、個人事業主でも税務調査の対象になるので注意してください。

本記事では、初めて確定申告を行う個人事業主に向けて、所得税の確定申告手続きの流れと申告時の注意点について解説します。

個人事業主がやるべき所得税の確定申告とは


所得税の確定申告は、1年間の所得金額や納税額を納税者自らが計算し、税務署に申告する手続きをいいます。

所得税は個人の所得に対してかかる税金で、平成25年から令和19年までの期間については、所得税と一緒に復興特別所得税も納付することになります。

住民税は所得税と同様、所得金額に応じて課される税金ですが、所得税の確定申告書を提出した場合には、住民税の申告手続きをする必要はありません。

一方で、所得税の申告をしないときは、住民税の申告手続きが必要になるので注意してください。

所得税の確定申告期間と申告・納税のしかた


所得税は納税者が申告書を作成・提出するだけでなく、算出した所得税も自主的に納めなければなりません。

所得税の申告期間は翌年2月16日から3月15日

所得税の確定申告は、対象年分の翌年2月16日から3月15日の間に手続きすることになります。

(申告期限が土曜日・日曜日・祝日の場合、申告期限はその翌日です。)

確定申告書の提出先は、提出時の納税地を管轄している税務署です

納税地は原則住所地とし、指定された税務署以外の税務署に申告書を提出することはできませんが、納税地の特例により、事務所などの所在地を納税地にすることは可能です。

なお、個人事業主が事務所の所在地を納税地とする際は、税務署に「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を提出しなければなりません。

書面申告と電子申告(e-Tax)の違い

確定申告書を提出する方法としては、書面申告と電子申告(e-Tax)の2種類があります。

書面申告は申告書を手書きで作成する場合や、パソコン等で作成した申告書を印刷し、税務署に提出する方法です。

<見本:所得税の確定申告書(第一表)>

確定申告書は郵送で提出することも可能ですが、「郵便物」(第一種郵便物)または「信書便物」で送付しなければなりません。

e-Taxは、国税庁ホームページ等で申告書を作成し、電子的に申告手続きを行う方法です。

国はe-Taxを推進していますので、税制上の優遇措置を最大限活用するためには、e-Taxで申告することが求められます。

所得税の納期限は申告期限と同日

所得税の納期限は、申告期限と同日の翌年3月15日までとなっています。

住民税とは違い、税務署から納付書は送られてきませんので、納税者自身が期限までに自主的に支払いを完了させる必要があります。

所得税は管轄税務署の窓口で所得税を納めることもできますが、クレジットカード納付などを利用すれば、税務署が開いていない日でも納付することも可能です。

<個人事業主が関係する令和5年分の主な国税の納期限および振替日>

出所:主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200042/noufu_kigen.htm



<所得税の納付方法>

  • 窓口納付
  • 振替納税
  • ダイレクト納付
  • インターネットバンキング・ATMによる納付
  • クレジットカード納付
  • スマートフォンアプリ納付(スマホ納付)
  • ORコードを利用したコンビニ納付

個人事業主が所得税の確定申告をする際の流れ


所得税の税額計算を行うためには、事前に必要書類を揃えておく必要があります。

所得税の確定申告書の作成方法

所得税の確定申告書は、各所得の金額を計算後に所得控除額を差し引き、課税所得金額に対して所得税の税率を乗じて、所得税額を算出します。

<所得税および復興特別所得税の申告納税額の計算の流れ>

出所:所得税のしくみ(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm


個人事業主が得た所得は基本的に事業所得の対象となり、事業所得は青色申告決算書(収支内訳書)で計算を行い、算出した所得金額を申告書に記載します。

所得控除は下記の種類が存在し、該当する所得控除の額を計算して合計額を算出します。

<所得控除の種類>

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除


所得税額は、合計所得金額から所得控除額を差し引いた後の金額(課税所得金額)に所得税率を乗じて算出することになりますが、適用する税率は課税所得金額によって異なります。

住宅ローン控除などの税額控除がある場合には、所得税額から控除し、源泉徴収税額および予定納税額を差し引いた額が所得税の納税額です。

なお、所得税額から税額控除を差し引いた額が源泉徴収税額や予定納税額の方が大きかった場合、所得税を納め過ぎていたことになりますので、確定申告をすることで税金が還付されます。

<所得税の税率表>

出所:No.2260 所得税の税率(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm



帳簿書類は確定申告書を作成前に整理しておくこと

個人事業主は、確定申告書を作成する前に帳簿関係の整理をしておくことが肝要です。

所得税の確定申告書は帳簿の内容をベースに計算しますので、記帳ミスや漏れがあると申告書を正しく作ることができません。

個人事業主としての収入以外に収入がある方については、他の収入も含めて確定申告を行うことになりますので、給与所得の源泉徴収票なども必要になりますし、所得控除や税額控除を適用する際は社会保険料などの金額を確認できる書類等も用意してください。

