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個人事業主として活動する方は、青色申告または白色申告で確定申告を行うことになります。

どちらで手続きするかは事業者の選択になりますが、基本的には青色申告で手続きすることが望ましいです。

本記事では、青色申告と白色申告のメリット・デメリットおよび、青色申告が推奨される理由について解説します。

青色申告の特徴とメリット・デメリット

青色申告には税制上の優遇措置が与えられていますが、青色申告で手続きするためには一定の労力が伴います。

青色申告とは

青色申告は、一定水準の記帳に基づいて申告書を作成することを条件に、税制上の優遇措置が受けられる申告をいいます。

青色申告を選択すると、節税効果の高い制度を適用できるようになりますが、青色申告をするためには事前申請が必要です。

また、作成すべき帳簿は白色申告よりも多く、原則として正規の簿記に従って記帳することが求められるため、青色申告で手続きするためにはある程度の簿記知識を身に付けなければなりません。

青色申告の特典は節税効果が高い

青色申告者が適用できる主な特典は、次の3つです。

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 純損失の繰越し

「青色申告特別控除」は、所得金額から最高65万円を差し引くことができる控除です。

事業所得や不動産所得は、収入金額から必要経費を差し引いた額が所得金額(利益)として所得税の課税対象となります。

しかし、要件を満たした青色申告者は、算出された利益から最高65万円を控除することができるため、青色申告をするだけで一定の節税効果が得られます。

「青色事業専従者給与」は、 配偶者等に支払う給与を事業所得などの必要経費として算入することができる制度です。

青色事業専従者に対して支払った金額が適正であれば、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載された金額の範囲内で、支払った給与を必要経費に算入することができます。

純損失の繰越しは、赤字を翌年の所得金額から差し引くことができる制度です。

通常、事業所得や不動産所得で発生した損失額(赤字)は、他の所得と損益通算することは可能ですが、控除しきれず残った損失額を翌年に繰り越すことはできません。

しかし、青色申告者は控除しきれない部分の金額(純損失の金額)を、最長3年間繰り越すことが認められています。

繰り越した損失額を翌年以降の所得金額から差し引けますので、赤字を無駄なく活用することができます。

作成すべき帳簿が多く保存期間は原則7年

青色申告を行う場合、原則として正規の簿記で記帳しなければなりません。

正規の簿記とは、貸借対照表と損益計算書を作成できるように記帳する方法をいい、作成した帳簿書類は、基本的に7年間保存しなければなりません。

請求書や見積書などの書類については保存期間が5年となっていますが、それ以外の帳簿書類の保存期間は白色申告よりも2年長いです。

出所:記帳や帳簿等保存・青色申告(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm

青色申告は事前申請が必須

青色申告は事前に申請書を提出し、税務署に承認された場合に限り適用できる制度です。

個人事業主が青色申告として申告手続きを行う場合、青色申告をしようとする年の3月15日までに、「青色申告承認申請書」を納税地の税務署に提出しなければなりません。

3月15日を過ぎてから承認申請書を提出した場合、青色申告で手続きできるのは翌年からとなるので注意が必要です。

ただし、新規開業した個人事業主(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合)については、業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を提出すれば、その年から青色申告で手続きすることができます。

なお、青色申告の対象となるのは不動産所得・事業所得・山林所得を有する方に限られ、雑所得として申告する際に青色申告は適用できません。

白色申告の特徴とメリット・デメリット

白色申告は基本となる申告手続きですが、青色申告と比較すると優劣が出るので、白色申告の特徴も確認してください。

白色申告とは

白色申告は、青色申告以外の申告をいいます。

個人事業主として活動を開始する際は、税務署に「個人事業の開業・開業等届出書」を提出することになりますが、白色申告をするために提出する届出書はありません。

取引等に関する記帳は白色申告者も必要ですが、青色申告者に比べると作成すべき記帳の種類は少なく、簡易な方法による記帳が認められています。

そのため、最低限の簿記知識を有していれば、新たに個人事業主として活動を始めた方でも申告書を作成することができます。

青色申告の特典が適用できない

白色申告に税制上の制約はないため、白色申告で確定申告書を作成したとしても不利益を被ることはありません。

しかし、白色申告者は青色申告の特典を受けられないことから、他の事業者が活用している節税方法を適用できない可能性があります。

たとえば、青色申告特別控除は最大65万円まで所得金額を控除できますが、白色申告者は、青色申告特別控除を受けられませんので、青色申告者よりも所得税の課税対象となる金額が最大65万円多くなります。

