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経営者が顧問税理士に不満を抱えている状態では事業に専念できませんし、顧問税理士の存在が税務調査のリスクを引き上げる要因になることもあります。

経営上のリスクは、能動的に対処しないと問題が大きくなる可能性もありますので、早めに行動することが大切です。

本記事では、顧問税理士の変更を検討すべきケースと、顧問税理士の交代時に注意すべきポイントを解説します。

顧問税理士を交代することが問題になることはない

経営者は顧問税理士と契約を結んで税務関係のサポートを受けますので、契約期間が満了すれば、別の税理士を顧問に据えても問題はありません。

顧問契約が自動更新の場合、契約書に記載されている期間までに契約を更新しない旨を伝えれば顧問契約を終了できます。

契約満了であれば違約金は発生しませんが、契約期間の途中で別の税理士に顧問を交代するときは、違約金が発生する可能性があるので注意が必要です。

経営者が顧問税理士の変更を検討すべき事例

税理士と顧問契約を結んだ当初は良好な関係であったとしても、事業を続けていく途中で不満を抱えるようになる経営者も少なくありません。

顧問税理士が次の項目に一つでも該当する場合には、新しい顧問税理士を探すのも選択肢です。

申告・手続きミスが多い

顧問税理士は、顧客の申告書や申請等の手続きを代行することを主な業務としていますので、申告手続き等を滞りなく遂行できない税理士を顧問に据えるメリットはありません。

申請書等の提出漏れがあれば制度を利用できなくなりますし、制度を利用できないことで税負担が重くなるのは経営者にとって大きなデメリットです。

税務署から申告誤りを指摘された場合、追徴税額を支払うことになりますが、ペナルティを受けることになるのは顧客である経営者です。

単純なミスの多発は信頼関係を損ねますし、顧問税理士に不信感を抱いたままだと、提案される節税等のアドバイスを受け入れるのが難しくなるため、税理士にミスが散見される場合は顧問の変更を検討してください。

節税に関する提案が少ない

事業内容等によって実施できる税金対策は異なりますし、得られる節税効果も違いますので、状況に応じた節税アドバイスを提案するのも顧問税理士の役割です。

税理士と顧問契約を結んでいる経営者は、申告書の作成代行だけでなく、顧問税理士からのアドバイスによる節税効果を期待しますが、積極的に税金対策を提案しない税理士も存在します。

実質的に申告書の作成代行だけしか行なわない税理士と顧問契約を結ぶのは費用対効果が乏しいため、報酬に見合った対価を得るためにも、色々な節税手段を提案する税理士と顧問契約を結ぶのが望ましいです。

税務調査対応の不満・顧問税理士への不信感

顧問税理士は、納税者以外で唯一税務調査に同席できる存在です。

税務調査では税務調査官から納税者に対して多くの質問が行われますが、顧問税理士から事前に税務調査に関するレクチャーを受けていれば、対応が後手に回ることを防げます。

納税者と税務調査官の意見が対立した場合、間に入って税務調査官と交渉するのも税理士の役割ですが、税理士によっては納税者側ではなく、税務署側に立って対応する方もいます。

納税者側の意見を正確に伝えることは顧問税理士にしかできませんので、税理士が与えられた役割を遂行しないときは、交代することも検討してください。

気軽に相談することができない

顧問税理士は、経営者が抱える問題や不満を解消するアドバイザーとしての立場も担っていますが、相談できる環境が整っていなければ問題を解決するのに時間を要してしまいます。相談に対する回答が遅い場合も迅速な経営判断を下すのに支障が出ますので、税理士の対応がおざなりになっていると感じたときは、対応の改善を求める必要があります。

経営状態・環境の変化

顧問税理士との関係が良好でも、経営状態や環境の変化に対応するために顧問税理士を交代した方がいい状況も存在します。

税理士にも得意・不得意の分野があるため、税理士が得意としていない分野に挑むことになれば、その分野に精通している税理士に顧問を変えるべきです。

顧問税理士を変更する際に押さえておくべきポイント

顧問税理士を単に交代しただけでは不満を解消することはできませんので、交代を検討する際は、次のポイントに注意してください。

顧問税理士に求める優先事項をまとめる

顧問税理士への条件を明確にしておけば探すのもラクになるだけでなく、顧問契約を結んだ後にトラブルが生じるリスクも軽減できます。

経営者が顧問税理士と対面で相談をしたい場合、税理士事務所が近くないとその条件をクリアすることは難しいです。

海外事業を展開する予定があるときは、税理士が海外関連の税務に精通していることが優先事項となりますので、新しい税理士を探す際は、事前に顧問税理士へ求める項目をリストアップしてください。

報酬の安さで顧問税理士を選ぶのは危険

経営者にとって支出を抑えることは命題ですが、報酬の大小だけで顧問契約を結ぶのはリスクが高いです。

報酬が安い税理士は税務相談が業務内容に含まれていないこともありますし、相談方法が電話やメールなどに限定されていれば、気軽に経営相談をすることもできません。

税務相談に対する報酬を別途支払うのであれば、サポートが充実している顧問税理士と契約した方がトータルのコストを抑えられます。

税理士の年齢も重要項目

税理士は全国に8万人以上いますが、平均年齢は60歳以上とされており、税理士業界も高齢化が顕著です。

高齢な税理士でも優秀な方は数多くいますが、会社を20年30年と続けていくことを想定した場合、途中で顧問税理士を交代することは避けられません。

税理士の子が事務所を引き継ぐケースもありますが、先代のように顧問としての業務を全うするとは限らないため、代替わりするタイミングで顧問税理士を変更するのも選択肢です。

また、経営者と顧問税理士の年齢に差が大きい場合、気軽に相談できないケースや、価値観の相違で話がかみ合わないこともあります。

税理士の年齢は顧問税理士選びの盲点となりやすいため、税理士を探す際は年齢もチェックしてください。

顧問税理士を変更する際の流れ

新たに顧問になる税理士がすぐに見つかるとは限りませんので、顧問税理士の変更は計画的に準備を進める必要があります。

顧問契約が自動更新となっている場合、定められた期限までに契約を終了する旨を伝えなければなりませんので、事前に現在の顧問税理士と交わしている契約内容を確認してください。

顧問契約終了を伝え、任期満了となりましたら、旧顧問税理士から帳簿書類などの関係書類の返却を求めます。

旧顧問税理士が保有している関係書類は、新顧問税理士に渡すことになりますが、税理士間で直接やり取りする場合もあるので、前もって引き継ぎ方法を尋ねてください。

引き継ぎに時間を要する見込みの場合、旧顧問税理士との契約が切れる1か月程度前から顧問契約を結ぶと空白期間が生じないで済みます。

これからは顧問税理士も厳選する時代

顧問税理士は申告書の作成だけでなく、事業に関するアドバイスも行いますので、経営面におけるパートナー的存在となります。

今まで依頼してきた顧問税理士との契約を終了するのは心情的には辛いですが、経営者の立場として顧問税理士の良し悪しは見極めなければなりません。

顧問税理士を変えるだけで税負担を軽くすることは可能ですし、税務関連の不満が解消できれば、経営者は事業に専念できます。

現在の顧問税理士との契約が切れるタイミングで新たな税理士を探し始めるのは遅いので、契約期間の途中から顧問税理士を交代することを想定した行動を取ってください。

お困りのことがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へぜひ一度ご相談ください。

法人の方が個人事業主よりも経費として計上できる範囲は広いため、節税を意識するのであれば、法人化することも選択肢です。

ただ法人でも経費にできない支出がありますので、今回は個人事業主と法人における経費の扱いと、経費計上する際の注意点を解説します。

個人事業主の経費計上できる範囲

税務署は、経費として計上している費用の内訳を必ずチェックします。

経費計上できるもの・できないものを明確に区分しないと、税務調査で指摘されますので気を付けてください。

経費として認められる費用

個人事業主は、事業収入を得るために直接要した費用を必要経費として計上することができます。

必要経費に該当する主な費用は下記の通りで、収入を得るために直接必要だった支出であれば経費計上が可能です。

<経費にできる主な費用>

  • 売上原価
  • 給与、賃金
  • 地代、家賃
  • 減価償却費
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 接待交際費
  • 修繕費
  • 消耗品費など

経費に計上できない費用

個人事業主は、家事上の費用を経費として計上することはできません。

「家事上の費用」とは、プライベートで支出したものをいい、食費やプライベートでの旅行費用などが家事上の経費に該当します。

しかし、家事上の経費に関連する経費(家事関連費)のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合には、その部分に相当する経費の金額を必要経費として計上することが可能です。

そのため、仕事とプライベートで使用している備品等については、仕事として使用する部分を明確にすることが求められます。

出所:税大講本 所得税法(令和6年度版)(国税庁)

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/syotoku/pdf/all.pdf

詳細はこちらも参照 【弊所コラム】交際費等の飲食費判定の基準額引き上げ

家事関連費は税務調査で指摘されやすい

家事関連費を経費計上している場合、仕事に対応する部分のみを経費として計上しているかチェックされます。

按分割合と実態が相違していれば経費計上が否認されますし、按分した根拠を示すことができない場合も、経費計上が否認されるので注意が必要です。

家事関連費の按分割合は合理的な方法で算出しなければならず、支出の種類等によって合理的な方法は異なります。

たとえば、自動車を平日は仕事、土日はプライベートの目的で利用している場合、自動車にかかる支出に7分の5(平日5:土日2)を乗じた額を経費にするなどの方法があります。

法人が個人事業主よりも経費に計上できるが広い理由

法人と個人事業主では、対象となる税金(法人税、所得税など)の種類が違うため、経費計上を判断する法令や法令解釈通達が異なります。

法人は利益を出すための組織であるため、法人の支出は基本的に事業収入を得るための費用に該当しますので、個人事業主よりも経費にできる範囲が必要です。

例外的に経費として認められない支出もありますが、法人は個人事業主のようなプライベートはないので、支出の按分計算も不要です。

個人事業主が法人化することで経費計上できる費用

個人事業主が法人化(法人成り)した場合、次のような支出を経費計上できるようになります。

福利厚生費

福利厚生は、会社が従業員や家族に提供する給与以外の報酬をいい、会社が従業員等の福利厚生のために生じる支出は経費にできます。

福利厚生には健康保険や雇用保険などの「法定福利厚生」と、レクリエーションや子育て・介護などの「法定外福利厚生」があり、どちらの福利厚生にかかる費用も原則福利厚生費として扱われます。

個人事業主がプライベートで旅行した際の費用は経費になりませんが、法人が従業員レクリエーション旅行に際して支出した費用は、原則経費にすることが可能です。

なお、役員だけで行う旅行や、取引先を接待する目的の旅行などは福利厚生費に該当しませんのでご注意ください。

車両関連費

車両関連費は車両を使用・維持管理するための費用をいい、ガソリン代や車検費用、自動車税等が含まれます。

個人事業主が個人名義の車両をプライベートでも使用している場合、仕事として利用している部分のみが経費となります。

プライベートで使用する比率が高いと経費にできる割合が小さくなりますし、税務調査では按分した割合の根拠を求められます。

一方、法人名義の車両については、役員がプライベートでのみ使用しているケースなどを除き、車両に関連する費用を原則すべて経費にすることが可能です。

出張旅費

個人事業主が出張した場合、プライベートによる支出とみなされた部分は経費から除外しなければなりません。

それに対し、法人が従業員等に支給する出張旅費は原則経費として計上できますし、出張旅費を受け取った従業員等に対して所得税が課されることもありません。

法人が出張旅費を経費計上する際には、出張旅費規定を作成することが求められます。

出張旅費規定は、出張に際して発生する交通費や宿泊費、日当などの取扱いを定めた規定です。

支給額が不当に高い場合については、経費計上が否認されるだけでなく、受け取った従業員等は給与所得として所得税が課される可能性があります。

家賃・社宅

個人事業主は、自宅の家賃を経費にすることはできません。

自宅を店舗兼住宅として利用している場合には、店舗に該当する部分のみを経費として計上し、水道光熱費等は面積等で按分することになります。

一方、法人化した場合には、社宅として利用することで一定割合を経費にできます。

ただし、役員の個人名で契約した物件は社宅としては認められないため、法人化する際は契約する名義に注意してください。

退職金

個人事業主は退職の概念がないため、廃業時に退職金を支払うことはありませんが、法人化すれば、役員や従業員が退職する際に退職金を支払うことができます。

法人が支払った退職金は不当に高額なケースを除き、原則損金計上が可能です。

退職金を受け取った役員や従業員は、退職所得として税金の計算をするため、法人と役員・従業員の双方で節税効果が期待できます。

また、退職金の支払いに備えて保険に加入している場合、その保険料も経費にできるため、退職金を準備する手段として保険を活用するのも選択肢です。

法人が経費計上する際に注意すべきポイント

法人は個人事業主よりも経費計上できる範囲は広いですが、経費(損金)算入が認められない支出もあるので気を付けてください。

役員報酬は原則損金不算入

従業員への給与は損金計上できるのに対し、役員への報酬は原則損金不算入となります。

ただし、次のいずれかに該当する報酬(給与)については、例外的に損金算入が認められています。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