事業関係の領収書等については保存期間が定められており、保存期間が経過する前に領収書等を処分してしまった場合、税務調査で経費が否認されてしまう可能性があります。

税務署は物的証拠が残っていないと経費を認めない傾向にありますので、関係書類は破棄しないよう気を付けてください。

白色申告と青色申告のどちらで申告すべきか

個人事業主が申告書を提出する際には、収支内訳書または青色申告決算書を作成することになります。

収支内訳書は白色申告者が、青色申告決算書は青色申告者が作成する書類で、原則は白色申告により確定申告を行うことになります。

ただし、個人事業主が事前に「所得税の青色申告承認申請書」を提出した場合には、青色申告を行うことが可能です。

青色申告は一定水準の記帳等が求められる一方、税制上の優遇措置が設けられています。

<青色申告で手続きした際の優遇措置>

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 貸倒引当金の優遇措置
  • 純損失の繰越し・繰戻し

青色申告の代表的な特典としては、最大65万円を控除できる「青色申告特別控除」や、損失が発生した際に最大3年間損失額を繰り越すことができる繰越控除があります。

事務作業量が増えるデメリットはありますが、節税を第一に考えるのであれば、白色申告ではなく青色申告で申告手続きを行うことが望ましいです。

確定申告の相談先は税務署か税理士


確定申告に関する代表的な相談先は、税務署と税理士です

税務署では確定申告期間になると相談会場を設営していますので、相談会場で申告書を作成し、そのまま提出することもできます。

申告書の内容が比較的簡便な方であれば、税務署に相談することも選択肢になりますが、相談会場では細かい税金相談はできませんし、節税等に関する質問をするのも難しいです。

一方、税理士は税の専門家であることはもちろんのこと、日頃の節税や帳簿作成等についてのアドバイスを行うことができます。

個人事業主は申告書の作成だけでなく、税務調査対策も必要となってきますので、節税とリスク管理を最優先に考える場合には税理士へ相談することをオススメします。

まとめ


確定申告書を作成した経験がある人でも、個人事業主として初めて申告する場合、作成方法や用意すべき書類等は異なります。

年に1度しか作成する機会がない書類を完璧に仕上げるのは難しいですし、税務調査で申告内容の誤りを指摘されてしまうと余計な税金を納めることになりかねないため、調査対策も重要です。

顧問税理士がいれば申告書の作成依頼はもちろんのこと、節税に関する質問・相談することもできますので、確定申告に関する疑問点がありましたら永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。


消費税の確定申告は、個人事業主や会社(法人)の売上が一定以上になった際に行いますが、インボイス制度が導入されたことにより、今まで消費税の申告が不要だった事業者も申告手続きをすることになります。

本記事では、初めて消費税の申告をする個人事業主に向けて、消費税の計算方法および手続きの仕方をわかりやすく解説します。

消費税の確定申告は課税事業者が行う


消費税の確定申告を行うことになるのは、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者です。

消費税の課税事業者になるのは法人だけでなく、個人事業者や国、地方公共団体等も含まれ、非居住者や外国法人についても課税事業者に該当する際は消費税の納税義務者になります。

個人事業主の課税期間は暦年(1月から12月)であり、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、翌々年から消費税の確定申告が必要です。

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は免税事業者に該当し、その課税期間の消費税の納税義務は免除されます。 ただし、事業者が「消費税課税事業者選択届出書」を提出しているときは、課税売上高が1,000万円以下であったとしても確定申告をしなければなりません。

個人事業主の消費税の申告・納付方法


消費税は、納税義務者が自主的に申告を行う「申告納税方式」が採用されているため、消費税の課税事業者に該当する方は、毎年申告書を作成することになります。

個人事業主は、消費税の申告書を翌年3月31日までに提出しなければならず、申告書の提出先は、原則住んでいる場所を管轄する税務署です。

ただし、個人事業者が納税地を選択している場合には、住所地に代えて事務所等を管轄する税務署へ申告することになります。

消費税の納期限は申告期限と同日であるため、期限までに申告だけでなく納税も済ませなければなりません

振替納税により消費税を納税することも可能ですが、振替納税は税目ごとに手続きを要します。

既に所得税で振替納税を選択している方でも、消費税の振替納税の申請をしていないと自動引き落としにならないのでご注意ください。

消費税の原則的な計算方法


消費税の課税事業者は、課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いた額を納めることになります。

消費税の税率は8%と10%の2種類あるため、税率ごとに区分して計算しなければならず、計算のベースとなるのは消費税が課されている売上や仕入れですので、消費税の課税・非課税対象の区分けも必要です。

消費税を算出する計算方法は複数用意されており、原則課税(一般課税)の計算式は下記の通りです。

<一般課税の計算式>

課税期間中の課税売上げに係る消費税額-課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額=消費税額


課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額を、課税期間中の課税売上げに係る消費税額から差し引くためには、「仕入税額控除」の要件をすべて満たしていなければなりません。

仕入税額控除の適用要件としては、法定事項が記載された帳簿および請求書等の保存があります。

取引等を税率ごとに区分して記帳していないケースや、必要書類等の保存を怠っている場合、税務調査で仕入税額控除の適用が否認されますので注意してください。

消費税申告とインボイス制度の関係性


インボイス制度が導入されたことにより、消費税の仕入税額控除を適用するためには、原則インボイス(適格請求書)の保存等が必要です。

しかし、インボイスを発行できるのはインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)に限られ、インボイス発行事業者以外からの仕入れに係る消費税は仕入税額控除に含めることができません。

税務署に登録申請を行えば、インボイス発行事業者として活動できるようになりますが、登録申請を行うことができるのは消費税の課税事業者に限られるため、免税事業者は消費税の課税事業者を選択することを迫られます。