また、損益通算しきれない損失額が生じたとしても、損失額を翌年に繰り越すことができないので、青色申告に比べると節税面では不利です。

帳簿書類の保存期間は原則5年

白色申告は、簡易な方法による記帳が認められているため、青色申告者よりも帳簿書類を作成するための労力を抑えることができます。

収入金額や必要経費、取引を行う際に作成した帳簿や、請求書、領収書などの書類は保存する必要がありますが、保存期間は青色申告よりも短いです。

ただし、法定帳簿に該当する帳簿の保存期間は7年と、青色申告と同じ長さになっている点には注意してください。

出所:記帳や帳簿等保存・青色申告(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm

個人事業主は青色申告と白色申告のどちらで申告すべきか

事業内容は同じでも、申告方式が違うだけで申告手続きにかかる労力や節税のしかたは変わりますので、ご自身にとってメリットがある申告方式を用いて手続きを行ってください。

節税するなら青色申告一択

青色申告と白色申告にはそれぞれに特徴がありますが、継続して事業を営む方は青色申告で確定申告書を作成して提出してください。

白色申告でないと適用できない制度は存在しませんが、青色申告をしないと適用できない制度は多数あります。

特に青色申告特別控除は、利益が出ている事業者であれば全員に恩恵がある制度なので、支払う税金を少しでも抑えたい事業者は青色申告で手続きした方がいいでしょう。

青色申告は税務調査を受けるリスクを下げられる

税務調査は個人事業主に対しても実施されますが、青色申告と白色申告を比較した場合、白色申告の方が調査対象になりやすいです。

国税当局は適正に申告書を作成してもらうための施策として青色申告制度を導入していますので、同一内容の青色申告と白色申告による申告書が提出された場合、白色申告で手続きした申告書を調査対象者として選ぶ可能性が高いです。

税務署は数年分の申告書をまとめて調査するため、申告書を提出してから数年後に税務調査が実施されることも珍しくありません。

青色申告も調査対象になることはありますが、白色申告に比べると対象になりにくいため、調査対策の観点で考えても青色申告で手続きすることが望ましいです。

個人事業主の税金対策は税理士に相談すべき

SNS上では、白色申告の方が税務調査を回避できると主張する人もいますが、税務署は青色申告を推奨していますので、白色申告が税務調査において優遇されることはないです。

継続的に事業を営んでいる個人事業主が白色申告で手続きしている場合、帳簿書類を適切に作成しているかを確認するために、税務調査が実施される可能性もあります。

少しでも節税したい個人事業主は青色申告で申告すべきですが、正規の簿記による記帳を行うなどの要件をクリアしなければなりません。

適切な税金対策を講じつつ、税務調査を回避したい個人事業主は、早めに税の専門家である税理士にご相談ください。

何かお困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

また、弊所のサービスについては、以下よりチェックしてみてください。

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個人事業主は会社員とは違い、確定申告で納税する金額を計算します。

申告内容の誤りはもちろんのこと、申告義務がある人が無申告の場合も税務調査の対象となるので気を付けてください。

本記事では、申告義務のある個人事業主の範囲と、確定申告手続きの流れについて解説します。

個人事業主が確定申告をしなければならない理由

個人事業主が申告手続きをしなければならないのは、確定申告でその年に納める所得税や消費税の額を計算するからです。

所得税は個人事業主やフリーランスだけでなく、会社員も支払っている税金ですが、会社員は勤務先の年末調整で所得税の過不足を精算できるため、基本的に確定申告手続きは不要です。

それに対し、個人事業主やフリーランスには年末調整がないため、自身でその年に生じた所得金額を計算し、所得税の納税額を求めなければなりません。

所得税の申告義務は、納税額が生じる方に課されるものなので、赤字となった個人事業主は、申告しなくてもペナルティを受けることはないです。

しかし、特例制度の適用や赤字を翌年に繰り越すためには申告書の提出が必須となるため、個人事業主は赤字・黒字に関係なく、毎年確定申告をする前提で行動する必要があります。