事前に定めた額を役員へ支払う場合、基本的には損金として算入できますが、役員報酬の額が増減してしまうと損金不算入となります。

また、報酬額が不相当に高額な場合や、法人が仮想・隠蔽による経理に基づいて支給した役員報酬も損金に算入することはできません。

接待交際費

接待交際費は、交際費や接待費、機密費などの費用のうち、得意先や仕入先などの関係者に接待や贈答等をするための支出をいいます。

中小企業の場合、接待交際費の50%または800万円のいずれかの金額を超えた部分が損金不算入となります。

ただし、社外の人との飲食等において、1人当たり1万円以下の飲食費については、接待交際費の範囲から除かれます。

飲食費の基準額は以前は5,000円でしたが、令和6年度税制改正で1万円に引き上げられました。

飲食費を接待交際費から除外する際は、必要事項を記載した書類を保存しなければならず、1人当たりの飲食費額が1万円を超えた場合には、1万円を超えた費用全額が接待交際費に該当するのでご注意ください。

出所:「令和6年度税制改正」(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei24.html

法人成りは総合的に判断しないと失敗する

税務調査では、個人事業主であれば家事関連費、法人では役員に関する支出が必ずチェックされるので、事前対策は不可欠です。

法人は個人事業主よりも節税する手段が豊富なので、事業規模が一定以上となった個人事業主は、法人として活動することも選択肢です。

ただし、法人化するためには様々な手続きを要しますし、法人化することが必ずしも最適とは限りません。

法人化した後に再び個人事業主として活動する場合には、多大な労力と費用がかかりますので、法人化を検討されている方は税理士事務所に相談してから判断することをオススメします。

お困りのことがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へぜひ一度ご相談ください。

令和5年(2023年)10月1日にスタートしたインボイス制度ですが、制度開始時にいくつかの経過措置が設けられています。

インボイス制度の経過措置は、節税効果が見込めるものや事務作業を軽減できる内容となっていますので、今回はインボイス制度の経過措置の種類および要件、そして適用期間について解説します。

インボイス制度の2割特例

インボイス制度が導入されたことで消費税の課税事業者となった小規模事業者への負担軽減措置として、「2割特例」の経過措置が設けられています。

2割特例の概要

2割特例は、仕入税額控除の代わりに売上税額の8割を特別控除税額として差し引くことができる制度です。

消費税の課税事業者は、売上税額から仕入税額を差し引いた額を納めることになるため、仕入税額が少ない事業者ほど消費税の納税額は多くなります。

しかし、2割特例を適用すれば仕入税額の大小に関係なく、売上税額の8割を差し引くことができますので、消費税の納税額を売上税額の2割に抑えることが可能です。

消費税の計算方法には一般課税と簡易課税が存在しますが、2割特例はそれらの課税制度と比較し、節税になる場合に選択して適用することが認められています。

なお、多くの事業者は2割特例を適用した方が節税になりますので、要件を満たす事業者は経過措置の活用を検討してください。

出所:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

適用要件

2割特例を適用できるのは、インボイス制度が導入されたタイミングで、免税事業者から適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)になった課税事業者です。

基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者や、資本金1,000万円以上の新設法人等は2割特例を適用することができません。

(基準期間は個人事業者の場合は対象年分の前々年、事業年度が1年である法人はその事業年度の前々事業年度のことをいいます。)

ただし、課税事業者が適格請求書発行事業者になった場合でも、適格請求書発行事業者となった課税期間の翌課税期間以降の課税期間について、基準期間の課税売上高が1,000万円以下になるときは、原則2割特例を適用できます。

適用期間・手続き方法

2割特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。

たとえば、免税事業者である個人事業者が令和5年10月1日から適格請求書発行事業者として活動している場合、令和5年分(10月から12月分)から令和8年分までの確定申告において2割特例を適用することができます。

2割特例を適用する際は、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を記載してください。

消費税の簡易課税制度と違い、事前の届出は不要ですし、2割特例を適用して申告した翌課税期間において継続して適用するなどの条件もありません。

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置

インボイス制度が導入されたことで、免税事業者等から仕入れた商品等に対する消費税は仕入税額控除の対象外となります。

しかし、経過措置としてインボイス制度開始後一定期間は、免税事業者等からの仕入れについても一定割合控除することができます。

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の概要

インボイス制度の導入により、消費税の仕入税額控除を適用するためには、適格請求書等保存方式で必要となる請求書等を作成・保存しなければなりません。

免税事業者など、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために必要な請求書等の交付を受けられませんので、仕入税額控除の対象から除かれます。

しかし、免税事業者等からの課税仕入れであったとしても、下記の期間中においては仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除することができます。

<経過措置の適用期間と控除額>

期間控除額
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで仕入税額相当額の50%

適用要件

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置を適用する場合、帳簿と請求書等に関する要件を満たす必要があります。

帳簿については、従来の区分記載請求書等保存方式で必要であった記載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載することが求められます。

「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」については、取引ごとに経過措置の適用を受ける課税仕入れであることを示さなければなりません。

<経過措置を適用する旨の表示例>

  • 個々の取引ごとに記載する場合の表示方法
    • 80%控除対象
    • 免税事業者からの仕入れ
  • まとめて経過措置を適用する旨を記載する場合の表示方法
    • 対象となる適用する取引に『※』等の記号・番号を付し、「※は80%控除対象」などと表示

請求書等については、区分記載請求書等と同様の事項を記載することが要件となります。

インボイス制度導入以前から消費税の課税事業者として活動している事業者であれば、帳簿の記載事項を追加でクリアすれば経過措置を適用できます。

なお、令和6年度税制改正により、一の免税事業者等から行う経過措置の対象となる課税仕入れの合計額が、対象年分(事業年度)において10億円(税込み)を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れに対して本経過措置が適用できないことになりました。

改正事項は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されるため、該当する事業者は注意してください。

適用期間・手続き方法

免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。

経過措置を適用するためには、必要事項が記載された帳簿および請求書等を保存し、確定申告書を提出することになります。

令和8年10月1日以後は控除割合が下がりますが、適用要件は同じです。

インボイス制度の少額特例

インボイス制度導入以後に仕入税額控除を適用するためには、適格請求書(インボイス)の保存が必要です。

しかし、一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置として設けられた「少額特例」の要件を満たす事業者は、適格請求書を保存していなくても、一定の事項を記載した帳簿を保存していれば仕入税額控除が適用できます。

少額特例の概要

少額特例は、税込1万円未満の課税仕入れについては、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を認める経過措置です。

取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係ないため、取引先が免税事業者であったとしても、少額特例の対象となります。

「税込1万円未満の課税仕入れ」とは、1回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満に該当するものをいいます。

商品ごとに税込1万円未満の課税仕入れに該当するかを判定するものではないため、取引の合計額が1万円以上となる場合には、少額特例の対象外となるのでご注意ください。

少額特例は適格請求書の保存を不要とする経過措置ですが、適格請求書発行事業者の交付義務を免除するものではありません。

そのため、少額特例を適用する場合でも、適格請求書発行事業者に該当する事業者が取引先の課税事業者から適格請求書を求められたときは、交付する必要があります。

出所:「少額特例」における1万円未満の判定単位(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-016.pdf

適用要件

少額特例を適用できるのは、基準期間における課税売上高が1億円以下または、特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者です。

「特定期間」は、個人事業者は前年1月から6月までの期間、法人については前事業年度の開始の日以後6月の期間をいいます。

納税義務の判定とは異なり、特定期間における課税売上高の判定では、課税売上高に代えて給与支払額の合計額を用いることはできないのでご注意ください。

適用期間・手続き方法

少額特例の適用期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。

特例を適用するために申請書等を提出する必要はありませんが、令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、課税期間の途中でも少額特例の対象外となります。 したがって、経過措置が終了した後の課税仕入れに対して仕入税額控除を適用する際は、原則、適格請求書と一定の事項を記載した帳簿を保存することが求められます。

まとめ

インボイス制度の経過措置は、種類によって適用期間と適用要件が異なるため、利用する経過措置ごとに要件等を確認してください。

税制改正で経過措置の適用期間が延長することもありますが、基本的には定められている期限をもって経過措置は終了します。

経過措置や特例制度は、確定申告等で意思表示をしないと適用されませんので、インボイス制度関連の手続きや特例制度に不明な点がありましたら、事前に専門家へご相談ください。

ぜひ一度、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談下さい。

個人事業主は、納税者本人が確定申告書を作成し、税務署へ提出しても問題ありません。

税務手続きを税理士に依頼すべきかどうかは事業内容等によって異なり、税理士に依頼する必要がない個人事業主もいるのも事実です。

一方で、税理士に依頼しないことで税務調査の対象になる確率が上がるなど、デメリットや注意点もありますので、今回は個人事業主が顧問税理士を付けるメリット・デメリットおよび、税務手続きを依頼すべきケースについて解説します。

個人事業主が税理士に依頼している割合

個人事業主は、事業で得た利益に対して所得税・住民税が課されますが、所得税の確定申告書に税理士が関与している割合は全体の20%程度です。

出所:令和4事務年度国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/index.html

同じ事業者である法人(法人税)の税理士関与割合は90%近くありますし、個人が申告する相続税の関与割合が85%程度あることを踏まえると、所得税の申告に関与している税理士の割合は低いです。

しかし、所得税の確定申告書を提出するのは個人事業主だけでなく、住宅ローン控除や医療費控除を適用する会社員や年金暮らしの方も含まれますので、個人事業主のみに限定すると、税理士が関与している割合は20%よりも高いと推測されます。

個人事業主が顧問税理士を付けるメリット

個人事業主が税理士に申告書の作成依頼をするメリットは、申告書を作成する手間を省けるだけではありません。

節税や税金対策に関する具体的な相談ができる

税金知識が豊富な個人事業主も沢山いますが、特例制度の適否や経費計上の可否など、専門家でないと判断が難しいものも少なくありません。

適切な手段で税金対策を講じたと思っていても、法令解釈に誤りがあれば税務調査で指摘され、加算税・延滞税のペナルティを受けるリスクがあります。

税務署でも税金相談は行っていますが、税務署が節税アドバイスをすることはないので、事業内容に合った節税方法や、税金対策のアドバイスを受けたい場合は税理士に相談することが望ましいです。

適正な確定申告書の作成と事務作業の削減

個人事業主が税理士に確定申告書の作成依頼をすれば、確定申告に関する事務作業量を削減しつつ、正しい申告を行えます。

事業所得や不動産所得を計算するためには売上や経費を算出しなければならず、個人事業主は仕事とプライベートの双方で使用している設備等を按分することが求められます。

算出された納税額が過少となっていれば税務署から指摘されますし、計上した経費が少なかった場合には納税額が過大となり、余分に税金を納めることになりかねません。

また、特例制度を適用するかどうかは納税者の判断ですので、特例制度を活用しなかったことで実質的に損をする可能性もあります。 顧問税理士がいる場合、計算ミスを防ぐことができるだけでなく、適用できる特例制度を活用した節税も行えますので、税負担の軽減も期待できます。

税務調査を受けるリスクが下がる

調査担当者が自宅や事務所を訪れて調査する「実地調査」の対象となった場合、80%以上の確率で非違事項を指摘されますので、調査対象者にならないことが最善です。

出所:令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

税務署には提出されたすべての申告書を調査する人員はいませんので、申告書に優先順位を付けて税務調査を実施しています。

税務調査の優先順位は申告内容の誤りや疑義、所得金額の大小だけでなく、税理士関与の有無によっても上下し、該当項目が多いほど調査対象になりやすいです。

税理士が作成した申告書は適正に作成されている確率が高いことから、税理士が関与しているだけで調査の優先順位は一段階下がります。

一方、納税者本人が作成した申告書は、税理士が作成した申告書に比べて計算ミスが発生しやすいため、相対的に顧問税理士が付いていない申告書の方が調査対象者として選定されやすいです。

個人事業主が顧問税理士を付けるデメリット

個人事業主が税理士に依頼する際は、次の事項もあらかじめ確認してください。

税理士への報酬費用が発生する

税理士に申告書の作成依頼をする場合には、対価として報酬を支払うことになります。

税理士への報酬額は税理士事務所や会計事務所によって異なりますが、依頼する内容によっても金額は上下します。

個人事業主の立場からすると、報酬額が少ない方が負担は軽くなりますが、仕訳作業の代行や経営相談がプランに含まれていない場合、満足するサポートを受けられない可能性があります。

そのため、税理士に依頼する際は報酬に含まれている業務内容等を確認し、目的に合致したプランを選んでください。

良い税理士を見つけるのが難しい

税理士にも得意・不得意の分野があるため、依頼する税金を得意とする税理士に依頼することが望ましいです。

個人事業主も個々に事業内容は異なりますし、その事業に精通していない税理士に依頼してしまうと、十分な税金対策が講じられないことも考えられます。

また、顧問税理士は気兼ねなく相談できる税理士を選ぶことも大切です。

税理士事務所が遠方にあると気軽に相談することが難しいですし、有名な税理士事務所が親身になって対応してくれるとは限りません。

中長期的に事業を続ける方であれば、現役世代の税理士を選んでいただくと途中で税理士を変える必要もなくなりますので、税理士の年齢や人柄も選ぶ際の判断材料です。

個人事業主の税理士に依頼すべきケースと不要なケース

個人事業主が顧問税理士を付けるかどうかはケースバイケースなので、依頼すべきケースと不要なケースをご紹介します。

税理士に依頼する必要がない個人事業主の特徴

税理士が不要な個人事業主は、自分で税金手続きをすべて行うことができる方です。

会計ソフトを活用することで、個人事業主でも申告書を作成するハードルは下がっているため、個人事業主でも税理士を付けることが必須とは限りません。

元々税金関連の仕事をしていた個人事業主は自身で申告書を作成できますし、勉強して税金関連の税知識を身に付けた方も、申告書を作成する面で苦労することは少ないです。

また、年間の取引回数が少ない事業者は仕訳等に費やす時間も比較的少ないため、申告手続きに関する苦労をいとわない方は、無理して税理士を付ける必要はありません。

税理士に依頼すべき個人事業主の特徴

事業に専念したい個人事業主は、顧問税理士を付けることを推奨します。

仕訳や記帳が適切に行われていないと、正しい確定申告書を作成することはできませんし、取引回数が多い事業を営んでいる個人事業主は、確定申告関連の事務処理に多大な労力と時間を費やします。