消費税の課税事業者を選択してしまうと、消費税の申告手続きを毎年することになりますので、免税事業者として活動していた小規模事業者は新たに消費税の負担額が発生します。

消費税の特例制度


消費税の確定申告を行う場合、原則課税(一般課税)ではなく、簡易課税や2割特例を用いて計算することも認められています。

簡易課税制度による消費税の計算方法

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が適用できる制度です。

課税期間における課税売上げに係る消費税額に、事業区分に応じた一定の「みなし仕入率」を乗じた金額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなし、納付する消費税額を算出します。

<簡易課税制度の計算式>

課税期間中の課税売上げに係る消費税額-(課税期間中の課税売上げに係る消費税額×みなし仕入率)=消費税額

みなし仕入率は業種ごとに設定されており、たとえば卸売業のみなし仕入率は90%ですので、課税売上に係る消費税の10%を納めることになります。

簡易課税制度は仕入れに係る消費税を算出する必要がないので計算が簡便であり、仕入税額控除の適用も不要なので、インボイスの保存をしなくても消費税の計算を行えます。

ただし、制度を利用するためには事前に届出書の提出が必要ですので、届出書の提出漏れには注意してください

2割特例による消費税の計算方法

2割特例は、インボイス制度導入のタイミングでインボイス発行事業者になるために、免税事業者から課税事業者になった事業者が適用できる制度です。

仕入税額控除の代わりとして、課税標準である金額の合計額に対する消費税額の80%を特別控除税額として差し引くことができるため、消費税の税負担は20%まで軽減されます。

申告書に特例を適用する旨を付記するだけで受けられますので、届出書の提出は必要ありません。

適用期間は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となっており、一般課税と簡易課税のどちらを選択している場合でも2割特例は適用可能です。

ただし、2割特例はインボイス制度が導入されたことで消費税の課税事業者となった事業者への救済措置であるため、以前から課税事業者として活動していた事業者は2割特例を適用することができません。 また、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者など、インボイス発行事業者の登録と関係なく免税事業者の対象外となる場合も、2割特例は受けられませんのでご注意ください。

消費税の申告手続きをしないリスク


消費税の課税事業者が定められた期限までに申告・納税を行わなかった場合、加算税・延滞税の対象となります。

加算税は期限までに適正な申告書を提出しなかったことに対するペナルティで、意図的に提出しなかった場合には、本税の40%が重加算税として課される可能性があります。

延滞税は期限までに納税を完了していなかった際に課されるペナルティで、納付が遅くなるほど延滞税の額は増えていきます。

納期限から2か月を超えても未納額が残っている場合には、適用される延滞税の税率が上がりますので、申告だけでなく納付忘れにも気を付けてください。

まとめ


インボイス制度が導入されたことで、今まで免税事業者だった方も消費税の申告書を作成しなければならなくなります。

2割特例などの経過措置も設けられていますが、申告書の内容を間違えてしまうと税務調査で指摘され、税金を余分に支払うことになりかねません。

税務署は、大規模な税制改正が行われたタイミングで税務調査を積極的に実施する傾向がありますので、少しでも申告手続きに不安がある方は、ぜひ一度、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。


会社を設立した際などに決める役員報酬ですが、一般的な相場や注意点などが分からないと悩む方もいるのではないでしょうか。

この記事では、役員報酬について、次の内容を分かりやすく解説しています。

  • 役員報酬の概要
  • 役員報酬の決め方や変更方法
  • 役員報酬の相場
  • 役員報酬を決める際の注意点

役員報酬を決める時や、変更が必要な場合にぜひご覧ください。

役員報酬とは?

役員報酬と従業員給与の違いは、おもに「支払先が取締役などの経営幹部である」ことと、報酬額の決め方や報酬額を「損金」として計上するための「ルールがあること」です。

なお、損金とは、納税額を計算する際に「経費」として計上できるものを指します。

従業員給与は基本的に全額を損金として計上可能ですが、役員報酬を損金にするには厳しいルールがありますので、のちほど詳しく解説します。


役員報酬に含まれるものと含まれないもの

役員報酬には、現金の支給以外にも「現物支給」や「経済的利益」なども含みます

そのため、マンションの家賃や保険料、役員の個人的な寄付行為などについても役員報酬となります。

一方で、賞与や退職金、従業員として受給している給与などについては、役員報酬には含みません

賞与や退職金については、役員報酬とはルールが異なりますので、これらを損金に計上したい場合は、毎月支払う役員報酬とは別で検討が必要です。

役員報酬の決め方と変更方法


前述したように、役員報酬の決め方は従業員給与とは異なります。

たとえ経営者であっても、金額を自由に設定することはできません。

ここでは、役員報酬の具体的な決定方法について、そのルールを解説していきます。

定款または株主総会の決議によって定める

役員報酬は「定款または株主総会の決議によって定める」と、会社法によって決められています

しかし、規模の小さな法人では、役員報酬に関しては定款には入れていないことも多く、記載している場合でも「株主総会の決議にて決定する」などとしていることが多いようです。

