個人事業主 | 神戸市の税理士・公認会計士|確定申告・顧問・料金の相談なら「永安栄棟 公認会計士・税理士事務所」へ

個人事業主は所得税だけでなく、消費税の確定申告も必要になることがあります。

申告義務がある人が申告手続きを行わなかった場合、ペナルティが課されるだけでなく、税務署から要注意人物としてマークされることになるので注意してください。

本記事では、個人事業主が消費税の申告が必要になるケースと、不要なケースをそれぞれ解説します。

消費税の納税義務者とは

消費税の確定申告が必要となるのは、原則事業者に限られます。

事業者には法人だけでなく、個人事業主(個人事業者)も含まれ、日本国内に住所等を有しているか否かは問いません。

そのため、国内で消費税の課税対象となる取引を行っている事業者は、非居住者や外国法人であったとしても、納税義務者となるので気を付けてください。

消費税の確定申告が必要ない人

次のいずれかに該当する人は、消費税の確定申告手続きをする必要はありません。

消費税の納税義務者に該当しない

消費税の確定申告手続きが必要になるのは、消費税の納税義務者に該当する人(法人)に限られます。

消費税は消費者も納めている税金ですが、事業を営んでいない人は基本的に申告手続きをする必要はありません

ただし、輸入取引は、輸入品を引き取る者が消費税の納税義務を負うため、給与所得者等であっても、輸入品を引き取る際には納税義務者となります。

免税事業者に該当

消費税では、課税期間の消費税の納税義務が免除される「事業者免税点制度」が設けられています。

事業者免税点制度の対象となるのは、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者で、免税事業者に該当するときは、事業を営んでいる人でも消費税の確定申告は不要です。

なお、消費税の課税事業者を選択している事業者については、課税売上高が1,000万円以下でも消費税の申告義務が生じるので注意してください。

消費税の確定申告が必要になる事業者

個人事業主が次のいずれかに該当する場合、消費税の確定申告が必要になります。

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた

個人事業主は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合、課税事業者として消費税の申告をしなければなりません。

課税期間は、事業者が納付(還付)すべき消費税額を計算する期間をいい、個人事業主の課税期間は1月1日から12月31日までです。

基準期間は、納税義務の有無を判定する期間であり、個人事業主の基準期間は対象年分の前々年です。

課税期間の課税売上高が1,000万円を超えたとしても、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下であれば免税事業者となります。

ただし、基準期間における課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合には、課税事業者となるので注意してください。

特定期間は、対象年分の前年1月1日から6月30日までの期間(個人事業主の場合)をいい、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で判定することも認められています。

出所:消費税のしくみ(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm

免税事業者が課税事業者を選択した場合

課税売上高が1,000万円以下であったとしても、「消費税課税事業者選択届出書」を提出した事業者は、消費税の申告をしなければなりません。

免税事業者は、消費税の納税額が算出される場合でも申告手続きは不要となる反面、還付金が生じたとしても申告手続きを行えないデメリットがあります。

たとえば、輸出業者は経常的に消費税額が還付になることから、課税売上高が1,000万円以下でも、消費税の課税事業者を選択するメリットがあります。

免税事業者が課税事業者を選択する際は、課税期間の初日の前日までに、納税地の税務署に対して「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要です。

課税事業者を選択後に免税事業者に戻りたいときは、免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日までに、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出してください。 ただし、課税事業者となった日から2年間(事業を廃止した場合を除く)は、免税事業者に戻ることはできません。

インボイス登録をした事業者

令和5年10月1日から、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が開始されました。

インボイス制度に対応した事業者(適格請求書発行事業者)になるためには、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出しなければなりませんが、登録申請ができるのは消費税の課税事業者に限られます。

したがって、課税売上高が1,000万円以下の事業者がインボイス登録をした場合、強制的に課税事業者となりますので、基準期間の課税売上高にかかわらず消費税の確定申告が必要です。

個人事業主が初めて消費税申告をする際のポイント

個人事業主が初めて消費税の申告手続きを行う際は、次のポイントに注意してください。

消費税の申告期限は翌年3月31日

個人事業主は、課税期間の翌年3月31日までに消費税の確定申告書の提出が必要です。

所得税の申告期限は翌年3月15日と、消費税よりも半月早いため、所得税と消費税の申告をする際は提出時期に気を付けてください。

また、申告期限と納期限は同日なので、納税額が発生する場合は期限までに納付も済ませてください。

消費税の計算方法は3パターン

消費税は、次のいずれかの方法で計算することになります。

  • 一般課税制度
  • 簡易課税制度
  • 2割特例制度

△一般課税制度

一般課税制度は、消費税の原則的な計算方法で、課税売上に係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて消費税額を算出します。

<一般課税制度の計算方法>

課税売上に係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額控除)=消費税額

仕入税額控除は、帳簿および請求書等の保存の要件を満たしていないと適用できないため、関係書類は漏れなく保存してください。

課税売上に係る消費税額よりも課税仕入れ等に係る消費税額(仕入税額控除)の大きい場合、確定申告をすることで納め過ぎていた消費税は戻ってきます。

△簡易課税制度

簡易課税制度は、消費税の納税額を簡便に算出するための計算方法で、適用する際は課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。

<簡易課税制度の計算方法>

課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)=消費税額

簡易課税制度を適用する場合、仕入税額控除の要件を満たす必要はありません。

一般課税制度と比べて計算は簡単になりますし、みなし仕入率が高い業種については、一般課税制度で計算するよりも節税効果が期待できます。

一方、簡易課税制度で消費税を計算すると必ず納税額が算出されますので、仕入率が高い事業や還付金が発生する事業を営んでいる方は、簡易課税制度を選択するメリットは薄いです。

△2割特例制度

消費税の2割特例は、インボイス制度が導入されたことを理由に、免税事業者から適格請求書発行事業者になった事業者を対象とした制度です。

課税売上に係る消費税額に80%を乗じた額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなすことができるため、大幅な節税効果が見込めます。

<2割特例による計算方法>

課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×80%)= 消費税額

2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの各課税期間で、適用する際の事前申請は不要です。

年分ごとに適用の有無を選択できますが、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えてしまうと、2割特例は適用できませんので注意してください。

<2割特例の適用可能期間>

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

消費税の税務調査リスクは高まっている

インボイス登録をした事業者は必ず消費税の申告が必要となりますし、インボイス登録をしていなくても、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば課税事業者となるので、消費税の申告手続きをしなければなりません。

帳簿書類や領収書等を適切に保存していないと、税務調査で仕入税額控除の適用が否認されてしまいます。

税務署に一度目を付けられると、短いスパンで税務調査を受けやすくなりますので、消費税の申告が必要になる方は専門家に相談して対策を講じてください。

何かお困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

また、弊所のサービスについては、以下よりチェックしてみてください。

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個人事業主は会社員と違い、毎年確定申告で税金の精算をしなければなりません。

税理士に面倒な確定申告手続きを任せる選択肢もありますが、条件が揃えば個人事業主が自分で申告書を作ることも可能です。

本記事では、個人事業主が税理士に依頼する必要性と、納税者自身で申告する際に生じる注意点について解説します。

個人事業主に税理士が不要とされる理由

事業者は税理士に申告書の作成を依頼するイメージがありますが、確定申告書は元々納税者が作成して提出する書類ですので、税理士に依頼せずに手続きしても問題ありません。

インターネット・SNSで申告に必要な情報を収集できる

個人事業主は確定申告を毎年行いますが、税制改正が実施された際には、改正後の法律に基づいて確定申告書を作成しなければなりません。

一昔前まで、税金に関する情報を入手する方法は税務署や税理士への相談や、書籍を購入するなどの手段しかありませんでしたが、現在はインターネットやSNSを活用して必要な情報を手に入れられるようになっています。

国税庁もホームページ上で確定申告に関する情報を積極的に発信していますし、「確定申告書等作成コーナー」では確定申告書だけでなく、青色決算書や収支内訳書も作成することができます。

出所:国税庁 確定申告書等作成コーナー

https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl

会計ソフトの活用による申告手続きの効率化

個人事業主は確定申告書を作成する前段階が大変ですが、会計ソフトを活用すれば青色決算書や収支内訳書をスムーズに作成できるようになります。

仕訳作業は、個人事業主が抱える悩みの一つです。

取引が多い事業者は毎日仕訳をしなければいけませんし、仕訳のしかたを間違えてしまうと税額計算にも影響が出ます。

しかし、クラウド型の会計ソフトが普及したことで、基本的なポイントを押さえれば仕訳に要する作業量を減らせるようになっています。

また、会計ソフトと銀行やクレジットカード会社などを連携することにより、入力作業も簡略化できます。

税理士がいらない個人事業主の特徴

次に該当する個人事業主は、税理士に依頼しなくても申告手続きを行うことができます。

売上が少ない・事業規模が小さい

事業規模が小さい個人事業主は、仕訳など確定申告に必要となる作業量が少ないため、申告手続きに要する時間を抑えられます。

インボイス制度が導入されたことで、売上が少ない事業者も消費税の申告が必要になることもありますが、免税事業者として活動されている個人事業主であれば、消費税の申告手続きは引き続き不要です。

税金・簿記知識が身に付いている

確定申告書を作成する場合、税金および簿記に関する知識は不可欠です。

青色申告をするためには複式簿記が必須となりますし、所得税の知識がないと経費計上する支出の取捨選択や税額計算を間違える可能性もあります。

作成した申告書の内容に誤りがあれば税務署から指摘されてしまいますが、納税者が必要な知識を身に付けていれば、申告書を正しく作ることも可能です。

確定申告書を作成する時間を確保できる

事業者が税理士に申告書作成を依頼する理由の一つに、申告準備をする時間が足りないことが挙げられます。

取引回数が少ない事業者は、仕訳作業に費やす時間も一定程度に抑えられますので、空いた時間を使って申告準備を行えます。

一方、本業が忙しければ申告書に割く時間も限られますし、取引が多い事業を営んでいる方は、納税者自身に税金や簿記知識があったとしても仕訳作業に膨大な時間を費やさなければなりません。

確定申告書を作成する時間は事業者によって差がありますが、1日2日で帳簿書類と申告書を作成するのは困難ですので、個人事業主が自身で申告する際は、あらかじめ作業時間を確保してください。

個人事業主が税理士に申告書作成を依頼しないリスク

個人事業主が税理士に申告書作成を依頼するかは任意ですが、個人事業主が自身で申告書を作成するリスクは、申告する前に把握しておいてください。

事業に集中できない

個人事業主が確定申告手続きを行う場合、申告書を作成する時間を確保しなければなりません。

税務署は平日の日中にしか開いていませんし、夜に相談できる場所も少ないため、事業内容によっては、空いた時間だけで申告書を作り上げるのが難しいケースもあります。

税務調査を受けることになれば、調査対応に時間を割くことになりますので、本業が忙しい方は申告手続きを税理士に委任し、本業に専念するのが望ましいです。

適切な税金対策を講じることが難しい

業種や事業内容によって最適な節税手段は違いますし、特例制度の適用漏れなどで節税ができないと実質的に損失を被ることになります。

SNS上で広まっている節税手段には万人が利用できるものもありますが、節税効果の高い制度は、要件をすべてクリアしないと適用できません。

また、珍しい特例制度は詳しく調べないと見つけられませんし、特例の適否は専門家に確認しないと判定を誤ってしまう可能性があるので注意してください。

税務調査の対象になりやすい

所得税の税務調査を受ける確率は一般的に1%程度とされていますが、実際には税務調査を受けやすい個人事業主もいれば、調査を受けにくい個人事業主も存在します。

計算ミスがある申告書は調査対象になりやすいですし、青色申告を適用していない個人事業主や、税理士が関与していない申告書についても、調査対象者としての優先順位が高くなる傾向にあります。

特に、一般の納税者は税理士よりも税に関する知識は少なく、申告ミスも発生しやすいため、税務署は税理士が関与していない申告書を重点的にチェックします。

また、営んでいる事業が申告漏れ所得が高額な業種に該当する場合には、他の業種よりも調査を受けやすくなるので、調査対策は必須です。

出所:令和4事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/shotoku_shohi/index.htm

税理士のスポット契約と顧問契約の違い

税理士に確定申告書の作成依頼をする方法には、スポット契約と顧問契約があります。

スポット契約は1回だけ申告書の作成依頼をするもので、個人事業主としてはじめて申告する場合や、申告書を作成する時間が確保できなかった際にスポット契約による依頼をするケースが多いです。