税理士事務所によっては確定申告書の作成だけでなく、記帳代行を承っていますので、顧問税理士に税金関係の手続きを一任し、事業に専念できる環境を整えてください。

税理士に依頼するか悩んでいる方は1度相談すること

個人事業主によっては税理士に依頼する必要がない方もいますが、費用を抑えるだけを目的として自分で税務手続きを行うのは危険です。

特例制度の適否は任意なので制度の存在をしないと活用することはできませんし、節税方法を知らないことが原因で、他の事業者より多く税金を支払っている方もいます。

申告内容に誤りがあれば税務調査で指摘されるだけでなく、調査終了後も動向をチェックされるようになるため、調査対象者として選ばれる確率は更に上がってしまいます。

知名度や料金の安さだけで税理士を選ぶのは危ないので、税理士を付けることを検討されている方は、1度税理士事務所に相談していただき、顧問税理士として依頼するか決めてください。

お困りのことがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へぜひ一度ご相談ください。

税理士は確定申告書の作成だけでなく、税務調査に立ち会うことができるため、調査対策の視点から税理士を選ぶことも大切です。

税理士選びに失敗してしまうと上手く節税ができないだけでなく、調査対象者として税務署から狙われやすくなるので気を付けてください。

本記事では、税務調査対策として税理士を活用するメリットと、税理士に依頼する際に知っておくべきポイントをご紹介します。

事業者は必ず税理士に依頼しなければいけないのか

確定申告書は基本的に納税者が作成し、提出するものなので、納税者自身で申告手続きを行える場合には税理士に依頼する必要はありません。

しかし、事業者は確定申告書を年に1度しか作成しませんし、税制改正が行われれば変更点を確認した上で申告することが求められます。

納税者と税理士を比較した場合、税に関する知識は税理士の方が豊富であり、税理士は依頼を受けている件数だけ申告書を作成していますので、申告手続きにも慣れています。

税務調査に関しても、調査経験が複数回ある人は限られますので、ほとんどの事業者は調査対応に慣れることはありません。

税務調査の連絡は突然入るため、連絡を受けてから調査対策をするのでは遅いです。

調査対応のしかたを間違えてしまうと、追徴税額が増えるなどのリスクが上がりますが、関与税理士がいれば事前に調査対策ができますので、調査自体を回避できるようになります。

税務署から調査の連絡が入るパターン

税務調査は脱税を試みた人(法人)に対して実施されるイメージがあるかもしれませんが、一般の方でも調査対象者として選ばれますので注意してください。

税務署から連絡が入るパターンは3種類あり、申告誤りがあれば本税だけでなく、加算税・延滞税といった附帯税も支払うことになります。

  • 実地調査
  • 実地調査以外の調査
  • 行政指導

出所:税務手続について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/02.pdf

「実地調査」は調査担当者が自宅・事務所に訪れる調査

「実地調査」は、調査担当者が自宅や事務所を訪問し、提出した申告書の内容や申告書を作成する基となった資料等を調べるために実施します。

一般的な税務調査は実地調査を指すことが多く、実地調査は1日かけて調査することがほとんどで、法人に対する税務調査については日をまたぐことも珍しくありません。

申告内容に誤りが無かったとしても、調査対応で最低1日は拘束されますし、調査担当者からの質問に回答できないと、計上した経費や特例適用が否認されるなどリスクが伴います。

また、仮装隠蔽行為があったとみなされた場合、重加算税が適用される点にも注意しなければなりません。

出所:加算税の概要(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_3.pdf

「実地調査以外の調査」は電話や税務署内で実施する調査

「実地調査以外の調査」は、電話や税務署で申告誤りの指摘を行う調査手法です。

実地調査は申告書の内容をすべて確認するのに対し、実地調査以外の調査では申告誤りや申告内容の疑義がある部分だけを調査します。

調査で拘束される時間は実地調査よりも短く、調査担当者の疑義を解消できれば追徴税額を支払わずに済むケースもあります。

一方で、実地調査以外の調査でも申告誤りが指摘されれば、実地調査と同様、本税に加えて加算税・延滞税を納めなければなりません。

また、実地調査以外の調査で新たな不明点が判明した際には、実地調査に移行して調査することもあるため、適切な対応が求められます。

「行政指導」納税者に確認を促す調査

行政指導は税務署が納税者に対して申告内容の確認を促し、誤りがあった際は自主的な修正をさせることを目的とした指導です。

実地調査や実地調査以外の調査と違い、法律上の税務調査ではないため、行政指導により提出した申告書は自主申告扱いとなります。

自主的な修正申告や期限後申告は、適用される加算税のペナルティが軽減されるため、行政指導の段階で申告書の内容を正せば、余分に納める税金を抑えることができます。

また、行政指導は自主的に申告内容の確認を促すものなので、申告内容に誤りが無ければ修正申告等を提出する必要はありません。

ただし、税務署が申告内容の修正等を要すると判断した場合には、実地調査や実地調査以外の調査に切り替えて、調査が行われる可能性があるため、行政指導の連絡が入ったときも適切な対応が必要です。

税務調査対策として税理士に依頼するメリット

税理士を付けるメリットは、確定申告書の代理作成や節税だけでなく、税務調査に関するメリットも存在します。

税務調査を受ける確率が下がる

税務署は無作為に調査対象者を抽出しているのではなく、調査する条件が揃っている納税者を中心に調査を実施しますので、狙われやすい事業者は対策が不可欠です。

年間で税務調査を受ける確率は税金の種類によって異なり、個人事業主(所得税)は概ね1%、法人(法人税・消費税)は3%~4%程度です。

税務署の調査担当者は、調査を実施したことによる実績が求められているため、増差税額が発生する可能性が高い事案ほど調査対象者として選定しやすい傾向にあります。

納税者が作成した申告書は、税理士が作成したものより申告内容に誤りがある可能性が高いため、税理士関与が無い申告書の方が税務調査を受けやすいです。

一方、税理士が関与している申告書は、税務署から一定の信用はされていますので、税理士を付けているだけで、調査を受ける確率は下がります。

出所:令和4事務年度国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/index.html

税務調査に対する不安を払拭できる

納税者が関与税理士を付けている場合、税務署は関与税理士を通じて納税者に連絡をしなければなりません。

したがって、関与税理士を付ければ税務署から直接連絡が入ることは無くなりますし、税理士が間に入って税務署の担当者と税務調査に関する話し合いをしますので、税務署のペースで調査が展開されることを防げます。

税務調査は納税者以外の人が立ち会うことはできませんが、納税者から委任を受けた税理士については立ち会いが認められています。

初めて税務調査を受ける納税者は、脱税行為をしていなくても調査について不安になりますが、税理士がいれば不安を軽減できますし、調査に関する疑問点を事前に税理士へ聞けるのも関与税理士を付けるメリットです。

税務署からの指摘に対して適切な対処を行える

個別判断を要する事項は適否が分かれやすく、納税者によって経費計上の可否や特例制度の適否が変わることは珍しくありません。

税務署は税務調査で白を黒にすることはしませんが、白黒はっきりしていない点を黒と認定し、申告誤りとして指摘することはあります。

納税者が税知識を十分に有していない場合、調査担当者からの指摘に対して反論することが難しく、根拠のある意見を主張できないと黒として認定されてしまう可能性が高いです。

その点、税理士は税務署の調査担当者と同等、またはそれ以上の知識・経験を有していますので、調査担当者が黒の疑いを向けたとしても、白である根拠を法令や判例等を交えて説明することができます。

税務署は黒と断言できないものを無理やり黒認定することはしませんので、見解が分かれる事項が多いケースほど、税理士の存在が活きてきます。

税務調査に強い税理士の見つけ方

税務署は牽制目的で税務調査を実施することがあるため、確定申告書を適正に作成したとしても、税務調査を100%回避することは困難です。

税務調査を受けないことが望ましいですが、税務調査が入ったとしても申告誤りを指摘されなければ、追徴課税を受けることはありません。

税務調査に強い税理士は、調査対象になったことも想定して対策を講じますので、調査を受けないことだけをアピールしている税理士には注意してください。

税理士の中には税務署側に傾いた対応をする方もいますので、税務署の調査担当者の要求を鵜呑みにせず、納税者の味方として行動する税理士に依頼してください。

税務調査リスクを下げたい方は税理士を活用すること

税務調査を可能な限り回避するためには、申告書を正しく作成することが最も重要です。

納税者が正しい申告書を作成するのは大変ですので、調査リスクを軽減する観点から税理士に依頼することも検討してください。

税務調査は一つの計算ミスが原因で実施されることもありますし、税理士が付いていない申告書は、他に誤りがないか念入りに調べられます。

全国には数多くの税理士事務所が存在しますが、事務所によって得意・不得意の分野は違いますし、税理士自身の能力にも差があります。 毎年申告する事業者は、顧問税理士の選び方が経営にも影響してきますので、信頼できる税理士を見つけていただき、事業に専念できる環境を整えてください。

税務でお困りごとがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へお問い合わせください。

令和6年度税制改正において交際費等の見直しが行われ、交際費等から除外される飲食費の基準額が、1人当たり5,000円から1万円に引き上げられました。

本記事では、交際費等から除かれる飲食費の金額基準が変更した経緯と、交際費等および飲食費に該当する範囲、そして損金計上する際の注意点について解説します。

令和6年度税制改正における交際費等の変更点

法人税では、接待交際費として支出した費用のうち、一定額以下の飲食費は交際費等の範囲から除かれます。

除外対象となる飲食費は、従来1人当たり5,000円以下とされていましたが、令和6年(2024年)4月1日以後からは基準額が1万円以下になります。

基準額の引き上げは、昨今の会議費の実態等を踏まえたものとされていますが、それ以外にも物価上昇による飲食費の高騰や、従来の5,000円の基準額は金額的に低いとの意見があったことも要因です。

令和6年度税制改正では、飲食費の基準額変更以外にも、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が3年延長されました。

法人が支出した交際費等は原則損金不算入ですが、資本金の額等が1億円超から100億円以下の法人は、接待飲食費の50%の損金算入が認められています。 中小法人(資本金の額等が1億円以下の法人)については、「接待飲食費の50%」または、「800万円までの交際費等の全額」のいずれかを選択できるため、交際費等を800万円以内に抑えれば交際費等を全額損金として算入することが可能です。

出所:令和6年度税制改正(財務省)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei24.html

交際費等の範囲

交際費等は、交際費や接待費などの費用のうち、得意先や仕入先等の事業関係者などに対する接待・供応・慰安・贈答、その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。

慰安のための支出であったとしても、専ら従業員のために行われる旅行等において通常生じる費用は、交際費等ではなく福利厚生費に該当します。

また、飲食その他これに類する行為のために要する費用のうち、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が、1万円以下(令和6年3月31日までは5,000円以下)である場合も交際費等から除かれます。

(専ら法人役員や従業員、これらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)

飲食代として支払った費用が1人当たり1万円以内であれば全額を損金に算入できますし、1万円を超えた場合には、交際費等として損金算入の判定を行うことになります。

得意先や仕入先、事業関係等に対する支出のうち、次の性質があるものは交際費等には含まれません。

<交際費等には該当しない支出>

  • 寄附金
  • 値引きおよび割戻し
  • 広告宣伝費
  • 福利厚生費
  • 給与等

寄附金と交際費等のどちらに該当するかは、個々の実態により判定することになりますが、金銭でした贈与は原則寄附金であり、社会事業団体や政治団体に対する拠出金や、神社の祭礼等の寄贈金についても交際費等には含まれません。 また、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するものなど、広告宣伝費の性質を有する支出も交際費等には該当しません。

交際費等から除外される飲食費の書類の保存要件

交際費等の範囲から「1人当たり1万円以下の飲食費」を除外する場合、次の事項を記載した書類を保存しなければなりません。

<記載事項>

  • 飲食等のあった年月日
  • 飲食等に参加した得意先、仕入先、その他事業に関係のある者等の氏名(名称)およびその関係
  • 飲食等に参加した者の数
  • 費用の金額、飲食店・料理店等の名称・所在地
  • その他参考となるべき事項

店舗を有しない飲食店である等を理由に、名称や所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名(名称)、住所(居所)または本店(主たる事務所)の所在地を記載しなければなりません。

法人税の申告をする際は、別表十五「交際費等の損金算入に関する明細書」で損金算入する額を計算します。

出所:交際費等の損金算入に関する明細書(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2022/pdf/15.pdf

1人当たり1万円以下の飲食費の判定

交際費等の範囲から除かれる飲食費は、次の算式で計算した1人当たりの金額が1万円以下の費用が対象です。

<1人当たりの飲食費の算定方法>

飲食等のために要する費用として支出する金額÷飲食等の参加者数=1人当たりの飲食費の金額

1人当たりの飲食費の金額は、単純に飲食等に参加した人数で除して計算した金額で判定します。

得意先等が飲食店等において、個々にどの程度の飲食等を行ったかは、1人当たりの飲食代を計算する上では関係ありません。

1人当たりの金額が1万円を超えた場合、その費用のすべてが交際費等に該当することになり、1万円を超えた部分だけが交際費等に該当する控除方式ではないため、交際費等に該当しない範囲で飲食代を支出したいときは、1人当たりの金額が1万円を超えないよう注意してください。