個人事業主が確定申告で納める税金の種類

個人事業主が確定申告で納める税金の種類

所得税の確定申告は必須

所得税は、その年に発生した所得に対して課される税金です。

確定申告期間は翌年2月16日から3月15日の1か月で、個人事業主は毎年所得税の確定申告書を提出することになります。

期限までに申告書を提出しなかった場合、加算税が課されることになるので注意してください。

また、所得税の納期限は申告期限と同日ですが、期限までに所得税の支払いが完了していないときは、延滞税の対象となります。

インボイス登録をした事業者は消費税の申告も必要

消費税の確定申告は、課税事業者に該当する人(法人)が行うことになります。

基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者は課税事業者となるため、該当する個人事業主は所得税だけでなく、消費税の申告手続きも要します。

個人事業主の消費税の申告期限・納期限は翌年3月31日で、所得税よりも半月ほど遅いです。

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の免税事業者に該当するため、原則消費税の申告は不要です。

ただし、インボイス登録(適格請求書発行事業者の登録)をした事業者は、消費税の課税事業者になりますので、課税売上高が1,000万円以下であったとしても消費税の申告をしなければなりません。

住民税の申告は所得税の申告手続きをしていれば不要

住民税は地方税の一つで、所得税と同様、所得金額に対して課される税金です。

申告期限は所得税と同じ翌年3月15日ですが、所得税の申告書を提出している場合、申告書の内容が税務署から役所に伝えられるため、住民税の申告手続きを別途行う必要はありません。

住民税の支払いは、翌年6か月から4回に分けて納めることになります。

個人事業主が確定申告をしないリスク

個人事業主が確定申告をしないリスク

本税と一緒に加算税・延滞税を支払うことになる

税務署は、期限内に適正に申告・納税をした人と区別するために、申告誤りや無申告、納税の遅延に対するペナルティを設けています。

加算税は期限までに正しい内容の申告を行わなかったことに対するペナルティで、申告誤り等に応じて、「過少申告加算税」・「無申告加算税」・「重加算税」のいずれかが適用されます。

延滞税は、納期限までに税金を納めなかった場合に課されるペナルティです。

延滞税の額は、納付が遅れた日数に応じて日割り計算するため、税金の支払いが遅れるほどペナルティが重くなります。

また、税務署が滞納した税金が支払われないと判断した場合、財産の差押えを実施しますので、期限までに支払いが間に合わなかったときは、1日でも早く納めるようにしてください。

出所:加算税の概要(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf

青色申告の特典を受けられない

青色申告は、一定の帳簿等を作成することを条件に、税制上の優遇措置が受けられる制度をいいます。

青色申告の特典は節税効果が高いものが多いため、税負担を軽減したい個人事業主は青色申告で手続きすることが望ましいです。

税務署に「青色申告承認申請書」を提出すると、青色申告で申告手続きを行えるようになりますが、青色申告の特典の中には期限内申告が要件となっているものもあるため、確定申告書は必ず期限内に提出してください。

また、青色申告者が脱税行為などを行った場合、青色申告の承認が取り消しになることもありますので、正しい内容の申告書を作成することも大切です。

税務調査の対象になりやすくなる

申告誤りに対しては加算税・延滞税のペナルティが課されますが、個人事業主が税務調査で誤りを指摘された場合、その後にも影響が及びます。

税務署には毎年膨大な数の申告書が提出されるため、税務調査は調査対象者を選定して実施しています。

過去に申告誤りや無申告が指摘された事業者は、再び申告誤りをする可能性があることから、調査対象者として選定されやすいので気を付けてください。

高額・悪質な脱税は逮捕される

多額の申告漏れが発生した場合、加算税・延滞税といったペナルティだけでなく、逮捕される可能性があります。 昔は脱税額1億円が逮捕される目安の一つとされていましたが、最近では脱税額が1億円以下でも逮捕される事例が続出しています。