顧問契約は、税理士と顧問として迎え入れることで、確定申告書の作成だけでなく、帳簿書類の作成代行や税金相談を行うことができます。

事業規模が一定以上の個人事業主は、納税者自身で申告手続きを行うのは限界がありますので、状況に応じて依頼する方法を選んでください。

税理士に申告書作成を依頼するタイミング

所得税の確定申告期間は2月16日から3月15日と決まっていますが、確定申告期間に入ってから税理士に依頼するのは遅いです。

単発で申告書作成を依頼する場合でも、遅くても年末までに相談するのが望ましく、年が明けてからの申告書作成の依頼は断られる可能性があります。

特定の税理士と顧問契約を結んでおけば、毎年申告手続きを依頼できますし、通常期から仕訳や節税に関するアドバイスを受けられますので、スポット契約よりも費用対効果は高いです。

税理士への相談は確定申告前にすること

申告書作成には時間がかかるだけでなく、肉体的・精神的な負担も大きいです。

税務調査を受けることになれば、税金を余分に納めることになりますし、税務署から狙われやすくなるので気を付けなければなりません。

税理士によって得意な税金の種類や、対応のしかたなどは違いますので、確定申告の相談・申告書の作成依頼は、可能な限り早めに行うことをオススメします。

何かお困りのことがございましたら、ぜひ一度永安栄棟公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

インボイス制度がスタートしたタイミングで、インボイス発行事業者になった個人事業主も多いですが、インボイス発行事業者は消費税の確定申告が必須です

消費税は他の税金とは違い、課税方式が複数用意されており、選択する課税方式が変わるだけで納税額が変わるので注意が必要です。

本記事では、消費税の課税方式の特徴と、インボイス発行事業者が消費税の確定申告をする際のポイントについて解説します。

消費税の確定申告が必要になる個人事業主とは

次のいずれかに該当する個人事業主は、消費税および地方消費税の確定申告が必要です。

  • インボイス発行事業者の登録をした事業者
  • 基準期間における課税売上高が1,000万円超の事業者
  • 特定期間における課税売上高が1,000万円超の事業者
  • 課税事業者選択届出書を提出した事業者

インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入される以前は、課税売上高が1,000万円以下であれば、原則消費税の申告は不要でした。

しかし、インボイス(適格請求書)発行事業者の登録申請を行った事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であったとしても、消費税の申告手続きをしなければなりません。

個人事業主の消費税の確定申告期間

個人事業主の消費税の確定申告期限は、課税期間の翌年3月31日までです。

所得税の申告期限は翌年3月15日なので、消費税の方が申告期限は半月ほど遅く、期限内であれば所得税の申告書を提出した後に消費税の申告をしても問題ありません。

消費税の免税事業者に該当する個人事業者の方が、令和5年10月のインボイス制度が開始する時点でインボイス発行事業者の登録を受けた場合、令和5年分から消費税の申告が必要となります。

税務調査は原則5年、最長7年まで遡って実施する可能性がありますので、令和5年分の消費税の申告をしていない課税事業者は、速やかに申告手続きを行ってください。

出所:確定申告が必要になる人はどんな人?(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_kakutei.htm

確定申告における消費税の計算方法

消費税の計算方法は原則と例外があり、インボイス制度が導入されたことで課税事業者になった個人事業主は、特例措置を用いて計算することができます。

一般課税制度

消費税は、原則一般課税制度に基づいて税額計算を行います。

一般課税制度は、課税売上に係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を控除して計算する方式で、算出された差額を納めることになります。

<一般課税制度の計算方法>

課税期間中の課税売上に係る消費税額-課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額=消費税額

消費税は令和元年10月1日から軽減税率が導入されていますので、税額計算は税率ごとに区分して行います。

課税売上に係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差し引くことを「仕入税額控除」といいますが、仕入税額控除を適用するためには帳簿および請求書等の保存が必要です。

また、仕入税額控除の適用要件は、インボイス制度が導入されたことで変更していますので、一般課税制度で計算する際は事前に要件を確認してください。

簡易課税制度

簡易課税制度は、課税期間中の課税売上に係る消費税額に、事業区分に応じた「みなし仕入率」を乗じて算出した額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなして、納付する消費税額を計算する方式です。

一般課税制度は、売上と仕入れの双方に関係する消費税額を計算しなければなりませんが、簡易課税制度は課税売上に係る消費税額を基に控除額を算出するため、一般課税制度よりも計算が簡便です。

また、仕入割合が低い事業者は、簡易課税制度で消費税額を計算した方が納税額は小さくなることから、消費税対策として簡易課税制度を活用するのも有効です。

<簡易課税制度の計算方法>

課税売上に係る消費税額-(課税期間中の課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)=消費税額

出所:簡易課税制度の事業区分(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm

簡易課税制度を適用できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者に限られ、課税売上高が5,000万円を超えた場合には、一般課税制度で消費税を計算することになります。

簡易課税制度を適用する際は、適用する予定の課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出しなければなりません。

2割特例制度

2割特例制度は、インボイス制度を機に免税事業者から適格請求書発行事業者になった事業者が適用できる特例措置です。

2割特例を適用した場合、課税期間中の課税売上に係る消費税額に80%を乗じた額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなして、納付する消費税額を計算することができます。

<2割特例による計算方法>

課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×80%)= 消費税額

2割特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの各課税期間で、個人事業主については、令和5年分から令和8年分の消費税の申告において適用可能です。

消費税の納税額を課税売上に係る消費税額の20%に抑えられるため、利益が生じている事業者の多くは、2割特例を適用することで消費税を節税できます。

また、2割特例は事前申請等の手続きは不要なので、年分ごとに一般課税制度または簡易課税制度と比較し、より有利な課税方式を選択して申告することができます。

2割特例を適用して消費税を申告する際のポイント

消費税の2割特例の要件を満たす事業者は、基本的に適用するメリットがあります。

しかし、個人事業主の中には2割特例を適用しない方がいいケースもあるので注意してください。

免税事業者からインボイス発行事業者なった事業者が対象

2割特例は、インボイス制度の導入で消費税の申告が必要となった事業者を対象とした制度です。

基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者や、インボイス発行事業者の登録と関係なく課税事業者となった事業者は、2割特例を適用することができません。

出所:インボイス発行事業者の「2割特例」適用可否フローチャート(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-131.pdf

毎年適否判定をしなければならない

2割特例は毎年適用の有無を選択できますが、適用要件も年分ごとに確認する必要があります。

たとえば、事業者の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、該当する課税期間に対して2割特例は適用できないので注意してください。

2割特例の適用で損をするケースもある

2割特例は、消費税の納税額を課税売上高に対する消費税の2割にする制度であるため、多くの事業者にとって節税効果があります。

しかし、利益率が20%未満であれば一般課税制度で計算した方が納税額は少なくなりますので、2割特例の適用が必ずしも最適な選択とは限りません。

また、簡易課税制度のみなし仕入率90%に該当する事業を営んでいる方については、簡易課税制度を選択した方が消費税を節税できます。

赤字でも消費税の還付は受けられない

課税売上高に対する消費税額よりも課税仕入れに対する消費税額の方が大きい場合、一般課税制度を選択していれば、差額の消費税額の還付を受けられます。

しかし、2割特例を適用してしまうと、課税売上高に対する消費税額の20%は納めることになり、消費税の還付は生じません。

そのため、赤字となった年分は2割特例ではなく、一般課税制度で消費税を計算した方が節税になります。

消費税の節税のしかたは税理士に確認すること

課税売上高に対する消費税の2割は必ず納税することになるため、インボイス制度導入前まで免税事業者として活動してきた事業者にとっては、新たに消費税の負担が生じることになります。

税務署は、個人事業主がインボイス適格事業者に該当するかを把握していますので、消費税の無申告はすぐに摘発されるので気を付けてください。

消費税は所得税に比べて対策が不十分であることが多く、適切な対策を講じることで消費税の納税額を減らすことは可能です。

間違った節税手法は脱税に該当しますので、効果的かつ合法的な節税のしかたは税理士に確認・相談していただき、必要に応じて消費税の申告書作成を依頼してください。

何かお困りのことがございましたら、永安栄棟公認会計士・税理士事務所へご連絡ください。

税務署は国税の相談窓口を設けていますので、窓口を通じて税金相談をすることができます。

しかし、相談内容によっては応対してくれない場合や、節税アドバイスを求めても期待する回答を得るのは難しいケースなど、相談する際の注意点もあります。

本記事では、税務署への相談方法とメリット・デメリット、節税アドバイスを受けられる相談先について解説します。

税務署に税金相談をする方法

国税組織は、国税庁の下に12の国税局(沖縄国税事務所を含む)があり、国税局の下に524の税務署が設置されています。

税金相談はお住まいの近くにある税務署でもできますし、自宅に居ながら疑問・不明点を解消する方法も用意されています。

面接相談

税務署の窓口では、確定申告書の受付や納税手続きだけでなく、面接相談も行っています。

一般相談については、窓口で相談したい旨を伝えれば、職員が対面で相談に応じてくれます。

一方、相談内容が個別的なものである場合には、事前予約が必要です。

電話または税務署窓口で個別相談の予約を取りたい旨を伝え、相談日の日程を調整した上で相談することになります。

一般的な相談は全国どこの税務署でも応対してくれるのに対し、個別相談は相談者の管轄税務署でしか相談に応じてくれません。

管轄税務署以外の税務署に個別相談したい旨を伝えても断られますので、個別相談をする際は予約前にご自身の管轄税務署を確認してください。

電話相談

国税局は「電話相談センター」を設置しており、電話相談センターに電話すると、国税局の職員等が税金相談に回答してくれます。

電話相談センターに相談できる内容は、制度や法令等の解釈・適用、税金手続きに関するもので、電話相談センターへは国税相談専用ダイヤル(ナビダイヤル)または、税務署の代表電話を経由して電話をかけます。

国税相談専用ダイヤルと税務署の代表電話のいずれも、電話をかけると自動音声が流れますので、音声案内に従って相談する内容に該当する番号を選択してください。

出所:国税に関するご相談について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/#a-02-3

聴覚障害者等専用電子メール相談窓

電話相談が難しい方は「聴覚障害者等専用電子メール相談窓口」を通じて、メールで相談することができます。

ただし、こちらの相談窓口は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」を踏まえて設定されていますので、利用できるのは聴覚や発話に障害があり、電話での相談が困難な方に限られます。

そのため、電話で相談することが可能な方は、先に紹介した面接相談または電話相談を利用してください。

国税庁ホームページで調べる

面接相談や電話相談ができるのは、税務署が開いている平日の日中に限られますので、土日や夜に税金関係の疑問を解決したい方は、国税庁ホームページを活用してください。

国税庁ホームページでは、よくある税の質問に対する回答をまとめた「タックスアンサー」が掲載されています。

国税の疑問点はタックスアンサーで解決できるものも多く、個人が関係する国税については、チャットボットで相談することも可能です。

チャットボット(ふたば)は、メニューから質問する内容を選択または直接質問内容を入力すると、AI(人工知能)が自動回答してくれるシステムです。

質問形式で聞くことができるため、タックスアンサーで回答が見つからないときは、チャットボイスを活用してください。

税務署に相談するメリット

税務署は公的機関なので、誰でも利用できますし、事前予約をすれば具体的な相談をすることもできます。

相談費用がかからない

コストを抑えて相談したい方は、税務署の窓口や電話相談センターに相談をしてください。

専門家に相談するには報酬が発生するのが一般的ですが、税務署の職員は公務員ですので、相談に対しての費用はかかりません。

(税務署へ行く交通費や、電話料金は発生します。)

平日の日中であればいつでも相談できますし、税務署は全国にあるので、近くの税務署に行って相談することも可能です。

予約すれば個別相談も可能

税務署では、事前に相談予約をすれば、個別的な相談もできます。

個別相談ができる税務署は相談者が申告手続き等を行う税務署に限られますが、申告前に特例制度の適否などを確認したい場合には、予約をして相談するのも選択肢です。

税務署以外にも無料で税金相談ができる場所は存在しますが、無償で個別相談に応じる相談場所はほとんどありませんので、費用をかけずに個別相談したい方は予約をした上で税務署に相談してください。

出所:国税に関するご相談について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/index.htm#a-02-3