そのため、中小法人の役員報酬は株主総会で決議されることが一般的です。

株主総会で決める方法は、次の2つがあります。

  • 役員それぞれの報酬額を決める
  • 役員報酬の総額だけを株主総会で決めておき、後ほど、取締役会などで役員それぞれの報酬額を決める

どちらを選択した場合でも、損金に役員報酬を計上する際には、根拠として示せるように議事録を残す必要があります

なお、議事録は税務調査の際に提示を求められることがありますので、忘れずに残すようにしましょう。

報酬の総額を決める時期が決まっている


役員報酬の金額は、会社設立時の場合には設立から3カ月以内、それ以外は事業年度開始から3カ月以内に決めなくてはなりません

上記の期間に決めていない場合には、損金に役員報酬を計上することができません。

また、一度決定した役員報酬は翌事業年度までは、原則として変更ができな点にも注意が必要です。

そのため、タイミングに注意して慎重に報酬額を決めるようにしましょう。

変更には条件があるので注意

前述のとおり、役員報酬は、原則として1年に1回しか変更することができません。

とはいえ、業績の状況などにより、期中において変更を検討するケースもあるでしょう。

ここでは、役員報酬を期中においても変更できるケースについて解説します。

役員報酬を増額する

役員への昇格や、職務内容が変わったことで業務の負担が増えた場合などは、役員報酬を増額することができます

たとえば、退任した役員のポジションを兼務する場合などが、このケースに該当します。

ただし、役職が変わっただけで実務が伴っていない場合には、税務署から指摘を受ける可能性があるため注意が必要です。

役員報酬を減額する

会社の業績不振などにより経営状況が悪化した場合には、役員報酬の減額ができます

しかし、どの程度悪化したら減額可能といった明確なルールはないため、株主や取引先などへの影響を考慮したうえで、減額するかの判断をおこなうとよいでしょう。

増額・減額ともに、変更をおこなうには客観的な事実が必要です。自由に変更することはできない点に留意しましょう。

役員報酬の相場

役員報酬は、あまりに高額である場合には、税務署より指摘が入り損金に計上できなくなることがあります。

そのため、いくらが妥当なのか疑問を持つ方も少なくないでしょう。

そのような疑問を解決するため、ここでは、役員報酬の相場について解説します。

小規模企業者の役員報酬は「経営判断」で大きく変動する

小規模企業者の役員報酬を決める際には、まず会社に利益を残すか、残さないかを考える必要があります

一般的に、会社に利益を残す場合には役員報酬を抑え気味にして、設備投資などに資金を回す傾向にあるようです。

一方で、会社に利益を残さない方針の場合は、役員報酬で会社に残る利益を少なくする方法も考えられます。

この場合、役員報酬を損金に計上することで節税につながりますが、社長の所得税負担が増加することや、「利益が少ない」ことで、金融機関から融資を受ける際に影響がある可能性もあります。

資本金ごとの目安

次に、資本金・従業員・業種ごとの役員報酬の目安について紹介をします。

ただし、先に述べたとおり、役員報酬の金額は経営判断で大きく変動することから、参考程度にするとよいでしょう。

ここでは、資本金ごとの役員給与の目安を紹介します。

※一万円未満切捨

出典:国税庁 令和3年分 民間給与実態統計調査から一部抜粋

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2021/pdf/000.pdf


従業員規模ごとの目安

ここでは、従業員規模ごとの目安をご紹介します。

以下の表をご参照ください。

※一万円未満切捨

出典:人事院 民間企業における役員報酬(給与)平成30年 調査 企業規模別、役名別平均年間報酬から一部抜粋

https://www.jinji.go.jp/toukei/0321_yakuinhousyu/0321_yakuinhousyu_ichiran.html

業種ごとの目安

ここでは、業種ごとの目安をご紹介します。

※一万円未満切捨

出典:人事院 民間企業における役員報酬(給与)調査 平成30年 産業別、企業規模別、年間報酬金額階層別人員構成比から一部抜粋

https://www.jinji.go.jp/toukei/0321_yakuinhousyu/0321_yakuinhousyu_ichiran.html



役員報酬を決める際の注意点


役員報酬を決める際には、損益に計上できる支払方法を選択することに注意が必要です。

認識違いなどにより損金に計上できなかった場合、納税額に大きく影響し、会社経営に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、議事録の保存や期限内に報酬額を決めるといったルールを守ることはもちろんですが、次の2点についても注意が必要です。



会社の収益とのバランスを考慮する

先にも触れたとおり、小規模企業者の役員報酬は「経営判断」で大きく変動します。

そのため、会社に利益をどのくらい残すかなど、バランスを考慮する必要があるのです

会社に利益を多く残す場合には、会社の経営状況はよくなるため、取引先や金融機関からの信用は得られやすい一方で納税額が多くなります

逆に、役員報酬を多くする場合は節税につながりますが、収益が少ないため対外的な信用が得られにくくなる点に注意が必要です。

そのため、役員報酬を決める際には、会社の収益とのバランスを考慮することが大切です。

シミュレーションして税金や社会保険とのバランスをとる

会社の収益とのバランス以外にも、法人・社長個人が納める税金や、社会保険とのバランスも考える必要があります。
そのため、会社の収益と納税額についてシミュレーションし節税効果を加味したうえで、報酬額を決定するとよいでしょう。

まとめ

この記事では、次の内容について解説しました。

  • 役員報酬の概要
  • 役員報酬の決め方や変更方法
  • 役員報酬の相場
  • 役員報酬を決める際の注意点

役員報酬の金額によって、会社の収益バランスや節税効果に影響があります。

また、ルールに従って決めないと、損益に計上できず会社経営に影響する可能性があります。

ぜひ、この記事を参考にして役員報酬を決める際の一助にしてください。

消費税とは?