個人事業主が確定申告手続きをする際に押さえておくべきポイント

確定申告書は、次のポイントに気を付けて作成してください。

申告期限・納期限は厳守

個人事業主は、申告期限と納期限は厳守してください。

申告期限を過ぎてしまうと無申告加算税の対象になりますし、納付が遅れるほど延滞税の額も増えていきます。

所得税の確定申告期間は1か月ありますが、毎年手続きすることになりますので、年明けから申告書を作成する準備を整えておくのが望ましいです。

「税務署にバレないだろう」はハイリスク

SNSなどでは、「税務署にバレなければ無申告でも問題ない」や、「税金逃れは白色申告の方がやりやすい」といった意見も見受けられますが、真に受けないよう気を付けてください。

無申告に対する調査は青色申告・白色申告に関係なく実施されますし、税務署は取引先の情報から無申告の実態を把握することもあるので、白色申告の方が税務調査を受けにくい根拠はありません。

また、税金逃れは重加算税の対象になりますし、逮捕されるリスクも生じますので、面倒であっても申告書は必ず提出してください。

税理士に申告書作成を依頼するのも選択肢

本業が忙しい方や、確定申告書を作成するのが難しい方は、税理士に申告書作成を依頼することも検討してください。

税理士に依頼する際には報酬費用が発生しますが、事業者自身が確定申告書を作成するコストを削減できますし、計算ミスや経費の計上漏れなども防げます。

税理士が作成した申告書は誤りが少ないため、税務調査を受けにくくなる効果も期待できるので、税務調査対策としても有効です。

所得税の確定申告書に税理士が関与している割合は20%程度と、相続税や法人税に比べると低いため、他の税金よりも税理士に依頼することで税務調査を抑制する効果が期待できます。

出所:令和5事務年度 国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/policy_evaluation/proceedings/material/81seihyoukon03.pdf

個人事業主に関係する税金は税理士に相談すること

個人事業主は毎年所得税の確定申告が必要になりますし、消費税の課税事業者に該当する方は、消費税の申告手続きも必要です。

税務署は税金の過少申告は指摘しますが、過大申告を指摘することはほとんどないため、税金を払い過ぎている個人事業主は一定数存在します。

最適な方法で節税をするためには税知識が不可欠ですので、税金の支払いを少しでも抑えたい個人事業主は、1度税理士にご相談ください。

お困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

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個人事業主は所得税だけでなく、消費税の確定申告も必要になることがあります。

申告義務がある人が申告手続きを行わなかった場合、ペナルティが課されるだけでなく、税務署から要注意人物としてマークされることになるので注意してください。

本記事では、個人事業主が消費税の申告が必要になるケースと、不要なケースをそれぞれ解説します。

消費税の納税義務者とは

消費税の確定申告が必要となるのは、原則事業者に限られます。

事業者には法人だけでなく、個人事業主(個人事業者)も含まれ、日本国内に住所等を有しているか否かは問いません。

そのため、国内で消費税の課税対象となる取引を行っている事業者は、非居住者や外国法人であったとしても、納税義務者となるので気を付けてください。

消費税の確定申告が必要ない人

次のいずれかに該当する人は、消費税の確定申告手続きをする必要はありません。

消費税の納税義務者に該当しない

消費税の確定申告手続きが必要になるのは、消費税の納税義務者に該当する人(法人)に限られます。

消費税は消費者も納めている税金ですが、事業を営んでいない人は基本的に申告手続きをする必要はありません

ただし、輸入取引は、輸入品を引き取る者が消費税の納税義務を負うため、給与所得者等であっても、輸入品を引き取る際には納税義務者となります。

免税事業者に該当

消費税では、課税期間の消費税の納税義務が免除される「事業者免税点制度」が設けられています。

事業者免税点制度の対象となるのは、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者で、免税事業者に該当するときは、事業を営んでいる人でも消費税の確定申告は不要です。

なお、消費税の課税事業者を選択している事業者については、課税売上高が1,000万円以下でも消費税の申告義務が生じるので注意してください。

消費税の確定申告が必要になる事業者

個人事業主が次のいずれかに該当する場合、消費税の確定申告が必要になります。

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた

個人事業主は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合、課税事業者として消費税の申告をしなければなりません。