税務署に相談するデメリット

税務署は費用をかけずに相談できるメリットがある一方、事業者が相談するのには不向きな側面もあるので気を付けてください。

税務署職員は節税アドバイスをしてくれない

税務署は、確定申告書の書き方や特例制度の内容は説明してくれる一方、適用できる特例制度の紹介や、特例制度の節税効果を比較して提案するなどのアドバイスは行いません。

特例制度の適用は納税者の任意となっているため、適用できる特例があったとしても、相談者が質問しない限り、特例制度の説明をすることもありません。

相談する側にも税金知識が必要

納税者の状況によって適用できる特例制度の種類や節税方法は異なるため、一般相談で具体的な相談をすることは難しいです。

税務署は質問に対する回答はしてくれますが、相談者の事情を考慮して節税方法を提案することはないため、質問のしかたにも工夫を要します。

相談のしかたを間違えると、満足する回答は得られませんので、相談する側にもある程度の税金知識が求められます。

個別相談は1か月以上予約待ち

税務署の個別相談は事前予約が必要ですが、予約した当日やその週に個別相談ができるケースは限られます。

個別相談の予約が1か月以上先まで埋まっている税務署もあるため、すぐに回答を得たい方は、税務署以外の場所で相談することを検討してください。

税務署以外で税金相談ができる場所

税務署以外にも税金相談ができる場所はありますので、相談したい内容によって相談先は変えてください。

一般的な税金相談なら税務署で問題ない

税金相談の内容が一般的なものであれば、税務署で相談して問題ありません。

個別相談は予約が必要ですが、一般相談は予約が必要ありませんし、行政機関なので気軽に相談することができます。

ただし、税務署は節税アドバイスをしてくれませんので、節税に関する質問をしたい方は次に紹介する税理士事務所に相談してください。

節税アドバイスを受けたい方は税理士事務所に相談すること

税金の節税アドバイスを受けたい方は、税理士事務所に相談するのがオススメです。

税理士は税金の専門家ですし、節税に関しては税務署職員以上に豊富な知識を有しています。

事業者が節税をする際には、個々の事情に鑑みた節税手法を用いることが重要となるため、オーダーメイドでの対策が不可欠です。

一般的に効果があるとされている税金対策であったとしても、経営状態等によってはあまり効果が得られないこともありますし、継続的な節税効果が見込めない手法も数多く存在します。

税理士事務所に相談すれば、具体的なアドバイスが受けられるだけでなく、確定申告手続きを依頼することも可能です。

また、税理士と顧問契約を結べば、普段から税金相談ができますので、節税に関しては税務署ではなく税理士を頼ってください。

事業者の税金対策は日常的に講じることが重要

税務署での相談は一般相談や、申告手続きに関連するものがメインとなります。

会社員や年金受給者の方は、確定申告相談会場で相談して申告することもできますが、事業者の場合、確定申告会場で相談しながら申告書を作成するのは難しいです。

確定申告書を作成する時点で実施できる税金対策は限られますので、継続的に節税をしたい事業者は、日常的に対策を講じることが肝要です。

税理士は事業者の税金面を支えるパートナーとなりますので、顧問税理士がいない方は、一度、税理士事務所に相談することをご検討ください。ぜひ、永安栄棟公認会計士・税理士事務所へご連絡ください。

法人の方が個人事業主よりも経費として計上できる範囲は広いため、節税を意識するのであれば、法人化することも選択肢です。

ただ法人でも経費にできない支出がありますので、今回は個人事業主と法人における経費の扱いと、経費計上する際の注意点を解説します。

個人事業主の経費計上できる範囲

税務署は、経費として計上している費用の内訳を必ずチェックします。

経費計上できるもの・できないものを明確に区分しないと、税務調査で指摘されますので気を付けてください。

経費として認められる費用

個人事業主は、事業収入を得るために直接要した費用を必要経費として計上することができます。

必要経費に該当する主な費用は下記の通りで、収入を得るために直接必要だった支出であれば経費計上が可能です。

<経費にできる主な費用>

  • 売上原価
  • 給与、賃金
  • 地代、家賃
  • 減価償却費
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 接待交際費
  • 修繕費
  • 消耗品費など

経費に計上できない費用

個人事業主は、家事上の費用を経費として計上することはできません。

「家事上の費用」とは、プライベートで支出したものをいい、食費やプライベートでの旅行費用などが家事上の経費に該当します。

しかし、家事上の経費に関連する経費(家事関連費)のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合には、その部分に相当する経費の金額を必要経費として計上することが可能です。

そのため、仕事とプライベートで使用している備品等については、仕事として使用する部分を明確にすることが求められます。

出所:税大講本 所得税法(令和6年度版)(国税庁)

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/syotoku/pdf/all.pdf

詳細はこちらも参照 【弊所コラム】交際費等の飲食費判定の基準額引き上げ

家事関連費は税務調査で指摘されやすい

家事関連費を経費計上している場合、仕事に対応する部分のみを経費として計上しているかチェックされます。

按分割合と実態が相違していれば経費計上が否認されますし、按分した根拠を示すことができない場合も、経費計上が否認されるので注意が必要です。

家事関連費の按分割合は合理的な方法で算出しなければならず、支出の種類等によって合理的な方法は異なります。

たとえば、自動車を平日は仕事、土日はプライベートの目的で利用している場合、自動車にかかる支出に7分の5(平日5:土日2)を乗じた額を経費にするなどの方法があります。

法人が個人事業主よりも経費に計上できるが広い理由

法人と個人事業主では、対象となる税金(法人税、所得税など)の種類が違うため、経費計上を判断する法令や法令解釈通達が異なります。

法人は利益を出すための組織であるため、法人の支出は基本的に事業収入を得るための費用に該当しますので、個人事業主よりも経費にできる範囲が必要です。

例外的に経費として認められない支出もありますが、法人は個人事業主のようなプライベートはないので、支出の按分計算も不要です。

個人事業主が法人化することで経費計上できる費用

個人事業主が法人化(法人成り)した場合、次のような支出を経費計上できるようになります。

福利厚生費

福利厚生は、会社が従業員や家族に提供する給与以外の報酬をいい、会社が従業員等の福利厚生のために生じる支出は経費にできます。

福利厚生には健康保険や雇用保険などの「法定福利厚生」と、レクリエーションや子育て・介護などの「法定外福利厚生」があり、どちらの福利厚生にかかる費用も原則福利厚生費として扱われます。

個人事業主がプライベートで旅行した際の費用は経費になりませんが、法人が従業員レクリエーション旅行に際して支出した費用は、原則経費にすることが可能です。

なお、役員だけで行う旅行や、取引先を接待する目的の旅行などは福利厚生費に該当しませんのでご注意ください。

車両関連費

車両関連費は車両を使用・維持管理するための費用をいい、ガソリン代や車検費用、自動車税等が含まれます。

個人事業主が個人名義の車両をプライベートでも使用している場合、仕事として利用している部分のみが経費となります。

プライベートで使用する比率が高いと経費にできる割合が小さくなりますし、税務調査では按分した割合の根拠を求められます。

一方、法人名義の車両については、役員がプライベートでのみ使用しているケースなどを除き、車両に関連する費用を原則すべて経費にすることが可能です。

出張旅費

個人事業主が出張した場合、プライベートによる支出とみなされた部分は経費から除外しなければなりません。

それに対し、法人が従業員等に支給する出張旅費は原則経費として計上できますし、出張旅費を受け取った従業員等に対して所得税が課されることもありません。

法人が出張旅費を経費計上する際には、出張旅費規定を作成することが求められます。

出張旅費規定は、出張に際して発生する交通費や宿泊費、日当などの取扱いを定めた規定です。

支給額が不当に高い場合については、経費計上が否認されるだけでなく、受け取った従業員等は給与所得として所得税が課される可能性があります。

家賃・社宅

個人事業主は、自宅の家賃を経費にすることはできません。

自宅を店舗兼住宅として利用している場合には、店舗に該当する部分のみを経費として計上し、水道光熱費等は面積等で按分することになります。

一方、法人化した場合には、社宅として利用することで一定割合を経費にできます。

ただし、役員の個人名で契約した物件は社宅としては認められないため、法人化する際は契約する名義に注意してください。

退職金

個人事業主は退職の概念がないため、廃業時に退職金を支払うことはありませんが、法人化すれば、役員や従業員が退職する際に退職金を支払うことができます。

法人が支払った退職金は不当に高額なケースを除き、原則損金計上が可能です。

退職金を受け取った役員や従業員は、退職所得として税金の計算をするため、法人と役員・従業員の双方で節税効果が期待できます。

また、退職金の支払いに備えて保険に加入している場合、その保険料も経費にできるため、退職金を準備する手段として保険を活用するのも選択肢です。

法人が経費計上する際に注意すべきポイント

法人は個人事業主よりも経費計上できる範囲は広いですが、経費(損金)算入が認められない支出もあるので気を付けてください。

役員報酬は原則損金不算入

従業員への給与は損金計上できるのに対し、役員への報酬は原則損金不算入となります。

ただし、次のいずれかに該当する報酬(給与)については、例外的に損金算入が認められています。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

事前に定めた額を役員へ支払う場合、基本的には損金として算入できますが、役員報酬の額が増減してしまうと損金不算入となります。

また、報酬額が不相当に高額な場合や、法人が仮想・隠蔽による経理に基づいて支給した役員報酬も損金に算入することはできません。

接待交際費

接待交際費は、交際費や接待費、機密費などの費用のうち、得意先や仕入先などの関係者に接待や贈答等をするための支出をいいます。

中小企業の場合、接待交際費の50%または800万円のいずれかの金額を超えた部分が損金不算入となります。

ただし、社外の人との飲食等において、1人当たり1万円以下の飲食費については、接待交際費の範囲から除かれます。

飲食費の基準額は以前は5,000円でしたが、令和6年度税制改正で1万円に引き上げられました。

飲食費を接待交際費から除外する際は、必要事項を記載した書類を保存しなければならず、1人当たりの飲食費額が1万円を超えた場合には、1万円を超えた費用全額が接待交際費に該当するのでご注意ください。

出所:「令和6年度税制改正」(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei24.html

法人成りは総合的に判断しないと失敗する

税務調査では、個人事業主であれば家事関連費、法人では役員に関する支出が必ずチェックされるので、事前対策は不可欠です。

法人は個人事業主よりも節税する手段が豊富なので、事業規模が一定以上となった個人事業主は、法人として活動することも選択肢です。

ただし、法人化するためには様々な手続きを要しますし、法人化することが必ずしも最適とは限りません。

法人化した後に再び個人事業主として活動する場合には、多大な労力と費用がかかりますので、法人化を検討されている方は税理士事務所に相談してから判断することをオススメします。

お困りのことがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へぜひ一度ご相談ください。

令和5年(2023年)10月1日にスタートしたインボイス制度ですが、制度開始時にいくつかの経過措置が設けられています。

インボイス制度の経過措置は、節税効果が見込めるものや事務作業を軽減できる内容となっていますので、今回はインボイス制度の経過措置の種類および要件、そして適用期間について解説します。

インボイス制度の2割特例

インボイス制度が導入されたことで消費税の課税事業者となった小規模事業者への負担軽減措置として、「2割特例」の経過措置が設けられています。

2割特例の概要

2割特例は、仕入税額控除の代わりに売上税額の8割を特別控除税額として差し引くことができる制度です。

消費税の課税事業者は、売上税額から仕入税額を差し引いた額を納めることになるため、仕入税額が少ない事業者ほど消費税の納税額は多くなります。

しかし、2割特例を適用すれば仕入税額の大小に関係なく、売上税額の8割を差し引くことができますので、消費税の納税額を売上税額の2割に抑えることが可能です。

消費税の計算方法には一般課税と簡易課税が存在しますが、2割特例はそれらの課税制度と比較し、節税になる場合に選択して適用することが認められています。

なお、多くの事業者は2割特例を適用した方が節税になりますので、要件を満たす事業者は経過措置の活用を検討してください。

出所:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

適用要件

2割特例を適用できるのは、インボイス制度が導入されたタイミングで、免税事業者から適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)になった課税事業者です。

基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者や、資本金1,000万円以上の新設法人等は2割特例を適用することができません。

(基準期間は個人事業者の場合は対象年分の前々年、事業年度が1年である法人はその事業年度の前々事業年度のことをいいます。)

ただし、課税事業者が適格請求書発行事業者になった場合でも、適格請求書発行事業者となった課税期間の翌課税期間以降の課税期間について、基準期間の課税売上高が1,000万円以下になるときは、原則2割特例を適用できます。

適用期間・手続き方法

2割特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。

たとえば、免税事業者である個人事業者が令和5年10月1日から適格請求書発行事業者として活動している場合、令和5年分(10月から12月分)から令和8年分までの確定申告において2割特例を適用することができます。

2割特例を適用する際は、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を記載してください。

消費税の簡易課税制度と違い、事前の届出は不要ですし、2割特例を適用して申告した翌課税期間において継続して適用するなどの条件もありません。

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置

インボイス制度が導入されたことで、免税事業者等から仕入れた商品等に対する消費税は仕入税額控除の対象外となります。

しかし、経過措置としてインボイス制度開始後一定期間は、免税事業者等からの仕入れについても一定割合控除することができます。

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の概要

インボイス制度の導入により、消費税の仕入税額控除を適用するためには、適格請求書等保存方式で必要となる請求書等を作成・保存しなければなりません。

免税事業者など、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために必要な請求書等の交付を受けられませんので、仕入税額控除の対象から除かれます。