消費税とは、商品の販売やサービスの提供等に対して課される税で、最終消費者が負担しています。例えばコンビニで食品を買った場合、食品の本体価格に加えて消費税も一緒にレジで支払いますね。このように消費税は最終消費者が負担するものなのですが、支払っている先は税務署ではなく「お店」です。

ここに焦点を当てて、「消費税の納税の仕組み」を解説します。

消費税の納税の仕組み

最終消費者が消費税を納付しない点は、先ほど確認したとおりです。
では、消費者を納付するのは誰なのでしょうか?
実は、税金を預かった「お店」が納付しています。

もう少し詳細に説明をすると、商品やサービスを売り上げた際に預かった消費税から、仕入時に支払った消費税分を差し引いて、その差額を納付しています。お店も商品を仕入れる際に消費税を支払っていますので、支払った分の消費税は差し引いて納付をするわけです。難しい用語ですが、この仕組みを「仕入税額控除」といいます。

そのため、個人事業主も一定の売り上げを超えた場合、消費税を税務署に納付する必要があるのです。

消費税の課税事業者と免税事業者

個人事業主が消費税を税務署に納付するかどうかは、「売上高」を基準としています。

細かな規則はありますが、わかりやすく説明をすると、一昨年の売上高が1,000万円を超えると本年から消費税を納めることになります。このような消費税を納める義務がある人を「課税事業者」といいます。この売上高は「課税売上高」に限定されているので、商品の輸出に関係する売上など、もともと消費税が課税されない取引は、これに含まれません。

一方、一昨年の課税売上高が1,000万円以下の場合など、消費税を納める義務がない人を「免税事業者」といいます。そのため、課税売上高が1,000万円を超えた場合は、翌々年から消費税を納めなければならないということを押さえておきましょう。

消費税の計算方法は2種類

原則課税と簡易課税

消費税を納めなければいけない「課税事業者」は、基本的に預かった消費税から支払った消費税を差し引いた額を税務署に納税します。

具体的な例で説明をしましょう。
売上が税込1,100万円で、経費が税込550万円だとします。
消費税の税率は10%なので「預かった消費税が100万円」で、「支払った消費税が50万円」となります。そのため、最終的に納付する税金の額は、100万円-50万円=50万円となります。このような計算方法は、「原則課税」と呼ばれ、消費税を計算する上で原則的な方法となっています。

実は、消費税の計算にはもう一つの方法が用意されています。それは、「簡易課税」という計算方法です。簡易課税は、一昨年の課税売上高が5,000万円以下の場合に利用することができる、消費税の計算の「特例」です。

こちらも、具体的な例で説明をしましょう。
まず、売上に関する税金の計算は、原則課税と全く同じです。
そのため、売上が税込1,100万円であった場合、「預かった消費税は100万円」となります。

一方、経費として支払った税金(預かった消費税から差し引く分の税金)については、業種別にざっくりと「売上の60%」などと決められており、その算式を元に計算します。

(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm

たとえば、飲食店業であれば「売上の60%」を経費としてみなします(これをみなし仕入率といいます)。

具体的な計算方法はというと、まず、売上が税込1,100万円である場合、預かった消費税は100万円となります。この100万円に60%を掛けると60万円なので、支払った消費税は60万円とみなされます。そのため、100万円-60万円=40万円を税務署に納めることになります。

簡易課税の注意点

前述の通り、簡易課税の計算は売上の情報のみで完結します。そのため、事務処理の負担が小さいというのが特徴です。ただし、簡易課税には主に2つの注意点があります。

まず1つ目は、「届出が必要」という点です。
簡易課税をおこなうには、簡易課税で計算をおこなう年の前年中に、届出書(消費税簡易課税制度選択届出書)を税務署に提出しなければなりません。

そして2つ目は、簡易課税は少なくとも「2年間は継続」しなければならないという点です。そのため、簡易課税で計算をする2年間に設備投資などが見込まれる場合は、簡易課税を適用することで損をする可能性があります。その点も踏まえて、どちらを選択するかを考える必要があるのです。

消費税の計算上のシミュレーションは複雑な部分も多いため、お困りの場合はお気軽に当事務所へお問い合わせください。

消費税の納税方法

消費税の納付期限は3月31日です。これは、個人事業主の消費税の確定申告期限と同じ日となっています。なお、土日の場合は翌月曜日が納付期限となります。

消費税は税務署等から納付書が送付されません。そのため、以下のいずれかの方法で、ご自身で納付する必要があります。

・金融機関の預貯金口座から口座引落しする
・e-Taxで口座振替する
・インターネットバンキングやATMで納付する
・クレジットカードで納付する
・スマートフォンアプリを利用して納付する
・QRコードによりコンビニエンスストアで納付する
・現金で納付する

なお、期限内に納付しなかった場合は「延滞税」がかかりますので、注意が必要です。

個人事業主の注意点

免税事業者でも消費税を請求できる

前述したとおり、課税売上高が1,000万円を超えた場合は、翌々年から消費税を納めなければなりません。一方で、課税売上高が1,000万円以下である場合は、消費税の申告・納税をする必要はありません。このような事業者を「免税事業者」といい、特に個人事業主の中には免税事業者が多く存在します。