課税期間は、事業者が納付(還付)すべき消費税額を計算する期間をいい、個人事業主の課税期間は1月1日から12月31日までです。

基準期間は、納税義務の有無を判定する期間であり、個人事業主の基準期間は対象年分の前々年です。

課税期間の課税売上高が1,000万円を超えたとしても、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者となります。

ただし、基準期間における課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合には、課税事業者となるので注意してください。

特定期間は、対象年分の前年1月1日から6月30日までの期間(個人事業主の場合)をいい、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で判定することも認められています。

出所:消費税のしくみ(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm

免税事業者が課税事業者を選択した場合

課税売上高が1,000万円以下であったとしても、「消費税課税事業者選択届出書」を提出した事業者は、消費税の申告をしなければなりません。

免税事業者は、消費税の納税額が算出される場合でも申告手続きは不要となる反面、還付金が生じたとしても申告手続きを行えないデメリットがあります。

たとえば、輸出業者は経常的に消費税額が還付になることから、課税売上高が1,000万円以下でも、消費税の課税事業者を選択するメリットがあります。

免税事業者が課税事業者を選択する際は、課税期間の初日の前日までに、納税地の税務署に対して「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要です。

課税事業者を選択後に免税事業者に戻りたいときは、免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日までに、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出してください。 ただし、課税事業者となった日から2年間(事業を廃止した場合を除く)は、免税事業者に戻ることはできません。

インボイス登録をした事業者

令和5年10月1日から、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が開始されました。

インボイス制度に対応した事業者(適格請求書発行事業者)になるためには、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出しなければなりませんが、登録申請ができるのは消費税の課税事業者に限られます。

したがって、課税売上高が1,000万円以下の事業者がインボイス登録をした場合、強制的に課税事業者となりますので、基準期間の課税売上高にかかわらず消費税の確定申告が必要です。

個人事業主が初めて消費税申告をする際のポイント

個人事業主が初めて消費税の申告手続きを行う際は、次のポイントに注意してください。

消費税の申告期限は翌年3月31日

個人事業主は、課税期間の翌年3月31日までに消費税の確定申告書の提出が必要です。

所得税の申告期限は翌年3月15日と、消費税よりも半月早いため、所得税と消費税の申告をする際は提出時期に気を付けてください。

また、申告期限と納期限は同日なので、納税額が発生する場合は期限までに納付も済ませてください。

消費税の計算方法は3パターン

消費税は、次のいずれかの方法で計算することになります。

  • 一般課税制度
  • 簡易課税制度
  • 2割特例制度

△一般課税制度

一般課税制度は、消費税の原則的な計算方法で、課税売上に係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて消費税額を算出します。

<一般課税制度の計算方法>

課税売上に係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額控除)=消費税額

仕入税額控除は、帳簿および請求書等の保存の要件を満たしていないと適用できないため、関係書類は漏れなく保存してください。

課税売上に係る消費税額よりも課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額控除)の大きい場合、確定申告をすることで納め過ぎていた消費税は戻ってきます。

△簡易課税制度

簡易課税制度は、消費税の納税額を簡便に算出するための計算方法で、適用する際は課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。

<簡易課税制度の計算方法>

課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)=消費税額

簡易課税制度を適用する場合、仕入税額控除の要件を満たす必要はありません。

一般課税制度と比べて計算は簡単になりますし、みなし仕入率が高い業種については、一般課税制度で計算するよりも節税効果が期待できます。

一方、簡易課税制度で消費税を計算すると必ず納税額が算出されますので、仕入率が高い事業や還付金が発生する事業を営んでいる方は、簡易課税制度を選択するメリットは薄いです。

△2割特例制度

消費税の2割特例は、インボイス制度が導入されたことを理由に、免税事業者から適格請求書発行事業者になった事業者を対象とした制度です。

課税売上に係る消費税額に80%を乗じた額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなすことができるため、大幅な節税効果が見込めます。

<2割特例による計算方法>

課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×80%)= 消費税額

2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの各課税期間で、適用する際の事前申請は不要です。

年分ごとに適用の有無を選択できますが、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えてしまうと、2割特例は適用できませんので注意してください。

<2割特例の適用可能期間>

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

消費税の税務調査リスクは高まっている

インボイス登録をした事業者は必ず消費税の申告が必要となりますし、インボイス登録をしていなくても、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば課税事業者となるので、消費税の申告手続きをしなければなりません。

帳簿書類や領収書等を適切に保存していないと、税務調査で仕入税額控除の適用が否認されてしまいます。

税務署に一度目を付けられると、短いスパンで税務調査を受けやすくなりますので、消費税の申告が必要になる方は専門家に相談して対策を講じてください。

何かお困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

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消費税とは?