しかし、免税事業者等からの課税仕入れであったとしても、下記の期間中においては仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除することができます。

<経過措置の適用期間と控除額>

期間控除額
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで仕入税額相当額の50%

適用要件

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置を適用する場合、帳簿と請求書等に関する要件を満たす必要があります。

帳簿については、従来の区分記載請求書等保存方式で必要であった記載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載することが求められます。

「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」については、取引ごとに経過措置の適用を受ける課税仕入れであることを示さなければなりません。

<経過措置を適用する旨の表示例>

  • 個々の取引ごとに記載する場合の表示方法
    • 80%控除対象
    • 免税事業者からの仕入れ
  • まとめて経過措置を適用する旨を記載する場合の表示方法
    • 対象となる適用する取引に『※』等の記号・番号を付し、「※は80%控除対象」などと表示

請求書等については、区分記載請求書等と同様の事項を記載することが要件となります。

インボイス制度導入以前から消費税の課税事業者として活動している事業者であれば、帳簿の記載事項を追加でクリアすれば経過措置を適用できます。

なお、令和6年度税制改正により、一の免税事業者等から行う経過措置の対象となる課税仕入れの合計額が、対象年分(事業年度)において10億円(税込み)を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れに対して本経過措置が適用できないことになりました。

改正事項は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されるため、該当する事業者は注意してください。

適用期間・手続き方法

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。

経過措置を適用するためには、必要事項が記載された帳簿および請求書等を保存し、確定申告書を提出することになります。

令和8年10月1日以後は控除割合が下がりますが、適用要件は同じです。

インボイス制度の少額特例

インボイス制度導入以後に仕入税額控除を適用するためには、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。

しかし、一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置として設けられた「少額特例」の要件を満たす事業者は、適格請求書を保存していなくても、一定の事項を記載した帳簿を保存していれば仕入税額控除が適用できます。

少額特例の概要

少額特例は、税込1万円未満の課税仕入れについては、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を認める経過措置です。

取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係ないため、取引先が免税事業者であったとしても、少額特例の対象となります。

「税込1万円未満の課税仕入れ」とは、1回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満に該当するものをいいます。

商品ごとに税込1万円未満の課税仕入れに該当するかを判定するものではないため、取引の合計額が1万円以上となる場合には、少額特例の対象外となるのでご注意ください。

少額特例は適格請求書の保存を不要とする経過措置ですが、適格請求書発行事業者の交付義務を免除するものではありません。

そのため、少額特例を適用する場合でも、適格請求書発行事業者に該当する事業者が取引先の課税事業者から適格請求書を求められたときは、交付する必要があります。

出所:「少額特例」における1万円未満の判定単位(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-016.pdf

適用要件

少額特例を適用できるのは、基準期間における課税売上高が1億円以下または、特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者です。

「特定期間」は、個人事業者は前年1月から6月までの期間、法人については前事業年度の開始の日以後6月の期間をいいます。

納税義務の判定とは異なり、特定期間における課税売上高の判定では、課税売上高に代えて給与支払額の合計額を用いることはできないのでご注意ください。

適用期間・手続き方法

少額特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。

特例を適用するために申請書等を提出する必要はありませんが、令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、課税期間の途中でも少額特例の対象外となります。 したがって、経過措置が終了した後の課税仕入れに対して仕入税額控除を適用する際は、原則、適格請求書と一定の事項を記載した帳簿を保存することが求められます。

まとめ

インボイス制度の経過措置は、種類によって適用期間と適用要件が異なるため、利用する経過措置ごとに要件等を確認してください。

税制改正で経過措置の適用期間が延長することもありますが、基本的には定められている期限をもって経過措置は終了します。

経過措置や特例制度は、確定申告等で意思表示をしないと適用されませんので、インボイス制度関連の手続きや特例制度に不明な点がありましたら、事前に専門家へご相談ください。

ぜひ一度、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談下さい。

個人事業主は、納税者本人が確定申告書を作成し、税務署へ提出しても問題ありません。

税務手続きを税理士に依頼すべきかどうかは事業内容等によって異なり、税理士に依頼する必要がない個人事業主もいるのも事実です。

一方で、税理士に依頼しないことで税務調査の対象になる確率が上がるなど、デメリットや注意点もありますので、今回は個人事業主が顧問税理士を付けるメリット・デメリットおよび、税務手続きを依頼すべきケースについて解説します。

個人事業主が税理士に依頼している割合

個人事業主は、事業で得た利益に対して所得税・住民税が課されますが、所得税の確定申告書に税理士が関与している割合は全体の20%程度です。

出所:令和4事務年度国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/index.html

同じ事業者である法人(法人税)の税理士関与割合は90%近くありますし、個人が申告する相続税の関与割合が85%程度あることを踏まえると、所得税の申告に関与している税理士の割合は低いです。

しかし、所得税の確定申告書を提出するのは個人事業主だけでなく、住宅ローン控除や医療費控除を適用する会社員や年金暮らしの方も含まれますので、個人事業主のみに限定すると、税理士が関与している割合は20%よりも高いと推測されます。

個人事業主が顧問税理士を付けるメリット

個人事業主が税理士に申告書の作成依頼をするメリットは、申告書を作成する手間を省けるだけではありません。

節税や税金対策に関する具体的な相談ができる

税金知識が豊富な個人事業主も沢山いますが、特例制度の適否や経費計上の可否など、専門家でないと判断が難しいものも少なくありません。

適切な手段で税金対策を講じたと思っていても、法令解釈に誤りがあれば税務調査で指摘され、加算税・延滞税のペナルティを受けるリスクがあります。

税務署でも税金相談は行っていますが、税務署が節税アドバイスをすることはないので、事業内容に合った節税方法や、税金対策のアドバイスを受けたい場合は税理士に相談することが望ましいです。

適正な確定申告書の作成と事務作業の削減

個人事業主が税理士に確定申告書の作成依頼をすれば、確定申告に関する事務作業量を削減しつつ、正しい申告を行えます。

事業所得や不動産所得を計算するためには売上や経費を算出しなければならず、個人事業主は仕事とプライベートの双方で使用している設備等を按分することが求められます。

算出された納税額が過少となっていれば税務署から指摘されますし、計上した経費が少なかった場合には納税額が過大となり、余分に税金を納めることになりかねません。

また、特例制度を適用するかどうかは納税者の判断ですので、特例制度を活用しなかったことで実質的に損をする可能性もあります。 顧問税理士がいる場合、計算ミスを防ぐことができるだけでなく、適用できる特例制度を活用した節税も行えますので、税負担の軽減も期待できます。

税務調査を受けるリスクが下がる

調査担当者が自宅や事務所を訪れて調査する「実地調査」の対象となった場合、80%以上の確率で非違事項を指摘されますので、調査対象者にならないことが最善です。

出所:令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

税務署には提出されたすべての申告書を調査する人員はいませんので、申告書に優先順位を付けて税務調査を実施しています。

税務調査の優先順位は申告内容の誤りや疑義、所得金額の大小だけでなく、税理士関与の有無によっても上下し、該当項目が多いほど調査対象になりやすいです。

税理士が作成した申告書は適正に作成されている確率が高いことから、税理士が関与しているだけで調査の優先順位は一段階下がります。

一方、納税者本人が作成した申告書は、税理士が作成した申告書に比べて計算ミスが発生しやすいため、相対的に顧問税理士が付いていない申告書の方が調査対象者として選定されやすいです。

個人事業主が顧問税理士を付けるデメリット

個人事業主が税理士に依頼する際は、次の事項もあらかじめ確認してください。

税理士への報酬費用が発生する

税理士に申告書の作成依頼をする場合には、対価として報酬を支払うことになります。

税理士への報酬額は税理士事務所や会計事務所によって異なりますが、依頼する内容によっても金額は上下します。

個人事業主の立場からすると、報酬額が少ない方が負担は軽くなりますが、仕訳作業の代行や経営相談がプランに含まれていない場合、満足するサポートを受けられない可能性があります。

そのため、税理士に依頼する際は報酬に含まれている業務内容等を確認し、目的に合致したプランを選んでください。

良い税理士を見つけるのが難しい

税理士にも得意・不得意の分野があるため、依頼する税金を得意とする税理士に依頼することが望ましいです。

個人事業主も個々に事業内容は異なりますし、その事業に精通していない税理士に依頼してしまうと、十分な税金対策が講じられないことも考えられます。

また、顧問税理士は気兼ねなく相談できる税理士を選ぶことも大切です。

税理士事務所が遠方にあると気軽に相談することが難しいですし、有名な税理士事務所が親身になって対応してくれるとは限りません。

中長期的に事業を続ける方であれば、現役世代の税理士を選んでいただくと途中で税理士を変える必要もなくなりますので、税理士の年齢や人柄も選ぶ際の判断材料です。

個人事業主の税理士に依頼すべきケースと不要なケース

個人事業主が顧問税理士を付けるかどうかはケースバイケースなので、依頼すべきケースと不要なケースをご紹介します。

税理士に依頼する必要がない個人事業主の特徴

税理士が不要な個人事業主は、自分で税金手続きをすべて行うことができる方です。

会計ソフトを活用することで、個人事業主でも申告書を作成するハードルは下がっているため、個人事業主でも税理士を付けることが必須とは限りません。

元々税金関連の仕事をしていた個人事業主は自身で申告書を作成できますし、勉強して税金関連の税知識を身に付けた方も、申告書を作成する面で苦労することは少ないです。

また、年間の取引回数が少ない事業者は仕訳等に費やす時間も比較的少ないため、申告手続きに関する苦労をいとわない方は、無理して税理士を付ける必要はありません。

税理士に依頼すべき個人事業主の特徴

事業に専念したい個人事業主は、顧問税理士を付けることを推奨します。

仕訳や記帳が適切に行われていないと、正しい確定申告書を作成することはできませんし、取引回数が多い事業を営んでいる個人事業主は、確定申告関連の事務処理に多大な労力と時間を費やします。

税理士事務所によっては確定申告書の作成だけでなく、記帳代行を承っていますので、顧問税理士に税金関係の手続きを一任し、事業に専念できる環境を整えてください。

税理士に依頼するか悩んでいる方は1度相談すること

個人事業主によっては税理士に依頼する必要がない方もいますが、費用を抑えるだけを目的として自分で税務手続きを行うのは危険です。

特例制度の適否は任意なので制度の存在をしないと活用することはできませんし、節税方法を知らないことが原因で、他の事業者より多く税金を支払っている方もいます。

申告内容に誤りがあれば税務調査で指摘されるだけでなく、調査終了後も動向をチェックされるようになるため、調査対象者として選ばれる確率は更に上がってしまいます。

知名度や料金の安さだけで税理士を選ぶのは危ないので、税理士を付けることを検討されている方は、1度税理士事務所に相談していただき、顧問税理士として依頼するか決めてください。

お困りのことがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へぜひ一度ご相談ください。

税理士は確定申告書の作成だけでなく、税務調査に立ち会うことができるため、調査対策の視点から税理士を選ぶことも大切です。

税理士選びに失敗してしまうと上手く節税ができないだけでなく、調査対象者として税務署から狙われやすくなるので気を付けてください。

本記事では、税務調査対策として税理士を活用するメリットと、税理士に依頼する際に知っておくべきポイントをご紹介します。

事業者は必ず税理士に依頼しなければいけないのか

確定申告書は基本的に納税者が作成し、提出するものなので、納税者自身で申告手続きを行える場合には税理士に依頼する必要はありません。

しかし、事業者は確定申告書を年に1度しか作成しませんし、税制改正が行われれば変更点を確認した上で申告することが求められます。

納税者と税理士を比較した場合、税に関する知識は税理士の方が豊富であり、税理士は依頼を受けている件数だけ申告書を作成していますので、申告手続きにも慣れています。

税務調査に関しても、調査経験が複数回ある人は限られますので、ほとんどの事業者は調査対応に慣れることはありません。

税務調査の連絡は突然入るため、連絡を受けてから調査対策をするのでは遅いです。

調査対応のしかたを間違えてしまうと、追徴税額が増えるなどのリスクが上がりますが、関与税理士がいれば事前に調査対策ができますので、調査自体を回避できるようになります。