免税事業者は消費税を納付する必要がないため、「消費税を請求できない」と誤解されているケースがあります。しかし、実際には免税事業者であっても消費税を請求することができるのです。理由としては、免税事業者であっても、仕入れの際に商品の本体価格と一緒に消費税を支払っているため、商品を売り上げる際に一緒に消費税を請求しなければ、支払った消費税を取り戻すことができないと考えらるためです。したがって、免税事業者であっても消費税を請求しても問題ありません。

インボイス制度の注意点

インボイス制度は「適格請求書等保存方式」といい、令和5年10月1日より開始される制度です。「適格請求書(通称インボイス)」がなければ、消費税の仕入税額控除ができないため、取引先の消費税の負担が増える可能性があります。そのため、インボイスを発行できない免税事業者は、インボイスを発行できる「適格請求書発行事業者」を検討する必要があるでしょう。

具体的には、インボイス制度の導入により、個人事業主の選択肢は以下の3つになると考えられます。

1.免税事業者(インボイス発行✕)
2.適格請求書発行事業者を選択し、「原則的な計算方法」で申告納税する(インボイス発行◯)
3.適格請求書発行事業者を選択し、「簡単な計算方法」で申告納税する(インボイス発行◯)

1を選択した場合、取引先は消費税の仕入税額控除ができないため、取引上不利になる可能性があります。一方、2・3を選択した場合は取引先に影響はないものの、基本的には自らが消費税を納税することになるため、その分の負担が大きくなります。なお、上記のいずれかを選択するかについては、当初、令和5年3月31日(令和5年10月1日から適格請求書発行事業者になるための期限)までに対応方法を決める必要がありました。しかし、令和5年度税制改正大綱により、事実上令和5年9月30日までに登録申請をすれば令和5年10月1日から「適格請求書発行事業者」に登録される予定となりましたので、それまでにどのような選択をおこなうかについて検討しておきましょう。

インボイス制度についてはこちらに詳しく記載していますので、あわせてご覧ください。

「インボイス制度とは?対応しないとどうなるか | 免税事業者を中心にわかりやすく解説」
https://osakacpa.com/invoice/

まとめ

この記事では、消費税の仕組みと注意点について解説しました。

個人事業主は、消費税の申告・納税について様々な選択をおこなう必要があります。特に注意したいのは「原則課税か簡易課税か」という点と、インボイスにおいて「適格請求書発行事業者となるか」という点です。

これらの選択には、ケース別に消費税を計算するなどのシミュレーションが欠かせません。そのため、消費税全般についてご不安な点がある場合は、神戸市東灘区の永安栄棟公認会計士・税理士事務所にまでお気軽にお問い合わせください。

年末調整と確定申告は、ともに1年間の所得税の金額を確定させる手続です。しかし対象者が異なります。また、どちらか一つだけではなく年末調整をしていても確定申告も行う方もいます。

このコラムでは、年末調整と確定申告の概要と対象者、両方が必要になるケース、必要ではないが確定申告をした方が得になるケースを紹介します。

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告の違いは何でしょうか。おおまかには、会社員は年末調整、その他の自営業者などの方は確定申告を行い、所得税を確定します。それぞれの概要と、詳細な対象者などを説明していきます。

年末調整とは?概要と対象者

年末調整とは、1年間の給与が確定したら、年間の所得税の金額を計算する手続きです。年末までにすでに源泉(天引き)してある所得税と最終的に支払う所得税の差額を還付または徴収します。

対象者は給与をもらっている会社員です。そして会社員の中でも、原則として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しており、年末に在籍している方になります

会社員の中には社長や役員も含まれますが、

上記の条件に当てはまる会社員であっても、主に下記の場合には年末調整を行いません。

  • 給与の年間収入が2,000万円を超える場合
  • 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている場合
  • 前職があるが、前職の源泉徴収票を提出しない場合

稀に従業員から「確定申告をするため、年末調整はしなくてもよい」という申し出がある場合があります。しかし会社としては年末調整の義務があるため、対象者であれば年末調整を行わねばなりません。

年末調整をしても、さらに確定申告が必要なケース、した方がよいケースがあります。どのような場合でも、年末調整を受けた上でさらに確定申告をすることは可能です

確定申告とは?概要と対象者

確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を確定して所得税の金額を計算し、税務署に申告した上で所得税を納付する手続きです。

所得があり、所得税が発生するすべての方が対象です。自営業者の方、フリーランスの方など事業を行っている方などが当てはまります。ただし、会社員で年末調整を受けた方は原則として確定申告の必要はありません。しかし、上記で述べた、給与の年間収入が2,000万円を超えるなどの「年末調整の対象外」の方は確定申告が必要です。

会社員がもらう給与は「給与所得」ですが、所得の種類には他にも「事業所得」「不動産所得」など10種類あります。これらの所得が基礎控除48万円を超える場合は原則として確定申告が必要です。ここで所得とは、収入から必要経費、所得の種類ごとに決まっている控除を差し引いた金額です。単純に「収入」の金額ではなく、儲けの部分であることに注意してください