消費税とは、商品の販売やサービスの提供等に対して課される税で、最終消費者が負担しています。例えばコンビニで食品を買った場合、食品の本体価格に加えて消費税も一緒にレジで支払いますね。このように消費税は最終消費者が負担するものなのですが、支払っている先は税務署ではなく「お店」です。

ここに焦点を当てて、「消費税の納税の仕組み」を解説します。

消費税の納税の仕組み

最終消費者が消費税を納付しない点は、先ほど確認したとおりです。
では、消費者を納付するのは誰なのでしょうか?
実は、税金を預かった「お店」が納付しています。

もう少し詳細に説明をすると、商品やサービスを売り上げた際に預かった消費税から、仕入時に支払った消費税分を差し引いて、その差額を納付しています。お店も商品を仕入れる際に消費税を支払っていますので、支払った分の消費税は差し引いて納付をするわけです。難しい用語ですが、この仕組みを「仕入税額控除」といいます。

そのため、個人事業主も一定の売り上げを超えた場合、消費税を税務署に納付する必要があるのです。

消費税の課税事業者と免税事業者

個人事業主が消費税を税務署に納付するかどうかは、「売上高」を基準としています。

細かな規則はありますが、わかりやすく説明をすると、一昨年の売上高が1,000万円を超えると本年から消費税を納めることになります。このような消費税を納める義務がある人を「課税事業者」といいます。この売上高は「課税売上高」に限定されているので、商品の輸出に関係する売上など、もともと消費税が課税されない取引は、これに含まれません。

一方、一昨年の課税売上高が1,000万円以下の場合など、消費税を納める義務がない人を「免税事業者」といいます。そのため、課税売上高が1,000万円を超えた場合は、翌々年から消費税を納めなければならないということを押さえておきましょう。

消費税の計算方法は2種類

原則課税と簡易課税

消費税を納めなければいけない「課税事業者」は、基本的に預かった消費税から支払った消費税を差し引いた額を税務署に納税します。

具体的な例で説明をしましょう。
売上が税込1,100万円で、経費が税込550万円だとします。
消費税の税率は10%なので「預かった消費税が100万円」で、「支払った消費税が50万円」となります。そのため、最終的に納付する税金の額は、100万円-50万円=50万円となります。このような計算方法は、「原則課税」と呼ばれ、消費税を計算する上で原則的な方法となっています。

実は、消費税の計算にはもう一つの方法が用意されています。それは、「簡易課税」という計算方法です。簡易課税は、一昨年の課税売上高が5,000万円以下の場合に利用することができる、消費税の計算の「特例」です。

こちらも、具体的な例で説明をしましょう。
まず、売上に関する税金の計算は、原則課税と全く同じです。
そのため、売上が税込1,100万円であった場合、「預かった消費税は100万円」となります。

一方、経費として支払った税金(預かった消費税から差し引く分の税金)については、業種別にざっくりと「売上の60%」などと決められており、その算式を元に計算します。

(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm

たとえば、飲食店業であれば「売上の60%」を経費としてみなします(これをみなし仕入率といいます)。

具体的な計算方法はというと、まず、売上が税込1,100万円である場合、預かった消費税は100万円となります。この100万円に60%を掛けると60万円なので、支払った消費税は60万円とみなされます。そのため、100万円-60万円=40万円を税務署に納めることになります。

簡易課税の注意点

前述の通り、簡易課税の計算は売上の情報のみで完結します。そのため、事務処理の負担が小さいというのが特徴です。ただし、簡易課税には主に2つの注意点があります。

まず1つ目は、「届出が必要」という点です。
簡易課税をおこなうには、簡易課税で計算をおこなう年の前年中に、届出書(消費税簡易課税制度選択届出書)を税務署に提出しなければなりません。