支出する費用に係る消費税等の扱い

「飲食等のために要する費用として支出する金額」に係る消費税等の額は、法人が適用している消費税の経費方式によって扱いが異なります。

法人が税込経理方式を適用している場合、支出する金額に消費税等の額を含めます。

一方、税抜経理方式を適用している法人については、消費税を支出する金額に含めないで飲食費1人当たりの金額を計算しなければなりません。

インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者以外の者から課税仕入れをする場合には、原則仕入税額控除を適用できなくなりました。

節税の観点からすると、相手方が適格請求書発行事業者に該当するかも関係してきますので、接待などのために飲食代を支出する際は、法人税だけでなく消費税の取扱いにも気を付けてください。

交際費等から除外される飲食費の範囲

税務調査では交際費等に関係する支出は必ずチェックされますので、交際費等から除外される飲食費の範囲を正しく把握することが大切です。

「飲食等のために要する費用」とは

飲食等のために要する費用は、飲食代だけでなく、飲食等のためのテーブルチャージ料やサービス料など、飲食店等に対して直接支払うものが対象です。

飲食等のために飲食店等に対し、通常直接支払わない費用は、飲食等のために要する費用には該当しません。

たとえば、得意先等を飲食店等へ送迎するための送迎費は、接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用であり、飲食等のために要する費用に該当しないことから交際費等として扱います。

「飲食その他これに類する行為」に該当するもの

「飲食その他これに類する行為」のために要する費用には、自社の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」だけでなく、得意先等の業務遂行や行事開催に際して差入れた弁当の代金なども含まれます。

飲食費に該当する弁当代は、得意先等において差入れ後、相応の時間内に飲食されることが想定されるものを前提とするため、飲食物の詰め合わせの贈答など、中元や歳暮を渡すのと変わらないものは「飲食その他これに類する行為」には含まれません。

一方で、飲食店等での飲食後に提供されている飲食物の「お土産代」のうち、代金を飲食店等へ支払うものについては、相応の時間内に飲食されることが想定されるかに関係なく、飲食に類する行為に該当するものとして飲食等のために要する費用となります。

まとめ

交際費等から除外される飲食費の基準額は引き上げとなりましたが、飲食費に該当するかの判定方法は従来と同じです。

基準額が5,000円から1万円に拡大したことは納税者にとってメリットがある変更ですが、税制改正が行われた部分は税務調査でチェックされやすいので注意してください。

接待交際費は税金対策として活用しやすい半面、損金算入が否認されることが多い項目でもあります。

中途半端な対策はリスクが伴いますので、税金対策・調査対策は専門家に相談の上、事業者ごとに適した手段を用いることを推奨します。

税務でお困りごとがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

日本政策金融公庫は、開業資金や事業運転資金の調達先として検討すべき金融機関です。

銀行で融資を受けるのが難しい事業者でも、日本政策金融公庫であれば資金を調達することができますが、融資審査を通過するためには事前準備が不可欠です。

そこで本記事では、日本政策金融公庫の融資条件と、審査を通るために押さえておくべきポイントについて解説します。

日本政策金融公庫が資金調達先としてオススメされる理由

日本政策金融公庫は一般的に馴染みの薄い金融機関ですが、事業開始時の資金調達先として最初に候補に挙がるほど魅力がある金融機関です。

開業・創業前後でも融資を受けやすい

日本政策金融公庫は、一般の金融機関が行う金融を補完することを目的とした、政府系金融機関です。

一般の金融機関はビジネスとしてお金を貸し付けますので、返済が滞る可能性が高い事業者には融資をしませんし、返済リスクが高いほど設定される利率は上がります。

それに対し、日本政策金融公庫は融資が受けにくいとされる、開業・創業前後の事業者に対しても積極的に融資をしていますので、銀行の融資審査を通過するのが難しい方でも資金を調達することができます。

出所:日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/n/finance/first/index.html

担保・保証人が必須条件ではない

銀行の融資を受ける際に高いハードルとなるのが、担保・保証人の存在です。

担保や保証人は、返済が滞った際のリスクヘッジとしての役割があるため、融資金額が大きくなるほど、担保提供や保証人を用意しないと融資を受けることが難しくなります。

日本政策金融公庫の融資制度にも、担保や保証人が必要となるものもありますが、「新規開業資金」などの融資制度は担保・保証人が必須条件となっていないため、資力が乏しい創業当初でも融資の申し込みを行えます。

設定される利率が低い

日本政策金融公庫の融資制度の利率は、全体的に低く設定されているのが特徴です。

融資を受けた際に設定される利率が高いと、トータルの返済額も大きくなるため、資金調達は融資額だけでなく、低利率で借りることも大切です。

創業当初は売上実績がありませんし、経営の見通しも不透明であることから、融資元は返済リスクを高く見積もり、利率を高く設定する傾向にあります。

しかし、日本政策金融公庫についてはベースとなる利率が低いため、返済額を抑えつつ事業資金を確保できます。

日本政策金融公庫の融資審査は厳しいのか

融資には必ず審査がありますし、日本政策金融公庫の融資の申し込みをした人全員が資金調達できるわけではないため、申し込みをする前に審査の難易度を確認してください。

民間の金融機関とは審査の重点項目が異なる

日本政策金融公庫は、銀行等で融資を受けるのが難しい方を対象に貸し付けることが多いことから、審査時に重要視するポイントも一般の金融機関とは異なります。

日本政策金融公庫が重要視するのは創業計画書(事業計画書)の内容で、創業計画書の内容に不備や矛盾点があると、審査に通過するのが厳しくなります。

反対に、事業実績がない事業者であったとしても、創業計画書や事業計画書の内容が充実し、将来性があると判断された場合には審査を通過できますので、創業計画書を綿密に練り上げることが大切です。

返済見込みがない事業者は審査に落ちる

日本政策金融公庫は、創業当初や年齢等で資金調達が難しいとされる方にも融資をしていますが、審査時には返済能力の有無を確認しますし、返済見込みがない事業者に対して融資をすることはありません。

創業前の時点では返済能力を示すことは難しいですが、事業内容に期待できるケースであれば融資をしてくれます。

しかし、事業計画が杜撰(ずさん)だと返済能力が無いと判断され、審査に落ちますので注意してください。

個人事業主でも融資を受けることができる

日本政策金融公庫の融資制度は個人事業主でも申し込みを行い、融資を受けることができます。

一般的に個人事業主は法人よりも信用力が低いため、資金調達のハードルが高いとされています。

しかし、日本政策金融公庫の審査条件は基本的に個人事業主と法人は同等なので、個人事業主であることを理由として、審査に落ちることはありません。

再審査の申し込みは半年後

創業当初で資金調達に失敗すると事業を開始できなくなる可能性や、運転資金が枯渇するリスクがあります。

日本政策金融公庫の融資審査に落ちた場合、原則として半年間は再審査の申し込みができません。

融資申込のハードルが低いことと、融資の受けやすさはイコールではありませんので、事前に専門家へ相談するなどして、最初の申し込みで融資を通過できるよう対策を講じることが大切です。

日本政策金融公庫の審査を通過するために押さえておくべきポイント

日本政策金融公庫の融資を受ける場合、次の4点を押さえておかないと審査を通過するのは難しいです。

創業計画書の重要度は高い

日本政策金融公庫の審査は、創業計画書の内容の重要度が特に高いです。

創業前や創業して間もない段階では事業実績がないため、経営者の経歴だけでなく、取引商品や取引先、保有資金などの情報を細かくチェックします。

出所:日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyou00_190507b.pdf

経営者が過去に事業を営んでいた実績があればプラスになりますし、事業内容が具体的かつ売上が見込めるものであれば、審査で有利となります。

反対に、創業動機が乏しく、取引先との関係性も薄い場合には、事業の発展が見込めないと判断され、審査に落ちてしまいます。

資金用途を明確に伝える

日本政策金融公庫は、融資を受けた際の資金の使途によって限度額が異なります。

たとえば「新規開業資金」の融資限度額は7,200万円ですが、運転資金としての融資限度額は4,800万円までとなっています。

事業規模と比べて求めている融資金額が大きい場合、希望額に届かない可能性や、返済リスクの観点から審査に落とされることも考えられます。

そのため、必要となる資金を調達するためには、資金の使い道についても明確に示すことが大切です。

ローン・税金等の滞納は厳禁

「信用情報」は、クレジットカード等の契約内容や契約情報など、客観的な取引事実が記録してある情報です。

信用情報はクレジットカードやローン契約をする際に活用されますが、融資審査時にも創業者の信用情報はチェックされます。

融資審査で確認される事項は、滞納経験とキャッシング債務の有無です。

滞納経験は返済リスクに直結しますし、他に借りている債務がある場合、返済が滞った際に債権が回収不能となる確率が上がるため、どちらか一方でも該当する方は審査を通過するのが難しくなります。

また、日本政策金融公庫の融資においては、公共料金や税金の滞納にも注意しなければなりません。

日本政策金融公庫は政府系金融機関であることから、税金等の滞納には特に厳しいため、融資前の滞納は避けてください。

面接対応も重要

融資面接時には、事業内容や融資が必要になる理由等を質問されますので、あらゆる質問を想定し、それに対する回答を用意しておく必要があります。

融資担当者は創業者の人柄もチェックしていますので、身だしなみはもちろんのこと、態度や事業に対する熱意を伝えることも大切です。

融資申込をする際は事前に専門家へ相談すること

日本政策金融公庫は創業当初でも融資を受けることができる金融機関ですが、審査に落ちてしまうと、他の金融機関から資金調達するのは難しくなるため、審査は一発で通過しなければなりません。

初めて事業を立ち上げる方は、創業計画書や事業計画書を作成した経験がないことから、専門家にサポートしてもらいながら融資申込を行うことが望ましいです。

永安栄棟 公認会計士・税理士事務所では、税金だけでなく融資サポートも得意にしていますので、経営上の不明点や解消したい問題がありましたら、お気軽にご相談ください。

創業時の融資方法の一つとして活用されていた「新創業融資」が廃止され、新たに「新規開業資金」が創設されました。

新規開業資金と新創業融資は日本政策金融公庫の融資制度ですが、融資を受ける際の条件などは異なりますので、本記事で新規開業資金の特徴と融資審査のポイントを解説します。

日本政策金融公庫は政府系の金融機関

日本政策金融公庫(略称:日本公庫)は、民間金融機関では融資するのが難しい事業者などを対象に融資を行っている政策金融機関です。

政策金融機関は、政府が経済発展や国民生活を安定させるなどの政策を実現させることを目的に設立された特殊法人であり、日本政策金融公庫は日本政府が100%出資している株式会社です。

出所:日本政策金融公庫

https://www.jfc.go.jp/n/company/summary.html

金融機関から資金調達する場合、事業者の経営状態や資産の保有状況などが審査されます。

事業が不安定な会社や返済が見込めない会社は融資を受けにくいですし、創業して間もない会社は事業実績が無いため、銀行などから融資を受けるハードルが高いです。

日本政策金融公庫の創業融資は、事業実績が乏しいなどの理由により資金調達が困難な創業期の会社等を支援するための融資制度を多数用意していますので、事業を開始するタイミングでも融資を受けやすいのが特徴です。

日本政策金融公庫の新規開業資金制度の概要

日本政策金融公庫の新規開業資金は、これから事業を始める予定の方や、事業を開始して日が浅い事業者が利用できる融資制度です。

一般的に融資が受けにくい方が利用しやすいだけでなく、融資制度としても優れているため、創業前後においては有力な資金調達手段となります。

<新規開業資金の概要>

利用対象者新規事業者または事業開始後おおむね7年以内の方
融資の用途新規事業を開始前・開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金
20年以内<うち据置期間5年以内>
運転資金
10年以内<うち据置期間5年以内>
年利基準利率
担保・保証人要相談

新規開業資金を利用する際、次の特例制度も併用することが可能です。

<併用可能な特例制度>

  • 経営者保証免除特例制度
  • 創業支援貸付利率特例制度
  • 設備資金貸付利率特例制度(東日本版)
  • 賃上げ貸付利率特例制度

年利は返済期間や担保の有無などによって異なりますが、次に該当する方は通常よりも有利な条件で利用することができます。

  • 女性、若者、シニアの方で創業する方
  • 廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方
  • 中小会計を適用して創業する方


出所:日本政策金融公庫 国民生活事業(主要利率一覧表)

https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html

新規開業資金と新創業融資の違い

以前まで存在した日本政策金融公庫の新創業融資は令和6年(2024年)3月で廃止となり、新たに新規開業資金が創設されました。

制度が一新されたため融資条件等も変更されていますが、新規開業資金は新創業融資より利用しやすい制度に設計されています。

新規開業資金は無担保・無保証人でも申し込みできる

新規開業資金は、無担保・無保証人でも申し込みすることができます。

融資を受ける際に最も大きな障壁となるのが、担保・保証人の存在です。

金融機関等は、融資金額の返済が滞った際のリスクヘッジをしなければなりませんので、担保や保証人が用意できない事業者に融資するケースは限られています。

新規開業する事業者は担保提供できる資産を保有していることが少なく、保証人を確保するのも難しいため、銀行から資金調達するのは大変です。

日本政策金融公庫の融資制度も、担保や保証人を用意することで利率等が優遇される部分もありますが、新規開業資金の申込要件に担保・保証人は含まれていないため、新しく事業を始める方でも利用しやすいような制度になっています。