税務署から調査の連絡が入るパターン

税務調査は脱税を試みた人(法人)に対して実施されるイメージがあるかもしれませんが、一般の方でも調査対象者として選ばれますので注意してください。

税務署から連絡が入るパターンは3種類あり、申告誤りがあれば本税だけでなく、加算税・延滞税といった附帯税も支払うことになります。

  • 実地調査
  • 実地調査以外の調査
  • 行政指導

出所:税務手続について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/02.pdf

「実地調査」は調査担当者が自宅・事務所に訪れる調査

「実地調査」は、調査担当者が自宅や事務所を訪問し、提出した申告書の内容や申告書を作成する基となった資料等を調べるために実施します。

一般的な税務調査は実地調査を指すことが多く、実地調査は1日かけて調査することがほとんどで、法人に対する税務調査については日をまたぐことも珍しくありません。

申告内容に誤りが無かったとしても、調査対応で最低1日は拘束されますし、調査担当者からの質問に回答できないと、計上した経費や特例適用が否認されるなどリスクが伴います。

また、仮装隠蔽行為があったとみなされた場合、重加算税が適用される点にも注意しなければなりません。

出所:加算税の概要(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf

「実地調査以外の調査」は電話や税務署内で実施する調査

「実地調査以外の調査」は、電話や税務署で申告誤りの指摘を行う調査手法です。

実地調査は申告書の内容をすべて確認するのに対し、実地調査以外の調査では申告誤りや申告内容の疑義がある部分だけを調査します。

調査で拘束される時間は実地調査よりも短く、調査担当者の疑義を解消できれば追徴税額を支払わずに済むケースもあります。

一方で、実地調査以外の調査でも申告誤りが指摘されれば、実地調査と同様、本税に加えて加算税・延滞税を納めなければなりません。

また、実地調査以外の調査で新たな不明点が判明した際には、実地調査に移行して調査することもあるため、適切な対応が求められます。

「行政指導」納税者に確認を促す調査

行政指導は税務署が納税者に対して申告内容の確認を促し、誤りがあった際は自主的な修正をさせることを目的とした指導です。

実地調査や実地調査以外の調査と違い、法律上の税務調査ではないため、行政指導により提出した申告書は自主申告扱いとなります。

自主的な修正申告や期限後申告は、適用される加算税のペナルティが軽減されるため、行政指導の段階で申告書の内容を正せば、余分に納める税金を抑えることができます。

また、行政指導は自主的に申告内容の確認を促すものなので、申告内容に誤りが無ければ修正申告等を提出する必要はありません。

ただし、税務署が申告内容の修正等を要すると判断した場合には、実地調査や実地調査以外の調査に切り替えて、調査が行われる可能性があるため、行政指導の連絡が入ったときも適切な対応が必要です。

税務調査対策として税理士に依頼するメリット

税理士を付けるメリットは、確定申告書の代理作成や節税だけでなく、税務調査に関するメリットも存在します。

税務調査を受ける確率が下がる

税務署は無作為に調査対象者を抽出しているのではなく、調査する条件が揃っている納税者を中心に調査を実施しますので、狙われやすい事業者は対策が不可欠です。

年間で税務調査を受ける確率は税金の種類によって異なり、個人事業主(所得税)は概ね1%、法人(法人税・消費税)は3%~4%程度です。

税務署の調査担当者は、調査を実施したことによる実績が求められているため、増差税額が発生する可能性が高い事案ほど調査対象者として選定しやすい傾向にあります。

納税者が作成した申告書は、税理士が作成したものより申告内容に誤りがある可能性が高いため、税理士関与が無い申告書の方が税務調査を受けやすいです。

一方、税理士が関与している申告書は、税務署から一定の信用はされていますので、税理士を付けているだけで、調査を受ける確率は下がります。

出所:令和4事務年度国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/index.html

税務調査に対する不安を払拭できる

納税者が関与税理士を付けている場合、税務署は関与税理士を通じて納税者に連絡をしなければなりません。

したがって、関与税理士を付ければ税務署から直接連絡が入ることは無くなりますし、税理士が間に入って税務署の担当者と税務調査に関する話し合いをしますので、税務署のペースで調査が展開されることを防げます。

税務調査は納税者以外の人が立ち会うことはできませんが、納税者から委任を受けた税理士については立ち会いが認められています。

初めて税務調査を受ける納税者は、脱税行為をしていなくても調査について不安になりますが、税理士がいれば不安を軽減できますし、調査に関する疑問点を事前に税理士へ聞けるのも関与税理士を付けるメリットです。

税務署からの指摘に対して適切な対処を行える

個別判断を要する事項は適否が分かれやすく、納税者によって経費計上の可否や特例制度の適否が変わることは珍しくありません。

税務署は税務調査で白を黒にすることはしませんが、白黒はっきりしていない点を黒と認定し、申告誤りとして指摘することはあります。

納税者が税知識を十分に有していない場合、調査担当者からの指摘に対して反論することが難しく、根拠のある意見を主張できないと黒として認定されてしまう可能性が高いです。

その点、税理士は税務署の調査担当者と同等、またはそれ以上の知識・経験を有していますので、調査担当者が黒の疑いを向けたとしても、白である根拠を法令や判例等を交えて説明することができます。

税務署は黒と断言できないものを無理やり黒認定することはしませんので、見解が分かれる事項が多いケースほど、税理士の存在が活きてきます。

税務調査に強い税理士の見つけ方

税務署は牽制目的で税務調査を実施することがあるため、確定申告書を適正に作成したとしても、税務調査を100%回避することは困難です。

税務調査を受けないことが望ましいですが、税務調査が入ったとしても申告誤りを指摘されなければ、追徴課税を受けることはありません。

税務調査に強い税理士は、調査対象になったことも想定して対策を講じますので、調査を受けないことだけをアピールしている税理士には注意してください。

税理士の中には税務署側に傾いた対応をする方もいますので、税務署の調査担当者の要求を鵜呑みにせず、納税者の味方として行動する税理士に依頼してください。

税務調査リスクを下げたい方は税理士を活用すること

税務調査を可能な限り回避するためには、申告書を正しく作成することが最も重要です。

納税者が正しい申告書を作成するのは大変ですので、調査リスクを軽減する観点から税理士に依頼することも検討してください。

税務調査は一つの計算ミスが原因で実施されることもありますし、税理士が付いていない申告書は、他に誤りがないか念入りに調べられます。

全国には数多くの税理士事務所が存在しますが、事務所によって得意・不得意の分野は違いますし、税理士自身の能力にも差があります。 毎年申告する事業者は、顧問税理士の選び方が経営にも影響してきますので、信頼できる税理士を見つけていただき、事業に専念できる環境を整えてください。

税務でお困りごとがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へお問い合わせください。

令和6年度税制改正において交際費等の見直しが行われ、交際費等から除外される飲食費の基準額が、1人当たり5,000円から1万円に引き上げられました。

本記事では、交際費等から除かれる飲食費の金額基準が変更した経緯と、交際費等および飲食費に該当する範囲、そして損金計上する際の注意点について解説します。

令和6年度税制改正における交際費等の変更点

法人税では、接待交際費として支出した費用のうち、一定額以下の飲食費は交際費等の範囲から除かれます。

除外対象となる飲食費は、従来1人当たり5,000円以下とされていましたが、令和6年(2024年)4月1日以後からは基準額が1万円以下になります。

基準額の引き上げは、昨今の会議費の実態等を踏まえたものとされていますが、それ以外にも物価上昇による飲食費の高騰や、従来の5,000円の基準額は金額的に低いとの意見があったことも要因です。

令和6年度税制改正では、飲食費の基準額変更以外にも、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が3年延長されました。

法人が支出した交際費等は原則損金不算入ですが、資本金の額等が1億円超から100億円以下の法人は、接待飲食費の50%の損金算入が認められています。 中小法人(資本金の額等が1億円以下の法人)については、「接待飲食費の50%」または、「800万円までの交際費等の全額」のいずれかを選択できるため、交際費等を800万円以内に抑えれば交際費等を全額損金として算入することが可能です。

出所:令和6年度税制改正(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei24.html

交際費等の範囲

交際費等は、交際費や接待費などの費用のうち、得意先や仕入先等の事業関係者などに対する接待・供応・慰安・贈答、その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。

慰安のための支出であったとしても、専ら従業員のために行われる旅行等において通常生じる費用は、交際費等ではなく福利厚生費に該当します。

また、飲食その他これに類する行為のために要する費用のうち、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が、1万円以下(令和6年3月31日までは5,000円以下)である場合も交際費等から除かれます。

(専ら法人役員や従業員、これらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)

飲食代として支払った費用が1人当たり1万円以内であれば全額を損金に算入できますし、1万円を超えた場合には、交際費等として損金算入の判定を行うことになります。

得意先や仕入先、事業関係等に対する支出のうち、次の性質があるものは交際費等には含まれません。

<交際費等には該当しない支出>

  • 寄附金
  • 値引きおよび割戻し
  • 広告宣伝費
  • 福利厚生費
  • 給与等

寄附金と交際費等のどちらに該当するかは、個々の実態により判定することになりますが、金銭でした贈与は原則寄附金であり、社会事業団体や政治団体に対する拠出金や、神社の祭礼等の寄贈金についても交際費等には含まれません。 また、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するものなど、広告宣伝費の性質を有する支出も交際費等には該当しません。

交際費等から除外される飲食費の書類の保存要件

交際費等の範囲から「1人当たり1万円以下の飲食費」を除外する場合、次の事項を記載した書類を保存しなければなりません。

<記載事項>

  • 飲食等のあった年月日
  • 飲食等に参加した得意先、仕入先、その他事業に関係のある者等の氏名(名称)およびその関係
  • 飲食等に参加した者の数
  • 費用の金額、飲食店・料理店等の名称・所在地
  • その他参考となるべき事項

店舗を有しない飲食店である等を理由に、名称や所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名(名称)、住所(居所)または本店(主たる事務所)の所在地を記載しなければなりません。

法人税の申告をする際は、別表十五「交際費等の損金算入に関する明細書」で損金算入する額を計算します。

出所:交際費等の損金算入に関する明細書(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/15.pdf

1人当たり1万円以下の飲食費の判定

交際費等の範囲から除かれる飲食費は、次の算式で計算した1人当たりの金額が1万円以下の費用が対象です。

<1人当たりの飲食費の算定方法>

飲食等のために要する費用として支出する金額÷飲食等の参加者数=1人当たりの飲食費の金額

1人当たりの飲食費の金額は、単純に飲食等に参加した人数で除して計算した金額で判定します。

得意先等が飲食店等において、個々にどの程度の飲食等を行ったかは、1人当たりの飲食代を計算する上では関係ありません。

1人当たりの金額が1万円を超えた場合、その費用のすべてが交際費等に該当することになり、1万円を超えた部分だけが交際費等に該当する控除方式ではないため、交際費等に該当しない範囲で飲食代を支出したいときは、1人当たりの金額が1万円を超えないよう注意してください。

支出する費用に係る消費税等の扱い

「飲食等のために要する費用として支出する金額」に係る消費税等の額は、法人が適用している消費税の経費方式によって扱いが異なります。

法人が税込経理方式を適用している場合、支出する金額に消費税等の額を含めます。

一方、税抜経理方式を適用している法人については、消費税を支出する金額に含めないで飲食費1人当たりの金額を計算しなければなりません。

インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者以外の者から課税仕入れをする場合には、原則仕入税額控除を適用できなくなりました。

節税の観点からすると、相手方が適格請求書発行事業者に該当するかも関係してきますので、接待などのために飲食代を支出する際は、法人税だけでなく消費税の取扱いにも気を付けてください。

交際費等から除外される飲食費の範囲

税務調査では交際費等に関係する支出は必ずチェックされますので、交際費等から除外される飲食費の範囲を正しく把握することが大切です。

「飲食等のために要する費用」とは

飲食等のために要する費用は、飲食代だけでなく、飲食等のためのテーブルチャージ料やサービス料など、飲食店等に対して直接支払うものが対象です。

飲食等のために飲食店等に対し、通常直接支払わない費用は、飲食等のために要する費用には該当しません。

たとえば、得意先等を飲食店等へ送迎するための送迎費は、接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用であり、飲食等のために要する費用に該当しないことから交際費等として扱います。

「飲食その他これに類する行為」に該当するもの

「飲食その他これに類する行為」のために要する費用には、自社の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」だけでなく、得意先等の業務遂行や行事開催に際して差入れた弁当の代金なども含まれます。

飲食費に該当する弁当代は、得意先等において差入れ後、相応の時間内に飲食されることが想定されるものを前提とするため、飲食物の詰め合わせの贈答など、中元や歳暮を渡すのと変わらないものは「飲食その他これに類する行為」には含まれません。

一方で、飲食店等での飲食後に提供されている飲食物の「お土産代」のうち、代金を飲食店等へ支払うものについては、相応の時間内に飲食されることが想定されるかに関係なく、飲食に類する行為に該当するものとして飲食等のために要する費用となります。