そして2つ目は、簡易課税は少なくとも「2年間は継続」しなければならないという点です。そのため、簡易課税で計算をする2年間に設備投資などが見込まれる場合は、簡易課税を適用することで損をする可能性があります。その点も踏まえて、どちらを選択するかを考える必要があるのです。

消費税の計算上のシミュレーションは複雑な部分も多いため、お困りの場合はお気軽に当事務所へお問い合わせください。

消費税の納税方法

消費税の納付期限は3月31日です。これは、個人事業主の消費税の確定申告期限と同じ日となっています。なお、土日の場合は翌月曜日が納付期限となります。

消費税は税務署等から納付書が送付されません。そのため、以下のいずれかの方法で、ご自身で納付する必要があります。

・金融機関の預貯金口座から口座引落しする
・e-Taxで口座振替する
・インターネットバンキングやATMで納付する
・クレジットカードで納付する
・スマートフォンアプリを利用して納付する
・QRコードによりコンビニエンスストアで納付する
・現金で納付する

なお、期限内に納付しなかった場合は「延滞税」がかかりますので、注意が必要です。

個人事業主の注意点

免税事業者でも消費税を請求できる

前述したとおり、課税売上高が1,000万円を超えた場合は、翌々年から消費税を納めなければなりません。一方で、課税売上高が1,000万円以下である場合は、消費税の申告・納税をする必要はありません。このような事業者を「免税事業者」といい、特に個人事業主の中には免税事業者が多く存在します。

免税事業者は消費税を納付する必要がないため、「消費税を請求できない」と誤解されているケースがあります。しかし、実際には免税事業者であっても消費税を請求することができるのです。理由としては、免税事業者であっても、仕入れの際に商品の本体価格と一緒に消費税を支払っているため、商品を売り上げる際に一緒に消費税を請求しなければ、支払った消費税を取り戻すことができないと考えらるためです。したがって、免税事業者であっても消費税を請求しても問題ありません。

インボイス制度の注意点

インボイス制度は「適格請求書等保存方式」といい、令和5年10月1日より開始される制度です。「適格請求書(通称インボイス)」がなければ、消費税の仕入税額控除ができないため、取引先の消費税の負担が増える可能性があります。そのため、インボイスを発行できない免税事業者は、インボイスを発行できる「適格請求書発行事業者」を検討する必要があるでしょう。

具体的には、インボイス制度の導入により、個人事業主の選択肢は以下の3つになると考えられます。

1.免税事業者(インボイス発行✕)
2.適格請求書発行事業者を選択し、「原則的な計算方法」で申告納税する(インボイス発行◯)
3.適格請求書発行事業者を選択し、「簡単な計算方法」で申告納税する(インボイス発行◯)

1を選択した場合、取引先は消費税の仕入税額控除ができないため、取引上不利になる可能性があります。一方、2・3を選択した場合は取引先に影響はないものの、基本的には自らが消費税を納税することになるため、その分の負担が大きくなります。なお、上記のいずれかを選択するかについては、当初、令和5年3月31日(令和5年10月1日から適格請求書発行事業者になるための期限)までに対応方法を決める必要がありました。しかし、令和5年度税制改正大綱により、事実上令和5年9月30日までに登録申請をすれば令和5年10月1日から「適格請求書発行事業者」に登録される予定となりましたので、それまでにどのような選択をおこなうかについて検討しておきましょう。

インボイス制度についてはこちらに詳しく記載していますので、あわせてご覧ください。

「インボイス制度とは?対応しないとどうなるか | 免税事業者を中心にわかりやすく解説」
https://osakacpa.com/invoice/

まとめ

この記事では、消費税の仕組みと注意点について解説しました。

個人事業主は、消費税の申告・納税について様々な選択をおこなう必要があります。特に注意したいのは「原則課税か簡易課税か」という点と、インボイスにおいて「適格請求書発行事業者となるか」という点です。

これらの選択には、ケース別に消費税を計算するなどのシミュレーションが欠かせません。そのため、消費税全般についてご不安な点がある場合は、神戸市東灘区の永安栄棟公認会計士・税理士事務所にまでお気軽にお問い合わせください。