融資金額の拡大・返済期間の延長

融資を受ける際にポイントになるのが、融資金額の上限と返済期間です。

創業当初は開業準備費用だけでなく、開業してから一定期間経営を維持するための運転資金の確保は不可欠です。

経営が順調であれば計画的に返済することもできますが、創業当初は売上を予想するのが難しく、短期間で返済を求められると資金繰りに苦慮することも懸念されます。

従来の新創業融資は、融資限度額3,000万円(うち運転資金1,500万円)で、返済期間は設備資金は20年以内(うち据置期間2年以内)、運転資金については7年以内(うち据置期間2年以内)でした。

(「据置期間」は元金返済が猶予され、利息のみを払い込む期間をいいます。)

新創業融資も好条件で融資を受けられる制度でしたが、新規開業資金は融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)に拡大したため、以前より大きな金額を調達できるようになっています。

設備資金の返済期間は20年以内と同じですが、据置期間は2年以内から5年以内に拡大しています。

一方、運転資金の返済期間は7年以内から10年以内、据置期間は1年から5年以内と延長されていますので、事業を中長期的に計画して展開したい事業者にとっては魅力的な融資制度です。

条件に応じた利率の引き下げ

融資を受けた際の返済額は融資金額だけでなく、設定される利率によっても上下します。

利率が低いほど返済額を抑えることができますが、設定される利率は融資する側が利益を得るだけでなく、融資したお金が戻ってこなかった際の損失を補填する目的もあることから、返済が滞るリスクが高い事業者ほど利率は高く設定されます。

新規開業資金も利率は担保や保証人の有無で変動しますが、一般的な相場よりは抑えられており、新創業融資と比べても利率は低いです。

融資を受けにくい事業者は、お金を借りた際の利率が高くなりやすいため、利率を抑えて融資を受けられるメリットは非常に大きいです。

申込要件に自己資金要件が含まれていない

日本政策金融公庫で融資を受ける場合、一定以上の自己資金を保有していることが条件となっているものもあります。

しかし、新規開業資金の申込要件には自己資金要件が含まれていないので、自己資金が少ない事業者も融資申し込みをすることが可能です。

新規開業資金の融資を受ける際の流れ

新規開業資金の申し込みをする場合、最初に日本政策金融公庫へ融資相談をすることになります。

相談(要予約)は融資を申し込む前にすることができますし、支店窓口だけでなくオンラインでも相談を行っています。

融資の申し込みをインターネットでする際には、次の書類が必要です。

<融資申込時の必要書類>

  • 創業計画書
  • 運転免許証またはパスポート
  • 見積書
    (設備資金の申込の場合)
  • 履歴事項全部証明書または登記簿謄本
    (法人の場合)
  • 不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
    (担保提供する場合)
  • 都道府県知事の「推せん書」(借入申込金額が500万円以下の場合は不要)または、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」
    (生活衛生関係の事業を営む場合)
  • 許認可証
    (飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方に限る)

※電子データを準備すること

※郵送による申込手続きの際は「借入申込書(国民生活事業用)」も提出すること

融資申込後に日本政策金融公庫の担当者と面接を行い、融資の有無が決定します。

面接時には資金の用途や事業計画などが質問されますので、事業計画に関連する資料や、資産・負債の確認できる書類等を用意してください。

審査を通過した後に必要な契約手続きを行い、指定した口座に融資金が振り込まれます。 融資金の返済は原則月賦払いですが、返済方法については元金均等返済・元利均等返済・ステップ(段階)返済などが用意されています。

新規開業資金の融資申込みをする際に注意すべきポイント

日本政策金融公庫は一般の民間金融機関では融資が受けにくい方々を支援する目的があるため、比較的融資は受けやすくなっていますが、無条件で審査が通るわけではありません。

事業者の信用情報に問題があれば審査は通過しにくくなりますし、創業前に融資を受ける事業者については、創業計画書(事業計画書)の内容が非常に重要です。

融資経験が無い場合、創業計画書を適切に作成するのが難しく、審査に落ちてしまうと半年間は再申込不可となります。

事業を開始する時期が決まっている方は、審査に落ちることを避けなければなりませんので、融資の申し込みをする前に1度専門家にご相談ください。

永安栄棟 公認会計士・税理士事務所では税務のお困りごとをお伺いしております。ぜひ一度、お問い合わせください。

税務調査は1年中行われていますが、制度の創設・変更した部分は調査対象になりやすい傾向にあります。

インボイス制度は令和5年(2023年)10月1日からスタートしましたので、消費税の税務調査は今後増加することが予想されますので、調査対策は不可欠です。

本記事では、インボイス制度に対する税務調査の動向と、インボイス制度導入後に気を付けるべき税務調査のポイントについて解説します。

消費税の税務調査の実施状況

消費税の税務調査は毎年数多く実施されており、令和4事務年度における法人税・消費税の実地調査件数は6.2万件、簡易な接触件数は6.6万件です。

「実地調査」は、調査担当者が自宅や事務所に訪れて実施する調査をいい、一般的な税務調査は実地調査を指します。

「簡易な接触」は、税務署が書面や電話、来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請するものです。

1年間の納税者に対する法人税・消費税の接触率は3.9%、5年間では17.8%となっていますので、確率的には6社のうち1社は5年間で国税当局から何かしらの接触を受けています。

一方、令和4事務年度の個人事業主に対する消費税の税務調査件数は93,985件と、対前年比110.3%となっています。

消費税の無申告者に対する調査も積極的に実施されており、 同事務年度の実地調査件数は7,615件(令和3事務年度3,828件)、1件当たりの追徴税額は全体156万円の1.7倍にあたる260万円です。

260万円は過去最高額だった令和3事務年度の245万円を超える額なので、税務調査で無申告を指摘された際の追徴税額は今までで最も大きいです。

インボイス制度への対応が必要になるケース

インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入された令和5年10月1日以降に、消費税の仕入税額控除を適用する場合、原則として適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書の保存が必要です。

適格請求書を交付する事業者は、納税地を所轄する税務署長に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者として登録を受けなければなりません。

適格請求書発行事業者の登録件数は、令和6年3月末時点で4,445,025件です。

出所:適格請求書発行事業者の登録通知時期の目安について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/kensu_kikan.pdf

登録申請ができるのは消費税の課税事業者に限られるため、消費税の免税事業者が登録をするためには、課税事業者への変更を要します。

インボイス制度への対応は任意であるため、インボイス制度に対応していないだけで税務調査を受けることはありません。

しかし、免税事業者からの仕入れに係る消費税は仕入税額控除の対象外となることから、適格請求書発行事業者の登録をしない場合、事業の取引範囲が狭まることが懸念されています。

インボイス制度に対する税務調査は大口・悪質なケースに限定

住沢整国税庁長官は、会見等でインボイス制度に対する税務調査を大口・悪質なケースに限定して実行することを示しています。

国税当局は、これまでも保存書類の軽微な記載不備を目的とした調査は実施しておらず、記載事項の不備をあげつらうような調査はしないとし、税務調査の過程でインボイスの記載不備を把握したとしても、柔軟な対応をとる方針を考えているとのことです。

たとえば、インボイスに必要な記載事項については他の書類等で確認したり、 修正インボイスを交付することで、事業者間でその不足等を改めるなどの対応を行うこととしています。

調査必要度の高い納税者(大口・悪質な不正計算が想定される納税者など)に対しては、重点的に税務調査を実施するとしていますが、一般納税者に対してはインボイス制度に関するケアレスミスを指摘することだけを目的に、税務調査が行われることはありません。

出所:インボイス制度の周知広報の取組方針等について(国税庁)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/tekikaku_seikyusyo/dai3/siryou.pdf

インボイス制度の導入で消費税調査はより厳しくなる

インボイス制度に対する税務調査は、国税庁長官が大口・悪質なケースに限定すると明言していますが、インボイス制度の導入自体が税務調査に影響を及ぼす出来事なので、事業者は必要に応じて対策を講じなければなりません。

消費税の無申告者の抽出が容易になる

適格請求書発行事業者の登録申請ができるのは、消費税の課税事業者に限られるため、インボイス登録を行った事業者は必ず消費税の申告をしなければなりません。

適格請求書発行事業者には登録番号が付されていますので、税務署は登録事業者の誰が申告しているか容易に把握できます。

インボイス(適格請求書)には、適格請求書発行事業者の氏名(名称)および登録番号登録番号を記載しなければならなず、税務調査では仕入税額控除を適用するために必要事項がインボイスに記載されているかチェックします。

登録事業者でない事業者からの仕入れを仕入税額控除に含めていれば否認されますし、取引相手が消費税の申告が必要な事業者であるかも同時に確認されます。

適格請求書発行事業者の登録は任意ですが、登録申請をしていない事業者についても、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば消費税の課税事業者となりますので、消費税の申告が必要になる事業者は期限内に手続きを行ってください。

仕入税額控除の適否判定を確認するための調査が増える

インボイス制度の導入で仕入税額控除の適用要件が変更になったため、仕入税額控除の適否判定のために税務調査が実施されることも想定されます。

インボイス制度に対する税務調査は一定の納税者に限定される見込みですが、経費の架空計上などに対する税務調査は全事業者が対象です。 経費を増やすために領収書等を偽造すれば、税務調査で指摘されるだけでなく、重加算税が課されることになるので気を付けてください。

消費税の税務調査で気を付けるべきポイント

所得税や法人税の税務調査対策は講じられることが多いですが、消費税の課税事業者については、消費税の税務調査への対策も必要です。

□消費税調査は所得税・法人税と同時に実施される

消費税は事業を営んでいる人(法人)が納める税金ですので、所得税・法人税と一緒に税務調査が実施されるケースが多いです。

消費税は課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除して算出するため、売上の計上漏れや指摘されたり経費が否認されれば、消費税の納税額が増加します。

消費税の計算は「一般課税」と「簡易課税」の2種類ですが、インボイス制度が開始したタイミングで「2割特例」が期限付きで導入されています。

簡易課税は事前申請が必要であり、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合、その課税期間は簡易課税制度を適用することはできません。

2割特例は事前申請することなく適用できる反面、インボイス事業者となるために免税事業者から課税事業者になった事業者を対象とする制度なので、適用する際は事前に要件を確認してください。

□消費税の複数税率に対応した申告内容の確認

消費税の軽減税率は、令和元年(2019年)から10月1日より導入されましたが、すべての課税売上に対する消費税を軽減税率、課税仕入れに対する消費税を一般税率で計算すれば、納税額を不当に抑えることができてしまいます。

税務署は複数税率に応じた会計処理を適切に行われているかだけでなく、不当に軽減税率・一般税率が適用されていないかを確認するために調査するケースもあるので、複数税率への対応も万全に講じなければなりません。

税務調査は5年前まで遡って実施する

事業者に対する税務調査は一般的に3年分の申告書を対象とすることが多いですが、法律上は5年前まで遡って調査することが認められています。

消費税が無申告であれば、5年前まで遡って調査することもありますし、税務調査で消費税の課税事業者に該当するとなった場合、過年分の消費税の申告も必要になるケースもあります。

また、税金を誤魔化す行為(仮装隠蔽行為)をした納税者に対しては、調査期間が7年まで延長されるだけでなく、重加算税が課される可能性が非常に高いです。

消費税の税務調査対策は今後必須となりますので、インボイス制度が導入されたタイミングで対策方法を見直すことを推奨します。

税務でお困りのことがございましたら、お気軽に永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

税務調査は大企業だけでなく、中小企業や個人事業主に対しても行われますし、調査が実施されるタイミングを把握することはできませんので、税務調査の連絡が入る前から対策を講じることが大切です。

本記事では、税務調査の種類と実地調査の流れ、税務署から調査の連絡を受けた際の対応方法について解説します。

個人の税務調査は個人課税部門が担当

税務署は全国524か所に設定されていますが、税務調査の実施内容は全国共通です。

所得税の税務調査は、基本的に管轄税務署の個人課税部門が担当となりますが、所得金額が多い人や事業規模が大きい個人事業主は税務署ではなく、国税局の職員が調査を担当する可能性があります。

税務調査官の調査能力には個人差があり、ベテラン職員は調査経験が豊富である一方、若手職員は少しでも疑問点が残っていれば解決するまで調査を継続します。

税務調査を完全に回避することは難しいですが、対策を講じることで税務調査を受ける確率を下げることはできますし、申告内容に問題が無ければ調査を受けたとしても追徴課税の対象にはなりません。

税務調査は任意調査と強制調査の2種類

税務調査は、目的等に応じて任意調査と強制調査が使い分けられています。

強制調査の対象となる人はごく一部

強制調査は、納税者の許可を得ずに捜査する調査をいい、調査を担当するのは税務署ではなく、マルサ(国税局査察部)です。

マルサは裁判所の令状を得て調査を実施するため、納税者の同意を必要とせず、必要であれば関係書類は押収されます。

強制調査で脱税を指摘された場合、追徴課税だけでなく刑事罰に処される可能性が高いので、強制調査を受けないことが何よりも重要です。

なお、強制調査の対象となるのは悪質な脱税犯に限られますが、個人に対しても行われる点には注意してください。

出所:査察調査我が国は納税者自身による適正な申告と納付(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/01.pdf

任意調査は一般的な税務調査

任意調査は、納税者の同意の下で実施する調査をいい、個人に対する調査のほとんどは任意調査です。

調査担当者は納税者に同意を得てから調査をする必要があるため、基本的に調査が実施される前に連絡が入ります。

ただ、任意調査であっても納税者は調査を断ることができませんし、調査に応じない場合や、事前に連絡することで調査に支障をきたすことが想定されるケースでは、無予告で実施することが認められています。