まとめ

交際費等から除外される飲食費の基準額は引き上げとなりましたが、飲食費に該当するかの判定方法は従来と同じです。

基準額が5,000円から1万円に拡大したことは納税者にとってメリットがある変更ですが、税制改正が行われた部分は税務調査でチェックされやすいので注意してください。

接待交際費は税金対策として活用しやすい半面、損金算入が否認されることが多い項目でもあります。

中途半端な対策はリスクが伴いますので、税金対策・調査対策は専門家に相談の上、事業者ごとに適した手段を用いることを推奨します。

税務でお困りごとがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

創業時の融資方法の一つとして活用されていた「新創業融資」が廃止され、新たに「新規開業資金」が創設されました。

新規開業資金と新創業融資は日本政策金融公庫の融資制度ですが、融資を受ける際の条件などは異なりますので、本記事で新規開業資金の特徴と融資審査のポイントを解説します。

日本政策金融公庫は政府系の金融機関

日本政策金融公庫(略称:日本公庫)は、民間金融機関では融資するのが難しい事業者などを対象に融資を行っている政策金融機関です。

政策金融機関は、政府が経済発展や国民生活を安定させるなどの政策を実現させることを目的に設立された特殊法人であり、日本政策金融公庫は日本政府が100%出資している株式会社です。

出所:日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/n/company/summary.html

金融機関から資金調達する場合、事業者の経営状態や資産の保有状況などが審査されます。

事業が不安定な会社や返済が見込めない会社は融資を受けにくいですし、創業して間もない会社は事業実績が無いため、銀行などから融資を受けるハードルが高いです。

日本政策金融公庫の創業融資は、事業実績が乏しいなどの理由により資金調達が困難な創業期の会社等を支援するための融資制度を多数用意していますので、事業を開始するタイミングでも融資を受けやすいのが特徴です。

日本政策金融公庫の新規開業資金制度の概要

日本政策金融公庫の新規開業資金は、これから事業を始める予定の方や、事業を開始して日が浅い事業者が利用できる融資制度です。

一般的に融資が受けにくい方が利用しやすいだけでなく、融資制度としても優れているため、創業前後においては有力な資金調達手段となります。

<新規開業資金の概要>

利用対象者新規事業者または事業開始後おおむね7年以内の方
融資の用途新規事業を開始前・開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金
20年以内<うち据置期間5年以内>
運転資金
10年以内<うち据置期間5年以内>
年利基準利率
担保・保証人要相談

新規開業資金を利用する際、次の特例制度も併用することが可能です。

<併用可能な特例制度>

  • 経営者保証免除特例制度
  • 創業支援貸付利率特例制度
  • 設備資金貸付利率特例制度(東日本版)
  • 賃上げ貸付利率特例制度

年利は返済期間や担保の有無などによって異なりますが、次に該当する方は通常よりも有利な条件で利用することができます。

  • 女性、若者、シニアの方で創業する方
  • 廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方
  • 中小会計を適用して創業する方


出所:日本政策金融公庫 国民生活事業(主要利率一覧表)

https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html

新規開業資金と新創業融資の違い

以前まで存在した日本政策金融公庫の新創業融資は令和6年(2024年)3月で廃止となり、新たに新規開業資金が創設されました。

制度が一新されたため融資条件等も変更されていますが、新規開業資金は新創業融資より利用しやすい制度に設計されています。

新規開業資金は無担保・無保証人でも申し込みできる

新規開業資金は、無担保・無保証人でも申し込みすることができます。

融資を受ける際に最も大きな障壁となるのが、担保・保証人の存在です。

金融機関等は、融資金額の返済が滞った際のリスクヘッジをしなければなりませんので、担保や保証人が用意できない事業者に融資するケースは限られています。

新規開業する事業者は担保提供できる資産を保有していることが少なく、保証人を確保するのも難しいため、銀行から資金調達するのは大変です。

日本政策金融公庫の融資制度も、担保や保証人を用意することで利率等が優遇される部分もありますが、新規開業資金の申込要件に担保・保証人は含まれていないため、新しく事業を始める方でも利用しやすいような制度になっています。

融資金額の拡大・返済期間の延長

融資を受ける際にポイントになるのが、融資金額の上限と返済期間です。

創業当初は開業準備費用だけでなく、開業してから一定期間経営を維持するための運転資金の確保は不可欠です。

経営が順調であれば計画的に返済することもできますが、創業当初は売上を予想するのが難しく、短期間で返済を求められると資金繰りに苦慮することも懸念されます。

従来の新創業融資は、融資限度額3,000万円(うち運転資金1,500万円)で、返済期間は設備資金は20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金については7年以内(うち据置期間2年以内)でした。

(「据置期間」は元金返済が猶予され、利息のみを払い込む期間をいいます。)

新創業融資も好条件で融資を受けられる制度でしたが、新規開業資金は融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)に拡大したため、以前より大きな金額を調達できるようになっています。

設備資金の返済期間は20年以内と同じですが、据置期間は2年以内から5年以内に拡大しています。

一方、運転資金の返済期間は7年以内から10年以内、据置期間は1年から5年以内と延長されていますので、事業を中長期的に計画して展開したい事業者にとっては魅力的な融資制度です。

条件に応じた利率の引き下げ

融資を受けた際の返済額は融資金額だけでなく、設定される利率によっても上下します。

利率が低いほど返済額を抑えることができますが、設定される利率は融資する側が利益を得るだけでなく、融資したお金が戻ってこなかった際の損失を補填する目的もあることから、返済が滞るリスクが高い事業者ほど利率は高く設定されます。

新規開業資金も利率は担保や保証人の有無で変動しますが、一般的な相場よりは抑えられており、新創業融資と比べても利率は低いです。

融資を受けにくい事業者は、お金を借りた際の利率が高くなりやすいため、利率を抑えて融資を受けられるメリットは非常に大きいです。

申込要件に自己資金要件が含まれていない

日本政策金融公庫で融資を受ける場合、一定以上の自己資金を保有していることが条件となっているものもあります。

しかし、新規開業資金の申込要件には自己資金要件が含まれていないので、自己資金が少ない事業者も融資申し込みをすることが可能です。

新規開業資金の融資を受ける際の流れ

新規開業資金の申し込みをする場合、最初に日本政策金融公庫へ融資相談をすることになります。

相談(要予約)は融資を申し込む前にすることができますし、支店窓口だけでなくオンラインでも相談を行っています。

融資の申し込みをインターネットでする際には、次の書類が必要です。

<融資申込時の必要書類>

  • 創業計画書
  • 運転免許証またはパスポート
  • 見積書
    (設備資金の申込の場合)
  • 履歴事項全部証明書または登記簿謄本
    (法人の場合)
  • 不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
    (担保提供する場合)
  • 都道府県知事の「推せん書」(借入申込金額が500万円以下の場合は不要)または、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」
    (生活衛生関係の事業を営む場合)
  • 許認可証
    (飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方に限る)

※電子データを準備すること

※郵送による申込手続きの際は「借入申込書(国民生活事業用)」も提出すること

融資申込後に日本政策金融公庫の担当者と面接を行い、融資の有無が決定します。

面接時には資金の用途や事業計画などが質問されますので、事業計画に関連する資料や、資産・負債の確認できる書類等を用意してください。

審査を通過した後に必要な契約手続きを行い、指定した口座に融資金が振り込まれます。 融資金の返済は原則月賦払いですが、返済方法については元金均等返済・元利均等返済・ステップ(段階)返済などが用意されています。

新規開業資金の融資申込みをする際に注意すべきポイント

日本政策金融公庫は一般の民間金融機関では融資が受けにくい方々を支援する目的があるため、比較的融資は受けやすくなっていますが、無条件で審査が通るわけではありません。

事業者の信用情報に問題があれば審査は通過しにくくなりますし、創業前に融資を受ける事業者については、創業計画書(事業計画書)の内容が非常に重要です。

融資経験が無い場合、創業計画書を適切に作成するのが難しく、審査に落ちてしまうと半年間は再申込不可となります。

事業を開始する時期が決まっている方は、審査に落ちることを避けなければなりませんので、融資の申し込みをする前に1度専門家にご相談ください。

永安栄棟 公認会計士・税理士事務所では税務のお困りごとをお伺いしております。ぜひ一度、お問い合わせください。

税務調査は1年中行われていますが、制度の創設・変更した部分は調査対象になりやすい傾向にあります。

インボイス制度は令和5年(2023年)10月1日からスタートしましたので、消費税の税務調査は今後増加することが予想されますので、調査対策は不可欠です。

本記事では、インボイス制度に対する税務調査の動向と、インボイス制度導入後に気を付けるべき税務調査のポイントについて解説します。

消費税の税務調査の実施状況

消費税の税務調査は毎年数多く実施されており、令和4事務年度における法人税・消費税の実地調査件数は6.2万件、簡易な接触件数は6.6万件です。

「実地調査」は、調査担当者が自宅や事務所に訪れて実施する調査をいい、一般的な税務調査は実地調査を指します。

「簡易な接触」は、税務署が書面や電話、来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請するものです。

1年間の納税者に対する法人税・消費税の接触率は3.9%、5年間では17.8%となっていますので、確率的には6社のうち1社は5年間で国税当局から何かしらの接触を受けています。

一方、令和4事務年度の個人事業主に対する消費税の税務調査件数は93,985件と、対前年比110.3%となっています。

消費税の無申告者に対する調査も積極的に実施されており、 同事務年度の実地調査件数は7,615件(令和3事務年度3,828件)、1件当たりの追徴税額は全体156万円の1.7倍にあたる260万円です。

260万円は過去最高額だった令和3事務年度の245万円を超える額なので、税務調査で無申告を指摘された際の追徴税額は今までで最も大きいです。

インボイス制度への対応が必要になるケース

インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入された令和5年10月1日以降に、消費税の仕入税額控除を適用する場合、原則として適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書の保存が必要です。

適格請求書を交付する事業者は、納税地を所轄する税務署長に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者として登録を受けなければなりません。

適格請求書発行事業者の登録件数は、令和6年3月末時点で4,445,025件です。

出所:適格請求書発行事業者の登録通知時期の目安について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/kensu_kikan.pdf

登録申請ができるのは消費税の課税事業者に限られるため、消費税の免税事業者が登録をするためには、課税事業者への変更を要します。

インボイス制度への対応は任意であるため、インボイス制度に対応していないだけで税務調査を受けることはありません。

しかし、免税事業者からの仕入れに係る消費税は仕入税額控除の対象外となることから、適格請求書発行事業者の登録をしない場合、事業の取引範囲が狭まることが懸念されています。

インボイス制度に対する税務調査は大口・悪質なケースに限定

住沢整国税庁長官は、会見等でインボイス制度に対する税務調査を大口・悪質なケースに限定して実行することを示しています。

国税当局は、これまでも保存書類の軽微な記載不備を目的とした調査は実施しておらず、記載事項の不備をあげつらうような調査はしないとし、税務調査の過程でインボイスの記載不備を把握したとしても、柔軟な対応をとる方針を考えているとのことです。

たとえば、インボイスに必要な記載事項については他の書類等で確認したり、 修正インボイスを交付することで、事業者間でその不足等を改めるなどの対応を行うこととしています。

調査必要度の高い納税者(大口・悪質な不正計算が想定される納税者など)に対しては、重点的に税務調査を実施するとしていますが、一般納税者に対してはインボイス制度に関するケアレスミスを指摘することだけを目的に、税務調査が行われることはありません。

出所:インボイス制度の周知広報の取組方針等について(国税庁)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/tekikaku_seikyusyo/dai3/siryou.pdf

インボイス制度の導入で消費税調査はより厳しくなる

インボイス制度に対する税務調査は、国税庁長官が大口・悪質なケースに限定すると明言していますが、インボイス制度の導入自体が税務調査に影響を及ぼす出来事なので、事業者は必要に応じて対策を講じなければなりません。

消費税の無申告者の抽出が容易になる

適格請求書発行事業者の登録申請ができるのは、消費税の課税事業者に限られるため、インボイス登録を行った事業者は必ず消費税の申告をしなければなりません。

適格請求書発行事業者には登録番号が付されていますので、税務署は登録事業者の誰が申告しているか容易に把握できます。

インボイス(適格請求書)には、適格請求書発行事業者の氏名(名称)および登録番号登録番号を記載しなければならなず、税務調査では仕入税額控除を適用するために必要事項がインボイスに記載されているかチェックします。

登録事業者でない事業者からの仕入れを仕入税額控除に含めていれば否認されますし、取引相手が消費税の申告が必要な事業者であるかも同時に確認されます。

適格請求書発行事業者の登録は任意ですが、登録申請をしていない事業者についても、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば消費税の課税事業者となりますので、消費税の申告が必要になる事業者は期限内に手続きを行ってください。