原則として、所得が基礎控除の金額以上であれば確定申告が必要と考えるべきですが、例外的に確定申告が必要ないケースがあります。代表的には、以下のような場合です。

  • 株式売却や配当の所得があるが、証券会社などで「特定口座の源泉徴収あり」で取引した場合
  • 公的年金等による収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下である場合

年末調整をしていても確定申告が必要なケース

注意点として、会社員が年末調整を受けても、確定申告が「必ず」必要なケースがあります。主なケースは以下のとおりです。

  • 2箇所以上で勤務している場合。ただし年末調整されなかった勤務先での所得が20万円未満の場合は除きます。
  • 給与所得以外に年間20万円以上の所得がある場合
  • 年末調整で誤った情報を勤務先に伝えてしまったが、訂正期限が過ぎてしまった場合

年末調整をしてもらった所得以外に「20万円以上の所得」があれば、確定申告が必要です。例えば複数箇所で勤務している場合、フリーランスとして副業をしている場合などが当てはまります。最近では暗号資産の取引をする方が増えていますが、所得が出た場合は雑所得にあたり、確定申告が必要です。株式の特定口座の取引とは異なりますので注意してください。

繰り返しますが20万円はあくまで「所得」であり、「収入」ではありません。例えばフリーランスとして副業をした場合、収入が20万円あっても経費を差し引けば20万円以下になる場合は、申告の必要はありません。

また「扶養できない方を扶養として申告してしまった」など、年末調整を誤ってしまうことがあります。会社が訂正を受け付けてくれる場合はよいのですが、事務手続上一定の期日で締め切っていることがほとんどでしょう。この場合はご自身で確定申告が必要です。

その他、上場株式等に係る譲渡損失と配当所得等との損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けようとする方などは、上記に当てはまらない方であっても確定申告が必要です。

年末調整をしていても確定申告をした方がよいケース

年末調整をしていても、確定申告「も」した方がよいケースは、確定申告をすると所得税が還付されるケースです。主なケースは以下のとおりです。

  • 医療費控除を受ける場合
  • 住宅ローン控除を受ける初年度の場合。(2年目以降は年末調整で還付してもらえます。)
  • ふるさと納税をして、ワンストップ特例の適用を受けない場合
  • 年末調整で、控除を適用できる資料を提出漏れしてしまった場合

普段年末調整をしてもらっている方は、確定申告に縁がないことが多いかもしれません。しかし、上記の場合は確定申告をすると所得税が還付になるため、確認してみましょう。

年末調整をしている方が確定申告をする場合は、源泉徴収票が必要です。数字を転記する必要があるため、必ず保管しておきましょう。

ふるさと納税は、会社員の場合「ワンストップ納税」が便利です。自治体へワンストップ納税の申請書を送付しておけば、確定申告をせずに翌年の住民税から自動的に税金を控除してくれます。しかし、寄付団体が5自治体までという制限があるので注意が必要です。ワンストップ納税の適用を受けない方は、確定申告をして税金の還付を受けます。この場合は、寄付自治体数の制限はありません。

この他、年の途中で退職して年末調整を受けられなかった方で、給与の他に所得がない方は、確定申告をすると所得税が還付される可能性が高いです。確認してみましょう。

まとめ

以上、年末調整と確定申告の違いについて説明しました。年末調整は給与をもらう会社員だけが受けられる制度です。年末調整は、書く書類が多くて面倒だと思う方もいるかもしれません。しかし多くの場合、確定申告の方が手間がかかります。確定申告をせずに、所得税を確定する手続きを、勤務先が代行しているともいえます。

ただし年末調整をしているからといって、すべてのケースで確定申告をしなくてもよい訳ではありません。確定申告をしなければならない、または、確定申告をすると所得税の還付が受けられるケースを確認しておきましょう。

もし還付のための確定申告を失念しても、その年の翌年1月1日から5年間は申告が可能です。諦めずに申告してみましょう。年末調整、確定申告を始め、税務相談については永安栄棟公認会計士・税理士事務所にお問い合わせください

近年、副業を推進する会社も増え、会社員が副業をする機会が増えてきました。会社員が給与をもらうだけであれば、通常年末調整を行うため、確定申告とは無縁の方も多いと思います。しかし、副業で収入を得ると年末調整の対象にはならず、原則として確定申告が必要です。知らずに申告をしないと、後日思わぬ税負担・延滞税などのペナルティが発生する可能性がありますので、よく確認しましょう。

このコラムでは副業で収入を得た場合に、確定申告が必要かどうか、必要な場合はどのように行うかを説明します。また、副業であっても節税ができる「青色申告」が可能かどうかも合わせて紹介します。

副業の確定申告はいくらから必要?

副業がアルバイトで給与をもらうケースでは、副業の給与所得の合計額が20万円以下の場合は所得税の確定申告は不要です。副業といっても内容はさまざまで、せどりなどの物販やクラウドソーシングを利用して業務を請け負うケースもあります。副業がこうした給与所得以外の場合でも、副業の所得の合計金額が20万円以下の場合は所得税の確定申告は不要です

ここで20万円というのは「所得」(もうけ)であることに注意してください。所得は、収入から経費を差し引いた金額です。経費があれば差し引き、その結果が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要です

ただし、給与の収入が2,000万円を超える方など、元々確定申告が必要な場合や、医療費控除や、ふるさと納税による寄付金控除(ワンストップ特例を用いない)などを受ける為に確定申告を行う場合は、副業の金額に関わらず申告が必要です

また、原稿料やデザイン料などは事前に所得税が源泉されていることがあります。副業の所得が20万円以下でも、確定申告をすると還付になるケースもありますので、計算してみるとよいでしょう。

確定申告のやり方は?