任意調査で申告内容の誤りを指摘された際は、追徴税額を支払うことになりますが、仮装隠蔽行為があったと判断されれば、重加算税の対象となるので注意してください。

個人に対する税務調査の流れ

税務調査官が自宅や事務所に訪れて書類等を調べる調査を「実地調査」といい、実地調査は次の流れに沿って行われます。

出所:国税庁の税務調査の概要

https://www8.cao.go.jp/chosei/dokkin/kaisaijokyo/mtng_4th/mtng_4-3.pdf

①:税務署からの事前通知

調査担当者は納税者に対し、次の事項を事前通知することが法律で定められているため、実地調査が行われる際は、原則として事前に調査を実施する旨の連絡が入ります。

<事前通知で伝えられる事項>

  • 調査が実施される日時
  • 調査場所
  • 調査の目的
  • 調査対象となる税目
  • 調査対象期間
  • 調査対象になる帳簿書類等

調査日時は税務署から希望日が伝えられますが、合理的な理由があれば、納税者が調査日時の変更を求めることもできます。

ただし、税務調査の協力に応じない場合や、税務署が保有する情報から事前通知を行うことで調査に支障が出る場合、調査担当者は事前通知せずに税務調査を行うことが認められています。

②:調査に向けての事前準備

納税者は調査を受けることが決まりましたら、当日までに調査対象となった税目の資料・書類を準備してください。

個人事業主の場合、3年分の申告書が調査対象となることが多いですが、調査担当者は対象年分より前の資料等の提示を求めてくることがあります。

事業者には帳簿や領収書を一定期間保存することが定められているため、書類等を提示できないと不利な状況に追い込まれますので、日頃から関係書類の整理整頓を行ってください。

③:実地調査当日

調査当日は、税務署の調査担当者から身分証明書と質問検査章が提示されます。

実地調査では関係書類を調べるだけでなく、納税者に売上や在庫の管理方法など、確定申告に関連する内容を細かく尋ねられます。

調査担当者は必要に応じて帳簿書類などを提示・提出を求めてきますが、正当な理由がなく提示・提出を断ることはできません。

質問検査権に基づく質問は正確に回答しなければならず、質問事項に対して偽りの回答をすれば仮装隠蔽行為があったとして、重加算税の対象になってしまいます。

また、税務署は調査事項が解明されるまで調査を続けますので、早期に調査を終わらすためにも調査に協力することは必要です。

④:反面調査

調査担当者は、納税者からの聴き取りした内容の真偽等を確かめるために、取引先や雇用主などに対して反面調査を行います。

調査当日に担当者からの質問を上手く避けられたとしても、反面調査で事実関係は確認されますし、反面調査で新たな疑問点が浮上したときは、調査担当者が再び自宅等に訪れることもあります。

⑤:調査結果の説明・修正申告等の勧奨

税務調査が終了する際は、調査担当者から申告内容の誤り等についての説明が行われ、説明した内容に基づき、修正申告または期限後申告の勧奨が行われます。

修正申告(期限後申告)の勧奨は、納税者に修正申告書等の提出を促すもので、納税者が調査結果の説明に納得した場合、勧奨に応じて修正申告書等を提出することになります。

一方、税務調査の結果、申告内容に誤りが認められない場合や、申告義務がないと認められる場合には、税務署から「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」(通称:是認通知書)が送付されます。

⑥:修正申告・納税

修正申告等の勧奨に応じる形で修正申告書等を提出・納税した場合、1か月から2か月後に加算税および延滞税の通知が届きますので、適宜納めてください。

修正申告書等の勧奨に応じないときは、税務署長が更正または決定の処分を行い、更正または決定の通知書が送付されます。

また、調査結果に不服があるときは、再調査の請求や審査請求を行うことができますので、必要に応じて手続きをすることになります。

税務署から実地調査の連絡が入った際の対処法

納税者の大半は税務調査を受けた経験がなく、調査担当者の対応に苦慮することが多いため、不利益を被らないためにも税理士を付けることを検討してください。

税務署から税務調査を実施する旨の連絡が入った場合、その時点で調査を避ける手段はありませんので応じることになります。

調査の日程調整等に応じなければ無予告で調査が入ることもありますし、調査担当者の心証を悪くします。

一方、税理士法に定められている書面添付制度に基づく書面が申告書に添付されている場合、税務署は関与税理士を通じて税務調査を実施する旨の連絡を行います。

関与税理士がいるだけで税務署から直接連絡が入らなくなりますし、 関与税理士は調査当日に立会うことが認められています。

また、税理士は専門家として税務署に対し、納税者側の意見を正確に伝えることができますので、税理士に依頼するのは節税だけでなく、調査対策としても効果的です。

まとめ

個人と法人は調査を担当する部署が異なりますが、調査の基本的な流れは同じです。

しかし、個人事業主は法人と比べて税務調査を受けた経験が無い方が多く、税理士が関与していない申告も多いです。

関与税理士が不在の申告書は調査対象者として選定されやすく、納税者だけで調査担当者と対等に渡り合うのは難しいです。

確定申告書を作成する時点で税理士に依頼するのが望ましいですが、申告書を提出した後に税理士を付けることもできますので、税務調査関係で不安がある場合はぜひ一度、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

税務署は税目ごとに調査担当部署が違うため、同じ内容の事業を営んでいたとしても、個人と法人では税務調査の対象になる条件や確率が異なります。

本記事では、個人が税務調査を受ける確率と、調査対象になってしまう個人事業主の特徴について解説します。

税務署が税務調査を実施する理由

税務署を含めた国税当局が税務調査を実施するのは、「内国税の適正かつ公平な賦課および徴収の実現」を使命としているからです。

確定申告書が適正に作成されていなければ、正しく申告した人が損をすることになりますし、無申告者の放置は課税の不公平に繋がります。

税務署が扱っている税金は自主申告・自主納付であるため、申告誤りを是正しないと申告納税制度が崩壊してしまうことから、適正・公平な課税を実現するために税務調査が日々行われています。

個人事業主が税務調査を受ける確率

所得税の申告書は法人税の申告書よりも提出件数が多いですが、対象を個人事業主に絞ると、想像以上に税務調査を受けている計算になります。

所得税の申告件数に対する調査割合は3%未満

令和4年分の所得税の申告件数は2,295.1万件なのに対し、令和4事務年度に行われた調査等の件数は約63.7万件ですので、申告件数に対する調査件数の割合はおおよそ2.7%です。

調査担当者が納税者の自宅や事務所を訪れて実施する「実地調査」の件数は46,306件ですので、申告書を提出した個人が実地調査を受ける確率は0.2%程度に留まります。

数字上では納税者のほとんどが税務調査を受けていないことになりますが、税務署に提出された申告書の大半は、医療費控除や住宅ローン控除を適用するために提出した還付申告です。

税務署の立場からすると、申告内容に誤りがない申告書を調査しても税収は増えませんし、赤字申告を調査しても増差税額が発生しないことが多いです。

税務署は不正還付などを防ぐ目的で還付申告を調査することはありますが、調査対象になるのは基本的には納税申告です。

したがって、確定申告で所得税を納めている納税者は、それだけで税務調査を受ける確率が数段階高くなるので注意してください。

出所:令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023005-053.pdf

個人事業主の10人に1人は税務調査を受ける可能性がある

令和4年分の所得税における事業所得者の納税申告件数(163.8万件)は、全体の7%程度に留まりますので、事業所得者の10人に1人は数年間のうちに調査を受ける可能性があります。

売上が大きい事業者が調査対象になることは一般的にも知られていますが、調査対象者の選定は事業規模だけで判断しているわけではありません。

国税当局は調査を実施する件数が限られていることから、調査による実績はもちろんのこと、費用対効果も追求しています。

増差税額が発生しやすい事案と判断されれば、比較的事業規模が小さくても調査対象になりますし、明確な申告誤りがあれば即座に指摘されます。

個人に対する税務調査は、主に事業を営んでいる人に対して実施される傾向にあるため、個人事業主は税務調査の対象になりやすいことを念頭に対策を講じなければなりません。

税務調査の対象となりやすい個人事業主の特徴

個人事業主でも、税務調査の対象となりやすい事業者と対象になりにくい事業者があり、次の事項に該当する事業者については調査対策が必須です。

営んでいる事業が申告漏れの多い業種

税務署は税務調査の費用対効果を高めるため、申告漏れが発生しやすく、かつ、多額の増差税額を優先的に調査する傾向になります。

申告漏れの多い業種は他の業種に比べ相対的に調査を受けやすいことから、税務調査を回避するためには、標準以上の調査対策が求められます。

国税庁は事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種を公表しており、令和4事務年度の第1位は経営コンサルタントです。

以前は風俗業やキャバクラなど、いわゆる夜の仕事が上位にランクインしていましたが、新型コロナウイルス等の影響で、直近においては申告漏れの多い業種には入っていません。

一方で、経営コンサルタントや太陽光発電、建設業関係については毎年のように上位に入るなど、一般的なイメージと現実では調査になりやすい業種は異なります。

出所:令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

確定申告を行っていない(無申告

個人事業主は法人と違い、無申告の割合が高いため、申告書を提出していない事業者に対する税務調査が積極的に行われています。

無申告者に対する調査は重点課題の一つとして掲げられており、無申告者に対する調査の取り組みを主なトピックスとして公表するほどです。

令和4事務年度における所得税無申告者に対する調査件数は5,229 件と、全体の調査件数を踏まえると少ないですが、前事務年度の件数が3,828件であることを鑑みると、調査件数は大幅に増加しています。

所得税の実地調査全体の1件あたりの申告漏れ所得金額は1,456 万円なのに対し、無申告者の申告漏れ所得金額は1.9倍の2,711 万円です。

税務調査は増差税額が見込まれる事案ほど対象となりやすいことから、確定申告書を提出していない個人事業主は税務署から狙われやすいです。

売上・経費の大幅な増減がある

継続的に事業を営んでいる個人事業主は、急激な売上・経費の増減が生じると調査対象になりやすくなります。

売上が増加すれば利益が発生する可能性が高くなりますし、利益を圧縮するために不当な方法で税金逃れを試みる納税者も一定数存在します。

売上が増えていないもかかわらず経費が急激に増加している場合には、計上されている経費の内容が適切であるかをチェックすることもあるため、不正する意図がない場合でも売上・経費が大きく変動したときは気を付けてください。

開業から3年を経過した個人事業主

一般的な税務調査では、3年分の申告書を対象にすることが多いため、開業してから3年経過すると調査対象者として選定されやすくなります。

開業して日が浅い時期は税知識が不十分であることから申告誤りが生じやすく、税務署は適正申告を促す意味合いも込めて税務調査に踏み切るケースもあります。

税務調査で申告ミスを指摘されれば本税だけでなく、加算税・延滞税も支払うことになりますので、事業を開始した時点から正しく申告することが大切です。

顧問税理士が不在

個人事業主の場合、確定申告書の作成に税理士が関与しているか否かで調査を受ける確率は変動します。

確定申告書の作成は税理士に依頼することもできますが、所得税の税理士関与割合は20%程度と、法人税の4分の1以下です。

税理士は税の専門家ですので、納税者が作成した申告書と税理士が作成した申告書を比較した場合、税理士が関与していない申告書の方が内容に誤りがあることが多いです。

税務署は申告誤りが見込まれる申告書から調査対象者を選定するため、税理士が関与していないだけで調査対象者となるリスクは高くなります。

税務調査を回避するために個人事業主がやるべき対策

税務調査は増差税額を得ることを目的に実施しますので、適正な申告書を作成していれば、それだけで調査を受ける確率は激減します。

税務署に申告内容が適正であることを証明するためには、正しく税額計算を行うのはもちろんのこと、青色申告や必要書類の添付など、申告内容を疑われる要素を少しでも多く排除することが大切です。

事業を続ける限り税務調査を受ける可能性はありますし、税務調査で誤りを指摘されれば、要注意人物として継続的にマークされることも想定されます。

なお、調査リスクは対策を講じれば大幅に下げることができますので、税務調査に関して不安がある方は一度、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所までご相談ください。

企業が税務調査を完全に避けることは難しいですが、対策を講じることで調査対象になる確率を下げることは可能です。

本記事では、法人に対する税務調査の実施状況と、調査で指摘されやすいポイントについて解説します。

法人に対して行われる税務調査の内容

法人は個人事業主よりも税務調査を受ける確率が高く、調査対象となる税目は法人税だけではありません。

法人が税務調査を受ける確率

令和4事務年度に実施された税務調査の件数は6.2万件、実地調査以外の調査等の件数は6.6万件に上ります。

令和4年度の法人税の申告件数は312.8万件ですので、申告法人の約4%は税務署から何かしらの調査を受けています。

理論上は25年に1度しか調査を受けない計算になりますが、税務調査は基本的に黒字申告を対象に調査を実施しますので、利益を出している法人は計算上の数値より調査を受ける確率が高いです。

提出された申告書のうち黒字申告割合は36.2%と、おおよそ3分の2は調査対象になりにくい赤字申告であり、国税庁が公表している資料によると、税務署の法人税・消費税の接触率は5年間で17.8%です。

出所:令和4事務年度法人税等の調査事績の概要(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf

税務調査の対象税目・対象期間

法人に対する税務調査は、法人税と同時に消費税や源泉所得税の調査を実施することもありますし、法人役員に関して問題があるときは、役員の所得税も調査対象になります。

税務調査は法律上5年前まで遡って実施することが認められていますが、一般的な調査では3年分の申告書を対象にすることが多く、調査可能期間すべてを調査するのは無申告や脱税の疑いがあるケースに限られます。