仕入税額控除の適否判定を確認するための調査が増える

インボイス制度の導入で仕入税額控除の適用要件が変更になったため、仕入税額控除の適否判定のために税務調査が実施されることも想定されます。

インボイス制度に対する税務調査は一定の納税者に限定される見込みですが、経費の架空計上などに対する税務調査は全事業者が対象です。 経費を増やすために領収書等を偽造すれば、税務調査で指摘されるだけでなく、重加算税が課されることになるので気を付けてください。

消費税の税務調査で気を付けるべきポイント

所得税や法人税の税務調査対策は講じられることが多いですが、消費税の課税事業者については、消費税の税務調査への対策も必要です。

□消費税調査は所得税・法人税と同時に実施される

消費税は事業を営んでいる人(法人)が納める税金ですので、所得税・法人税と一緒に税務調査が実施されるケースが多いです。

消費税は課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除して算出するため、売上の計上漏れや指摘されたり経費が否認されれば、消費税の納税額が増加します。

消費税の計算は「一般課税」と「簡易課税」の2種類ですが、インボイス制度が開始したタイミングで「2割特例」が期限付きで導入されています。

簡易課税は事前申請が必要であり、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合、その課税期間は簡易課税制度を適用することはできません。

2割特例は事前申請することなく適用できる反面、インボイス事業者となるために免税事業者から課税事業者になった事業者を対象とする制度なので、適用する際は事前に要件を確認してください。

□消費税の複数税率に対応した申告内容の確認

消費税の軽減税率は、令和元年(2019年)から10月1日より導入されましたが、すべての課税売上に対する消費税を軽減税率、課税仕入れに対する消費税を一般税率で計算すれば、納税額を不当に抑えることができてしまいます。

税務署は複数税率に応じた会計処理を適切に行われているかだけでなく、不当に軽減税率・一般税率が適用されていないかを確認するために調査するケースもあるので、複数税率への対応も万全に講じなければなりません。

税務調査は5年前まで遡って実施する

事業者に対する税務調査は一般的に3年分の申告書を対象とすることが多いですが、法律上は5年前まで遡って調査することが認められています。

消費税が無申告であれば、5年前まで遡って調査することもありますし、税務調査で消費税の課税事業者に該当するとなった場合、過年分の消費税の申告も必要になるケースもあります。

また、税金を誤魔化す行為(仮装隠蔽行為)をした納税者に対しては、調査期間が7年まで延長されるだけでなく、重加算税が課される可能性が非常に高いです。

消費税の税務調査対策は今後必須となりますので、インボイス制度が導入されたタイミングで対策方法を見直すことを推奨します。

税務でお困りのことがございましたら、お気軽に永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

税務調査は大企業だけでなく、中小企業や個人事業主に対しても行われますし、調査が実施されるタイミングを把握することはできませんので、税務調査の連絡が入る前から対策を講じることが大切です。

本記事では、税務調査の種類と実地調査の流れ、税務署から調査の連絡を受けた際の対応方法について解説します。

個人の税務調査は個人課税部門が担当

税務署は全国524か所に設定されていますが、税務調査の実施内容は全国共通です。

所得税の税務調査は、基本的に管轄税務署の個人課税部門が担当となりますが、所得金額が多い人や事業規模が大きい個人事業主は税務署ではなく、国税局の職員が調査を担当する可能性があります。

税務調査官の調査能力には個人差があり、ベテラン職員は調査経験が豊富である一方、若手職員は少しでも疑問点が残っていれば解決するまで調査を継続します。

税務調査を完全に回避することは難しいですが、対策を講じることで税務調査を受ける確率を下げることはできますし、申告内容に問題が無ければ調査を受けたとしても追徴課税の対象にはなりません。

税務調査は任意調査と強制調査の2種類

税務調査は、目的等に応じて任意調査と強制調査が使い分けられています。

強制調査の対象となる人はごく一部

強制調査は、納税者の許可を得ずに捜査する調査をいい、調査を担当するのは税務署ではなく、マルサ(国税局査察部)です。

マルサは裁判所の令状を得て調査を実施するため、納税者の同意を必要とせず、必要であれば関係書類は押収されます。

強制調査で脱税を指摘された場合、追徴課税だけでなく刑事罰に処される可能性が高いので、強制調査を受けないことが何よりも重要です。

なお、強制調査の対象となるのは悪質な脱税犯に限られますが、個人に対しても行われる点には注意してください。

出所:査察調査我が国は納税者自身による適正な申告と納付(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/01.pdf

任意調査は一般的な税務調査

任意調査は、納税者の同意の下で実施する調査をいい、個人に対する調査のほとんどは任意調査です。

調査担当者は納税者に同意を得てから調査をする必要があるため、基本的に調査が実施される前に連絡が入ります。

ただ、任意調査であっても納税者は調査を断ることができませんし、調査に応じない場合や、事前に連絡することで調査に支障をきたすことが想定されるケースでは、無予告で実施することが認められています。

任意調査で申告内容の誤りを指摘された際は、追徴税額を支払うことになりますが、仮装隠蔽行為があったと判断されれば、重加算税の対象となるので注意してください。

個人に対する税務調査の流れ

税務調査官が自宅や事務所に訪れて書類等を調べる調査を「実地調査」といい、実地調査は次の流れに沿って行われます。

出所:国税庁の税務調査の概要

https://www8.cao.go.jp/chosei/dokkin/kaisaijokyo/mtng_4th/mtng_4-3.pdf

①:税務署からの事前通知

調査担当者は納税者に対し、次の事項を事前通知することが法律で定められているため、実地調査が行われる際は、原則として事前に調査を実施する旨の連絡が入ります。

<事前通知で伝えられる事項>

  • 調査が実施される日時
  • 調査場所
  • 調査の目的
  • 調査対象となる税目
  • 調査対象期間
  • 調査対象になる帳簿書類等

調査日時は税務署から希望日が伝えられますが、合理的な理由があれば、納税者が調査日時の変更を求めることもできます。

ただし、税務調査の協力に応じない場合や、税務署が保有する情報から事前通知を行うことで調査に支障が出る場合、調査担当者は事前通知せずに税務調査を行うことが認められています。

②:調査に向けての事前準備

納税者は調査を受けることが決まりましたら、当日までに調査対象となった税目の資料・書類を準備してください。

個人事業主の場合、3年分の申告書が調査対象となることが多いですが、調査担当者は対象年分より前の資料等の提示を求めてくることがあります。

事業者には帳簿や領収書を一定期間保存することが定められているため、書類等を提示できないと不利な状況に追い込まれますので、日頃から関係書類の整理整頓を行ってください。

③:実地調査当日

調査当日は、税務署の調査担当者から身分証明書と質問検査章が提示されます。

実地調査では関係書類を調べるだけでなく、納税者に売上や在庫の管理方法など、確定申告に関連する内容を細かく尋ねられます。

調査担当者は必要に応じて帳簿書類などを提示・提出を求めてきますが、正当な理由がなく提示・提出を断ることはできません。

質問検査権に基づく質問は正確に回答しなければならず、質問事項に対して偽りの回答をすれば仮装隠蔽行為があったとして、重加算税の対象になってしまいます。

また、税務署は調査事項が解明されるまで調査を続けますので、早期に調査を終わらすためにも調査に協力することは必要です。

④:反面調査

調査担当者は、納税者からの聴き取りした内容の真偽等を確かめるために、取引先や雇用主などに対して反面調査を行います。

調査当日に担当者からの質問を上手く避けられたとしても、反面調査で事実関係は確認されますし、反面調査で新たな疑問点が浮上したときは、調査担当者が再び自宅等に訪れることもあります。

⑤:調査結果の説明・修正申告等の勧奨

税務調査が終了する際は、調査担当者から申告内容の誤り等についての説明が行われ、説明した内容に基づき、修正申告または期限後申告の勧奨が行われます。

修正申告(期限後申告)の勧奨は、納税者に修正申告書等の提出を促すもので、納税者が調査結果の説明に納得した場合、勧奨に応じて修正申告書等を提出することになります。

一方、税務調査の結果、申告内容に誤りが認められない場合や、申告義務がないと認められる場合には、税務署から「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」(通称:是認通知書)が送付されます。

⑥:修正申告・納税

修正申告等の勧奨に応じる形で修正申告書等を提出・納税した場合、1か月から2か月後に加算税および延滞税の通知が届きますので、適宜納めてください。

修正申告書等の勧奨に応じないときは、税務署長が更正または決定の処分を行い、更正または決定の通知書が送付されます。

また、調査結果に不服があるときは、再調査の請求や審査請求を行うことができますので、必要に応じて手続きをすることになります。

税務署から実地調査の連絡が入った際の対処法

納税者の大半は税務調査を受けた経験がなく、調査担当者の対応に苦慮することが多いため、不利益を被らないためにも税理士を付けることを検討してください。

税務署から税務調査を実施する旨の連絡が入った場合、その時点で調査を避ける手段はありませんので応じることになります。

調査の日程調整等に応じなければ無予告で調査が入ることもありますし、調査担当者の心証を悪くします。

一方、税理士法に定められている書面添付制度に基づく書面が申告書に添付されている場合、税務署は関与税理士を通じて税務調査を実施する旨の連絡を行います。

関与税理士がいるだけで税務署から直接連絡が入らなくなりますし、 関与税理士は調査当日に立会うことが認められています。

また、税理士は専門家として税務署に対し、納税者側の意見を正確に伝えることができますので、税理士に依頼するのは節税だけでなく、調査対策としても効果的です。

まとめ

個人と法人は調査を担当する部署が異なりますが、調査の基本的な流れは同じです。

しかし、個人事業主は法人と比べて税務調査を受けた経験が無い方が多く、税理士が関与していない申告も多いです。

関与税理士が不在の申告書は調査対象者として選定されやすく、納税者だけで調査担当者と対等に渡り合うのは難しいです。

確定申告書を作成する時点で税理士に依頼するのが望ましいですが、申告書を提出した後に税理士を付けることもできますので、税務調査関係で不安がある場合はぜひ一度、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

そもそも「開業」とは?

開業の基礎知識

個人事業主とは、法人を設立せずに、個人で事業をおこなっている人をいいます。個人事業主は、開業のために「登記」などの必要はなく、税務署に「開業届」を提出することで、個人事業主として開業したことになるのです。

一方、法人とは法律により権利・義務を認められた組織であり、原則として、「法務局に会社の登記を申請した日」が設立日となります。この点が、個人事業主と法人の開業に関する大きな違いといえます。

「開業届」の基礎知識

「開業日」の決め方

「開業届」とは、簡単に説明をすると、どのような事業をやるかというのを国に知らせるための書類です。この書類は、所轄の税務署に提出をします。なお、所轄の税務署は国税庁のホームページで簡単に調べることが可能です。

「開業届」には、「開業・廃業等日」という欄(下図の黄色の下線部分)があり、ここに記載された年月日が「開業日」となります。

(出典:国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/05.pdf )

開業日の決め方に明確なルールはありませんが、「個人事業主として初めて仕事を受注した日」や、「会社を退職した日の翌日」などにする人が多いようです。

開業届の提出期限は?

原則として、開業届は「事業の開始等の事実があった日から1月以内」に提出しなければなりません。もし、1ヶ月を過ぎてしまっていても受理されますので、必ず2ヶ月以内には開業届を出すようにしましょう。理由としては、一般的に開業届と一緒に提出される「青色申告」の申請書の提出期限が厳密に決められているためです。青色申告は、個人事業主となった初年度から多くの特典を受けることができます。そのため、青色申告を希望する場合は、開業から遅くとも2ヶ月以内に、開業届とともに「青色申告承認申請書」を忘れずに提出しましょう

なお、青色申告については、こちらに詳しく記載していますので、あわせてご覧ください。

「青色申告と白色申告の違いとメリット・デメリットを解説」

税務署に行かずに開業届を作成する方法とは?