確定申告をする場合、まずは副業の「所得の区分」を確認しましょう。所得の区分には10種類あり、区分ごとに所得税の計算方法が異なります。

代表的なものは以下のとおりです。

  • アルバイト・・・給与所得
  • クラウドソーシングを利用した業務請負、せどりなどの売却益など・・・雑所得。ただし事業的規模の場合は事業所得。
  • 株の運用益・・・譲渡所得(ただしNISA口座や、特定口座で源泉徴収されている場合、確定申告は不要です)
  • 不動産の家賃収入・・・不動産所得
  • 暗号資産の売却益・・・雑所得

そしてそれぞれの所得区分に定められた方法で、副業の所得を計算します。

また、本業の会社員の給与所得については源泉徴収票が発行されていますので、その情報を確定申告書に記載します。保険料控除など、年末調整で処理してもらっているものは、確定申告では源泉徴収票の情報を転記するだけで足ります。

所得税の確定申告は、国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用すると便利です。

確定申告をして、副業が会社に知られてしまうか

確定申告の情報は、本業の会社には知らされません。このため、副業の収入を知られること基本的にはありません。

しかし、住民税は特別徴収であるため、本業の会社に住民税の金額が通知されます。副業の収入も含めた課税所得をもとにして住民税が計算されるため、住民税の金額が高額であると、本業以外に収入があることが推測されてしまいます。これを避けるためには、確定申告書上で給与所得等以外の所得に係る住民税の徴収方法について、普通徴収を選択する欄に〇をすることで、副業分の住民税を会社経由の天引きではなく、自分で納付することが可能です。ただし申告書に普通徴収の記載があっても、自治体がミスをするケースや、そもそも普通徴収を受け付けてくれない自治体もあります。知られるリスクはゼロではないでしょう。

なお、副業がアルバイトなどの給与所得の場合は自分で納付することはできないため、避ける方法はありません

ただし、確定申告をしなければ、後日、思わぬ税負担や延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。所得があればかならず確定申告を行いましょう。

青色申告はできる?雑所得か事業所得か

前述したように、業務委託形式の副業などは原則として雑所得にあたります。雑所得は所得の区分の中でも税制面のメリットがありません。

  • 総合課税の対象
    本業など、他の所得とすべて合算した金額が、課税対象となります。
  • 累進課税の対象
    所得が高くなるほど、税率も高くなります。
  • 損益通算ができない、赤字の繰越ができない
    赤字でも他の所得から差し引けません。翌年以降に繰り越して所得から相殺することもできません。

一方で事業所得は、青色申告を適用すると最大65万円の青色申告特別控除をはじめとして、損益通算ができる、赤字も繰り越せるなどの税務上のメリットが多くあります。雑所得を事業所得として申告できるかどうかは、税務上大きな違いになります。副業であっても、事業所得として認められれば節税が可能です。

この点、雑所得と事業所得の違いに関して所得税基本通達が改正されました。内容を紹介します。

雑所得の判定に関する所得税基本通達の改正の概要

2022年8月、副業収入が年間300万円以下であればすべて雑所得とする案が公表されました。しかし多くの反対意見が集まり、この金額基準は撤廃されました。

最終的に見直しされた後の通達における、雑所得と事業所得の区分のポイントは以下のとおりです。

  • 本業、副業に分けての判別はしない
  • 事業所得と認められるには、社会通念上、事業的規模で行われているかどうかで判定する
  • 記帳・帳簿保存がある場合には、おおむね事業所得であると判断する

記帳・帳簿保存があるかどうかという基準が新たに加わりました。しかし以前より事業所得では記帳・帳簿保存が求められているため、新たな義務が加わった訳ではありません。明確化されたことで、しっかりと遵守する必要が出てくるでしょう。

まずは社会通念上の判断になる

記帳・帳簿保存があれば、すべてが事業所得となる訳ではありません。まずは社会通念上、事業的規模で行われているかどうかで判断されます。

社会通念上とは、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無などさまざまな観点から判断されます。

副業の場合、特に以下の場合には事業と認められるかどうかを個別に判断する、とされていますので、注意が必要です。

  • 収入金額が僅少と認められる場合
    例えば例年、収入金額が300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満の場合。例年、とはおおむね3年程度の期間をいいます。
  • 営利性が認められない場合
    例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取り組みを実施していない場合。

副業の赤字を本業の給与所得から差し引く、いわゆる副業節税を排除するため、社会通念上事業として認められない場合には、雑所得として判断されます。

まとめ

以上、副業の確定申告について、確定申告が必要かどうか、必要な場合はどのように行うかについて紹介しました。副業といってもさまざまな業務内容があります。所得の区分によって所得税の計算方法が異なりますので、注意しましょう。特に雑所得か事業所得かの判断は、税額に大きな影響を与えるところになります。慎重な判断が必要になります。事業所得で申告をする場合には、節税効果の高い青色申告を選択することがおすすめです。
副業の確定申告判断に迷う場合や、その他の税務相談については神戸市東灘区の永安栄棟公認会計士・税理士事務所にお問い合わせください