一方で、脱税など申告内容に大きな問題がある場合には、調査可能期間が5年から7年に拡大しますので、税金逃れはリスクしかありません。

税務署が実地調査でチェックするポイント

法人税の税務調査では、法人税の申告書だけでなく、申告書を作成するのに用いた帳簿書類や領収書・請求書、法人が使用している通帳なども調べます。

領収書が保存されていなければ経費計上が否認される可能性がありますし、電子帳簿等による保存が義務となりましたので、帳簿書類等が電子帳簿保存法に基づき適切に保存しているかもチェックします。

税務調査が実施されたとしても、申告内容に問題が無ければ追徴課税を支払うことにはなりません。

しかし、実地調査を受けた法人の4社に3社は非違事項を指摘されていますので、税務調査を受けないように対策することが肝要です。

出所:令和4事務年度法人税等の調査事績の概要(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf

税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類ある

税務調査は、任意調査と強制調査に区分されます。

任意調査は、納税者の同意の下で行う税務調査をいい、一般的に実施されている調査は任意調査です。

調査担当者が無理やり調査を進めることはありませんが、納税者はやむを得ない事情が無い限り調査に協力することが求められますので、税務署から税務調査を実施する旨が伝えられた際は応じなければなりません。

強制調査は、納税者の同意を必要としない調査をいい、国税局査察部(通称:マルサ)が調査を担当します。

強制調査はマルサが突然自宅等に訪れて関係資料を捜索し、必要に応じて資料等を押収するなど、警察が家宅捜索するのと似ています。

追徴課税を支払うことで原則調査が完了する任意調査とは違い、強制調査は追徴課税だけでなく、刑事罰に処される可能性が高いのも特徴です。

ただし、強制調査の対象になるのは悪質な脱税犯だけですので、計算ミスや単純な申告漏れがあったことだけを理由に強制調査が実施されることはありません。

任意調査の「実地調査」と「簡易調査」の違い

税務署は調査する内容によって、実地調査と簡易調査(実地調査以外の調査)を使い分けています。

実地調査は、調査担当者が自宅や事務所を訪れて申告内容を確認する調査方法です。

法人に対する実地調査の場合、帳簿書類を調べるだけでなく、社長や経理担当から申告内容等についての聴き取りを行います。

聴き取った内容は署内の資料と照合して真偽を確かめますし、銀行や取引先に対しての反面調査で事実関係を調べるため、調査で嘘をつくことはできません。

簡易調査は、電話や税務署で申告内容を確認する方法です。

税務調査である点では実地調査と同じですが、調査担当者が特定の事項のみを確認したい時に用いられることが多いです。

また、税務署は自主的な申告内容の見直しを促す際に、行政指導を行うケースもあります。

行政指導は法律上の税務調査ではないので、行政指導により申告書を提出した場合、自主申告扱いとなります。

税務調査で修正申告等をした場合に比べ、課されるペナルティは軽減されますが、行政指導に応じないと実地調査や簡易調査に移行することもあるので注意してください。

税務調査で指摘されやすいポイント

税務署は企業がミスをしやすいポイントや、脱税の手口を把握していますので、調査対策を講じる際は要点を押さえることが大切です。

売上除外・経費の水増し

法人税の増差税額が発生するのは、基本的に売上の申告漏れと経費の計上誤りです。

現金売上は、除外する意思がなかったとしても計上漏れが発生しやすいため、調査担当者は現金売上の有無や現金の管理方法をチェックします。

経費に計上できるのは、収益を得るために支出したものに限られ、上限を超えた接待交際費や役員給与等の損金算入も認められません。

売上が急激に伸びた企業は、利益を抑えるために支出を増やす傾向にありますが、経費計上が否認されれば、無駄な支出をしただけになるので気を付けてください。

売上・仕入れの計上時期の誤り

法人税は事業年度ごとに損益を計算しますので、計上時期に誤りがあると各事業年度に生じる利益も増減します。

売上計上時期は実現主義が原則ですので、実現主義以外の基準で売上を計上している際は注意が必要です。

利益を抑えるために事業年度末に仕入や経費を増やすケースもありますが、計上時期の誤りを指摘されれば、事業年度における経費が減少し、利益が増えてしまいます。

役員との関係性

法人と役員の関係は、法人税の税務調査で必ず聴取されます。

役員との金銭貸借がある場合、契約書の有無や返済状況の確認も行われるため、適正にやり取りすることはもちろんのこと、税務調査で質問された際に回答できるよう準備しなければなりません。

役員報酬は一定の要件を満たした場合に限り損金算入が認められていますので、要件の適否だけでなく、役員の実態についても確認が入ります。

同族会社の場合、社長の家族が役員になっていることもありますが、勤務実態がない家族への役員報酬は否認され、損金不算入となります。

不完全な税務調査対策は逆効果

世の中には様々な節税方法や税務調査対策が存在しますが、効果の有無は法人の規模や経営状態によって異なるため、用いる手段は選ばなければなりません。

税務調査対策を講じたとしても、実態が伴っていなければ仮装隠蔽行為とみなされ、重加算税が課されることもあります。

税務調査で追徴課税を受けてしまうと、2回目以降の調査対象となる確率が上がるため、調査対象となった際の対処も重要です。

税理士も多種多様ですので、顧問税理士選びに迷われている場合は、調査対策が充実している税理士を選ぶようにしてください。

税務のお困りごとがございましたら、ぜひ一度永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

消費税を一般課税で計算する場合、仕入税額控除の適用は不可欠ですが、インボイス制度が導入されたことで仕入税額控除の要件が厳しくなりました。

本記事では、仕入税額控除の要件および、適用する際の注意点について解説します。

仕入税額控除の概要

消費税は、課税期間中の課税売上に係る消費税額から、課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額を控除して納税額(還付額)を算出します。

課税仕入れ等に係る消費税額を差し引くことを「仕入税額控除」といい、仕入税額控除を適用するためには一定の要件を満たさなければなりません。

課税仕入れは、事業者が事業として他者から資産の譲り受けや借り受けを行うこと、または役務の提供を受ける取引等をいいます。

非課税や免税になる取引は課税仕入れには該当せず、給与等の支払いについても原則課税仕入れには含まれません。

ただし、加工賃や人材派遣料など、事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課されますので、外部に委託する際に支払う委託料などについては課税仕入れに該当することから、仕入税額控除の対象となります。

<主な課税仕入れ取引>

  • 棚卸資産(商品など)や原材料等の購入
  • 機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入または賃借
  • 広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払い
  • 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
  • 修繕費、外注費の支払い

インボイス制度の導入による仕入税額控除への影響

仕入税額控除を適用する場合、令和元年10月1日から令和5年9月30日までは「区分記載請求書等保存方式」の要件を満たす必要がありました。

しかし、令和5年10月1日からは「適格請求書等保存方式」の要件を満たさないと、仕入税額控除は適用できなくなります。

インボイス制度とは

適格請求書等保存方式(インボイス制度)」は、複数税率に対応した仕入税額控除の方式で、インボイス制度導入後に仕入税額控除を適用するためには、売手から交付された適格請求書(インボイス)等の保存が必要です。

インボイスを交付できるのは、税務署に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者として登録した事業者に限られます。

事業者自身(買手)が適格請求書発行事業者の登録を行っていたとしても、売手が適格請求書発行事業者でなければ適格請求書は発行されないため、その売手からの課税仕入れは原則仕入税額控除の対象外です。

出所:インボイス制度が始まります!(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022001-174.pdf

仕入税額控除の適用にはインボイス保存が必要

適格請求書発行事業者には、インボイスの発行が義務付けられており、仕入税額控除を適用するためには、原則適格請求書発行事業者から交付を受けたインボイスの保存が必要です。

<インボイスの記載事項>

  • 適格請求書発行事業者の氏名(名称)および登録番号
  • 課税資産の譲渡等を行った年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容
    (課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容および軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
  • 課税資産の譲渡等の税抜価額または、税込価額を税率ごとに区分して合計した金額および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名(名称)


出所:インボイス記載事項チェックシート(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024002-057_a.pdf

仕入税額控除を適用するために保存すべき書類等は、インボイス(適格請求書)だけでなく、納品書や領収書、レシートなども含まれます。

<仕入税額控除を適用するために保存すべき請求書等>

  • 適格簡易請求書
  • 適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類(課税仕入れの相手方において課税資産の譲渡等に該当するもので、相手方の確認を受けたものに限る)
  • 次の取引について、媒介または取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類 (1)卸売市場において出荷者から委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の販売(2)農業協同組合、漁業協同組合または森林組合等が生産者(組合員等)から委託を受けて行う農林水産物の販売
    (無条件委託方式かつ共同計算方式によるものに限る)

インボイス保存が緩和されるケース

仕入税額控除を適用するためには原則インボイス保存を要しますが、事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用が認められます。

<帳簿のみの保存で仕入税額控除が適用できるケース>

3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運送
取引年月日以外のインボイスの記載事項が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除く)
古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
(古物営業を営む者の棚卸資産に該当する場合に限る)
質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得 (質屋を営む者の棚卸資産に該当する場合に限る)
宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入 (宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当する場合に限る)
適格請求書発行事業者でない者からの再生資源および再生部品の購入 (購入者の棚卸資産に該当する場合に限る)
3万円未満の自動販売機および自動サービス機からの商品の購入等
郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス
(郵便ポストに差し出されたものに限る)
従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等
(出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当)

帳簿のみの保存で仕入税額控除を適用する場合、帳簿に通常必要な記載事項に加え、次の事項を記載する必要があります。

  •  帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨
  •  仕入れの相手方の住所または所在地
    (一定の者を除く)

たとえば、電車料金を仕入税額控除の対象とする場合には「3万円未満の鉄道料金」、自動販売機で商品を購入した際には「〇〇市 自販機」のように記載することになります。

インボイス制度の「少額特例」

一定規模以下の事業者は、インボイス制度を導入したことで事務負担を軽減する措置として、「少額特例」を適用することが可能です。

少額特例は、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除を適用できる制度です。

取引先が適格請求書発行事業者であるかは関係ないため、一定規模以下の事業者に該当すれば特例を受けることができます。

「一定規模以下の事業者」は、基準期間における課税売上高が1億円以下または、特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者です。

税込1万円未満の課税仕入れに該当するかは、1回の取引における課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満なのか否かで判定します。

1つの商品が1万円未満だとしても、複数の商品を同時に購入したことで1回の取引における課税仕入れが1万円以上になれば、少額特例の対象外となります。

少額特例の対象期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間であり、令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、課税期間の途中でも少額特例は適用できなくなるので注意してください。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置

インボイス制度導入後、適格請求書発行事業者以外の事業者からの課税仕入れは、原則仕入税額控除の対象から外れます。

しかし、適格請求書発行事業者以外の事業者からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置を適用できます。

<対象期間と適用割合>

期間割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで仕入税額相当額の50%

経過措置の適用を受けるためには、区分記載請求書等と同様の記載事項が記載された帳簿および請求書等の保存が必要です。

また、帳簿については「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載しなければなりません。

まとめ

インボイス制度は、免税事業者が課税事業者に変更したことで生じる税負担や、インボイスの交付するための作業負担増に注目されていますが、適切にインボイスを保存しないと仕入税額控除を適用できないのも大きな変更点です。

消費税の税務調査は法人税や所得税と同時に実施されることが多いため、調査対策は必要ですし、誤った方法でインボイスを保存してしまうと、仕入税額控除の適用が否認される可能性があります。

税務署に一度目を付けられてしまうと、何度も税務調査の対象となってしまいますので、専門家に要件等を確認した上で仕入税額控除を適用してください。

税務のお困りごとは、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。

会社が法人税の確定申告をする場合、白色申告ではなく青色申告で手続きすることが望ましいです。

国は青色申告を推進するために様々な特典を用意しており、法人税を節税するためには、青色申告の優遇措置を上手く活用する必要があるからです。

本記事では、法人が青色申告で申告するメリットと、手続き上の注意点について解説します。

青色申告とは

青色申告制度は、税務署の承認を受けた事業者が一定の要件を満たした帳簿書類を備え付け、青色の申告書により申告手続きを行う制度です。

事業者は確定申告をするために記帳等を行っていますが、青色申告は記帳を適切に行う見返りとして、税制上の優遇措置が与えられています。

青色申告の主な特典は下記の通りで、節税の観点で考えた場合、会社が青色申告を行うことは必須条件になります。

<法人の青色申告の主な特典>

  • 欠損金の10年間繰越控除
  • 欠損金の繰戻しによる法人税額の還付
  • 帳簿書類の調査に基づく更正
  • 更正通知書への理由付記
  • 推計による更正または決定の禁止
  • 特別償却または割増償却
  • 各種準備金等の積立額等の損金算入
  • 各種の法人税額の特別控除
  • 各種の所得の特別控除等
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入
  • 課税の特例等

法人税を青色申告で申告するためには、事前に納税地の所轄税務署長へ青色申告の承認申請を行い、承認を受ける必要があります。

承認された後は、法人税法上で定められている方法で帳簿書類を備付け、これに日々の取引を正確に記録しなければならないため、継続的に要件をクリアすることが求められます。