開業届は、届出書を作成して税務署へ直接持参したり、送付したりすることにより提出することができます。この届出書の用紙は、国税庁のホームページからダウンロードが可能ですが、税務署で用紙をもらい、その場で記入して提出することも可能です。

一方、クラウド会計ソフトを利用すれば、「開業届」や「青色申告承認申請書」を、ガイドに従って操作するだけで簡単に作成することができます。基本的に、クラウド会計ソフトは有料ですが、開業手続きについては「無料」で利用できるソフトもあるようです。

なお、クラウド会計ソフト全般についての説明は、こちらに詳しく記載していますので、あわせてご覧ください。

「クラウド会計ソフトのメリットとは?」

また、開業届や青色申告承認申請書は、e-Taxによりインターネットで提出することも可能です。e-Taxを利用するには、ソフトのインストールなど事前準備が必要ですので、前もって以下のサイトをよく確認しておくとよいでしょう。

「e-Tax 国税電子申告・納税システム」

https://www.e-tax.nta.go.jp/kojin.html

また、開業に関する手続きについては、当事務所でも対応しています。なにかご不安な点がある場合などは、神戸市東灘区の永安栄棟 公認会計士・税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。

開業に関する注意点

開業直後はクレジットカード等の審査に通りづらくなるといわれています。そのため、会社員の方が退職をしてこれから個人事業主になろうとする場合は、退職する前に「クレジットカード」を作っておくと安心でしょう。

「開業費」の基礎知識

開業費とは?

個人事業主として開業する際、開業の準備のために支出することがよくあります。たとえば、事業で使用するパソコンを購入したり、事業に関連したセミナーへ参加したりするなどです。このような、開業日前に支出した準備費用は「開業費」といい、費用ではなく「繰延資産」という資産になります。「開業費」は一度資産として計上されますが、その後、原則として5年にわたり経費として計上(これを償却といいます)されます。

開業費として認められる範囲

個人事業主の場合、開業日前に支払った開業のための準備費用は、基本的に「開業費」となります。開業費の具体例は、以下の通りです。

・パソコン、プリンターなどの購入費用(10万円未満)

・事業に関連したセミナーへの参加費用

・通信費用

・チラシなどの広告費用

・関係先への手土産代

・打ち合わせの費用

・市場調査のための旅費やガソリン代など

・借入金の利子のうち、開業前までのもの

・ホームページの開設など、WEBサイトに関連した費用

開業費として計上する上で重要な点は、これらの支出が「開業日前の支出」であること、また、「事業に関連した支出」であることです。事業に関連のないセミナー代などは開業費にできませんので注意が必要です。また、以下のものは開業費にできないので、あわせて確認しておきましょう。

・10万円以上の備品など

・敷金、礼金

・仕入代金

開業費の記帳方法

ここでは、具体例を用いて「開業費の記帳方法」について説明をします。なお、勘定科目や仕訳方法は一例です。

<例1>

開業日前に、事業に関連した本を1万円分購入した。

借方の勘定科目借方の金額貸方の勘定科目貸方の金額摘要
開業費10,000円元入金10,000円書籍代

開業日後に、事業に関連した本を1万円分購入した。

借方の勘定科目借方の金額貸方の勘定科目貸方の金額摘要
新聞図書費10,000円現金10,000円書籍代

<例2>

開業日前に、チラシを1万円分発注し、代金を支払った。

借方の勘定科目借方の金額貸方の勘定科目貸方の金額摘要
開業費10,000円元入金10,000円チラシ代

開業日後に、チラシを1万円分発注し、代金を支払った。

借方の勘定科目借方の金額貸方の勘定科目貸方の金額摘要
広告宣伝費10,000円現金10,000円チラシ代

<例3>

開業日前に、9万円のパソコンを購入した。

借方の勘定科目借方の金額貸方の勘定科目貸方の金額摘要
開業費90,000円元入金90,000円パソコン代

開業日後に、9万円のパソコンを購入した。

借方の勘定科目借方の金額貸方の勘定科目貸方の金額摘要
消耗品費90,000円現金90,000円パソコン代

<例4>

決算日に、1万円の開業費を償却する(経費にする)。

借方の勘定科目借方の金額貸方の勘定科目貸方の金額摘要
開業費償却10,000円開業費10,000円開業費の償却

開業費の注意点

開業費を計上するためには、原則として領収書やレシートなどの証明書類が必要です。そのため、個人事業主になると決めたその日から、事業に関連する領収書等は必ず保管しておきましょう。その支出が、会社員時代のものであっても問題ありません。退職をして個人事業主になろうとする人は、退職前の支出に関する領収書等も忘れずに保管しておきましょう。

なお、開業費は原則として5年にわたり経費として計上できますが、「任意償却」という方法を選択することも可能です。任意償却とは、その名の通り、任意に償却する(経費にする)方法で、たとえば、赤字の年には経費にせず黒字の年に経費にしたり、利益が大きな年に全額を経費にしたりするなどの方法があります。この任意償却をうまく利用することで節税効果が期待できますので、押さえておくとよいでしょう。

まとめ

この記事では、「開業費」や「開業届」について解説しました。

個人事業主として開業するにあたって特に注意したいのは、「開業届」と「青色申告承認申請書」を原則として1ヶ月以内に提出することです。特に、青色申告承認申請書は提出期限が厳密に決められているため、青色申告を希望する場合は余裕をもって準備することをおすすめします。

また、開業を決めたときから、開業準備に関する支出の領収書やレシートを保管しておくことも大切です。開業費は償却方法を工夫することで節税することも可能なので、「開業日前の支出」で、かつ、「事業に関連した支出」の領収書等は必ず残しておきましょう。

個人事業主として開業する際は、手続きや会計処理の方法など気がかりな点が多いものです。そのため、開業全般についてご不安な点がある場合は、神戸市東灘区の永安栄棟 公認会計士・税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。

個人事業主が確定申告をする際、「経費にできるか、できないか」と悩むことが一度はあるのではないでしょうか。経費にできれば所得税を減らせるため、できるだけ多くの経費を計上したいところです。

しかし経費にできるものは限られている上に、税務署と意見が対立して争うケースもあります。このコラムでは、個人事業主が経費にできるかどうかの判断基準と、よくある例を解説します。

経費が多ければ税金は少なくなる

個人事業主の所得税は、以下のように計算します。
収入-「経費」=所得
所得-所得控除=課税される所得金額
課税される所得金額×所得税率=所得税の金額

このため、経費が多ければ所得税の金額は少なくなります。
できるだけ経費を多く計上することが節税につながります

経費にできるかどうかの判断基準

経費とは、事業を行う際にかかった費用をいいます。つまり、業務上必要な費用が経費となるのですが「業務上必要かどうか」の解釈が問題になります
例えば物を仕入れて販売した場合、仕入代金は経費になります。では、販売するために営業しなければならず、そのためにスーツを購入したら、スーツの購入代金は経費になるでしょうか。現在では税務上、衣装代は必ずしも経費として認められていません。

このように「業務に必要である」と、何かしらの理由付けをすればよい訳ではありません。最終的には税務署とのコミュニケーションを経て、経費か否かが決定されることになりますので、多分に「税務署を納得させることができるか」という点が重要になってきます。

税務上経費として認められるかどうかは、具体的には以下のようなポイントで判断するとよいでしょう。

  1. 事業に直接関係があるかどうか。
  2. 事業の内容に鑑み、通常必要と考えられるものであるかどうか。
  3. 合理的な金額であるかどうか。家事按分しているかどうか。家事按分比率は合理的な数字かどうか。
  4. 領収書などの客観的な証拠があるかどうか。

それぞれ詳細を説明します。

1.事業に直接関係があるかどうか

例えば販売する商品の仕入代金は、明らかに事業に直接関係すると考えられますが、客観的に明確な対応関係がなくても、事業に関連するものであれば経費になります。例えば飲食代は、商談・営業のためのものであれば業務に関連するものとして経費計上が可能です。領収書だけではプライベートなのか事業に関連するものか分からないため、相手先や会議の内容、目的などを、メモで残しておきましょう

2.事業の内容に鑑み、通常必要と考えられるものであるかどうか

事業の内容や形態によって、かかる費用の内容はさまざまです。例えば、完全に自宅の中だけで行うネットビジネスをしているのに、多額の出張費が経費計上されていると、事業のためであるということについて、相当しっかりした説明が求められることになります。逆に、衣装代は原則として経費にならないと言われている中で、演劇をしている方が、業務でしか着用しない演劇衣装については、経費として認められるケースもあり得ます。

3.常識的な金額であるかどうか。家事按分しているかどうか。家事按分比率は合理的な数字かどうか。

営業のための接待費用でも、例えば1人分1回10万円を超える、などの一般的に高すぎる飲食代は、本当に事業のためだけに必要なのか疑念を持たれる可能性があります。

また、金額だけでなく収入との比率も大切なポイントです。売上が年間1,000万円なのに、接待交際費が年間500万円などと高い比率であると、本当に事業のための接待交際費なのかについて、疑念を持たれる可能性があります。しかし、かかる経費がほぼ交際費だけといった事業もあるかもしれませんので、根拠がしっかりしている場合は証拠を残すことが大切です。逆に根拠があいまいな場合、売上に対して比率が高い経費は否認されるリスクが高くなります。

また、自宅で事業をしている場合、水道光熱費や家賃なども、事業で使用した部分は経費になります。しかしメーターが分かれている訳ではないため、何かしらの比率で按分します。これを家事按分といい、按分比率は「使用している時間」や「使用面積」などの合理的なもので決めることが重要です。

もし自宅の経費を家事按分せずに全額を事業用とした場合は、プライベート部分が含まれていることが明らかであり、税務署に指摘されるリスクが高まります。また、水道代を家事按分比率5%、事業用95%などとした場合、たとえ自宅でほぼ事業をしていたとしても、水道の利用がほぼ事業のためとする強い証拠が求められるでしょう。家事按分をした上で、按分比率が常識的な比率であるかどうかも検討しましょう

4.領収書などの客観的な証拠があるかどうか。

領収書やレシートなどの客観的な証拠がないと、事業に関係する経費であるという根拠付けが弱くなります。どうしても見つからない場合は、より状況を詳細に記録したメモ書きや出金伝票を残しましょう。

よくある疑問(具体例)

経費になるかどうか悩むポイントを、いくつか紹介します。

  • 事業用で購入した衣装代

前述したとおり、事業のために購入した場合でも、スーツや洋服はプライベートでも着用できるため、経費になるとは限りません。ただしプライベートでは着用できない状況等については、経費とすることが可能です

  • ベビーシッター代

仕事をするためにベビーシッターを依頼したとしても、原則として代金は経費にはなりません。

  • 税金

個人事業主が支払う所得税、住民税は、個人が支払うものであるため経費にはなりません。ただし事業をしていることで支払う個人事業税は全額、固定資産税は業務用の部分が経費となります。

  • 自分の給料(生活費)

個人事業主は、自分の給料を経費にすることはできません。また生計を一にする家族への給料も原則として経費にはできません。青色申告をして届け出をすることで、所定の要件を満たせば青色事業専従者の給与を経費として計上できます。

それ以外の従業員を雇った場合は、給料を経費とできます。

  • 一人の食事、飲み物代

仕事の途中、一人で食事をしても、原則として食事代は経費にはなりません。仕事の途中で飲食するお茶やお菓子も同様です。商談のために相手がいたり、来客用の茶菓子であったりすれば経費になります。

  • 従業員がいない場合の福利厚生費

従業員が一人もいない状況では福利厚生費という概念がないため、経費にできません。

  • 事業に必要な資格取得費用

事業に直接必要な資格取得費用や研修の費用は、経費になります。ただし、個人に帰属する資格の取得費用は経費にできません。個人に帰属する資格とは、医師や弁護士など資格を持った人だけができる業務がある国家資格などをいいます。また、事業以外でも使える資格、例えば普通自動車の免許取得費用などは、経費計上が難しいケースが多くあります。状況に応じてよく検討しましょう。

  • 車を事業でしか使用しない場合の、車両購入代金やガソリン代

理論的には、事業でしか使用しない場合は全額経費となります。ただし、車を1台だけしか保有していない場合、本当にプライベートで一切運転をしないかどうか、疑念を持たれる可能性があります。根拠をしっかりと残しておく必要があるでしょう。

まとめ

以上、個人事業主が経費にできるものの判断基準を紹介しました。

事業に関連するものは原則として経費とできます。ただし、客観的に事業と関連性が薄いと思われるもの、金額の大きいもの、売上と比較して金額が大きいものなどは、指摘されるリスクがあるため、根拠を残すことが大切です

また、スーパーのレシートや、事業をしている場所とは離れている店舗での買い物など、客観的に見てプライベートのものではないかと疑念の持たれる可能性のあるものは、状況の記録を残しておきましょう。

最終的には税務署とのコミュニケーションを経て、経費か否かが決定されることになりますので、多分に「税務署を納得させることができるか」という点が重要になってきます。

逆に、経費として根拠のあるものはすべて計上し節税しましょう。プライベート分が混在していても、事業でも使用しているものは、家事按分することで経費にできます。自宅の家賃、通信費、光熱費や、プライベートと兼用の携帯代金、住宅ローンの金利部分なども、按分して計上できます。

経費となるものの判断を始めとして、税務相談については永安栄棟公認会計士・税理士事務所にお問い合わせください