税務署に青色申告の承認が認められたとしても、適切に帳簿書類の備え付け等を行っていなければ、青色申告の特典が受けられない場合があるので注意してください。

法人が青色申告をするメリット

青色申告法人には、多くの特典が与えられていますが、その中でも高い節税効果を得ることができる制度を4種類ご紹介します。

欠損金の10年間繰越控除

青色申告の特筆すべき特典として、欠損金の繰越控除があります。

法人に事業年度の赤字(欠損金)が生じた場合、白色申告であれば欠損金を翌年に繰り越すことはできません。

しかし、青色申告を行っていれば、欠損金を最大10年間繰り越すことが可能であり、繰り越した欠損金は翌年以後に生じた利益と相殺することができます。

個人事業主にも繰越控除制度はありますが、個人事業主の繰越控除の期間は3年ですので、法人の方が控除期間が長いです。

なお、繰越控除を適用するためには、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出するだけでなく、その後の各事業年度でも連続して確定申告書を提出することが求められます。

欠損金の繰戻しによる法人税額の還付

欠損金の繰戻し制度は、事業年度に損金額が発生した際、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻し、法人税額の還付を請求することができる制度です。

欠損金の繰戻し制度を利用できるのは原則中小企業者等であり、中小企業者等以外の法人については、平成4年4月1日から令和6年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額は適用対象外です。

ただし、中小企業者等以外の法人についても、下記の欠損金額については、欠損金の繰戻しによる還付制度を適用できます。

  • 清算中に終了する各事業年度の欠損金額
  • 解散等の事実が生じた場合の欠損金額
  • 災害損失欠損金額
  • 銀行等保有株式取得機構の欠損金額

推計による更正または決定の禁止

推計による更正または決定の禁止とは、税務署が税務調査において推計課税を禁止することをいいます。

推計課税は税金の額を推定して決める方法をいい、税務調査に非協力的な納税者や、帳簿が不正確な納税者に対して用いる手法です。

調査担当者は税務調査を実施する際、取引状況や資料等に基づいて売上や経費計上などについての可否判定を行いますが、推計課税は資料等ではなく、特定の金額・割合などを用いて課税額を計算します。

推計課税で算出される課税額は、実際の課税額より高くなる可能性が高いため、調査対象者の税負担が重くなる懸念があります。

しかし、青色申告を行っていれば推計による更正・決定は行われませんので、税務調査の対象となった際に税負担が重くなるリスクを回避することができます。

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得などして事業用に供する場合、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。

減価償却資産は、原則全額を取得した事業年度の経費にすることはできませんが、青色申告法人については、30万円未満までの減価償却資産を一括で経費にすることが可能です。

減価償却資産の特例を適用する場合、事業用に供した事業年度において、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付が必要です。

出所:令和5年版 法人税のあらましと申告の手引(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2023/01.htm#a03

税務調査の対象になる確率を抑制できる

企業は継続的に活動している以上、税務調査を完全に回避することは難しいですが、対策を講じることで調査を受ける確率を下げることは可能です。

税務署は税務調査でより多く増差税額を出すことを目指していますので、申告誤りや申告漏れが想定される企業を対象に調査を実施する傾向にあります。

青色申告は納税者が適正な申告をする意思があるかの判断要素の一つであり、青色申告で申告書を提出するだけで税務調査を抑制する効果が期待できます。

そのため、節税対策だけでなく、調査対策の観点からも青色申告で申告することが望ましいです。

なお、税務調査を受ける確率は青色申告・白色申告の違いだけでなく、税理士関与の有無も影響します。

法人税は他の税金と比較して申告書を作成する難易度が高く、9割近くの法人が税理士に申告書作成を依頼しています。

納税者自身で申告書を作成・提出しても問題ありませんが、専門家が作成するより申告誤りが発生する確率が高いので、税務調査を受ける確率が上がる点には注意してください。

青色申告を適用するための要件

法人が青色申告で申告手続きを行うためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録、保存すること
  • 税務署に「青色申告の承認申請書」を提出し、あらかじめ承認を受けること

青色申告は仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿を作成するだけでなく、複式簿記による記帳も必要です。

帳簿書類の保存期間は7年と定められており、欠損金に係る帳簿書類については保存期間が10年です。

青色申告は承認制ですので、青色申告書を提出しようとする事業年度開始日の前日までに、「青色申告の承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

年の途中で青色申告の承認申請書を提出し、承認を受けたとしても、青色申告で申告書を作成できるのは次の事業年度からになります。

ただし、 新たに法人を設立した場合には、次のいずれか早い日の前日までに青色申告の承認申請書を提出すれば、最初の事業年度から青色申告で申告することが可能です。

  • 設立の日以後3月を経過した日
  • 最初の事業年度終了の日

出所:青色申告の承認申請書(国税庁)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/056-1.pdf

青色申告の承認が取り消しになるケース

青色申告は1度承認されれば、継続して青色申告で申告手続きを行えますが、次のケースに該当する場合には、青色申告の承認が取り消される可能性があるので気を付けてください。

<青色申告が取り消しになるケース>

  • 法令で定められた方法で帳簿書類の備付け、記録、保存を行っていなかった
  • 帳簿書類に関して税務署長の必要な指示に従わなかった
  • 帳簿書類等に仮装・隠蔽した事実があった
  • 確定申告書を定められた期限までに提出しなかった

税務署は上記の事実が判明した場合、該当する事実がある事業年度まで遡って、青色申告の承認を取り消すことができます。

青色申告が取り消しになった場合、取り消された事業年度開始の日以後に提出された青色申告書も青色申告でなくなりますので、各種特典は適用されないことになります。

基本的なルールを守っていれば、青色申告が取り消しになることはないですが、何度もミスを繰り返していると、青色申告の承認が取り消されますので注意してください。

まとめ

青色申告は税制上の優遇措置が受けられるため、事業を継続する企業は青色申告で申告することが望ましいです。

これから法人を設立する方は、設立したタイミングで承認申請書を提出する必要がありますし、現在白色申告で申告している方は次の事業年度に入る前に承認申請書を提出しないと、青色申告で手続きできる事業年度が遅くなってしまいます。

青色申告の申請が承認された以後は、定められた方法に従って帳簿書類の備え付け等が必要となりますので、申請前に専門家に注意点等を確認してください。税務のお困りごとがございましたら、永安栄棟 公認会計士・税理士事務所までお気軽にご相談ください。

法人設立1年目はやらなければならない手続きや届け出が多く、滞りなく事業を営むためには決算・確定申告の事前準備も重要です。

本記事では、法人設立時に知っておくべき、決算・確定申告のポイントについて解説します。

会社の決算は何のために行うのか

会社の決算は、一定期間において生じた収入と支出を計算し、損益および資産・負債状況を確定させるための手続きです。

決算内容は経営者が会社の業績を確認する際の重要資料であるだけでなく、融資を受ける際に決算書の提出が求められることもありますので、会社を運営していく上で決算書の作成は不可欠です。

決算書を作成する期間は事業年度といい、個人事業主の事業年度は1月から12月までの暦年ベースと決まっています。

一方、法人は会社の設立登記を行った日が事業年度開始日となり、開始日から1年以内を事業年度として設定します。

会社は決算を行うことが義務付けられていますし、確定申告書は決算内容をベースに作成することになるので、決算書類の整理も大切な作業です。

決算と確定申告の違い

決算と確定申告は、似ているようで全くの別物です。

決算は事業年度の収益や財産状況を把握するために行うのに対し、確定申告は決算で算出した金額をベースに納税額を計算するために行います。

個人事業主は全員が暦年ベースで決算を行うので、所得税の確定申告期間は翌年2月16日から3月15日と統一されていますが、法人は決算期を基準に申告期限が設定されているので、申告時期は会社ごとに異なります。

たとえば3月決算の会社であれば、4月から3月までの事業内容を決算書にまとめ、事業年度終了日の翌日から2か月以内に法人税の申告書を提出しなければなりません。

法人税の納期限は申告期限と同日ですので、会社は税務署に対して確定申告書を提出するだけでなく、納税を完了させることも求められます。

税金の支払いが遅れてしまうと延滞税が課されますので、期限までに納税資金を確保してください。

出所:令和5年版 法人税のあらましと申告の手引(国税庁)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2023/01.htm#a01

会社の決算書類を作成するまでのスケジュール

会社の決算書を作成するためには、日頃から記帳を行い、書類等を整理する必要があります。

記帳は日々行うこと

会社は、日々の業務で発生した売上や支出について、漏れなく記帳しなければなりません。

記帳漏れは決算書を正しく作成できなくなるだけでなく、申告内容の誤りにも繋がりますし、税務署に誤りを指摘されればペナルティが課されてしまいます。

個人事業主は事業規模が小さいので、取引内容をまとめて記帳できるケースもありますが、法人は事業規模が大きいことから、よりこまめに、定期的に記帳することが求められます。

記帳内容の確認・整理

決算時期に記帳内容を一斉に見返すのは膨大な時間を要しますので、記帳チェックは定期的に行ってください。

毎日多くの取引について記帳していれば、記載ミスが起る可能性や、従業員が領収書などを提出するのを忘れているケースも出てきます。

そのようなケースに対処するためにも、日頃から記帳内容を確認するだけでなく、必要に応じて会計ソフト等を活用して整理することも大切です。

また、令和6年1月からは電子データ保存が義務化され、帳簿書類の種類によっては書面保存が認められないものもありますので、電子データで保存するための準備も必要です。

決算書類の作成

決算期を迎えましたら、記帳した書類等を基にして決算書類を作成します。

会社が決算書類を作ることも可能ですが、顧問税理士がいる法人であれば決算書類は税理士に依頼することが多いです。

<中小企業が作成する主な決算書類>

  • 貸借対照表
  • 損益決算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表

確定申告書の提出・納付

決算書類に関しては、書類をベースに確定申告書を作成し税務署に申告書を提出することになります。

法人税の申告期限は決算日の2か月後となりますので、3月決算の法人であれば5月末が申告および納期限です。

法人税の申告手続きに税理士が関与している割合は非常に高く、令和4年度は89.5%です。

所得税の関与割合20.4%に比べると4.38倍になりますので、経営者が申告書を作成するケースの方が少数派です。

出所:令和4事務年度 国税庁実績評価書(財務省)

https://www.mof.go.jp/about_mof/policy_evaluation/nta/fy2022/evaluation/202310ntahyoka.pdf

また、会社が納める税金は法人税だけではありませんので、納税漏れにも気を付けてください。

税金の滞納は信用問題に発展し、経営上の不利益にも繋がるため、納税を要する税金の種類は事前に確認してください。

<法人が納める主な税金の種類>

  • 法人税
  • 消費税
  • 法人住民税
  • 地方法人税
  • 法人事業税
  • 特別法人事業税

法人初年度の決算で気を付けるべきポイント

法人を立ち上げた最初の年はやるべき手続きが多いため、確定申告書だけでなく、届出書などの提出漏れにも気を付けなければなりません。

記帳は初年度から適正にやらなければならない

会社を設立した当初は会社運営にも慣れていないため、ミスやトラブルが起きやすいですが、記帳関係は誤りがあってはなりません。

決算は前期の資産・負債を翌期に引き継いで計算等を行うことになるため、記帳誤りは当期だけでなく、翌期以降にも影響を及ぼします。

税務調査は3年分をまとめて調査対象にすることが多く、法人を設立してから3年を経過すると調査対象者として選定されやすくなります。

税務署は設立して間もない会社が決算誤りや申告ミスが多いことを認識していますので、税務署に狙われやすいことを前提とした対策が必要です。

届出書の提出漏れは厳禁

法人は色々な場所に関係書類を提出しなければならず、提出漏れがあれば罰則の対象になる場合や、優遇措置を受けられなくなるなどのデメリットを被ることになります。

経営者がやるべき行政手続きをすべて把握することは難しいので、専門家に手続きを代行してもらうなどの対処が必要です。

法人成りは調査対象になりやすい

個人事業主が法人として活動することを「法人成り」といいますが、法人成りは税務調査の対象となりやすいです。

個人と法人では課される税金の種類が違うため、法人成りをしたときは個人事業主としての活動を終了させることになります。

税務署の立場からすると、事業活動を終了したタイミングが税務調査を実施する最後の機会となりますので、法人に移行した後に個人事業主に対する調査が行われることもあります。

また、法人成りは個人から法人に資産を移すことになりますが、移転資産の種類によっては税務上においての譲渡所得が生じることも想定されます。

譲渡所得が発生すれば申告手続きが必要になりますし、法人への引継ぎに誤りがあれば個人・法人に対する税務調査で指摘されることになるので注意してください。

法人の決算書・申告書は税理士に依頼すべき

税務署は申告内容に誤りがある納税者だけでなく、申告内容に疑義がある納税者にも調査を実施します。

一般の方は専門家に比べ税知識が少ないことが多いので、関与税理士がいないだけで税務調査を受ける確率は上がります。

税理士に依頼する際には報酬費用が発生しますが、報酬額以上の節税アドバイスが受けられることもありますし、税務調査を受けるリスクを軽減できるメリットもあります。

法人の約90%は税理士に確定申告書の作成を依頼していますので、基本的には代行を依頼することが望ましいです。

まとめ

所得税の確定申告書は納税者が作成することも難しくありませんが、法人税の申告書は内容が複雑であり、ボリュームも多いので納税者が作成する難易度は高いです。

決算書関係の作成に多くの時間を費やしてしまうと、本業に支障をきたす恐れもありますし、申告内容に誤りがあれば税務署に指摘されるリスクも潜んでいます。

創業当初から税理士に依頼していれば、記帳ミスなどを未然に防ぐことができますので、まだ顧問税理士が決まっていない方は、ぜひ永安栄棟 公認会計士・税理士事務所へご相談ください。